修正していきます。すんまへん。
王選開始の二日後。
王都は活気に溢れ、まるで祭りかのように盛り上げる。一体誰が王になるのだと。クルシュを讃えるもの。アナスタシアを推すもの。プリシラに見惚れるもの。貧民を笑うもの。半魔を恐れるもの。
多くの声が響き渡るが、そんな熱狂とは無縁の場所があった。
話題の中心的な人物が集まるカルステン家の王都別邸は、街の熱気とは驚くほどに温度差がある。王選よりもまずは白鯨討伐である。浮かれずにその大事に向けて準備が進んでいく。
そんないつも通りの風景に運び込まれた異物がいる。
ナツキ・スバルの身体的な怪我はすでに治療を終えていた。
残るは魔法的な故障、体にある不可視の器官。ゲートと呼ばれるものの治療である。マナを取り込み、放出するまさに門のような役割のスバルのゲートはしかし、破綻寸前の有様だった。
覚えたてにも関わらず、負荷を考えないで連発。しかもボッコの実というマナの活性を強制的に促すものを使っての蛮行である。摂り過ぎなくても劇薬となるボッコの実はスバルの内側をしっかりと壊していた。
その治療を行いつつ、ケイはスバルの情報を集めることを優先事項に設定した。スバルが希望した剣の稽古を、多忙なヴィルヘルムにわざわざ担当させる判断はケイが強く推したものだ。
まずヴィルヘルムにスバルが取り掛かり、完膚なきまでに手加減されて打ちのめされる。怪我もしない程度に転がされるというのは、本当に圧倒的な実力差がなければできない芸当だろう。
その後に見習いの訓練と称して、ケイとスバルが向き合った。
「え〜と。確か屋敷にも来てたよな」
「クルシュ様の書記をしております。この度は自分の訓練にお付き合いいただきありがとうございます」
「いやその敬語っていうか固い感じやめない?すげーやりづらいっていうかさ。そんな大したもんじゃないし本当に」
言いながら落ち込んでいる様子のスバル。その一切を愛想笑いだけで流し切る。
「エミリア様の従者に失礼があれば自分の首が飛びます。ご容赦を。早速訓練を始めさせてください」
この言葉も、スバルの心の傷を突いたらしい。
ケイが構えるのは小盾と短剣。スバルは長剣の木刀を持って対峙する。
自分が素人に刃物を振り回された時の護身術を学びにきたのも真実である。
「フェリスが治しますので、怪我の心配はなさらないでください。全力でどうぞ」
打ち合いが始まった。
スバルは思う。正直やりづらい。
とは言ってもこれは、書記の戦闘訓練にスバルが手を貸しているという流れになっている。
防御の練習がしたいらしく、ひたすら打ち込んで欲しいとのこと。反撃は来ない。
無防備とは言わないが、反撃が来ない相手を殴り続けるというのは気分が良くない。
そう思っていたのは最初の方だけで、気づけばだんだんと上達する防御に負けじと全力で剣を振るっていた。
そういえばこの世界に来てからというもの、自分の攻撃がまともに通ったことの方が少なかった。
しかしこの相手には自分は攻めることができる。最初の気負いも忘れて相手の肉を打つ快感を追っていく。
平時であればスバルも気に留めたであろう。しかし今は目の前の勝利に酔ってしまう。
5分ほど打ち込んだだろうか。お互いに息が切れて動けなくなる。
「お付き合いいただき、ありがとう、ございました」
これがスバルの日課の運動となる。
夜を照らす魔法灯は高級品だ。夜にどれだけ屋敷から光が漏れているかどうかでその家の風向きがわかるとまで言われている。
質素倹約を信条とするカルステン家であっても、今の時勢で節約はせずにしっかりと光を照らしている。
良いか悪いか、その分だけ労働時間は伸びる。街が寝静まっていても忙しく動くものはいるのだ。
そんな忙しない者の一人、ラインハルト・ヴァン・アストレアが来訪した。
「剣聖殿がお見えだ。スバルとケイがよければ両方と話をしたいらしい。スバルの了承はフェリスがすでにとっている。夜遅くに申し訳ないが出向いてもらえるか?」
日没から2,3時間程度、体感として夜の8時くらいだろうか。普通の学生であった時、深夜まで勉強をしていたケイにとってはまだまだ活動時間である。
事件に巻き込まれて切羽詰まった時には何度かリセットして睡眠を飛ばすこともあった。
「構いません。剣聖殿と話せるのは助かりますね。ところで、僕は剣聖殿にも協力を要請すべきと思っていますが、これまでなぜなかったのかを聞いても良いですか?王選候補者の捜索という名目だけでは説明できないほどアストレア家の支援は皆無だった。最も支援をしても良いはずなのに、むしろここくらいです。
妨害を行ってくる家には剣鬼をけしかけ脅すことになっていたが、実際には行われなかった。一度は受けたヴァン・アストレアの名前を返上しているのは何かしら確執があるのだろう。
「ふむ。概要くらいは私から話したほうが良いだろうな。ヴィルヘルムの妻であり先代剣聖のテレシア・ヴァン・アストレアが白鯨討伐の折に亡くなったことは知っていよう。悲劇はそれだけではなく、付随していくつも起こっていた。父と子。祖父と孫の間でもだ。それからヴィルヘルムは全てを投げ出して敵討ちに剣を捧げた。つまり家のことを放り出したと言ってもいい。貴族家にとっては裏切りに当たる。アストレアの現当主である近衛騎士団副団長は、それとは別に問題も抱えていてな。当家もヴィルヘルムも怨恨の対象であるかもしれない」
詳細はあまりに私的な部分も含まれるため本人たちにと切り上げられる。
「じゃあ、僕から個人的に協力を要請しても良いということですね?みなさんと違って僕に確執はない」
突き放すような物言いに、柔らかな表情で応える。
「触れづらいところを任せてしまってすまない。私からも頼む。実現すれば何よりだ。剣聖殿に頼ることは私の理想とは異なるが…」
「「そんなことを言ってる場合じゃない」だな?」
二人の言葉が重なり、クルシュは自然と笑みが溢れる。このなりふり構わずというのが、ケイが関わってから一ヶ月近くはカルステン家の標語のようになっていた。
ケイは言葉を読まれて仏頂面だが、この仏頂面は機嫌が良い時のものである。当家に馴染んできてくれたと思って良いのだろうか。
事前のすり合わせを済ませて門前へ向かう。先方が多忙ということもあるだろうが、敷地にすら入らせないというのは異様だ。この様を誰かに見られるだけでも剣聖と敵対関係であると噂を流されるレベルだ。普通にバカな真似はやめてほしい。
スバルとラインハルトがすでにいる。到着後の開口一番は、剣聖からのスバルへの謝罪であった。
「練兵場の一件、止めることができなくで本当にすまなかった。ただ見ているだけだった自分が恥ずかしいよ」
世界最強が深々と頭を下げて戻さない。信じられない光景がスバルを驚かせる。
「ま、待て待て待てって。何をどうしてお前が謝る必要があるんだよ。お前が悪いことなんて何にもありゃしねぇだろ」
「そんなわけにはいかないよ、スバル。僕は君とも、ユリウスとも友人だ。友人同士の行き違いを止められなかったのは、僕自身の不徳の為すところだ」
「…まぁ何はともあれわざわざ来てくれたのは嬉しいよ。お前の方だって、今は色々と忙しいはずだっただろ?」
「忙しさと友情を天秤にかけたくはないが、今夜を逃せば君たちと話す機会もしばらく取れそうになかったんだ」
「しばらく…ひょっとしてどっか行くのか?」
「王都を離れて、フェルト様を僕の実家へお連れする。フェルト様も新たな従者たちも学ぶべきことが多くてね」
少しの沈黙、そして剣聖が一歩踏み込もうとする。
「スバル、先日の…」
それをケイは遮った。
「失礼します。剣聖ラインハルト様。先に少しよろしいでしょうか?私の用が済めば大人しくしますので」
「ああ、すまない。呼び出しておいて声もかけずに。そうだな。まずはこちらの話を済ませるのが先決か。スバル、少し待ってもらっても?」
構わないとスバルは返し、剣聖との対面をケイに譲る。
場所を少し門の内側に移動して話し始める。
「先日は助けていただき本当にありがとうございました。ここに連れて来ていただいたことで本当に助かりました。お礼をさせていただきます」
深々と礼を行い、以前の感謝を伝える。はっきり言って本心だった。これで最初に近衛に身柄を抑えられていたらというのは考えたくもない。
「いや、あの時は僕も助けられた。あの事件の真相や犯人は未だ掴むことはできていないが調査は続いている。続報があれば知らせるよ。待っていてほしい」
自分が犯人のあの騒ぎに王国のリソースが割かれ続けているらしい。少し罪悪感を感じるが名乗り出るわけにはいかない。
「ありがとうございます。僕も無関係とは言えないですからね。ぜひ進展があればお聞かせください」
「ところで、カルステン家が白鯨討伐に動いていることはご存知でしょうか?」
これまで一切の揺れを見せなかった男が揺らぐ。本当に炎のような印象だと何にもならないことを考えつつ言葉を続けた。
「ああ、聞き及んでいるよ。それについては僕から謝罪すべきだった。アストレア家が支援を表明できないことを恥ずかしく思う。本当に申し訳ない」
謝罪などいらない。本当にいらない。必要なのは支援である。口だけなのか、本当に悪いと思っているのか聞いてみる。
「それでは白鯨出現の折には助力をお願いしても?これは個人的なお願いです」
驚愕に目が見開かれる。迷うがしかし、目を見据えて問いに返す。
「すまない。アストレア家からこの件について支援を求められることはあり得ないと聞いていたから少し驚いてしまった。僕がいる時にことが起これば、必ず助力すると約束しよう」
「ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。お二人の邪魔をしてしまいましたね」
二人に場を返して一歩下がる。
ラインハルトは、スバルに思い切って口を開いた。先ほどよりも迷いは見えない。
「後悔、しているのかい?」
唇を噛む姿を見ればわかるが、本人からの返答は咄嗟に出てこない。それほどの痛打である。
先ほど話を挟むタイミングは完璧だったと言っていい。この雰囲気の中では自分であっても協力要請など不可能だ。
「気持ちがわかる、なんて軽はずみなことは言わない。ただ、あの時のことで忸怩たる思いがあるのは僕も同じだ。初めに言ったけど、悔やんでいるよ」
まだ沈黙するスバル。
「あの日の決闘に…君とユリウスとの戦いには何の意味もなかった。それがわかっていて何もできなかったことで、君は不当に傷つくことになってしまった。むざむざ見過ごしてしまったことをずっと気に病んでいたんだ」
「ーーーー何の、意味もない?」
「ああ、そうだよ。あの場で君とユリウスがぶつかって何があった?君は傷つき、ユリウスも自身の経歴に泥を塗っただけだ。彼があの決闘の後で謹慎処分を受けたのは知っているかい?ユリウスも今頃、自分の行いを悔いているはずだよ」
ラインハルトは煽りに来たのだろうか?そんなつもりはないだろうが、的確に急所を抉っているようにしか見えない。
自分も人の心の機微には疎いと言われるが、気づかないわけではない。あえて配慮しないだけだと思っている。どっちが悪質かはわからないが、人を傷つけるのは無自覚の方であると今わかった。
さらに続く説得のようなもの。話し合えば分かり合える。お互いに良いところもある。そんな真摯な内容ではあるが、目を見て話しているのにスバルの表情を少しも見ていないのだろうか。
ラインハルトには
最強は、無敵ではないらしい。
「ラインハルト」
「お前の気持ちはわかったし、嬉しいよ。お前は本当にいいやつだ」
「それなら」
「でもその申し出は受けない。受けるわけにはいかない。…話は終わりだ」
「お前がいい奴で、悪意なく純粋に声をかけてくれてるのもわかってる。だけど、それだけはダメだ。あの決闘の意味を…お前には奪わせねぇ」
「だとしても…君はあの決闘で何を得た?失ったものばかりじゃないのか?エミリア様のことだって、君は」
「今日は帰れよ。ラインハルト。お前のご主人様が、寂しくて喚き出さないうちに」
スバルはそれきり背を向けて、屋敷に向かって歩き出した。決定的な別れの瞬間にラインハルトは立ちすくむだけである。
「…余計なお世話だってんだよ」
スバルの最後のつぶやきを、ケイは聞き取れていない。常人なら誰も聞けないこの一言は、常人ならざる剣聖の耳には届いていた。
ショックを受けて固まる姿はとても最強とは見えない。国から大量破壊兵器の如き扱いを受ける騎士も、やはり人間なのだろう。
「ラインハルト様。ご心痛お察しします」
「いや、傷ついたのはスバルの方だ。僕は本当に何もできないみたいだ。腕力だけあっても何も…」
ケイは考えた。
彼らの仲を取り持つことは難しくなかった。そもそもの原因である決闘について、その意味を二人とも理解できていなかったのが問題だろう。
あれは必要な決闘だった。スバル個人の事情は知らないが、あの公開処刑がなければ早晩スバルが襲われていただろう。それだけなら良いが、その主人であるエミリアに剣が向くことも十分にあり得る。蛮行には違いないが賢人会の一部も賛成するであろうし、民衆はハーフエルフの退場を願っている。その状況をエミリア排斥を願うものが利用して暗殺することだってあるかもしれない。
それらを伝えることで、すぐには難しくともスバルとユリウス。ラインハルトのわだかまりは解けていくだろう。それはエミリアとアナスタシアとフェルトの接近を意味する。
そんな利敵行為をするつもりは一切ない。そんなものはクルシュへの裏切りである。
しかし、一人残った剣聖についてはまだ選択肢がある。
彼の弱点は把握した。人心への無理解。共感できない英雄である。それをこのまま放置していつか利用する。これが良いだろう。フェルトと仲違いをさせ、王選から離脱させることすらできるかもしれない。
別の道もある。少しアドバイスをして信頼を得る。剣聖は弱点を克服するかもしれないが味方につけば心強い。そんなことをせずとも頼めば味方してくれそうだから、ほとんど得はないが。
この二つの選択肢をしっかり検討しようと思っていたが、聞こえてきた言葉に中断をすることになる。
「すまない。不愉快な思いをさせてしまっただろう。これも僕の不徳の為すところだ」
…正直、苛ついている。今ここで何か言ってやりたい気持ちが、先ほどの検討を優先順位など無視して上回る。まぁいいや。言ってしまおう。
「あの、最初に言っていただいた言葉尻を捉えるようで申し訳ないのですが、剣聖殿は僕を友人であると思っていただいていますか」
「ああ、関わりは薄いが、同じ王選候補者を支えるものであり互いに助けた経験もある。自分は友であると勝手ながらに思っているよ。ケイ。君からも友情を向けてくれれば嬉しいが、それは今の光景を見せた後に願うものじゃないだろうね」
「では友人として、一つ進言をしても?」
今日一番の驚き、そして喜びの表情で歓迎する。
「ああ、もちろんだ。なんでも言ってほしい。何があろうと友情や先ほどの約束にも違わないと誓おう」
「では失礼して。あなたは反省の仕方が下手すぎる」
「それは、一体どういう…」
「いくつか反省してましたが、では今改めて同じ場面に遭遇したらどうすれば良いのか答えることは?例えば決闘の瞬間に時間が戻ったとして、どんな行動を?」
ラインハルトは黙り込む。彼には答えがなかった。
「反省というものは、次回に活かすためにするんです。ただ自責の念を感じて背負って、謝罪をするだけでは無意味どころか相手の時間を奪うだけ。時間を大切にする人にとっては強盗ですよ」
まさかの強盗呼ばわりに言葉を失う。
「あなたを責めるだけでは自分も同じになってしまうので具体的に伝えますが、先ほどの決闘には意味がありました。それは彼とエミリア様の陣営を守るための意味が。もしかしたらスバルには考えがあったのかもしれない。それに気づかず、考慮せず、無意味と言い切ってしまうのは酷く独善的だ。あなたは自分が間違えたと言うことはあっても、自分が間違っているとは欠片も思っていない。今もだろ!?」
「あなたは、凡人の心がわからないようです。そして自分の考えに疑いがない。これらの欠点をこそ真に反省すべきでしょう」
呆然として口が閉じない姿を見ると、少し言い過ぎた感もある。あるが後悔はない。これまで誰も指摘をしなかったのならそいつらも悪い。
「すまない。あまりに自分になかった視点、意見で面食らってしまった。ここまで隙を晒したことは騎士になってから初めてかもしれない」
「けれど、ありがとう。僕はこういった対話が人とできていなかったようだ。今の言葉を金言として決して忘れず、立ち振る舞いを変えると誓おう」
勝手に終わったような顔しやがってふざけんなよ。
まだわかっていないようだ。本当に根深い。乗りかかった船だし最後まで殴り抜こう。
「では具体的に実行する対策を教えてください」
「ーーーそれは…」
「あなたは耳触りの良い言葉をすぐに出せますが、その中身がない。行動を起こせない反省など無意味だと理解してください」
剣聖は怒るでもなく、悲しむでもなくひたすらに何かを考えているようだった。しかし言葉が出てこない。
もういいや、サービスしてなんでも言おう。
「はぁ。では何も思いつかなかった時の対処方法を伝えますね」
まるで奥義を授けられるかのような顔で覚悟をしているラインハルトに告ぐ。
「人に聞きましょう」
「…え?」
「人に聞くんですよ。自分がわからないことや苦手なことは。さらに得意な人がいるなら自分の代わりにやってもらってもいい」
「あなたが自分だけで何かを片付けると、感謝されるのと同じように悪意を向けられたりしませんか?助けたのに非難されたことは?いいですか。人というものは正しく動けないものなんです。論理や道理をどうしても無視してしまう。人から与えられただけでは自分にとって大事なものでも蔑ろにする。大抵の人には実感や納得というものがいるんです。本当に心の底からくだらないし面倒だといつも思いますけどね!」
怒りを爆発させて、直後に鎮火する。
「でも仕方ない。人はそういうものだから。期待せずに自分を変化させて対応するしかない」
「もちろん。相手を傷つけるとか面倒を気にしないなら、無視しても構いません。僕はそうしていますよ」
ふーと。ため息をついて落ち着く。
「じゃあはい。実践してください」
早く聞けと、ケイは最初の態度が嘘のように手を差し伸べる。
「…どうすれば、いいだろうか」
「あなたの悪癖を理解する人に定期的に相談してください。自分の考えの偏りを人から教えてもらってください。それがあなたのすべき事です」
思うところがありそうだ。しばらく考え込んでいる。
ラインハルトは十分に悩みそして相談することにしたようだ。
「もしも、仮にその相談先の人物が、間違っていたり悪意を持っていたらどうするべきだろうか。誰に言われたとしても、物事は実行したものが責任を負うものだ。そんな時はどうすれば?」
「相談先を一つしか持たないとそうなる可能性はありますね。でもまともそうな人を複数人確保しておけば、十分に危険は除けると思いますよ」
「複数に、相談か。そうか。それは、もっともな意見だと思う」
こんな説教をして、バカみたいだ。剣聖の相談役になれればなんて思いつきは、後からの合理化に過ぎない。それくらいは自覚はある。
バカね。こんなことをして。メリットがあるの?それに人に偉そうにものを言える立場?
母さんの小言(脳内イメージ)が聞こえてくるようだ。自分の合理主義は母譲りだが、母さんには及ばない。非合理な行動をするときには決まってこんな小言が聞こえてくる気がする。
「偉そうな物言いになってしまいましたが、頼りにしています。今後もよろしくお願いしますね」
握手をして誤魔化す。ラインハルトは手を握り、深々と頭を下げた。
「ありがとう。本当に。僕は自分で思っていた以上に欠点があるらしい。でもそれと向き合いたいと、そう思うことができた。ケイ、君のおかげだ。僕も君を頼りにしても?」
「ええ、もちろん。お互い助け合った仲でしょう」
心からの感謝を。そうしきりに言いながら解散する。
永井圭はラインハルト・ヴァン・アストレアが苦手である。
しかし、彼と友人になることにした。
【永井圭の戦闘技能について】
数ヶ月前までは普通の高校生であり戦闘などしたことがなかった。短期間の戦闘訓練を経て銃の扱いはできるものの近接格闘やナイフなどを扱う技能はない。
精神性はどんな過酷な状況でも適応するほど強靭。IBMや不死を応用した機転は効くが、地力としての戦闘力は低い。