よう、俺はヴー=ロリ。またの名をジョン・ヴロリーだ。
地球に帰還しファオラにボコされてから数時間が経った。俺とファオラは俺の宇宙船に戻り、飯を食いながらカルとカーラを狙っている人間について教えてもらっていた。
カルやカーラはゾッドの件以降、地球を守るヒーローとして活動して沢山の人間を救ってきた。自然が起こす大災害にいち早く駆けつけて人々を救い出したり、凶悪な犯罪者や危険な思想を持つテロリストなんかを殺さず生け捕りにして政府に引き渡したりなど、これでもかというくらいに良い事をしていた。
しかし、ここ最近2人に悪い噂が流れるようになったらしい。
なんでも身勝手に動いた結果、人々を危険に晒したやら、色々損害を与えたとか、それにテロリストを殺すために村ごと滅ぼしたりとか、とんでもない噂が流れているようだ。それに実際に被害に遭ったとまで言い出す人まで現れている。
2人に感謝する人がいれど憎悪を抱く者などいない筈だが、最近の世論は2人を救世主と崇める者達と、悪魔と蔑む者達で二分している。
ゴンザカに観せてもらった最近のニュースでは2人によって被害を受けた人々が何人も現れ、国の公聴会で証言していた。
「嘘だろ?」
「あぁ、当然だ。カルやカーラも自分の力をしっかり分かっている。犯罪者共を再起不能にする事はあれど殺すことはないだろう。貴様や私のように兵士じゃないあの2人は殺しというものに忌避感を抱いているからな」
「じゃあどうして?」
「うむ……ゴンザカに色々調べてもらったが、証言をした者達は数日後不自然に消えていた。まるで最初からいなかったかのようにな」
「なんかめんどくさそうだな」
「消えた者達は必ず1人の男と接触していた。レックスコープ社長、レックス・ルーサーJr.だ」
レックスコープか。その会社には何回か配達に行った事がある。インフラ事業や医療品開発などを手がける巨大企業だ。だが…なぜその会社の社長がカルとカーラを貶めようとしているんだ?理由が分からないな。
「何か恨みでも買ったのか」
「どうだろうな…それとゾッド将軍の遺体がルーサーの手に渡ったという情報もあった」
「はぁ?それこそよく分からんな。クリプトン人の遺体で何ができるってんだ?」
ゾッドはララさんによって殺され物言わぬ死体になったが、クリプトン人としての特性は残ったままだ。太陽の光を浴びていれば俺たち以外に傷一つつけることができないだろう。
「さあな……ともかく明日カルとカーラは公聴会で尋問される。どうする?」
「ララさんは?」
「ララは
そうか…ララさん医者だもんな。クリプトンでも医者をやっていたけど、地球にきてからも医者をしている。幸いなことにクリプトン人と地球人は体構造が似ていて、すんなりと医者になれたと昔言っていた。
まぁ…地球でクリプトン人に何かあるなんて事はまずない。それこそクリプトン星のクリプトナイトでもなければ死の危険性なぞ皆無だ。心配なんてする必要はないが……
「なんか気になるな、行くか」
「貴様が行くなら私も行こう」
そうして森に隠してある宇宙船で一夜を過ごすと、俺とファオラはクリプトンのスーツを纏い公聴会が行われるメトロポリスの議事堂へと向かった。
ちなみに俺のスーツにマントはついていない。もう巻き込まれるのは懲り懲りだ。
暫く飛び続けると街が見えてきた。そして議事堂がある方向から人々の歓声や怒号が聞こえた。目を凝らして見ると人々は皆何やら看板を持ち騒いでいた。
「失せろ!」
「地球から出ていけ!」
「きゃー!スーパーマーン!大好きー!」
「スーパーガール!カッコいいー!」
2人を応援する声と蔑む声どちらも聞こえる。
そのままゆっくりと議事堂の上空にやってくると、俺達に気づいた人々が指を刺し大きな声をあげた。
「またきたぞ!!」
「あ、あれは!!」
「あの女の人は私を救ってくれた人だわ!!」
「もう1人の男は誰だ…?」
ふむ…どうやら俺は誰にも知られてないみたいだ…
隣にいるファオラを見ると眉間に皺を寄せ何やらぶつぶつと喋っていた。
「アレだけは奴に見られたくない…」
アレ?アレってなんだ?
「じゃあ行くか」
「分かった」
スーッと降りていくと、歩いて議事堂に入った。
中にいた警備員に公聴会をやっている部屋を案内してもらい、扉を開けて中に入った。
俺とファオラが中に入ると、傍聴席に座った人々が一斉に俺達を見た。
「え!ファオラさん!?え!?ヴーさん!?」
「良かった……」
カルは俺の姿を見て驚き、カーラは安堵の表情を見せた。
「あなたたちは何者ですか!」
1番奥の席に座る偉そうな女性が声を上げた。
「俺はヴー=ロリ」
「私はファオラ=ウル」
名乗り、尋問を受ける2人の元に進んでいく。部屋は人で溢れているというのに、一席だけ空いていた。誰も座らないのか?席にはレックスコープ社長、レックス・ルーサーJr.と書いている。
レックス・ルーサーJr…またコイツか。
進みながら周囲を見渡すと不自然に見えない箇所があった。男が座る車椅子の中だ。
なんだ?あの箱みたいなものは?鉛で包まれてるのか?
俺たちクリプトン人の目はどんな物でも見透せる。と言われているが、唯一地球の鉛だけは見透せない。透過する筈がそこだけ黒く塗りつぶされたように見えるんだ。俺はぎゅっと目を凝らして見ればギリギリ何か見えるが……
俺はそれに近づき、そこに座ってる男に話しかけた。
「にいちゃん、ちょっといいか?その車椅子の中に何か入ってるみたいな……」
男に言おうとした時、世界のスピードが遅くなった。
車椅子の見透せない部分を見るとゆっくりとだが光り輝き膨らみ始めている。
「ファオラ」
「爆弾か」
停滞した世界の中でファオラが動きこちらに近づいてくる。
「え!?」
「その人の車椅子?」
「ん?」
おお、カルもカーラも俺達のスピードについてこられるようになったのか。
「お前がいない間暇だったんでな…散々扱いた」
「そ、そうか…」
カルとカーラもこちらに近づき車椅子を見下ろした。
爆発は今もなおゆっくりと広がり、もうすぐで座っている男に当たりそうだ。男の顔は爆弾を爆発させたような表情には見えないな。それに手には起爆スイッチのような物は持っていない。
「コイツは?」
「ウォレス・キーフという男です。あの時メトロポリスで僕のせいで足が不随になったとかで…僕達に被害を受けたと訴えている人です」
「カルの像に落書きした人よね」
「像?像ってなんだ?」
「ゴホンッ!貴様の気にする事ではない。この男を助けるぞ」
ファオラが咳払いをして話を遮ると、俺を押しのけて男の前に立った。
そして、男を抱き抱えると俺の方を見て言った。
「この感じだと相当威力があるな。この建物にいる者達は全員外に出した方がいい」
「そうか、じゃあ避難開始だな!」
俺はそう言ってウォレスの隣に座っていた男を持ち上げ、ついでに近くにいた警備員も掴んで外に出た。
カルやカーラも両脇に人を抱えて外に出ていく。
人を抱えて議事堂の外へと運び出し、議事堂内へと戻りまた人を抱え外に運び出す。これを何回か繰り返し議事堂内にいる人間達を全員避難させると、俺は公聴会が行われていた部屋に戻り、今まさに部屋を飲み込まんとしている爆発に向かって手を叩いた。
俺の手から発せられた衝撃波と突風が爆発に当たり押し戻していく。
パン!パン!パン!とひとしきり叩き爆発を押さえ込むと、最後に息を吹きかけた。
全てを凍てつかせる猛吹雪のような息吹が俺の口から放たれ、爆発を鎮めていく。
「こんなもんでいいだろう」
俺は歩いて議事堂を出た。
そして議事堂から出たと同時に世界のスピードが元に戻り議事堂から一瞬大きな音がして窓ガラスが割れ煙が吹き出した。かなり鎮めたつもりだったけど、相当威力があったみたいだ。
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
人々の熱狂的な歓声が聞こえる。助けられた者達は唖然として議事堂を見つめ、そして俺達を見て自分たちが俺達に助けられたと気づいた。
「あなた達!一体何をしたの!?」
助け出した人々の中から大きな声をあげて1人の女性が出てきた。公聴会の場で奥に座っていた偉そうな女性だ。
「彼女はフィンチ議員です。僕とカーラを審問しようとした上院議員です」
横にいたカルが俺に耳打ちしてくる。
俺はフィンチ議員に近づき、何が起きたのか説明した。
「見ての通り、仕掛けられた爆弾が爆発してお前達全員を助けた」
「あなたがやったの!?」
「そんなわけないだろう…ウォレスという男が座っていた車椅子に爆弾が仕掛けられてたんだ」
「なんですって!?警備!!」
フィンチ議員の号令によって警備員が地べたに座っていたウォレスを捕まえた。そ、そんな荒っぽくやらんでも…足が不随なんだから逃げられないだろうに…
「彼は何も知らない。殺気もなにも感じなかったからな」
「でも彼の車椅子よ?」
「自分でも何かおかしいと思ってるんじゃないのか?」
浮き上がりスーッとこちらに近づいてきたカルがフィンチ議員に言った。それを聞いたフィンチ議員が苦虫を噛み潰した様な顔をして、絞り出すように言う。
「ルーサーね……キーフを連れてきて!」
フィンチ議員が警備にそう言うとウォレスの両脇を持ち上げこちらに近づく。
「キーフさん。ルーサーに何か言われましたか?」
「お、俺はルーサーさんにあの車椅子を貰って…スーパーマンに直接文句を言えるからって!」
「決まりだな」
「ま、まさかこれまでの被害者は…」
「おい、貴様は訴えられた事を額面通り受け取って相手を尋問するのか?しっかりと精査した上でこの2人を呼び出したんだろうな?ん?どうやら違うようだな。少しもおかしいとは思わなかったのか、とんだ馬鹿だ。コイツがいなければ貴様も、あの建物にいた人間共も、全員死んでいただろうな。それとこれまであの2人に訴えを出した被害者とやらは全員消えたぞ。貴様がのうのうとテレビで語っている間にな」
「ファオラ!やめとけって!」
ファオラが側にやってきて、ドスの効いた声でフィンチ議員に言う。おいおいおい、そんな恐ろしい顔で言うなよ…!
「あ、あ、あ……」
フィンチ議員が口をあんぐりと開け身体を震わせ始めた。
まあでも、ファオラの言ったことはごもっともだ。彼女がどういった理由でカルとカーラの審問を行うに至ったかは俺の知った事ではないが、誰かが言った事を鵜呑みにして人を糾弾するなぞ、こちらからしてみればいい迷惑だ。
だが…恐らく彼女も良い様に利用されたにすぎない。ルーサーとやらはカルやカーラ、そして人々を手玉にとって弄んだ。自ら手を汚さずに、策を張り巡らし惑わし、用済みになれば全部消す。
俺はそういう奴が1番嫌いなんだ。
「じゃあな。俺たちは奴をとっ捕まえにいく。同胞を嵌めようとした奴は許せん」
俺はフィンチ議員にそう言って、カルとファオラ、そしてカーラを連れて空へと飛び上がった。
「アルフレッド、今のを見たか」
「ええ、しっかりと」
ブルース・ウェインと執事のアルフレッドはバットケイブに設置されたモニターでスーパーマンとスーパーガールに対して行われる公聴会のテレビ中継を見ていた。
スーパーマンとスーパーガールの両者が空から現れ議事堂に入って数分後、更に空から人が降りてきた。ヴーとファオラである。
その後議事堂から爆音が聞こえ、次の瞬間に議事堂前の広場に沢山の人が突然出現した。
そして議事堂から1人の大柄な男がゆっくりと出てきたところで、ブルースは探していた人物を遂に見つける事になった。
「彼だ」
「今までどこにいたんでしょうか」
「あぁ…(あの夢で…俺を殺した男と同じ顔…ヴーと呼ばれるクリプトン人……)」
「上院議員と何か話したところで飛んでいってしまいましたな。お茶を淹れてきます」
「そうだな…頼む」
ブルースはそう言ってモニターの画面を切り替え、ルーサーの邸宅にあるサーバーから盗み出した情報を表示した。
ルーサーがクリプトン人を殺める為にインド洋から発掘されたクリプトンの残骸【クリプトナイト】を
バットモービルに乗り込み大々的に港を襲撃してクリプトナイトを強奪するつもりだったが、それは失敗に終わってしまった。しかし、発信機を取り付け位置情報を追った所、レックスコープの本社研究施設に目的物がある事を突き止め、ルーサーが公聴会に出かけた隙に本社を襲いクリプトナイトを強奪した。
これで彼らを守る事ができる。そう思いたかった。
あの夢……地球が荒廃し、闇に包まれた未来…
ブルースはあの日に見た夢の事が忘れられなかった。そして何か警告ともとれるあの赤い鎧の男の言葉。
画面には地球に存在するメタヒューマンと呼ばれる者達の映像が映し出されていた。
コンビニ強盗を超スピードで蹴散らす若い男。
深海に沈んだ沈没船から出てきたトライデントを持つ男。
サイラス・ストーンと名乗る博士が上半身しかない男を蘇らせる映像。
そして装置を盗んだ女の第二次大戦中に撮られた一枚の写真。それには今と変わらぬ姿で女が映っていた。
「なぜ…お前たちを探す?俺はどうしたらいいんだ?」
ブルースは頭を抱えた。
彼の後ろには緑に輝くクリプトナイトが鎮座していた。
メトロポリスに墜落したクリプトンの探査船、ジェネシスチェンバーにて…
「異種交配は禁止行為です。元老院の決定により反逆者を変種として再生することはできません。冒涜行為です」
「元老院はどこにある?」
「消滅しました」
「なら実行しろ」
「了解、クリサリス化、トランスフォーム開始」
逃げるように宇宙船へとやって来たレックス・ルーサーはゾッド将軍の遺体を、辛うじて機能を保っていたジェネシスチェンバーに投入し、自身の血を混ぜゾッド将軍を変質させた。
「僕に恥をかかせたな宇宙人め。全員殺してやる」
レックス・ルーサーは自暴自棄になっていた。
スピードフォースにアクセスはできませんが、超スピードで動けます。
スーパーマンって多分修行とかしないと思うんですよね。超絶怒涛の無敵能力を持ってれば努力なんてしないですから。でも、映画ではしっかり太陽を浴びていないファオラや他のクリプトンの兵士には正直手も足も出ずにボコされてたんで、修行すりゃとんでもねぇパワーを手に入れられるんじゃないかと……多分。