奴こそ1万年に1人産まれる伝説の……   作:物体Zさん

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情報収集?

 朝食を食べ、ロイスと時間をずらしてデイリープラネットに出社したカルは自身の上司であるペリー・ホワイトに今週の新聞の見出しについて指示を受けていた。

 

 「おいケント、今回のスポーツ欄は任せる。アメフトでいけ。あーあーあーいいな?絶対アメフトだぞ?間違ってもスーパーマンやスーパーガールの事は書くなよ?いいか?絶対だぞ!」

 

 カルはペリーに言われた事をメモに取り始める。

 

 「見出しはこうだ…“最下位ゴッサム、永遠の10ヤード"いいか?絶対アメフトだぞ?あ、ゴッサムでは路上強盗に気をつけろ」

 「了解です!!!!!」

 

 カルの元気な返事に一瞬ペリーがたじろぎ、去ろうとしたところでインターンから正社員へと昇進したジェニーがテレビを見ながら言った。

 

 「ねえ、見て」

 

 テレビにはメトロポリス中心地に設置された慰霊碑に落書きをしてウォレス・キーフという男が逮捕された。というニュースが報道されていた。

 

 《俺はウェイン社の社員だ!!!》」

 

 流れた音声にカルが振り向きテレビを観ると、そこには自身の像に大きく赤い字で【偽りの神】と落書きされていた。

 

 「(なんで僕の像だけ?ひどいなぁ…)」

 

 報道するキャスターが言うには、器物損壊と公務執行妨害、そして脅迫行為で最高で懲役40年の刑に処される可能性があるとキャスターが言っている。カルはこれを聞いて、人を殺したわけでもないのに40年!?と驚く事になるが、慰霊碑に設置された4人の像はメトロポリス市民にとって神聖なものであり、命の次に大事にされている物である。これに落書きなんてすれば極刑は免れない。

 

 「哀れな男だ……そうだ!ジェニー!良い見出しを思いついたぞ。“空飛ぶ男と破局…?"どうだ?」

 「はぁ…分かりました。すぐに」

 

 同じくテレビを観ていたロイスはペリーのセンスのない見出しを聞いた後カルの方へ顔を向けた。

 

 「ク、クラーク?」

 

 カルは涙を流していた。自身の像に落書きをされた事が余程ショックだったのだろう。ロイスは立ち上がり、出社するついでに買っておいたドーナツを一個渡した。

 

 「まぁ…元気出して」

 「ドーナツ!?くれるのかい!?」

 

 ドーナツを渡されたカルは、一瞬目を赤く輝かせ涙を蒸発させると嬉しそうにドーナツを頬張った。口いっぱいに頬張ったおかげで口の周りには砂糖がこれでもかとついている。一瞬のうちに食べ終わるとデスクに置いてあるウェットティッシュで口と手を綺麗に拭いた。

 

 「(……大丈夫そうね)」

 

 ロイスは自分のデスクに戻り、仕事を再開した。

 

 カルはドーナツを食べたお陰で元気を取り戻し、像に落書きされた事を忘れて、ペリーに言われたスポーツ欄を仕上げる為にゴッサムに行く準備を始めた。ただ、カルはスポーツ欄ではなく今は気になっているバットマンの事について書こうかなと考えている。

 

 ちなみにゴッサムには自身の事を公聴会で訴えた女性が住んでいる事を事前に調べていた。ペリーにゴッサムへの出張を依頼されたのは僥倖だった。

 

 記者の装備を一式纏め鞄に突っ込むとデイリープラネットを出た。

 

 タクシーの乗って港まで行くと船に乗った。

 

 メトロポリスからゴッサムシティまでは船に乗らずタクシーで橋を渡って向かっても良かったが今回はゆっくりと船に乗って向かうことにした。カルは景色をゆっくり見ながら移動したい気分だった。

 

 暫く船に揺られてゴッサムシティに到着すると、自身を訴えた女性が見出しの新聞を片手に、その女性が住んでいると思われるアパートに行った。

 

 階段を上がり女性が住んでいる部屋に着くと扉にノックをした。

 

 しかし反応がない。中を透視すると誰もいなかった。

 

 「(出掛けてるのか?)」

 

 息を吐き、もう一度出直そうと離れようとした時。同じ階にいた人がカルに声をかけてくる。

 

 「そこの部屋の人ならもういないよ」

 「え?この人ですよね?」

 

 カルはそう言って新聞を見せる。

 

 「ええ、その人よ」

 「そうですか…」

 「警察が何の用だい?」

 

 反対側の部屋にいた老人が言った。カルは老人に近づき新聞を見せる。

 

 「警察じゃなくて新聞記者です。住人の若い女性は?」

 「もう戻らない。街にもいないさ!アンタも帰りな暗くなる前に…奴が来る」

 「はぁ…真に受けちゃダメよ。奴を恐れるのはやましい人だけ」

 「奴って?」

 

 老人が手元で宝くじを削りながら淡々と語る。

 

 「この街に生まれた悪の権化…奴は怒りに満ち、悪を狩る」

 

 そして老人が宝くじを見せる。そこには器用にスクラッチ部分を削り絵が描かれていた。

 

 コウモリの絵だった。

 

 「(……バットマン)」

 

 カルは女性に取材する事を諦め、ゴッサムシティを軽く見回ったのちデイリープラネットに帰った。

 

 会社に入り自分のデスクに座ると近づいてきたペリーに肩を叩かれた。

 

 「ケント取材ご苦労、会議だ」

 

 

 会議が始まりペリーが眠気覚ましのコーヒーを飲みながら、カルに取材状況を聞いた。

 

 「ケント、アメフトはどうだ?」

 「これは恐怖支配だ。このコウモリ男は港とその周辺のみを自警していて、警察も協力してる」

 「ん?」

 

 アメフトの取材報告かと思いきや突然ゴッサムシティで有名なバットマンについて報告してきたカル。ペリーは唖然としながらも上司として優しく乗ってあげる。

 

 「ん〜“犯罪の波がゴッサムに"って感じか?……え?え?ちょっと待てケント君、アメフトはどうしたアメフトは…!」

 「コウモリはボツ?貧困層は買わないですかね?」

 

 ペリーはコーヒーをグビッと飲み干しチラッと隣にいるジェニーを見た後、カルに向かって言った。

 

 「もう新聞など誰も買わん、時代はネット記事だ。はぁ…お前はいつになったら私の言う事を聞いてくれるんだ…」

 「編集長…!新聞の記事で世論は変わるんです」

 「スモールヴィルに帰れ、いいか?アメリカの良心は死んだ。キング牧師とケネディと共にな」

 「すみません」

 

 会議室にロイスが入ってきた。

 

 「ロイス、突然なんだ」

 「これと一致するデータはゼロ」

 

 ロイスが砂漠で拾った銃弾を見せながら言った。ペリーが銃弾の入った小袋を取りサッと見るとロイスに返し声を上げた。

 

 「銃弾だな、人を撃てる」

 「砂漠で傭兵が撃った弾です。この弾は市販も闇取引もされてない」

 「だから?」

 「弾を砂漠の民族に供給したのは誰か?ナイロミの反政府組織に武器を……」

 「あー分かった分かった。要点を言え」

 「ワシントンDCに!」

 「ん〜行け、但しエコノミーだ」

 

 ロイスがペリーの許可を貰い会議室を出ていくが直ぐに戻ってきた。

 

 「エコノミープラス!」

 「ダメ」

 

 そうしてカルの書いたバットマンの記事はボツになり会議が終了した。

 

 カルは会議室を出てロイスのデスクに向かった。ロイスはこれからワシントンDCに行く為の準備をしていた。

 

 ロイスに近づき仕切りにもたれかかるとカルは声をかけた。

 

 「公聴会の例の女性を探ったんだけど街から消えていた。何かがおかしいぞロイス」

 「本当に?それはおかしいわね…私の方はこれからスワンウィックに会いに行って銃弾の事を聞いてみるつもりよ」

 「あまり深入りすると危険かもしれない。何かあったらいつも通り呼んでくれ」

 「わかったわ」

 

 そうしてロイスを見送ると、ペリーが近づき1枚の紙切れをカルに渡した。

 

 「寄付金集めのパーティーだ、世界の名だたる実業家が集まるパーティーだ。お前をご指名の取材依頼だぞ」

 「え?僕?」

 「そうだ。メガネ男子好きのオバさまが集まるから捕まらんよう気をつけろよ」

 

 ペリーがそう言ってカルの肩をバシッと叩き行ってしまった。

 

 なんだろう?とペリーに渡された紙を見ると、明日の夜にレックスルーサーJr.邸宅にて開催されるパーティーへの自身に宛てられた招待状だった。

 

 「これって…」

 

 なんて偶然なんだ。とカルは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人の男が暗躍していた。

 

 ゴッサムシティ唯一のヒーローにして世界的大企業であるウェイン産業社長の男。ブルース・ウェイン。

 

 湖の側に建てられた豪邸で見た目麗しい女性と一夜を過ごし、彼は悪夢を見た。

 

 自身の母の墓からコウモリの化け物が現れ襲いかかってくる夢だ。

 

 嫌な目覚め方をしたブルースは、悪夢の事を振り払い、サイドテーブルに置いてある日本から取り寄せた責任世代に人気な救心錠剤を酒と一緒に飲んでベッドから立ち上がり着替えるとリビングに向かった。

 

 リビングには長年ブルースに仕える執事のアルフレッドがいた。今しがた此処にやってきた様でマフラーを取り上着を脱いで椅子にかけると、テーブルに置いてある空の酒瓶を手に取り呟いた。

 

 「空のワインセラーは継がせたくありませんな…継がせる子孫がいればの話ですが……おや、恐れ入ります」

 

 ブルースが簡単に淹れたコーヒーをテーブルに置いた。

 

 そしてテーブルの上に置いてあったノートパソコンを操作し、ブルースが昨晩収集した情報をアルフレッドに報告する。

 

 「例のロシア人の携帯の通信記録だ」

 

 昨晩、ブルースはゴッサムシティで行われた地下格闘技を観戦しに行った。観戦も目的の内であったが、本来の目的はそうじゃ無かった。最近ゴッサムシティに核兵器が持ち込まれるのではないかという情報を得ていた。しかし、いつ何処でそれが持ち込まれるのかというのがわからなかった。

 

 虱潰しに情報を集めているとホワイト・ポーチュギーという名前を頻繁に見かけるようになった。先日尋問したロシア人もその名前を漏らした。

 

 そしてその名前を調べると必ず同じロシア人がヒットする。

 

 アナトリ・クナイゼフというロシア人だ。アナトリは数年前からゴッサムで暗躍していた男だった。

 

 そのアナトリに接触し情報を得るために地下格闘技場に向かった。

 

 そこでブルースはアナトリの携帯をコピーして通信記録を調べていた。

 

 「コイツの通信でホワイト・ポーチュギーが2回と暗号化されたデータも送ってる…送り先はアレクサンダー・ルーサー」

 「レックス・ルーサーがホワイトポーリュギーだと?ん〜…富豪のルーサーが武器商?にわかには信じられませんな」

 「彼の屋敷を調べる。スーツが必要だ」

 

 アルフレッドがコーヒーを一口飲み、そして一枚の紙を見ながら答えた。

 

 「コウモリ男は6人を尋問して収穫はゼロ、()()()()()の方が優秀なのでは?」

 「俺はレックス邸に忍び込めない」

 「その必要はありません、こちらを」

 「これは?」

 

 アルフレッドが紙をブルースに渡した。

 

 「招待状です」

 

 【是非ご出席を、レックス・ルーサー】

 

 それはレックス邸で行われるパーティーの招待状だった。

 

 「今夜か……」

 

 ブルースは招待状をテーブルに置いてノートパソコンの画面を切り替えた。

 

 「彼の情報は?」

 「依然、見つかりませんね」

 「そうか…」

 

 画面にはメトロポリスを破壊していた巨大イカ型宇宙船に、上空から機械を担ぎながら突っ込む1人の男が映っていた。男が宇宙船に突っ込むと爆発が起こり衝撃波と共に空間が捻じ曲がり、宇宙船が異次元へと吸い込まれていく。そして一瞬光ると次の瞬間には何もかもが消え去っていた。

 

 「彼こそが真の英雄だ」

 

 

 

 

 

 

 

 惑星アポコリプス。新造されたダークサイドの宮殿、神の間にある2つの玉座。

 

 

 「なぁダークサイド」

 

 なんでか知らんが俺用に作られた豪勢な椅子に座りながら、隣に座るダークサイドに声をかけた。

 

 相変わらずコイツは顔色が悪くてヒビ割れてて両目が煌々と光り輝いている。なんでいつも目が光ってるんだ?と聞いたら、「オメガエフェクトの影響だ」と言っていた。

 

 オメガエフェクトというのは宇宙に存在するパワーで最も最強と名高い神秘的なものらしい。俺と戦う時やパラデーモンにイライラをぶつける時によく目からビームを放っているものが、その代表的な使い方だ。俺は平気で弾き返したり身体に受けたりしてるけど、普通はオメガエフェクトによって原子レベルで分解、消滅、変性、そして異次元へと転送されるらしい。イライラをぶつけられてるパラデーモンが石になったり、溶けたり、粉々になったりと毎回違う死に方をしている。正直ちょっと可哀想だ。

 

 「なんだヴーよ」

 「お前は何故世界を侵略しようと?」

 「ふむ……」

 

 顎を触りながら目を細め考え始めたダークサイド。

 

 コイツは数多の世界を征服しその手にしてきた。一個や二個ではない、何百万もの世界を手中に納めている。この前見せてもらったから間違いない。

 

 「我には夢があったのだヴーよ。そのために数多の世界を侵略し手にしてきた」

 「夢?世界を手にする事以外にどんな夢があるってんだ?」

 

 世界以上に得難いものがあるのだろうか?富、名声、力、あらゆるものを手にしてなおコイツが夢みる事とはなんだ?

 

 「反生命方程式というものを知ってるか?」

 「すまん、数学は苦手なんだ」

 「我も苦手だ、しかしこれはそれとは違う…手にすれば全宇宙の生命をこの手で支配する事が可能なのだ」

 「へぇ…」

 

 反生命方程式か…

 

 「だがもうどうでもよい」

 「え!?いいの?」

 「うむ、我はもう素晴らしいものを手に入れたのだ。どんな事をしても壊れないものをな………」

 

 なんだろうか?

 

 「ところでヴーよ、そろそろ時間だ」

 「え?あぁもうこんな時間か」

 

 玉座の横に設置された砂時計を見て確認すると玉座から立ち上がった。

 

 「今日は我が勝つ」

 「いや、今日も俺が勝つ」

 

 俺とダークサイドは共に空へと飛び上がり戦い始めた。

 

 

 

 

 

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