TS転生者達によるエアプAC6 inキヴォトス   作:るびこにあん

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以前投稿していたものをブラッシュアップしました。

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Mission1 先生救出(V)

 その生徒と出会ったのは、私がアビドスに向かっている時だった。茹だるような暑さと絶え間ない喉の乾きに、持参した水はあっという間に無くなってしまってね。じりじりと太陽に照らされる、という事がどれほど苦痛で危険なのか、身をもって味わっていたんだ。

 

”し、死ぬ……光に殺される……これが吸血鬼の気持ち……”

「──大丈夫?」

 

 このまま脱水症状になって、ひと月ぐらい見つけてもらえないまま死んでしまうのではないか──もしくはカリッとこんがり肉にでも……そんな最悪の想定をしていた時。見上げると自転車に跨った一人の生徒がこちらを見下ろしていた。狼のような耳をぴこぴこと揺らしながら、彼女が差し出した水は紛れもなく救いの手そのもの。

 礼もそぞろに、ペットボトルを開けて水を流し込む。干からびそうな身体が元気を取り戻していくのを感じる!やはり水とは素晴らしいものだ。あまりの嬉しさに口の端から水を零してしまうけれど、それだけ喉が渇いていたのだから許して欲しい。

 

「随分喉が渇いていたんだね」

”うん!危うくミイラになるところだったよ!助かった、ありがとう!このご恩は決して忘れませぬ……”

「ぷっ、その口ぶり。知り合いにそっくりだ」

”一宿一飯の恩義!”

「ははは!そうそう、そんな感じだ」

 

 呵々大笑、とまではいかないけれど。眼前の少女は楽しそうに声を上げて笑っていた。差し出された手を握って立ち上がる。随分と細いフレームの自転車だ。短く整えられた髪と揃えているのか、紺色に輝いていた。

 立ち上がってみると、彼女は案外小柄だったと知る。フレームと同じ色の瞳は瞬きに合わせて視線を迷わせ、私の姿を上から下まで確認しているらしい。怪しい部分はないと思うけれど。砂を払う私の行動を暫く眺めて、彼女は腕を組んだ。

 

「で、君はどうしてここに?生徒ではないようだが、お世辞にもここは安全とは言えない。早く退避した方が良い。それとも、このアビドス自治区に用事でもあるのかな。この荒廃し、枯れた土地に」

”えっと、その……”

「物見遊山ではないようだ。……ふむ、この先で小競り合いが起きているらしい。君さえ良ければ、目的地までエスコートしても構わない。どうせ時間だけはたっぷりあるからね」

”本当?じゃあアビドス高等学校まで道案内をお願いしてもいいかな?連絡を受けて来たんだけど、うっかり道に迷ってしまって”

「アビドスに?」

 

 携帯を取り出し、モモトークを開いた彼女。誰かからの連絡で指し示された先では、微かに空気の揺れる音。確かに銃撃戦が起こっているようだ、砂が巻き上がっている。このまま一人で進んでも同じように遭難しかねない。渡りに船、とはこのことだろうか。私にとっては紛れもない救世主に感じられたのだが、向こうはそうでもないらしい。

 

「念の為、君の名前を聞いてもいいかな。ほら、最近物騒だろう?助けた相手が七囚人でした、なんてオチにはしたくない」

”先生だよ。連邦生徒会のシャーレ、その先生だ。どうしてもと言うなら名札も名刺もあるけれど、見る?”

「──なるほど、君が先生か。あの連邦生徒会の子飼いとも聞いているが……これも巡り合わせか」

 

 剣呑な雰囲気に変わった彼女に、首から下げていた名札を見せる。白と水色で彩られたそれは、このキヴォトスにおける私の身分。生徒を助け、導き、手を引くもの。それが私、先生の役目なのだ。チンピラでも不良生徒でもないので安心してほしい。

 そんな願いが通じたのか、彼女は腰から手を離して目を細めた。吊るされているのは珍しい形のハンドガンだ。グリップから伸びるハンドガードがバレルまで。特注品なのかもしれない。コミュニケーションを間違えていれば、自分にアレが向けられていたのだろうか。

 

「なら、案内しよう。私が背負った方が早そうだ。私の愛車、そのスピードは折り紙付き──サイクリングには自信がある」

 

 銃で撃たれるのは嫌いだ。誰だってそうだろう。撃つのも、撃たれるのも。大切な人を喪うなら尚更に。結果的に私はそうでなかっただけ。ラッキーだったとも言える。楽観的になってはいけない。不測の事態を予測してこその先生なのだから。

 考えていると、身体が浮いた。いや、背負われている。考え込んでいたからあまり聞こえなかったけれど、道案内はしてくれるらしい。有難いことだ。細く見えた彼女の背中に身体を押し付けるような形になるけど、これはセクハラじゃない。断じて違う。

 でもこうされている、ということは警戒心も解けたということになる。初対面で銃を向けられるのは初めてじゃないけど、それにしたってあまりにもな殺気を放っていた。少し身体が震えているけれど、上手く隠せているだろうか。

 

”ところで、名前を聞いてないんだけど……”

「私か?私は……灰原イズ。イズ、と。今のところはそう呼んでくれると有難いかな、シャーレの先生?」

”うぐ、私の名前も聞かれてる、これ?”

「ははは、まさか。先生は先生、それでいいじゃないか。では、行くとしよう。吹き飛ばされないように、しっかり掴まっていてくれ。舌を噛むから、喋らないようにも気を回してね?」

 

 ぐん、と身体が置いていかれるような感覚が最初に襲ってきた。あっという間にトップスピード、少女──イズの踏み込みの力強さに驚いた。それと、そのパワーに耐える自転車にも。乱れる髪の向こう側、イズの顔は笑っている。サイクリングが趣味だと言うのなら、私を背負うという行為もある種のスパイスなのだろう。

 

「うん、良いなこれは。なかなか無い経験だ。誰かを背負って走る、というのも悪くない。問題は君がヘイローを持っていないことかな!運転中に会話できる相手が背中に居るというのに、少し寂しくなってしまうよ!」

”ま、まぁ……話そうと思えば……話せるけどっ、ねぇ!?ちょっ、あれ何!?なんか白い……”

「アレは……またおいおい話すとしよう。それより……もうすぐだ、先生。目的地まで数分といったところだよ」

『く、車並のスピードです!先生、飛ばされないように気をつけてください!落ちたら潰れたお饅頭みたいになりますよ!』

”そういうことは言わなくていいの──!”

 

 イズは、楽しそうだ。出会った時のクールで、余裕ありげな笑みとは違う。純粋に心の底から楽しいと思えている笑い方だ、これは。細く軽いフレームは、どこかに掠るだけでも大惨事になりかねないのに。その上で凄まじいスピードを出して、飛ぶように街を駆け抜けている。

 自由だ、と。そう思う。生徒として、一人の人間として、彼女はある種の到達点に達しているような──そんな気配だ。吹っ切れている、と言ってもいい。目の前の事象を心の底から楽しむ事が出来る、そんな人間などそうそう居ないのだから。

 

「そういえば、さっきは済まなかった。先生に対してあんな態度を取ってしまって、あまりに失礼だな。今度、何か奢るよ。これでもある程度の収入は確保出来ている。ランチでもディナーでも、何かあれば言ってくれ」

”え!?ホントに!?最近使いすぎでピンチだったから助かるよ!ユウカに怒られちゃってさぁ……”

「……私が言うのもなんだが、その。使いすぎというのは、大人としてどうなんだ?給料、しっかり貰っているはずだが」

”ほむ、それは難しい質問ですね”

「なにも聞いていないよ?」

 

 風に乗って漂うのは、砂粒と乾いた空気。そして目の前ではためく髪と彼女の香り。私を乗せているからか、首筋に滲んだ僅かな汗。蒸発して香るそれは、少女らしい甘酸っぱいものだった。深呼吸に気づいたか、彼女は顔を僅かに赤らめていた。

 気を紛らわせるように、私はイズの視線を追う。どうやらあちらに目的地があるようだ。信号待ちに示された、やや大きめの建物。行き交う人々が怪訝な顔を向けてくるけれど、私を背負うイズを見て納得したような顔をする。随分と信頼されている。そう聞くと彼女は笑った。

 

「有難い話だよ、まったく。……さて、着いたぞ先生。ここがアビドス高等学校だ。君が目指していた場所であっているかな?連絡は入れておいたし迎えが来るとは思うのだが」

”うん、ありがとうイズ”

「大したことじゃない。私もここに寄る用事があっただけさ。悪いが、この後も予定があってね。また機会があれば、共に──」

「イズ、その人が先生?」

「そうだ。丁重にもてなしてあげてくれよ、シロコ。間違っても銀行強盗に付き添わせてはいけないぞ」

「う、分かってる」

 

 校庭の向こう側から歩いてくる生徒にも、耳があった。イズとは色味が違うけれど、しっかりとピコピコ動いていた。素晴らしい。また触らせてもらおう、と決意を固めて一歩を踏み出す。これが私の──先生の仕事なんだ。

 

「初めまして、先生。自己紹介は後でやるから、とりあえず私に着いてきて。みんなが待ってるから、案内する」

”わかった。よろしくね。みんなの顔、楽しみだなぁ……ってあれ、イズは?一緒じゃなくていいの?”

「武器を取りに来たんだって。今から用事みたい。あとイズはアビドス所属じゃない。だから行こう先生。終わったら私ともサイクリングすべき。イズだけズルい」

”それが本音だよね!?”

 

 ふんす、と鼻息荒く目を輝かせ、シロコは私の手を引く。駆け足気味な彼女に続いて校舎に入る直前。振り向くと、大きなカバンとアサルトライフルを背負ったイズが自転車に跨るところだった。よく見ると、制服が違う。シロコの着ているものとはまた別のデザインだ。

 アビドスの生徒でないのなら、今を逃せば次に会えるのはいつになることやら。連絡先の交換をしておくべきだった、と後悔しながらも私は手を振ることにした。挨拶は大事。いつの時代も、どこにいても、それは変わらない。さようなら、では味気ない。だからこそ──

 

”またね!”

「──ああ、また」

 

 今度の微笑みは、最初と同じだった。

 

 

 

 

 

 

「悪い、遅れた」

「遅いぞ!何をやっていた!」

「迷子を送り届けてたのさ。可愛いお姫様をね」

「ケ、偉そうに。ただの遅刻だろうが」

「そうとも言うかな」

「そこ!無駄口を叩かない!」

「ともあれ、これで形勢はこちらに有利になる」

「分かってはいる。が、やはり骨が折れるな……!」

「隙を見せたぞ!総員構えろ!」

「「「「了解」」」」

 

 砂漠での、攻防戦。

 その一幕であった。

 

 

 




灰原 イズ

所属:ミレニアムサイエンススクール
使用武器:HG
紺色の髪と瞳に、ケモミミ。
アビドスのものによく似た制服を着用している。
生徒としては平均的なスタイルと言える。

ミレニアムサイエンススクール所属だが、現在は休学中。
ある目的のためにアビドス自治区へと出入りしているようだが、その目的とは一体何なのか。先生に明かされる日は来るのだろうか。

今後の展開について。

  • 各キャラ毎のオムニバス
  • 掲示板
  • 主にストーリー進行
  • 全部載せでやるメリ
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