降谷零に成り代わったが原作をクリアできない   作:ラムセス_

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ジェットコースター殺人事件(失敗)

 

 ついにやってきました!

 N回目の原作の開始、ジェットコースター殺人事件の日が!

 

 今回の個人的目標は「原作破壊」。即ち原作からの逸脱である。

 

 もう何度もこの手の類で惨敗を喫しているのだが、このゲームの仕組みはわからないもので。

 思いもよらないところでOKが出るので、やってみる価値はあるだろう。

 

 なにせ現在でもバーボンがジンの信頼を稼ぎまくってもセーフなのだから、原作破壊がどの程度からNGとなるかなんてシステムの匙加減だ。

 ただし判定はガバガバ、に見せかけて非常に厳しい二面性もあったりでワケワカメ。

 

 同期の警察学校組を助けようとして何千周も無駄に死んだことがあったなぁ。

 結局だめだったが。

 

 さて。

 フリマサイトを経由して買ったチケットを使い、トロピカルランドに入園すれば、そこは人で溢れかえっていた。

 流石は東都屈指の人気テーマパークである。

 

 俺は今回、周囲の見張り役としてこの場所にやってきている。

 

 すると、何やら人混みが奥に行くにつれてざわめいているのに気がついた。

 どうやらジェットコースターの方で早くも事件が起きているらしい。

 

 にわかに観客たちがざわめいて、警官達が足早に人々の間を割って進んでいく。

 「はい退いた退いた!」「通ります!」と鑑識機材を持って警官が大声を張り上げている。

 

 俺はざわめく人影に身を潜め、思考を回転させた。

 

 幾度かの繰り返しにより、このジェットコースター殺人事件の場で工藤新一を助けるには

いくつか方法があることがわかっている。

 そもそも出会わないようにする、薬を飲ませるふりをする等々。

 

 今回は出会わないようにする方針でいこうと思う。

 かつてスキルLvが低い時分に工藤君を逃がそうと一回試したのだが、普通にジンにばれて蜂の巣にされたからな。

 あの銀髪野郎め、ふざけやがって。

 

 お馴染みのポイントにいた取引相手に背後から声をかけ、「ああ、あなたが今回の取引相手ですね。今少しトラブルが起きているようなのでこちらへ」と誘導する。

 ハリネズミのように辺りを警戒するハゲ男は、俺をみて動揺に尻餅をつき、慌てて金の入ったバッグを強く抱き直した。

 

「だっ、誰だ!?まさか警察じゃないだろうな!」

「違いますよ。僕はバーボン。これで分かりますね?」

「ッ幹部か!?と、トラブルとは一体何の話だ!」

「今園内で殺人事件が起きているようですから。円滑な取引続行のため、どうかご協力をお願いします」

 

 俺の録音されたアナウンス音声のようなのっぺりとした声色に、男は落ち着きを取り戻したようだった。

 俺の声は大概人に違和感を覚えさせるというか、マイナスイメージを助長させるようなのだが、今回ばかりはそれが良い方向で働いたようで何よりだ。

 この声で人を安心させることができるとは、何事もわからないものだ。

 

 次いでインカムを通して、ウォッカに連絡を取ろうとする。

 向こうも音楽を聞くふりをしてイヤホンを取り出したはずだ。

 向こうが返事をするのは難しそうなので、インカムに言葉だけ発して通話を切る。

 

「警官が近くを通ったため、取引相手を連れて場所を移動。A-23にて待つ」

 

 A-23。

 この絶妙な位置取りがポイントだ。

 

 工藤新一から見て走るウォッカが絶妙に視界範囲外になるため、彼が気付いて追いかけてくることが無いのだ。

 この角度を確認するために何回セーブ&ロードしたことか。

 

 1時間半ほどの待ち時間を経て、夕陽がどっぷりと沈んだ頃。

 ウォッカが足早に駆けて来るのが確認できた。

 ウォッカは急いでいたのだろう。肩で息をしている。

 

「悪かったなバーボン。助かったぜ。こんなくだらねぇことで取引がおじゃんになったらどうしようかと思ってたんだ!」

「いえ。お気になさらず。任務を続行しましょう」

「おお、そうだな!」

 

 ウォッカはニコニコと俺の肩を叩き、優しく労わってみせた。

 それでも、致命的に変わってしまった運命はここで終了のようだった。

 

 工藤新一は原作通りに幼児化することなく過ごしていくことに運命は切り替わった。

 ハッピーエンドだ。若人たちにとっては大団円とも言えるだろう。

 

 それを許さないシステムが、俺以外には聞こえない警告音をけたたましく鳴り響かせる。

 エラー、エラー。

 システム範囲外に未来が露出しています。緊急措置に入ります。

 

 ああ。

 会話をするも歪んでいく。声が、記憶が、意識があやふやなものとなっていく。

 全てが全て、許されざる運命の捻じ曲がりに歪んでいく。

 

 パーク内の街灯が朝日のような輝度の狂った極彩色に変わって、危ない薬でもやってしまったかのようなサイケデリックな世界が広がっていく。

 エラー、エラー、エラー。

 

 このルートは解放されていません。

 鍵の収集状況 1/5

 

 そうしてパタリと。

 本を閉じるようにして世界は閉じた。

 今回もやっぱりダメでした。次の降谷零ならきっと良くやってくれるでしょう。

 

 クソッタレめ。

 

 

 

 

 

 俺は何千周目かわからぬほどに、交番に灯るあかりを暗がりから遠目で確認する。

 あれから幾度か試したが、全てダメだということが分かっただけだった。

 

 ジェットコースター殺人事件自体を阻止すればそこで即アウト。

 工藤君を殺したフリも不可。取引中止に追い込むのも不可。

 

 ぜーんぶダメだったが、唯一収穫があったのは取引場所変更に「鍵の収集状況 1/5」と通知が出たことだろう。

 どうやらルート開拓には前提条件が足りないらしい。

 あと鍵が四つ。

 鍵一つでヘタをすると数十万のループが必要になるので、これは一旦後回しが安牌か。

 

 ああ、千里の道も一歩からと世間は言うけれど。

 億里の道にて一歩なんて誤差に過ぎないと思わないのだろうか。

 

 影に隠れてしばらくみていると。

 その中から走り出す一つの小さな小学生の影を確認できた。

 

 自分の言い分を聞いてくれないことにひどく傷付いているのか、誰にも信じてもらえないことに絶望しているのか。

 彼はただ、子供服のまま暗闇の中、裸足のままに必死で走り続ける。

 

 彼の名前は江戸川コナン。

 

 システムによってそうであらなければならぬと決定づけられた、哀れな運命の救世主その人である。

 

 

 助けられなくて、すまない。

 




次回はベルモットと買い物っつーか荷物持ち。
事件なし。
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