「そう言って出陣したってわけか。まさしく「開拓」の精神に違わない英雄だな」
姫子達の話を聞いたギャラガーはそう頷く。彼はヴェルト達が出発した後、「もう1つ、お前達にしておきたい話がある」とホタルと合流した彼女達を呼び止めたのだった。
「っていうか、ほんのちょっとだけど夢の主も悪くない可能性もあるんだよね……?とにかく、ヨウおじちゃんが無事だと良いんだけど……」
「例えシロだったとしても、ファミリーが腐ってるのは紛れもない事実だ。結局、俺達に出来ることはミハイルの犯した過ちを繰り返さないように努めるだけなんだ。今は彼の幸運を祈ろう」
「……ねぇ、ギャラガー。そろそろ「時計屋」に会わせてくれてもいいんじゃない?」
姫子がそう尋ねると、ギャラガーは「丁度、その話だ」と僅かに口角を上げる。彼女は頷き、さらに話を続けた。
「ピノコニーに出発する前、車掌は私達に3人のナナシビトの行方を確かめるように言ったの。ラザリナとティエルナンの話は聞いた。なら、残るは彼の話だけよ。……もっとも、私達は既にその一片に触れていると思うのだけれど」
「それがほぼ完璧な推測だな。明確なヒントは、あちらこちらに残されてたんだから、当然の話ではあるか。お前達が返事を寄越して以来、俺は星穹列車の動向に注視し続けた。宇宙ステーション「ヘルタ」、ヤリーロ-Ⅵ、仙舟「羅浮」……新生した星穹列車の「開拓」は、俺が知る星穹列車の物と変わってはいなかった。お前達がここまで辿り着いたのもその証明と言って良い。流石、アキヴィリの遺産を一人で直した天才ナビゲーターといったところか。星、なのか、お前達もナナシビトの名に恥じない素晴らしい活躍だった」
「えへへ……そんなに褒めても六相氷しか出ないよ……」
「私はホームランしか出ないね」
「若者ってのは調子に乗ってるくらいが丁度いい。姫子さんも、あのパムってやつによろしく伝えといてくれ。「お前の親友はカクテルで酔っ払う度に
「大丈夫、すぐに会わせてやるさ」、そう言ってギャラガーは無銘の墓の前に立つ。そして彼は、静かにその墓石に語り掛けた。
「やっと、あんたがずっと待ってた後輩達がここまで来た。俺はまだあんたが死んだことをたまに忘れちまうってのに、時間は存外に早いんだな。あんたが語ってた夢も、あんたが見たかった景色も、あんたが果たしたかった想いも……あんたが最期に遺したあの言葉が、ようやく、報われる時が来たんだ。どうか、彼等を失望させてやんなよ、じいさん」
「……っ!?待って、何が起きて……!?」
ギャラガーが語り終えたその瞬間、彼女達の立っている足場、ドリームリーフの一部の建物が、まるで夢境という深海の水底へ向かうように、急激に下降していった。
「やっぱスリリングなんだね、ナナシビトは」
「アトラクションかな?」
「あんた達余裕すぎだって……!」
そして足場は暫くの後に止まり、ドリームリーフの底に潜んでいた花園へと繋がる道に接続した。
「行こう。全ての答えはもう目の前だ。彼がこのピノコニーに最初に作り、そして最期に亡くなった場所。彼はそこで待っている」
「ってことは……」
「ああ。ピノコニーの、最初で最後のナナシビト……「時計屋」ラグウォーク・シャール・ミハイルが眠る場所だ」