バットマンvsスーパーマンっていい映画ですよね。
張り巡らされそうな策謀
ゾッド将軍の侵略からおおよそ1年と6ヶ月の月日が経った。
ワールドエンジンによって壊滅したメトロポリス中心地は見事に復興を遂げて今では大きなビル群が建ち並んでいる。街にいた住民達はその大半が侵略を行ったクリプトン人と同じ種族の者達によって救助され命を助けられた。しかし、間に合わず犠牲となってしまった人間もいた。侵略によって命を奪われた者達はメトロポリス中心地の広場のモニュメントに名が刻まれ慰霊されている。
そしてその広場には
ゾッドが操縦した探査船はファントムゾーンから逃れ街に墜落したままとなっていた。人類はこれを保管し、研究を始めた。未知の技術と未知の物質で作られたそれを解析するのは容易な事ではなく、解明に困難を極めた。
ファオラはヴーが消えた日から心にポッカリと穴が空いたように無気力に過ごしていた。最初こそ消えたヴーを探しに熱心に宇宙中を探していたが、今ではそれは控えめになりヴーの宇宙船で寝て過ごすか、カルと修行をするだけになっていた。時折、力を隠し傭兵として各地の紛争地帯を渡り歩いているが、自身を満足させる存在を見つけられず悶々としている。
一方ララは素性を隠しこれまで通り地球で暮らしていた。地球に訪れた時に就いた仕事である医者を続けていた。クリプトン人としての力を有意義に使って手術を行った。まあ主に使えるものは透視や高速思考くらいで、空を飛んだり剛力で敵をぶっ飛ばしたりなんてしない。
世間での評価は神の手を持つ天才外科医だ。各地を転々とし、最近はアトランタにある病院で勤務を始めた。財政破綻しそうなところに年間数億ドル稼ぐララが入った事で病院のCEOが泣いて喜んだそうだ。
対してカル、カーラ、またの名をクラーク・ケントとカーラ・ダンバースは地球を守る為に日夜活動していた。極悪テロリストをぶっ飛ばしたり、銀行強盗を阻止したり、座礁した巨大船を陸に戻したり、墜落しそうになったスペースシャトルを持ち上げ地上に下ろした事もあった。そして大災害が起これば空を飛び無数の人を助けたりした。世間ではスーツに刻まれているエル家の紋章から勘違いされスーパーマン、スーパーガールと呼ばれるようになった。
カルはゾッドの一件から人間としてクリプトン人として大きく成長し、ヒーロー活動を続ける傍でロイスと同じデイリープラネットに入社し記者になった。記者になれば世界中で起こっている出来事を知る事ができ、危機的な状況にいち早く駆けつける事ができるようになるからだ。ただ、記者としての才能は微妙らしく、毎日編集長であるペリーに怒られていたりする。同じく記者になったカーラはカルとは対照的に上手く能力を使いタレントのゴシップ情報を集め記事にしていた。
そしてある日、カルは恋人であるロイス・レインの危機を感じ取り服を高速で脱ぎ捨て空へと飛んだ。
音速を超え大気圏を突破し、地球をグルッと回る様に旋回しロイスの元へ飛んだカル。ロイスの気配を感じる場所を遥か上空から見下ろすと、その場所から傭兵の一団がバイクに乗って逃げ出すのが見えた。その集落には無数の燃えている死体があった。そして建物の中でロイスが男に羽交締めにされ頭に銃を向けられているのを見たカルはその建物に向かって急降下をしようとしたところで、別の場所から無人偵察機が飛んできているのを察知した。
「あれは……」
そして無人偵察機から一発のミサイルが集落に放たれた。集落にはまだ住民が多数残っているし、このままミサイルが直撃すればロイスの命も危険と感じた。
カルは動き出し、ミサイルの正面に回り込む様に旋回しミサイルに向かっていった。
ミサイルに激突し破壊して、そのまま無人機にも体当たりをかまして破壊すると、ロイスのいる建物に急降下し屋根を突き破り中へ侵入した。
「来るな!下がれ!女の頭を撃つぞ!」
ロイスの頭に銃を向けた男が屋根を突き破り降り立ったカルに対して言った。
ロイスは助けにやってきたカルを見て掴んでいた男の腕を静かに離した。そしてカルにアイコンタクトを送る。カルがそれに気づき微笑むとロイスを助ける為に超スピードで男の目の前に移動した。
「な!?」
銃を向けていた男は一瞬の内に目の前に現れたカルに驚き引き金を引くがカルの出した手によって銃弾は防がれ、そのままロイスから引き剥がされると胴体にデコピンを喰らった。
デコピンによって吹き飛び壁を破壊して外に飛んでいった男をカルが一瞥すると、ロイスを抱えて空へ飛び上がった
そしてある程度離れた空中でロイスに言った。
「怪我はないかい?」
「えぇ…大丈夫よ。助かったわ…外にいた人達は?」
「この建物周辺は死体がゴロゴロだった。傭兵達が去っていくのが見えたけど……」
「あ!戻って!」
「え!?」
カルはロイスに言われた通り、先ほどまでいた場所に降りていった。
「何故こんな……」
ロイスのいた建物の外には数十人のテロリストの死体が放置されていた。そしてロイスはその中に共に此処へ取材に来た男の死体も見つけた。
「その人は?」
「私と同行していたカメラマンよ。でも傭兵に素性がバレて将軍に殺されてしまったの…はぁ…ツイてないわ」
「素性?」
「CIAだったようね…私も危うく殺されるところだったけど…」
「このテロリスト達は傭兵が殺したのか?よく分からないな…何がしたかったんだ?それにこんな一箇所に集めて燃やすなんて……」
「さっぱりね…あ!あったあった!私の手帳!」
ロイスが落ちていた手帳を拾いパッパと土を落とすと鞄の中へ仕舞った。
「その手帳…中に銃弾が入ってるね」
「え?」
カルの言葉にロイスが反応し、鞄から手帳を取り出した。そしてページを開いていくと手帳の中程に一発の銃弾が挟まっていた。
ロイスがそれを取り出し眺めた。
「……あまり見たことがない形状ね」
「傭兵が使っていたものだろう?そこら中に同じ物が落ちてる」
「ええ…そうではあるんだけど……」
「何か気になる事が?」
カルの問いかけに考え込むロイス。ここアフリカ、ナイロミの指導者はアメリカ国内ではテロリストとして認定され、地元では民を支える指導者として認知されていた。自らの財力で傭兵を雇いインフラ整備や地元民の救済を行っていたが、別の国からの旅行者を攫って身代金を要求したり、国に届いた支援物資を強奪したりと後ろ暗い事もしていた。
本当の内情を知るために取材に来たが、同行者のカメラマンがCIAの工作員だったお陰で怪しまれ殺されそうになり、結局内情はわからずじまいだった。
ただ、雇った傭兵達に殺された理由が分からない。当初彼らは忠実に任務を遂行していた筈だ。工作員を見破り、依頼主を守ろうとしていたからだ。
それをいきなり皆殺しにして去っていった。まるで何かから逃げるように……
「今は考えても無駄ね。街までお願いできる?」
「家まで送るけど?」
「不法出国はまずいでしょう。ちゃんと飛行機で帰るわよ」
カルがロイスを抱え空へ消えていった後、CIA工作員の遺体確保と民間人救助のため特殊部隊がやってきていた。彼らがそこで見たのはまるでスーパーマンが殺したような惨たらしい死体だったという。そして、集落にいた者達は言った。
「彼が空から来た」
数日後…
ジューン・フィンチ議員が、とある国の女性の訴えを議会で聞いていた。公聴会である。
その女性はスーパーマンとスーパーガールによって被害を受けたと主張していた。カルがロイスを助けたアフリカ、ナイロミの砂漠の集落に
涙を流し、フィンチ議員に訴えかけた。
「耳がつんざくような音がした…空から彼がやってきて沢山の人が死んだ。そして政府軍が私のいた村を攻撃して…皆殺しに…私の両親も…!」
フィンチ議員はそれを聞いて息を呑んだ。
18ヶ月前のあの日、宇宙からやってきたゾッド将軍の侵略から地球を守った
しかし、それによって不都合な現実を突き付けられた者達がいた。超人達の介入によって
フィンチ議員は女性の訴えに憤りを感じた。
女性にではない。超人達にだ。
人を救うのは良い事だ。尊い事だ。だが…いくらなんでも身勝手ではないか?国際法を無視し、好き勝手移動しては人々を助ける為に国や軍の高価な機械を破壊したりしていた。それにここ最近では法の裁きを受けるべき悪人を問答無用で凄惨な方法で抹殺したりと容赦ない事もしている。
いくら宇宙人と言っても彼らは地球に住んでいるのだ。人類のルールに従ってもらわなければいけない…フィンチ議員はそう考えた。
そしてフィンチ議員は女性と傍聴している人々に言った。
「スーパーマンとスーパーガールの力に対し我々は免罪符を与えすぎてしまった。彼らに責任を問うべきです」
「彼らは答えない。誰に対してもね。たとえ神が相手でも」
しかしそれを聞いた被害を訴えた女性が真剣な眼差しでフィンチ議員を睨みながら言う。
その女性を後ろの席からレックスコープ社社長レックス・ルーサーJr.の秘書が笑みを浮かべながら見ていたのは誰も気づいていなかった。
公聴会の数時間後、カルはデイリープラネットの仕事を終えて自宅へと帰宅した。ロイスと同棲している家だ。
先にロイスが帰っている事に気づいたカルは落胆しながら家に入った。
「ロイスの方が早かった…!ちょっと驚かそうと思ったんだけどな」
家に入り、部屋全体を透視しながら見渡すとロイスが湯船に浸かっているところだった。カルは荷物を置いて、手に持った花束と共に浴室の扉を開けた。
「ロイス…手料理を作って驚かそうと思ったんだが……」
「あぁ…今日は早く終わったの。例の公聴会に行ってきたわ。あの時の砂漠の件よ」
「……確か僕に家族を殺されたって人だよな?飛んできてたミサイルを破壊して、君を救っただけなんだけどなぁ」
「そう…あなたが私を救った時に吹っ飛ばした将軍も生きていた。傭兵達に殺された兵士以外で、他に集落にいた民間人は全員無事だったのよ?だから怪しいと思って公聴会に行ったんだけど……」
ロイスが湯船に入りながら言った。カルは花束をテーブルに置いてシャツとパンツを脱いでいく。
「どうだった?」
カルが全裸になってロイスの入る湯船に入り込んだ。
「ちょ…!部屋が水浸しになるわよ!?……あなたとカーラは審問にかけられるわね…フィンチ議員が躍起になってた」
カルが湯船に入った事でお湯が溢れ床に広がった。
「ええ??僕だけじゃなくて何故カーラも?よく分からないな」
「だからもう少し追ってみるわ……この銃弾もスワンウィックに調べてもらう」
「分かった。僕も調べてみるよ」
それを聞いたロイスは笑いながら言った。
「あら?あなたって記者だったかしら?」
「うるさいなぁ〜!!!」
そしてカルとロイスは唇を合わせ一緒にお風呂を楽しんだ。
そうして1日を終えカルが朝食を作りながらテレビを観るとニュースを報じているキャスターが捕まった犯罪者の画像と共に事件の詳細を語っていた。
「《女性達を監禁した男が逮捕されましたが、体にはまたもコウモリの焼き印がありました。焼き印をつけられ逮捕されたのは最近ではこれで2人目…1人目は小児性愛者で収監後に囚人に襲われ重体に…刑務所内でコウモリの焼き印は死刑を意味するとの事です》」
作っていた目玉焼きを皿に移し、カルはテレビを観ながら呟いた。
「バットマン……」
極悪犯罪者からゴッサムシティを20年もの間その身一つで守り抜き戦ったダークヒーローにして表の顔はウェイン産業経営者ブールス・ウェイン。
「《次はアフリカナイロミの集落でスーパーマンによって家族を殺されたと主張している女性のインタビューです》」
「ん?」
ポケットに入っている携帯が振動した。電話がかかってきた。
「《私の家族にも夢があった、彼の目を見て…どう決めるか聞きたい。誰が重要で、誰が重要じゃないか》」
「……どういう事なんだ?」
気になるところでテレビを消し、携帯を開いて着信相手を見るとそこにはダイアナと表示されていた。
「もしもし?ダイアナ?」
「カル=エル、明後日の夜…時間はあるかしら?」
「んーその日の夜は今のところ予定は入ってないかな」
「あら!そう?実はパーティーに招待されてね…エスコートをお願いしたいわ」
「え?別にいいけど…」
クリプトン星最後の息子カル=エルことデイリープラネット所属の記者クラーク・ケントは、アマゾン族の王女であり最強の戦士ダイアナと共にパーティーに行く事になった。
一方その頃……
「ダークサイド!お前ちょっとヤバくないか?」
「フッフッフ……そうだろうそうだろう!これが我が手にした数多の世界よ」
俺はダークサイドの自慢に付き合っていた。
ダークサイドと闘ったあの日から俺達はなんかよく分からないが仲良くなり、毎日を戦ったり、宴をしたりして楽しく過ごしていた。
俺がこの星に迷い込んでどれくらい経ったか分からないが、まあ地球にはまだ戻らなくてもいいだろう。
地球にはファオラやララさん、カーラにカルもいるから何が攻めてきたって平気だろう。それこそダークサイドが攻めてきても何とかなるだろう。いや、ダークサイドは難しいか?
ダークサイドは5000年前に地球を侵略しようとしてコテンパンにやられ俺が来るまでは虎視眈々とリベンジの機会を狙っていた様だが、デサード曰く、俺がアポコリプスにやってきた事でリベンジ以上の楽しみを見つけ今はそれどころではないらしい。というのもダークサイドは俺に興味津々で、毎日の様に戦いを挑んできたり、今まさに俺に征服した世界を見せてきたりしてくる。
コイツのやってる事はまぁとんでもない悪事ではあるんだが、正直俺にとってどうでもいい事だった。地球を狙うのならば容赦はしないが、その他の世界がどうなろうと知った事ではないんだ。まぁダークサイドに征服されてしまった世界の数々はご愁傷様状態な訳だが……
俺が今見せられているのは様々な世界だ。どれもこれもが俺がいるアポコリプスの様に荒廃している。本当に可哀想。こうなるならクリプトンのように粉々に爆発した方がマシだろう。
「お前やっぱり悪い奴?」
「我以上の悪はいないだろうな…!」
「お、おう…」
そういや今地球ってどうなってんだろうなぁ……みんな元気かな?