亜人:ゼロから始める異世界生活   作:ZAT23

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新章開幕記念だ。目を回すなよ。

本日は三話連続投稿です。
ここから30分おきに投稿されます。


ルグニカ王国内乱 前編
【FILE:114】デザイナー


 

水門都市の夜を進む。ちょうど剣聖と酒場で会う前にケイは考えた。

 

この都市で見たことは一体何か。

 

魔女教は図ったように集まり、結果的には無様に負けた。

ラインハルトは自由ではない。

魔女が死人を利用して何かしている。

エキドナに作られその名を自称する人工精霊が『賢者』までの案内ができるという。

スバルはそれしかないと賢者を目指しアウグリア砂丘の踏破を決意した。

 

 

これらの要素を追加して、これまでの観察と材料を合わせて結論を出した。

 

『この世界には目的が存在している』

 

なぜならこの世界には『何か』の作為が多過ぎる。

 

重要なキーワードは以下のもの。

 

魔女 大罪司教

叡智の書、福音書

権能 龍

 

全部関わりたくない。それらを繋ぐのは異世界の星の名前。

全てに関連して、自身もその要素を満たすのはやはりナツキ・スバルだろう。

 

ここに来て、図ったようにエキドナが作った人工精霊が道を指し示す?

これが偶然であるなんて思う方がどうかしている。

 

これも福音書に従った魔女教の影響だ。『何か』の意図は明白である。

 

何かはナツキスバルを監視塔に誘導している。

 

その何かは水門都市でスバルが魔女教を打倒することも織り込み済みなのだろう。

そもそも魔女教の要求である『魔女の遺骨』にしろ何にしろ王選候補者が不在の中で襲う方が良いに決まっている。

 

福音書が未来を記述するならば、必勝の状態で当てることもできるはずだ。歴史的にはこれまで多くがそうだった。それをしないというなら、しない理由があるのだろう

 

大罪司教たちはスバルの陣営が王選を勝ち抜くために用意された『経験値』や『トロフィー』のようなものなのかもしれない。

 

彼は大罪司教を殺しながら福音書に導かれているようにしか思えない。

福音書は恐らく、大罪司教の味方ではない。

 

 

 

ここにきて、やはり新たな存在を確信する。

『何か』というほどもはや曖昧な存在ではない。

 

観覧者。神々。支配者。呼び方は何でもいいがそれは人だ。全知全能の上位者などでは決してない。

大仰な呼び方は必要ない。

 

仮に、『デザイナー』とでも呼ぼうか。

 

それが一体何をしたいのか。スバルをどうしたいのか。筋書きから逸れればどうなるのか。その邪魔をすると何をされるのか。

 

それこそがこの世界の異物であるケイにとっての最大の懸念である。

 

全てではないが大枠の話を、クルシュとプリシラには話しておいた。

 

この二人にとって重要なのはこの部分だ。

 

「王になるということを絶対の最終目的にするのはやめた方がいい。そこを柔軟にしておかないと何が起こるかわからない」

 

プリシラは否定せず帝国にいる『星詠み』という存在について語った。物事を予言し、何かに導かれるように人がかわる人たちがいる。ケイは考える。それはまるで、福音書を受け取った魔女教徒と同じではないかと。

 

クルシュは驚き受け入れたが、考え込んでいる。

 

今はこれで十分だ。

 

 

 

そして、一人になってから最後にすべきことをする。

 

いよいよ頭がおかしくなっているのかもしれない。これは精神障害の典型的な症状でもある。

 

でもやっておくべきだろう。『デザイナー』への連絡をしてみようと試みる。

 

 

誰にも見られないはずの文章を書いた。それは宣誓であり、ある意味では宣戦布告でもあった。

 

宛先も、書き主も未記入の怪文書。

酒場に向かう途中にどこかの壁に貼っただけ。通行人は誰もまともに見ることなどない。落書きの類い。

ケイはこう書いて適当に貼り付けただけだ。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

僕はお前の邪魔をするつもりはない。

企みに触れない範囲で活動して、いち早く目的を達成して元の世界に戻るために最善を尽くす。

むしろ手伝ってくれれば、早く戻ることもできるかもしれない。

 

そちらの筋書きを乱さぬためにも努力はしよう。王の地位も譲っていい。

僕とその大切なものに致命的な被害が及ばない限りは、敵対せずに協力できるはずだ。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

もし被害を及ぼしてくるなら、全力で台無しにしてやる。これは書かずに心に留めた。

 

ケイは人が真剣にしていることを台無しにするという行為を心から嫌悪している。

けれど、別に苦手ではない。できないとも思えない。むしろ過去の僕と佐藤の両方の発想を使える今は強化…いや悪化しているだろう。

 

そちらの方向に思考を伸ばすと取り返しがつかない気がして、気は進まない。が、いざとなればなんだってしてやる。

 

 

 

 

さぁ。次の記述は、筋書きはなんだろうか。

明確である。スバルが賢者に会いにいくことだ。

 

そして現在魔獣がひしめく砂丘を越えられるかどうかは、はっきり言ってメィリィを動かせるケイの一存に委ねられている。

メィリィによる魔獣の誘導か、剣聖による突破が案としてはある。

 

しかし現在の王国は魔獣を無駄に殺すことは避ける方針だ。

ラインハルトはこの件に関わることを正式に王国から禁止されたようだった。

 

結局メィリィが協力しないなら、この計画は破綻する。常識的に子供の身を案じるだけで破綻するのだ。

 

 

この異様なまでに不自然な流れに乗るか逆らうか。それを選ばなくてはいけない。

 

乗るのならどこに辿りつくのだろうか。誰一人として消費なんてさせるものか。端役の人間などいない。

 

それとも逆らうか。

 

あるべき世界からの逸脱を、予言からの離脱を。記述への裏切りを。

 

何をどれだけ許されるのかわからぬまま、暗中模索をしなくては。

 

 

 

 

 

水門都市はひどく荒れたが、それでも水面の美しさは変わらない。

乱反射した太陽光が、張り出された紙を時に光らせる。

 

文字も読めないのに、その紙切れをぼうっと眺めている浮浪者がいる。遊んだ時にチラリと目をやった子供たちがいる。それを剥がしてゴミ箱に捨てた建物の主人がいる。

 

 

三者三様。皆その手紙をまともに読んではいない。彼らは清廉潔白、全く裏表のない一般市民だ。

 

だけどその目には、ケイからの手紙が映っているのだった。

 

 

 

 

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