俺はダンジョンでレベルを上げたいだけなんだよ!   作:ハックション

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2 初期スキルはちょっと厄い

 『迷い路の深層』はキャラクリ要素が非常に豊富なハクスラダンジョンRPGだ。

 ゲーム開始時に種族、性別、容姿、ステータス割り振り、そして初期スキルを決める。

 このとき、特に奥深いのが種族と初期スキルだ。

 性別と容姿は、まぁあくまでフレーバー程度のもの。

 キャラ性能には影響しない。

 例外はあるけどな。

 

 対して種族は、それはもう色々と存在する。

 普通の人間やエルフ、ドワーフ。

 中には天使や悪魔なんてのもいるな。

 まぁ、天使とか悪魔とかはこの世界に転生してから見たことないけど。

 連中、なんならダークエルフ以上に希少な種族だし。

 

 その中でダークエルフは、まぁ天使や悪魔ほど希少ではないけれど。

 人里で見かけることはほとんどないという塩梅の種族だ。

 少なくとも俺は、同族を見たことがない。

 いや数日で同族と出会えたらその方がなんかありそうで嫌なんだけど。

 

 んで、この種族には種族ごとの特性が存在する。

 人間が一番癖がなくて、魔術的性の高いエルフとか、武器にその場で鍛冶スキルによるエンチャントができるドワーフとか。

 ダークエルフは一言でいうと、魔術適性が低い。

 エルフであるにも関わらず、というか、ダークって付いてるからというか。

 ただ、エルフの特徴である魔力を多く有する部分はそのままだ。

 加えて身体能力はエルフと比べて高い。

 つまり、魔力を使った前衛適正の高い種族ってことだな。

 魔力を何に使うのかは、一旦置いておこう。

 話が長くなるから。

 

 そして初期スキル。

 スキルにはスキルツリーを開放することで取得する通常のスキルと、特殊な方法で取得する固有スキルが存在する。

 初期スキルは後者だ。

 そしてこの初期スキルこそが、このゲームにおける肝と言ってもいい部分である。

 

 もっと言えば、ゲームを進めていく上でのビルドの指針となるのがこの初期スキル。

 例えば『火属性魔法適正』という初期スキルを取得すれば、火属性魔法を中心にビルドを組み立てていくことになる。

 

 特徴的なのはこの初期スキル、ゲームを周回するごとに取れるものはが増えていくという店。

 最初のウチは、普通の初期スキルしかなかったけれど。

 進めれば進めるだけ、特殊なスキルも増えてくるわけだ。

 

 そして俺が取得した初期スキルは、そんな初期スキルの中でも最後の方に解禁されるスキルだった。

 こういうスキルは特殊なスキルだが、だからこそ強力でより強いビルドを作れるようになるスキルだ。

 なので、ゲーム時代は最強ビルドを作るなら特殊スキル一択だったのだが。

 

 そんな世界が現実になるとしっていたら、もう少し手堅いビルドを選んでいたと思う。

 だって、その、アレだから。

 

 ……フレーバーが、ネ。

 

 

 +

 

 

 その日も、俺はレベリングに勤しんでいた。

 現在の俺のレベルは5、この世界にやってきてそこまで時間は立っていない今、これはかなり早いペースである。

 というか、この世界基準だと異様なペースっぽい。

 本来なら、下手したら数ヶ月はかかるペースなんじゃないだろうか。

 モンスター倒すのが楽しすぎて、まったく気にもとめていなかったけれど。

 

「よし、今日はコボルト狩るか」

 

 さて、そんな俺だが、決して毎日狂ったようにダンジョンを飛び回っているわけではない。

 俺がダンジョンに潜った時、やることは二つ。

 ダンジョンを飛び回ってのレベル上げか、検証だ。

 どちらも言うまでもないだろう、特に後者はかなり大事だ。

 前世の頃は、この世界はあくまでRPGだった。

 モンスターの攻撃は”受ける”ものだったし。

 HPを減らして、”耐える”ものだった。

 しかしリアルになった以上、攻撃は”避ける”のが普通だ。

 そういった、仕様の違いを検証しつつ。

 ゲーム時代の仕様がどうなっているかを確かめるのが大事なのは、言うまでもない。

 

 というわけで、俺はレベリングに並行して仕様の検証も合わせて行ってる。

 本当ならじっくり検証をしてからレベリングするべきだったんだろうけど。

 最初にやった「この世界での体の動かし方」の検証が楽しすぎてね。

 レベリングを並行することにしたわけですよ。

 検証も大事だけど、モチベも大事だからね。

 いやっほうモンスター斬り殺すのたのしいいいいいい!

 

 んで、二番目にやったのがゲームでの序盤の狩り、「コボルト狩り」は現実でも有効かどうか。

 これができるとできないとじゃ、狩りの効率が段違いだからな。

 コボルトってのは、名前の通りのモンスターなんだが、第一階層だともらえる経験値が一番多い。

 そしてなぜか、とあるエリアではコボルトしかエンカウントしないのだ。

 加えて現実になったダンジョンでも、そこはコボルトしか湧いてこないエリアになっていた。

 

 というわけで、本来ならそこでコボルトを倒すのが王道。

 今日みたいに検証をする時は、ここに来てコボルトを倒すのがお決まりになっていた。

 

「んじゃ、早速行くか。《筋力強化》」

 

 今回の検証は、「初期スキルとバフスキルの併用」。

 先ほどから、スキルはレベル10にならないとスキルツリーが開放されないと言っているが。

 レベル10にならなくても使えるスキル、というのが種族ごとに存在する。

 ダークエルフの場合は、ステータスバフスキル。

 魔力を身体に行き渡らせて、身体能力を強化するっていうスキルなんだが。

 これを俺の初期スキルと組み合わせると、結構エグいことになる。

 のが、ゲーム時代。

 現実ならば、果たしてどうか。

 

 

「《鬼神開放》」

 

 

 そう口にすると、俺の褐色の体に、更に黒い影のようなものが浮かび上がった。

 

 

 +

 

 

 《鬼神開放》。

 一言でいうと、魔力を体内に行き渡らせて、身体を強化するシロモノ。

 つまりステータスバフじゃん、と言われるとその通り。

 ただ、バフされるステータス量が、レベルによって上昇していくというのがこのスキルのキモだ。

 なので序盤から終盤まで隙なく使い倒せるバフなのである。

 

 加えて、このスキルの素晴らしいところは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 ゲームの仕様として、バフの種類が変わるとそれらが乗算になるゲームは多いと思う。

 例えば攻撃力20%アップが二つ付与されてもそれは攻撃力40%バフだが。

 攻撃力20%バフと属性ダメージ20%バフの場合、バフ量は乗算により44%になる……みたいな。

 鬼神開放のステータスバフは、あらゆるバフとは別として扱われる。

 なので、ただステータスがアップするよりもずっと効果量が高いのだ。

 

 ゲームではこれとダークエルフの各種初期取得スキルを併用してステータスの暴力で戦うのが序盤のセオリーだった。

 中盤以降は、また別の強みが出てくるけど。

 

「んじゃ、早速やってくか」

 

 コボルトエリアの前で《鬼神開放》を使った俺は、その勢いでコボルトに飛びかかっていく。

 思ったとおりにバフは効果を発揮し、俺はそれこそ鬼神のような速度でコボルトを殲滅していった。

 

 コボルトのいいところは遠距離攻撃をしてこないことだ。

 ゴブリンだと武器を投げてきたりするし、ダンジョンバットはそもそも飛んでてめんどくさい。

 対してコボルトは素手なので戦いやすいのだ。

 数が多いと大変だけど、防御を固めておけばゲームだとダメージを受けないので問題ない。

 

 そして俺は今、ゲームにはない効率的な借り方を試している。

 コボルトエリアの一角に、行き止まりの少し広いフロアがあるのだが、そこに出現するコボルトを集中的に叩いているのだ。

 中にはそこそこの数のコボルトが出現していて、倒しても倒しても湧いてくる。

 それを()()()叩くことで効率的にコボルトを倒しているのである。

 コボルトは遠距離攻撃がなく、敵を見つけたら接近してくるしかないからな。

 入口で叩けば、一匹ずつしか向こうは寄ってこれない。

 対してフロアが大きいから、コボルトが湧きやすいので効率的。

 いい狩り場だぁ。

 

「――とりあえず、こんなもんか」

 

 しばらくコボルトを狩り続けて、コボルトがとりあえず一掃された。

 少し休憩ということでフロアから離れて、呼吸を整える。

 ついでに《鬼神開放》も一旦解除された。

 

 《鬼神開放》は、なんとなく名前の響きからしてデメリットのありそうなスキルだ。

 実際、使用するとゲームだと数ターンの間あらゆるバフスキルが使用できなくなる。

 ただこれには抜け道があって、すでに使用したバフの効果が打ち消されるわけではないということ。

 なので《鬼神開放》の効果が切れる前にバフをかけなおして、《鬼神開放》が再び使えるようになるまで待つというのがセオリーだ。

 現実だったら、効果が切れる前に戦闘を切り上げて、クールタイムを待つのがいいだろう。

 一応、通常のバフは駆け直しておくけども。

 

 んで、検証の結果はと言えば、

 

「……乗算されてるのか、感覚だとわかんないなあこれ」

 

 正直よくわからなかった。

 ゲームだと数字で把握できるものを、感覚で把握しろというのは無理な話だった。

 とはいえ、効果自体は出ているはずだ。

 クールタイムもそろそろ終わるので、もう一狩り行くとしよう。

 

 ――コボルトフロアを使っての狩りは、もう一つ利点がある。

 入口でちまちま狩るのに飽きたら、中に入ってコボルトを一方的に蹂躙できる点だ。

 《鬼神開放》と《頑強強化》――防御バフ――を併用した俺にコボルトはダメージを与えられないからな。

 

 というわけで、さくさくとコボルトを狩り続けているのが今。

 しばらくはこのまま、ここでコボルト相手に無双することとなるだろう。

 

 んで、《鬼神開放》の難点の話。

 そもそもこの《鬼神開放》、ちょっと厄いスキルだ。

 魔神と呼ばれるモンスターの親玉――ゲームでもダンジョン終盤の大ボスの一匹として登場する――が、人に呪を与えるというのがこのスキルの設定である。

 その言葉通り、使用すると身体に黒い影のようなものが浮き上がるのだ。

 

 ただ、それ以外に影響があるかと言えば、ない。

 正確に言えば影響はあるのかもしれないが、プレイヤーキャラには存在しない。

 せっかくのスキルなのに、使えば使うほどデメリットが増えていくというのはゲーム的にはストレスでしかないからな。

 そういうスキルがないでもないが、そういうのは意図的にハズレとして設計されている。

 縛りプレイ用のものだ。

 《鬼神開放》は、そういったデメリットのない純粋な強スキル。

 フレーバーと見た目がちょっと怪しいというくらいで。

 

 ――ただまぁ、それを周囲がどう見るかってのはまた別の問題だ。

 

 ()()()と、足音がした。

 コボルトを蹂躙していた俺は、思わず手を止める。

 襲いかかってきたコボルトの攻撃を蹴っ飛ばして防ぎつつ、視線を足音の方へと向けた。

 

 フロアの入口に、誰かが立っている。

 

 ああやっべ、またよくない場面を、誰かに見られた――――

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