俺は自身を陰の民だと理解している。理解しているからこそ、願わくばもう女とは関わりたくない。   作:句点

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正直めっちゃ自信作(2025/11/9追記)



俺は自身を陰の民だと理解している。理解しているからこそ、願わくばもう女とは関わりたくない。

自分の顔の悪さについては、理解しているつもりだ。

17年間。表立ってこの顔の異質さに気づいたのはここ10年ちょいだが、それでも俺は自称プロ陰キャ。

 

クラスの奴らとは顔を合わせず、存在を消すことによってその人権を死守してきた。

 

「君、正直受け付けなくてね、出来れば体育の時間は休んでいて欲しいのだけれど。」

 

週に3回の体育の時間で、準備運動をしていた俺にそう言い放った彼女は、隣のクラスの貴公子、久我咲さんだ。

 

「そうは言っても、俺だって成績は欲しいし…。」

 

できるだけ相手と顔を合わせないように。申し訳なさそうに彼女に伝える。

一軍女子と言っても、人間。ほぼ無いだろうが彼女にも俺に対して思いやる気持ちと言うものが存在するはずだ。

 

それに俺が成績を欲しいのは事実。これでも学年の中で上位の成績は持っている。物理や数学に至っては1位争いを勝ち取る常連である。なんせ、この現代社会。ビジュアルも芸術的センスも悪い癖に、平均より身長が高く目立ちやすい俺は、学歴が無いとこの先お先真っ暗なのだ。

 

「ふむ、僕も鬼では無いから、君の言い分もわかる。でもね、今の君のその性根を見ているとイライラしてくるんだ。」

 

「そんなこと言われても…。」

 

体温が上がってきた。反比例するように言葉尻は弱くなっていくが。

 

同級生と話すことの耐性が皆無の俺にとって、一軍女子、顔も地位も天と地の差がある彼女は、難易度が高すぎる。加えて、俺たちの様子に気づき、ヒソヒソと話し出す人たちも居た。

 

──なんで俺にこんな羞恥心を抱かせるんだ…。あ、俺を追い出したいからか。

 

と、悲しすぎる自己完結をする自らの姿には、俺の中のエア諭吉も絶句だろう。天が俺の上に久我咲さんを作るのは不可避だ。

 

「はぁ、僕もいじめたい訳じゃないんだ。今回は大目に見てあげるから、なるべく早く、出来れば今日中にはどうにかして欲しいね。」

 

久我咲さんは冷徹な視線を俺に浴びせた後、彼女の仲間らしきグループに戻って行った。

 

ふぅ、何とか地獄は去ったようだぜ。

 

安堵の吐息を着いた時、丁度学校のチャイムが鳴った。こんな空気感の俺に話しかけに来る人間もいるはずが無く、さっさと移動命令が出されて助かった。

 

「おい〇〇、大丈夫だったか?」

 

いや、こんな俺にも話しかけてきてくれる人は居た様だ。感極まって涙が出てくる。ひとりぼっちじゃ悲しいもんな。泣いてもいいよね?

 

「は、はい。ありがとうございます先生。それより、明後日のバスケットの試合、久我咲さんと対戦しないように何とか出来ないですかね?」

 

「ふむ……、試合の組み合わせまでは一生徒の意思で決定することは出来んな…。が、一応交代制は盛り込んでおこう。これでできるだけ同じコートに経つ時間は減らせるはずだ。」

 

「すいません先生、無理を言ってしまって。助かります。」

 

「気にするな。お前には書類の整理とかで助けて貰ってるからな。少しくらいは融通できる。」

 

体育の近藤先生は、こんな俺にも気をかけてくれる素晴らしい先生だ。同じ男性として、俺の置かれている状況に同情しているらしい。

 

運動の得意不得意が激しい俺でも、安定して成績5をキープしているのは、2年間体育担当が彼ということが影響している。

 

「それにすまんな、久我咲の事は家の事情もあってな、あんまり介入すると俺が飛ばされちまう。でも、これからも気にかけてるから、なんかあったら力になるからな。」

 

──ありがたすぎる。人徳の塊。前世は悟りを開いた僧か何かか?今世も悟り開いてそう。

 

「いえ、大丈夫です、ほんと、感謝してます。」

 

その言葉を聞いた近藤先生は、駆け足で校舎に戻っていく。ぼちぼち俺も戻ろうとしたところ、視線を感じた気がして体育倉庫の方を見る。しかし、予鈴もなり始めていたので、とっとと移動することにした。

 

 

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翌日、何事もなく登校した俺だったが、朝のホームルームの担任の一言で深く絶望することになる。

 

「数学担当の山川先生が体調不良により欠席ということで、今日の三限は自習になります。」

 

何も知らない一般の方々には、なんの変哲もない文章に写るだろうが、この大光学園(たいこうがくえん)の生徒にとっては、そして最たる俺にとっては意味合いが急激に変わる。

 

この私立高校、大光学園では、特殊な自習方法が行われる。生徒達自身で高め合う、という校則から、何故か自習では2人組を作って分からないところを教え合う、という謎システムを実施しているのだ。

 

プロ陰キャの俺にとって、関係値の低い人間、まして同級生となると、永続スキル、コミュ障*1が有無を言わせず発動する。後は皆まで言わずとも分かるだろう。

 

来るな来るなと思う事ほど、願望に反して早くやってくるものであり、気づけば三限の予鈴が鳴っていた。しかも、文理選択により隣のクラスと合同で授業が行われるので、貴公子。いや、俺にとっては大魔王である久我咲さんが居るのだ。

 

昨日の今日でこの状況。彼女のことを意識してしまい、コミュ障が進化して、永続スキル、対話拒否*2になるのも免れないかもしれない。

 

とりあえず、涙目になりながら対戦相手の名簿を見る。

 

名簿には森川さんの名前があった。

 

ほっ、彼女はどちらかと言えば陰の民。いつも教室の隅で読書をする俺の同類だ*3。会話をせずとも問題は無い。そう思って席に着くと、対面に設置された学校机に、思いがけない人が座った。

 

「やあ、昨日ぶりだね、〇〇君。」

 

「あの、席違うと思うんですけど…?」

 

俺にとっては悪魔のような微笑を浮かべる彼女は、俺を見て嘲笑っている。つい怖くなって目を逸らすと、声のトーンが下がり始めた。

 

「僕の言うこと、ちゃんと考えてくれた?今すぐにでも辞めて欲しいなぁ。」

 

「そんなこと言われても、、、。特待生制度的に自主退学は認められないというか…。」

 

「それについては問題ないじゃないか。僕は理事長の孫、そんな事は僕の前では些細な事だ。」

 

ほんとに、嫌になる。権力を持った人間とはどうしてこんなにも醜いのか…。っと、こういう考えは表情でバレるからこれ位に留めておこう。それに、俺は顔は醜くても心までは醜くく無いように心掛けている。それが底辺に生きる者としての矜恃なのだ。

 

「…すみません、その、なるべく早く決めるので、もう少しだけ待って頂けませんか?」

 

「ふぅん?そう、まぁ、そんなに言うなら僕も我慢してあげるよ。楽しみだなぁ。」

 

ニヤニヤ笑っている顔も様になる。世のDV彼氏に虐げられる人の気持ちはこんな感じなんだろうか。知覚したくなかったものだ。

 

「そうだ、ここの問題教えてくれる?君、結構頭良いんだよね?」

 

「…えと、別にいいですけど、三項間漸化式ですか?こういう問題はまず定石の形を作ることから───」

 

以外にも真面目に話を聞いている彼女は、勉学に対してはしっかりしているらしい。そういえば医者志望だったか…。こんな性格の終わっている女に務まるのか?ま、俺には関係の無いことだ。それに、後3ヶ月立てば俺にもようやく安息の日が来るのだ(・・・・・・・・・・・・・)。それまでの辛抱。そう、辛抱だ。

 

 

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その後、やはり彼女、久我咲さんからの弾圧は留まることを知らなかった。

 

バスケットボールでは、近藤先生の交代制で出るのを控えようとしたものの、態々俺を指名してまでコートに呼び出し、近藤先生の配慮を無力化した上で、何故か男子顔負けの運動能力を持つ久我咲さんのスーパープレイの錆にされたり、化学の実験では俺の使用溶液だけ酸濃度が高く、危うく怪我をするところだった。人間が感じる痛みの中でも、体を溶かされるのはかなりの部類に入ると聞く。俺は有機物であることすら許されないのだろうか。

 

最早犯罪者レベルなのだが、証拠など既に無いし訴えようとしても、久我咲財閥の圧力によって抹消されるだろう。

 

日本の司法の敗北である。虚しい。

 

他にも、自習で森川さんとペアになるのを、毎回毎回変わってまでやってきて、繰り返される罵詈雑言。自称プロ陰キャとして長年後ろ指を指されてチクチク耐性を持つ俺でなければ、自殺していてもおかしくない。多分俺もどこか狂っている。

 

上げればキリが無いが、特に酷かったのはあれだろう。そう、あれは久我咲財閥とズブズブの国語教師、早瀬先生による読書感想共有の授業だろう。その授業は当然のごとく隣のクラスと合同であり、早瀬先生の持ってきた本を1人1冊持って行って感想を考えるというものだった。みんなは有名な推理小説や、論文、参考書みたいな見た目の解説書であり、俺も物理書とかを貰おうと思ったら、早瀬先生から「お前はこれだ。」と1冊の本を手渡された。

 

表紙からも丸わかりなのだが、明らかに幼児向けの絵本である。勿論抗議の目を向けようなんて、弱者男性の俺にはできっこない。

 

諦念に包まれながら席に着くと、案の定俺の入れられたグループは久我咲さん率いる一軍女子グループである。久我咲さん以外の女子たちは俺の持ってきた絵本を見て直ぐに嘲笑い出し、それを自ら持ってきたのだと勘違いして煽り散らかす。

 

羞恥心で死ねる。いや、俺はいつかこんなクソッタレな日本から離れて世界で活躍する人間になるのだ。こんな所で死んではいられない。

 

とはいえ、俺もまた人間。しかも国語は苦手科目で読書感想文なんて世界で1番嫌いな宿題だったのが俺だ。勿論質も高くないし、久我咲さん達の読書感想文は完璧だから、学年上位の成績を取っているという俺のほんの少しの自慢がズタボロに破壊される。もうダメ出しなんて聞きたくない。絵本の感想なんて、どう考えれば良いんだよ。虫が生きてるだけで人間が何かを感じるわけないだろ。

 

ふう、そんな過去のことはもう置こう。俺は遂にこのクソッタレな現実から解放されるのだ。何故なら、今日から俺はアメリカの大学に旅立つのだから。俺は孤児なので親は実質孤児院の職員さん。そんな人達に頼れなかった俺も、海外に俺自身を売り込めば日本と違って自分一人で何とかなる。

 

ハッハッハ、未来は明るいぜ。金は無いが、めっちゃ優秀な成績と完璧な英語力で押し切らせてもらった。海外は日本と違って、完全実力主義みたいな所とかがあるから、俺みたいな人間でも何とかなるのだ。

 

生活も寮になる。心残りと言えば、孤児院の子供たちに勉強を教える機会がもう無いことくらいだが、これからの生活のためには切り捨てるべきものだ。

 

某空港に到着して定刻通り入乗し、定刻通り出発する。こんなにも気分がいいのは久しぶりだ。多少不満があるとすれば向こうでのコミュニケーション位だが、それはおいおい、練習していくとしよう。

 

飛行機が進み出して少し。

なんとなしに窓の向こうを覗いてみると、1台の黒い高級車が猛スピードで走っているのを見かけた。遅刻だろうか。心中お察し致します。

 

 

──────────────────────────────

 

 

その後の俺と言えば、もう、何の弊害も無く成長し続けた。最初は大学での会話とか、レポートとかに緊張していたが、それも慣れてしまえば無問題。

 

英語での会話は日本語と違って、物事を直接言い合えるから楽だ。コミュ障に関しては、何とかなった。何事も経験なんだろうなと思う。

 

ローマは一日にして成らず。経験と継続を繰り返した俺は正に無敵の人。友達も、少しできた。と言ってもちょっと話すくらいの仲だが。勉強を教えると徐々に俺みたいな顔面でも、優秀な人間であると認められるようになったのだ。

 

お酒が呑める様になって、研究室に配属されるようになった頃。転機が訪れた。なんと、研究室に日本出身の女の子が同時に入ったのだ。

 

それくらいの歳には、友人の勧めで、ある程度ファッションに気を遣うようになり、顔にさえ目を瞑ればまぁ有り。位には思われていたらしい。

 

閑話休題。

 

その日本出身の女の子はイギリス人と日本人のクォーターで、めっちゃ顔がいい。俺が-∞だとしたら、彼女は+∞。それはもう、天と地の差である。性格を見てくれるってこんなに幸せなのか。

 

教授が「同郷だから」と言って、同じ班に回してくれて、一緒に研究室に居るうちに段々と親密になっていった。もう分かるだろう?

我が世の春である。

 

大学卒業時にプロポーズ。なんと受け取ってくれて、俺は幸せの最高潮。もうこれ以上上なんて無いだろう。そんな風に思っていたからだろうか。俺の幸せは長くは続いてくれなかった。

 

 

──────────────────────────────

 

 

苗字を同じにしてから3年後、彼女が日本に里帰りに行くと言う。確かに、結婚を義家族に伝えてから連絡もあんまり取ってなかったし、俺も行こうかな、と思っていると、慌てたように止められた。

 

なんでも、家が散らかってるかららしい。別にそれ位は気にしないと返しても、俺が日本に行くことだけは許して貰えなかった。

 

ここからが疑念が生まれ始める。有り体に言えば、不倫だ。

信頼していたが、それ以上に不安だった。自分の容姿が原因で、彼女は浮気をしてしまったのではないかと。

 

そして、嫌な予感とは的中してしまうのが世の理。ふざけやがって。

 

『わたし、もう今の夫じゃ満足出来ないのぉぉぉ!!』

 

遂にはアメリカにある俺のハウスにまで浮気相手を連れ込み、おっぱじめやがった。俺、号泣である。しかしこれも世の摂理、顔の良い人間は顔のいい人間としか釣り合わない。それを再確認して、もう自殺でもして楽になろうかと考えていた時、ぷるぷるぷる、と俺のスマートフォンが主張してきた。

 

「……知らない番号だ。」

 

何も考えることができない俺は、目を虚ろにして画面をタップする。

 

『やあ、久しぶりだね〇〇君。』

 

「その声…、久我咲さん……か?」

 

憎たらしい顔が脳裏に過ぎる。俺を嘲笑うな微笑。世界を馬鹿にした、自分が王であるかのような表情。魔王だ。

 

『君、フフッ。最愛の妻を寝盗られたようじゃないか。』

 

「なん…で、それを。」

 

『簡単な話だよ、僕が間男を仕向けたからね。』

 

「は?」

 

珍しく、俺の声のトーンが下がる。アメリカに来てからコミュ障が改善され、自由にものを言えるようになった。故に、自分でも驚いている。こんなに低い声が出ているのかと、こんなにも俺は憤慨しているのかと。

 

『ふふっ、いいね。その感じ。懐かしいな?』

 

「懐かしい?なんだよそれ。意味わかんねぇ。頭沸いてんのか?」

 

『言葉の通りの意味だよ。──桜小学校。君が通ってた小学校だよね。』

 

「……今はそんな事関係ないだろ。」

 

突然俺の過去について話し始める。っていうか何で俺の通ってた小学校知ってるんだよ。

 

『まぁ聞きたまえよ。耐えることは君の得意分野だろう?……そうだな、君は覚えているか知らないけど、小学3年生の時、知能テストに呼ばれたよね?』

 

確かに覚えている。日本にいた時なんて、勉強くらいしか集中出来るものが無かったから、只管に机に齧り付いていたからか、担任に呼ばれて知能テストを受けさせられた。

 

『その時、隣でテストを受けていたのは実は僕だったんだよね。……それで、その時の僕は結構必死だったんだよ。久我咲財閥の令嬢として、他の人間に負けるなんて当然許されないから。だから、それまで勝ち続けてきたんだ。』

 

『だけど、君に負けた。……君だけに負けたんだ。君にはテスト結果は伝えられなかった。お父さんが「僕が負けた」って事実を権力で握りつぶしたからね。でも、僕は納得出来なかった。君に負けたことがね。だから、1度文句を言いに行ったんだよ。桜小学校迄ね。』

 

そんな記憶……いや、微かに覚えているような気もする。高校時代と同じで凛とした黒髪の女の子が、確かに校門の前に居たような。

 

『その時、君が私に向かって言ったんだよ。「知らねぇよ、勉強してないのが悪い。」ってね。』

 

今の俺には。いや、過去の俺には信じられない発言だった。コミュ障で、あがり症で、自分の顔面を理解している俺が、そんな事を言ったなんて。

 

『その時、衝撃を受けたんだよね、僕。「あぁ、僕にこんなこと言える人、居るんだ。」ってさ。それで、その。……ちょっと恥ずかしいな。…一目惚れ……って訳じゃないけど、気がついたら君のこと意識してた。』

 

……は?やばいな…、さっきから予想外の事が続いているからだろうか、精神的なショックで幻聴が聞こえ──『事実だよ。』

 

『紛うことなき事実。いやぁ、初めて言えたよ、僕の本当の気持ち。でもさ、しょうがないと思わない?何とかして君のことを従者に調査させ続けて、進路にも介入してせっかく大光学園に入学させたのに、6年ぶりにあったら、あんなオドオドしててさ。だから、どうにかして反抗させられるように色々工夫してみたけど効果は無いし、気づいたら飛び級進学でアメリカに発ってたんだもん。』

 

そんな事言われたって、俺は顔が悪い。そんな弱者男性が、一財閥の令嬢に反抗するだなんて、無理に決まっている。まだ死ぬほうがマシだと思っていた。

 

『良く考えたよね、確かに僕の力じゃ日本の中ならどうにかできても海外までは手を出せない。凄い焦ったよ。授業を抜け出して自動車で空港まで行って執事が違反切符貰うくらいには。』

 

『それに、それにそれにそれに!やっと見つかったと思ったら結婚してるし!!本当にイライラしたんだよ?僕に何も言わず離れて、あまつさえ僕に何も言わず勝手に結婚してるなんて。僕の方が先に好きだったのに!!』

 

久我咲の声が急に怒声に変わる。その声は震えていて、携帯を握りしめてミシミシという音が俺の耳に伝わるほどに。

 

『だから、君が今の妻を失うのは当然のことだよね?だって、君には僕しか有り得ないもん。トットットットット!!

そうでしょ?ねぇ、バタッ!!

そう言ってよ!!」

 

部屋のドアを開けて、いつも通り──ではなく、目のハイライトが消えた久我咲が部屋に乗り込んできた。俺が反応するよりも早く俺の腕を掴んで、顔を首元に近づけてくる。

 

「あ〜あ、こんなにあの女の香りを付けちゃってさ。君がつけていいのは僕の香りだけなのに。」

 

クンカクンカと俺の匂いを嗅ぎながらも、目だけは俺を射続ける久我咲が怖い。体は震え上がっている。

 

「う、うるせぇよ!」

 

久我咲を思いきり押し離す。

 

「ふふっ、いいね。この気持ち。久しぶりだなぁ。」

 

見るからに恍惚とした表情を浮かべ、俺の事を舐めまわすように見てくる久我咲。それを見ていると、俺もなんだか恐怖心だけでなく、ふつふつと腹の底から怒りが湧いてくる。

 

「くそ!お前さえ居なければ!」

 

思い切り力を込めて久我咲に殴りかかる。しかし、

 

──世界が、回転してる?

 

何が起こったのかは分からないが、俺の体がベットに押し倒されている。遅れて、俺にのしかかり舌なめずりをしながら久我咲が口を開き始めた。

 

「女の子にも勝てないなんて。非力で、顔も良くなくて、愛しの妻も守れない。でも、それでもまだ抗うことを辞めない君のその目が、視線が!本能が!!……好きなんだよね。」

 

久我咲は軽く口付けを行うと、いつの間にか流れていた俺の涙を彼女の舌が舐めとった。

 

「ふふっ、もう逃がさないから。」

 

……こんな時でさえ反応し続ける俺の体が憎い。俺の意に反して、裏切られていたとは言え、愛する妻に捧げたものが理不尽にも奪われるというのに、この顔のいい女と釣り会えると勘違いした俺の肉体が憎い。そして願わくば、もう、女とは関わりたく無い──。

 

「いただきます。」

 

*1
レア度1

*2
レア度2(100段階)

*3
顔はいいので同類と声を上げると世界が凍りつく。




怖いねぇ……。その後の主人公は無事隷属化した。ちなみに1度完全に従順になって反抗心を無くしたと久我咲さんに勘違いさせようとしたが、当然見抜かれてその日の夜はいつもより長くなったらしい。
久我咲さんに捕まった後は久我咲さんの家で軟禁されている。
久我咲さんとの夜を回避しようとするとするほど反抗的だと判断されるジレンマ。怖いねぇ……(歓喜)。
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