亜人:ゼロから始める異世界生活   作:ZAT23

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ハッピーハロウィンということで本日は2話投稿です。
次は20時に投稿します。

本日1話目だ。諸君、派手に行こう。



【FILE:32】電話

 

まず到着したのはアーラム村。

 

しかしここに人は一人もいなかった。近場に避難したはずのラムが戻っていないのはおかしいということで、急ぎ屋敷へ向かうこととなる。

 

到着したメイザース邸は以前来た時と変わらない様相だった。

 

しかし出迎えるものは変わっている。

 

「お初にお目にかかりますわ。わたくし、ロズワール・L・メイザース辺境伯の屋敷にて使用人を務めさせていただいております、フレデリカ・バウマンと……」

 

「牙、こわッ――!?」

 

丁寧な口調で自己紹介をするのを遮りつつ、スバルの口が率直過ぎる感想を漏らす。と、目の前でそれを聞いた当事者である女性の表情がかすかに固まり、その凶悪な瞳が何度かの瞬きのあと――ジワリと、涙が浮かんだ。

 

()()にアドバイスを求めた結果があの失敗ならば納得だ。

 

スバルたちは内輪の話し合いへ。

 

その間調査隊の面々は振る舞われた茶と菓子で時間を過ごしていた。

 

当然IBMを同行させるが、本題まで割と早めに辿り着いてくれた。

内容をまとめる。

 

・ロズワールやラムが『聖域』から戻っていない。

・なのでエミリアたちは『聖域』へ向かう。

・『聖域』には部外者は入れないが、特例としてスバルとオットーだけは認める。

・場所は二人にすら秘密であり地竜に教え込むとのこと。出発は2日後らしい。

 

その後のやりとりは意識から割愛しつつ、重要な話だけを脳が拾った結果がこうだ。

 

スバルはちょっと怪しいくらいに抵抗はしていた。そこまで強硬に主張されると自分にもあらぬ疑いがかかりそうで困る。

やはりメイドはこちらを警戒したようで提案はにべもなく拒否されていた。

 

ケイが何もしないうちにスバルの働きによって、聖域への出禁を言い渡されたのだった。

 

調査隊に向けられたメイドの説明は同じ内容であった。

その上で求められたのは非常識な約束であった。

 

「皆様には感謝しておりますわ。ただ、『聖域』については我々の秘中の秘でございます。以降の調査においては一切の干渉や情報収集をしないとお約束いただけますでしょうか?」

 

ローズはその内容に冷静に反応した。

 

「失礼致しますが、こちらはこの領内の安全確保及び調査。さらにいえば死体の処理に善意から赴いたのです。エミリア様への謝罪は道中の護衛にて済ませております。領主としての責任を果たさず、同盟たるケイ様に厄介事を任せている状況。その上で探るな関わるなとはいささか無礼ではありませんこと?」

 

その反応は怒りというよりは貴族としてのしなくてはいけない反応のようだった。こちらに判断を委ねるように目を向けている。

 

それに応えて、ローズを抑える。

 

「いえ、ここはこちらが飲み込みましょう。次に辺境伯に会った時に然るべき要求はさせていただきます。しかし今はカルステン公爵の調査隊は、そちらの要求を全て受け入れます、周辺の調査のみに専念しそちらの内情に一切関わらないと誓います。たとえ支援という名目であっても関わってはいけない。そう受け取りましたが間違いありませんか?」

 

無理を言っている自覚はあったのだろう。スバルよりも、目下であろうローズよりもトップのケイがすんなり受け入れたことに驚いている。

 

「え、ええ。そうですわ。非常識なことは承知の上ですが、これは主人からの厳命ですので動かすことができません。この度のご対応に感謝いたしますわ」

 

「だそうだ。スバル。問題ないな?」

 

問われたスバルは、不本意そうな顔を隠してすらいない。

 

「よくねぇよ。せっかく来てくれた同盟の人たちをこんな風に遠ざけるなんて許せねぇ。でもこれはフレデリカの独断なんかじゃない。ロズワールの野郎に撤回させなきゃいけないらしい」

 

近づいて囁くように最後の確認を行う。

 

「その意味もわかってるな?本当に手伝わないぞ?」

 

「ああ、正直めちゃくちゃ心細いけど撤回させるまではどうにもならねえみたいだ。そういう約束をしているらしい。ほんとの本当に嫌だけどな!それにまだ敵対してるって決まったわけじゃない。まずは話してみるさ」

 

 

「わかった。…じゃあ頑張れ」

 

普段なら付け加えない激励を足しておく。

そう言って、ケイとスバルは別々に行動することに決まった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

まぁ想定内ではあった。

あまりにも展開が早かったが。

 

アーラム村に調査隊と戻り、隊長の二人を呼び出す。

しっかりと説明しないといけない事がある。

 

 

「僕は死んでも復活します。それはご存じですね?」

 

「ええ。あの爆発の最中生きて戻られたのは驚きでしたわ」

 

「怠惰との戦いでも大活躍であったとスバル殿が言っておりましたなぁ!」

 

「二人には指示通りに協力してもらいます。すでにローズさんには協力いただきましたが、全て他言は厳禁です。また『暴食』を警戒して全ての情報は開示しません」

 

撤退戦の痕跡から、暴食が騎士たちの装備を使用していたことがわかっている。とある弓は希少な部族の一点ものであり、それは他人がすぐには扱えないものだったらしい。

奪った得物を本人と同じように扱う技量。それは記憶を奪っていたのではないだろうか。

他にもヒントはあった。あの『強欲』はクルシュを見失い適当に竜車を襲っていたが、暴食は騎士を襲いながら最短でクルシュへ到達した。

奪った記憶を参照できるなら容易だろう。

 

味方にどんな情報を伝えるかも考え抜かなくてはいけない。

 

しかし縛りすぎてもそれはそれで敵の思う壺だ。やれることはやらねばならない。

 

 

「原理は説明できませんが、まずローズさんに全身凍らせてもらいます。そしてゴドフリーさんは僕の全身を細かく砕いてください。目安を置いておきますので、それ以上に大きい破片がないようにお願いします」

 

「そうすると復活しなくなりますので、その死体は燃やしておいてください。そのうち帰ってくるのでご心配なく」

 

 

「「………」」

 

 

反応がない。少し説明を省きすぎたか。

 

「いやはや!言葉を失うなど久々でしたわ!さすがケイ殿はあまりにも常識とは異なることを言いなさる!」

 

「わたくしとしたことが失礼致しました。驚きのあまりお答えできず…お恥ずかしい限りですわ」

 

二人は揃って跪き、声をも揃える。

ここまで来て今更、何も疑うことも異議を唱えるはずもない。

 

「「承知いたしました」」

 

「いや、そういうのはいいですから。やってくれれば十分です。実行はスバルたちが発った後の10時間後。それまでは周辺の調査と処理をよろしくお願いします」

 

 

2日後の夜。

 

その時がやってきた。

 

 

 

 

 

「ウル・ヒューマ」

 

ローズが触れた箇所から体が凍って感覚がなくなっていく。これは死に方の中でも相当楽な部類だな。

 

全身が凍りつき、ケイは意識を失った。

 

 

そして戦士がそれを砕く。

 

 

人であった氷像はバラバラになり復活することはない。

飛び散った白い欠片が溶け始め、赤が白を彩り始めた。

 

 

事前に言われて覚悟をしていたが、気分が悪い。

尊敬する恩人であり、可愛げのある若者。

 

それをこの手で砕くなど。

ローズはこのところの死体処理に慣れてなければ、吐くところだった。

 

「上手く割れましたな!ガハハ!!」

 

「はぁ。まるでわたくしの方がおかしいみたいですわ」

 

復活しないところを見るに成功したのだろう。

なぜとも問わず、ただ命令を実行する。

 

吐き気を抑えつつ、ケイの破片を燃やし尽くして処理を済ませた。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

ケイは意識を取り戻す。

 

服は一切着ていない状態で、竜車の床下に作られた空間で目を覚ます。

内側からしか開かない。特殊な作りにしてもらった竜車。

 

振動はないため、停車している。無事『聖域』に到着しているようだ。

 

 

この移動方法はかつて亜人の能力を佐藤が工夫して使ったもの。

体の一部を切り離し、それよりも本体を小さく分けて復活する。

 

そうすると最大の肉片を核に亜人は復活を始める。

 

つまり今は、スバルとエミリアに無償で渡した竜車の床下に仕込んだケイの足からケイは復活したのだった。

 

この移動方法は元の本体の死を意味すると今でも思う。

 

けれど、暴食に記憶を奪われるよりはマシだ。

暴食に追い詰められた時、準備をしていませんでした。練習は一度もしていませんでしたではお話にならない。

 

気軽に使いたくもないが、この手段をもはや僕は無視できない。

 

すでに起きたことを気に病んでも仕方ない。

 

じゃあ始めるか。

 

この行動はフレデリカとの約束を破ったことにはならない。

 

フレデリカとケイの約束には穴がある。

調査隊は小隊二つ。ゴドフリーとローズが隊長として組織している。

 

()()調()()()()()()()

 

ただ同行しているだけの全権代理だ。

 

隊長たちが僕を最も位の高いものとして扱い、スバルがダメ押ししてくれたからフレデリカもしっかりと勘違いしてくれた。

 

とはいえ、スバルの方から要請がなければ本当に観察に徹するつもりである。

何かが起これば彼はきっと力を使って切り抜ける。

 

もし誰かをまた取りこぼしたとしても、今回はこちらの陣営の中枢ではない。

結果によってはセーブとロードの法則もわかるかもしれない。

 

 

 

 

通風口からIBMを竜車の外に構成する。よし。これで周囲を自由に動ける目を手に入れた。

 

現在地はどこかの寂れた集落。その外れに位置しているらしい。

 

しかし、廃村一歩手前といった様相である。

 

これが『聖域』?

 

まるで文明を拒否したカルト宗教の村のようだ。

 

 

しばらく探索していると、村の中心の建物で目当ての人物を見つけた。

 

ちょうど建物を出てきたスバルは、隣に知らぬ少年がいる。

フレデリカと似ている印象を持つ少年は、先日盗聴した際に聞いていたガーフィールという人物だろうか。

 

どうやら兄弟らしい。

 

 

虎のような印象の少年は、こちらのあたりを訝しんで探っているが見えてはないようだ。

目を閉じて鼻で探っている。嗅覚なら助かる。IBMに匂いはないから問題ない。

 

 

スバルたちは少し歩いた先にある遺跡に入るらしい。

 

彼らが近づけば燐光を放つその遺跡は、何かの施設のようだ。

まずエミリアが入る。少しすると光が消えた。

 

そしてスバルが続く。

 

その行動に周囲の者たちが動揺しているようだった。

 

よし。今行こう。

 

IBMが駆ける。その足音に少年は警戒して振り返るも、すでに跳躍した後だった。

 

少年は見えない何かにも即座に対応し、その着地点まで肉薄する。

しかしIBMの足は早い。遺跡に入ると、躊躇うように制動をかけてそれ以上は追ってこなかった。

 

奥にエミリアとスバルが倒れている。

 

何があった?

 

そう思っていると、何か落下するような感覚に襲われる。

どこかに落ちていく。ここではないどこかに。

 

 

 

『まずは己の過去と向き合え』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイは手に持った電話を見る。

振動と音で着信を知らせるそれから目が離せない。

 

 

 

電話が鳴っている。

携帯を開けばカイからの着信。その表示を見てから、繋げずに切る。あいつとはもう付き合わない。そうだ。切って正解だった。これ以上仲良くしてたらあいつは何をするかわからないから。

 

 

電話から声が聞こえる。

父の声はきっとこれ以降は聞くことはないのだろうなと思った。犯罪者になってしまったなら仕方ない。慧理子は心配だから僕がなんとかしないと。治癒魔法さえ持ち帰ればどうにでもなる。

 

 

電話を渡される。

山中のおばあちゃん。怪我はしなかっただろうか。畑仕事は大変だったけど、おでんは美味しかった。全部終わったらあんな暮らしをしたい。

 

 

 

電話を鳴らしている。

 

寂れた公園に一角にある公衆電話から僕が電話をかける。

10円玉を並べて、覚えている番号に迷わず押した。

 

 

「この時間は、あそこにいるな」

 

 

 

「はい」

 

「あ、母さん?圭だけど、久しぶ「何?電話してる余裕なんてあるの?」

 

「いやまぁ「だいいち、なんでいきなり白鯨なんかと戦ってるのよ。立案だけして後方にいるという選択肢は?」

 

「バカなことしたと思ってるよ」

 

「ええそうね」

 

「魔女教ですって?あんなのと進んで敵対しようとするなんてやめなさい!そんな非生産的なこと!」

 

「しようとなんてしてないよ…」

 

「じゃあなんでこんなところまで来てるのよ。ナツキ君は重要だけどここまで親身に近づく必要なんてないはず。それにどこか一つに肩入れなんてせず、全ての陣営と広く友好関係を結ぶことだってできたでしょう?落ち目の陣営だからこそ、義理で見捨てられなくなってる。契約も目的も後からの合理化。そうでしょ!?」

 

「…………そんなトコだよ…」

 

「本当にあなたは頭がいいのに、バカ。 あなたに何ができるのよ」

 

「わかってるよ。やれるだけをやろうと「限界を認識するのは正しいわね。でも、私と今こうやって話し続ける必要性はどこにあるの?」

 

「これは明らかに現実じゃない。何かしらの幻覚。なぜなら私が知ってるはずであなたが知らないことを、私は一つも言えない。あなたの脳内から情報を抜き出そうとしている敵の罠なんじゃないの?それならすぐに切るべきよ」

 

「わかってるよ」

 

「だったら親の記憶なんかに浸ってないで、すべきことをしなさい!」

 

「ハイハイ」

 

「この状態で何かが接触してくるなら複数の言語で思考しなさい。日本語を避ければ…」

 

ガチャ

 

受話器をおくと、そこは公園ではなくなっていた。

青空と平原。その丘にはテーブルと椅子がワンセット。

 

「千客万来。長く過ごせばこんな日もあるようだ。本当に喜ばしいよ」

 

パラソルの元にいる美しい女性を見たケイは、盛大に吐いた。

 




【復活時の移動について】

亜人が復活する際は最も大きな肉体を基準に復活が始まる。
一定範囲内に別の肉片や血があれば、体に引き寄せて復活する。

範囲外にある場合は、引き寄せは起こらずIBM粒子が肉体になっていく。
もしも腕だけを残して他の体が全て燃えたり消えたりした場合、その腕がどこにあろうとも腕から再生が始まる。

事前に腕を切っておきそれを移動させ。本体の肉体を細かく砕くここが可能であれば、移動させた腕の場所に全身で復活することができる。

頭部を範囲外に出して再構成することは死であるという認識からも、この方法を使う亜人は確認される限り佐藤のみであったが、この度ケイも利用した。
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