トリニティ謝肉祭で開催されているイベントの一つである「アイドルイベント」
このイベントでは各校の生徒たちが参加し、歌や踊りを披露している
そして今も、トリニティ内で野外ライブが開催されていた
闇夜を照らし出すようにライトが交差し、歌と熱気が会場を飲み込んでいた
「「「♪♪♪~~~」」」
「キャーっ!!ミネ団長!!」
「サクラコ様ぁ~!!こっちにもわっぴーをください~!!」
「マリーちゃん~!!可愛いよぉ~!!」
「今まで生きていてよかった………ッッ!!!!」
その中でも人気を博しているのが、伊落マリー、蒼森ミネ、歌住サクラコがユニットを組んだ「アンティーク・セラフィム」であった
彼女たちがステージの上で輝く瞬間、トリニティの生徒達が持つ陰湿さは消え去り、誰もが彼女たちの虜となっていた
「みんなを幸せにしたい」というリーダーのマリーの想いが、アンティーク・セラフィムの歌と踊りを見た生徒たち全員に届いていたのだ
アンティーク・セラフィムだけではない
アビドスやヴァルキューレといった他学校から参加したアイドルユニットもまた、生徒達を虜にしている
このライブ会場では、学校という垣根を越えて、生徒たちの心は一つとなっていた
「………」
しかし一人だけ、生徒たちの輪から外れた生徒がいた
いや
その輪に入ろうとしていない生徒がいた
その生徒は、一人暗い校舎の屋上からステージを眺めていた
屋台で買った
そこへ一人の男性が近づいてきた
「こんなところで何をしているんだ、レイサ」
「先生……」
「今の俺は先生じゃなくて副担任だって」
「あはは……そうでしたね……」
先生と呼ばれた男性はレイサの隣に立ち、ライブ会場を見渡す
「2人分のご飯と飲み物があるけど、誰かと一緒にいたのか?」
「いえ……間違えて買ってしまったんです……よかったら食べてください」
「そうか、悪いな」
彼はレイサから飲み物を受け取り、ステージを見始める
それから2人の間に会話は無く、アンティーク・セラフィムの歌声だけが響いていた
1曲目が終わった
そして、次の曲の繋ぎとしてMCが始まった時、レイサがゆっくりと口を開いた
「私、最近変なんです」
「変?」
「パトロールをしているときも、どこか遊びに行っているときも、私は誰かに話しかけてしまうんです」
「だけど、そこには誰もいなくて……」
「何故だか胸が苦しくなるんです……」
「屋台でご飯を買った時もそうです……」
「いるはずのない誰かの分まで買ってしまったんです……」
「そして今も……」
「私はステージの上で立っているアイドルの皆さんを見ていません……」
「アイドルの皆さんに、誰かを投影しているんです……」
「私はその誰かを知らない……」
「でも、その誰かを想うたびに、心の奥でポカンと空いた穴が温かくなって……」
「悲しみがジワジワと広がっていくんです……」
「………」
「先生……私、どうしてしまったんでしょうか……」
彼はレイサの嘆きに答えることが出来なかった
目を閉じ、深く考え込んでいる
飲み物をの飲み切った彼は、空のコップを床に置き空を眺める
そして、ポツリと語り始めた
「少し前、俺はとある生徒に出会った」
「彼女はすごく気弱で、捨てられた猫のようにいつも何か怯えていたんだ」
「でも、彼女は友達の話をするときは誰よりも輝いていた」
「友達が人助けをしたとき、彼女は自分のことのように喜んでいた」
「そしてある日から、彼女はみんなに夢と希望を届け始めた」
「自分が友達から貰ったように」
「友達が自分を救ってくれたように」
「彼女はみんなのために動き始めたんだ」
「俺もそんな彼女から勇気を貰ったよ」
「でも、気が付いたら彼女はキヴォトスから消えてしまった」
「まるで最初から存在していなかったかのようにね」
「………」
「きっと、彼女は今も見守っているんだと思う」
「その友達が幸せでいられるように」
「一人静かにずっと……」
「その生徒の名は——————」
「「響伏コロレ」」
「——————
「いえ———
「でも、自然とその名前が思い浮かんだんです」
「響伏コロレ……ちゃん……」
「何故でしょう……」
「その名前を呼ぶと……」
「心が苦しくなるんです………ッ」
「コロレちゃん………ッ」
「うあっ………コロレちゃん………ッ!!」
レイサは音符の髪飾りを握りしめ、とある生徒の名前を呼び続ける
しかし、レイサの呼びかけに誰も反応することは無く
レイサの嘆きだけが、闇夜に溶けていくのであった
「彼」だけは彼女を覚えていた
「彼」もまた、幾度となく世界を繰り返し、幾万もの人々から忘れ去られたからだろうか
その答えを知るものはいない
だけどこれだけは確実に言えるだろう
彼女は確かに存在していた
そして
彼女の生きた証は
今も親友の傍で輝きを放っている
【アツコの場合】や【ヒナの場合】みたいにオリ主くんが他作品の世界観や能力を持っているのは?
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あり
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なし
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好きにしていいから黙って曇らせを書け
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好きにしていいから黙って救済しろ