ある日銀髪の美少女が部屋にいてゲームの世界から来たと言うが何のゲームかわからない話   作:キサラギ職員

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一度生まれたものはそう簡単には死なない。


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 俺がパソコンの前で、同人サイトにアップされたアーマード・コア6の美少女キャラクターの絵を見せた時、オーナー――いや、今やハンドラー・ウォルターと名乗った彼女は、再び静かに言った。

 

「……俺はハンドラー・ウォルターと呼ばれた男だ」

 

 その言葉が、部屋の中に重く響く。何度も彼女はそう繰り返し、自分がかつてのウォルターだと確信させようとしているようだった。俺はその言葉を噛みしめながら、頭の中を整理しようとした。だが、どうしても納得がいかないことがあった。

 

「なぜ……今まで言ってくれなかったんだ? もっと早く教えてくれてもよかっただろう?」

 

 俺はその疑問を、正直な気持ちでぶつけた。オーナーは一瞬黙り込んだが、やがて冷静な口調で反論した。

 

「そう考えるのも無理はない。だが、俺が明かしたくなかったと思うのは、自然な感覚だろう? 誰だって自分の過去を簡単には口にできない。特に、俺のような場合はな」

 

 彼女の言葉には、どこか遠くを見つめるような虚ろな響きがあった。俺はその言葉に納得しつつも、彼女の過去に対する複雑な感情を垣間見た気がした。

 

「俺は、確かに一度死んだ」

 

 彼女の言葉に、部屋の空気が一層重くなる。俺は息を呑んだ。彼女が続ける。

 

「621と戦い、そして俺は撃墜された。意識が朦朧とする中で、確かに俺は死んだ……そう思っていた。だが、気がつくと、神とやらに遭遇していた」

 

「……神様、か?」

 

 その言葉があまりにも唐突で、俺は思わず言葉を挟んだ。オーナーは無表情で頷く。

 

「ああ、神様としか呼びようのない存在だった。そいつは俺に言ったんだ。『お前はまだ死ねない』と。そして、もう一度生きて見ろ、と」

 

 俺はその話が信じられなかった。ゲームのキャラクターが神様に会い、もう一度生きろと言われるなんて、常識的には考えられない。だが、目の前のオーナーが真剣に語っているその姿を見て、否定することもできなかった。

 

「最初は、しらばっくれるつもりだった。自分が誰であるかなんて隠して、この世界で静かに過ごそうと……だが、しらばっくれても、いずれはろくでもない結末が待ち受けていると思い直した。だから、最後の矜持として、自分がハンドラー・ウォルターであるとは言わなかった」

 

 彼女は自嘲気味に笑った。その笑いには、過去を悔いる気持ちが強く滲んでいた。

 

 俺は、ゲームの中でハンドラー・ウォルターがどのような最期を迎えたかを知っていた。だからこそ、その言葉の重さを感じ取った。

 

「ウォルターさん……あなたはゲームの中で、最後には捕まってファクトリーで洗脳されて、改造手術を受けたはずだ。それで621を抹殺する指令を受けて……」

 

 俺が言い終わると、オーナーは静かに「だろうな」と返事をした。その言葉には、自分の運命を受け入れたかのような冷静さがあった。

 

「じゃあ、これからどうするんですか?」

 

 俺は少し迷ったが、彼女に敬意を込めて問いかけた。彼女は、俺がその問いを敬語で発したことに気づいたのだろう。軽く片眉を上げ、すぐに言葉を返した。

 

「さん付けは不要だ。ウォルターとだけ呼べ。それと、ハンドラーも不要だ」

 

 その言い方には、かつてのハンドラー・ウォルターらしい冷徹さが戻っていた。彼女の声にはどこか虚しさが漂っていたが、それでも彼女自身のプライドを保ちたい気持ちが伝わってきた。

 

「一度生まれたものは、そう簡単には死ねないとは言ったが……いささか軽率な発言だったかもしれん」

 

 オーナー――いや、ウォルターはそう自嘲的に笑った。彼女の笑いには、過去の自分に対する後悔や苦しみがこもっていた。そして、彼女は続けてこう言った。

 

「俺の目的は変わっていない。コーラルが存在するならば、それを発見し、被害が出る前に焼き払うことだ」

 

 その言葉は、ゲームの中での彼の目的そのままだった。彼はコーラルという不安定で危険なエネルギー資源を、どんな犠牲を払ってでも消し去ろうとした。だが、ここは現実世界であり、コーラルも存在しない。

 

「……でも、この世界にはコーラルは存在しないよな? それに、宇宙に進出する技術もまだろくにないし……」

 

 俺がそう言うと、ウォルターは静かに頷いた。

 

「そうだ。そもそも、この世界の技術水準では、宇宙進出すらろくにできていない。俺が老衰で死ぬ前に、月面基地が作られるかどうかも怪しいだろう」

 

 その言葉には、現実世界への失望と無力感が滲んでいた。彼はゲームの世界で大いなる使命を背負い、戦い続けた。しかし、この現実世界では、彼の目的は果たされることがないのかもしれない。

 

「じゃあ……ウォルター、君はこれからどうするつもりなんだ?」

 

 俺は、少し重い気持ちで尋ねた。彼の目の前には、明確な目的もないままに現実が広がっている。コーラルも、宇宙進出も、彼の知る世界の技術はここには存在しない。だからこそ、彼の今後の行動が気になった。

 

 ウォルターはしばらく黙っていたが、やがて小さく「わからない」と答えた。その答えには、無力さや虚しさ、そして自分の存在意義に対する疑問が含まれているように感じた。

 

「わからない……か」

 

 俺はその言葉を反芻しながら、彼の状況に思いを巡らせた。彼は一度死に、神様と呼ばれる存在にもう一度生きる機会を与えられた。そして、かつての使命を今も引きずりながら、この現実世界に存在している。しかし、彼自身もその目的を見失っているのかもしれない。

 

「ウォルター、俺も君がどうすべきかはわからない。でも、君がここにいる限り、何かしらの理由があるんじゃないか?」

 

 俺は彼にそう言葉をかけた。彼が今後どのような道を歩むのかはわからないが、少なくとも俺は彼の力になりたいと思った。

 

 ウォルターはしばらく無言のままだったが、やがて微かに頷いた。

 

「……そうかもしれんな。だが、今はまだ、その理由が見えてこない」

 

 そう言って、彼は再び静かに目を閉じた。




見 切 り 発 車
オ ー ル マ イ ン ド
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