核爆弾が爆発したことによって空が綺麗に橙色に染まった。まるでオーロラみたいにエネルギーが波打ち広がっていく。とっても綺麗だ。
俺たちはそれを見上げながら、爆発の中心となった場所から隕石のように堕ちてくる怪物を見ていた。
やっぱり生きていた。
奴は五体満足でしっかり生きている。火と煙に包まれているが、よく見れば身体が赤く染まり肉が蠢き盛り上がっているのがわかる。
一方カルは爆発のあった場所で漂っている。気絶したのか?
俺は堕ちてくる怪物を見ながらファオラに言った。
「なぁファオラ」
「なんだ」
「アイツって受けた攻撃のエネルギーを吸収してる?」
「……貴様に殴られた後、身体が赤く光り次の瞬間には爆発していた。それに身体も若干だが大きくなっている。間違いないだろう」
「俺の拳でアレだぞ。核爆発なんて食らったら…」
「マズイな」
「だよな。ちょっと行ってくるわ。カーラ、カルを見てきてくれ」
「はい!」
俺は堕ちてくる奴に向かって飛んだ。
そして奴の腕を掴むと、そのまま空中で背負い投げをして街から離れているストライカーズ島に投げた。
ストライカーズ島はメトロポリスとゴッサムシティの間にある大きな川に存在する島だ。
あの島は無人島だ。人間は誰もいないから爆発したって平気だろう。
投げた場所へ飛んでいくと、奴は起き上がりエネルギーを迸らせながら雄叫びを上げた。
「グオオオオオオオオオオオ!!!!」
雄叫びを上げた瞬間、奴の身体からドーム状に赤いエネルギーが広がり、島にある廃墟を破壊していく。凄まじいエネルギーだ。
俺にエネルギー波が襲いかかってくるが、特に何もせずに浮かびながら終わるのを待った。
爆発が収まると奴が変化していく。身体を掻きむしり皮膚を剥がすと、剥がした箇所が盛り上がりより大きく真新しい皮膚と強靭な筋肉が出てきた。更に身体の至る場所から鋭く尖った骨が飛び出て最初に見た時より禍々しい姿へと変わった。
俺は奴の側に降り立つと、声をかけた。
「よう、エネルギーが大好物みたいだな」
「グア…」
憤怒の表情を浮かべながら俺に顔を向ける怪物。そして両目を輝かせた。
「うお!」
俺は腕を前に出して奴から放たれた極太の熱線を防ぐ。熱線まで撃てるのか!まあゾッドの身体を使って産み出されたからそれも当然か。ってことはアイツ太陽浴びたらもっと強くなるのか?それに攻撃を受ければ受けるほど、そのダメージを吸収して自分のエネルギーにしちまう。無敵じゃねーか!
奴の熱線を受け止めつつ、奴を倒す方法を模索する。
うーん……クリプトン人なら再生できないくらい粉々にすれば殺せるけど、あの巨体と強靭性、そして少しでも倒すのが遅れると爆発するのが難点だな。それに身体も大きくなって強くなる。うーん……
クリプトナイトがあれば頭にでもブッ刺せば死ぬだろうが…あれはクリプトンの消滅と共に消えた。もはや手に入る事はない。
とりあえず、色々やってみよう。
「よいしょ!」
俺は腕を振るって熱線を弾き飛ばすと、地を踏み締め奴に近づいた。
奴は突然目の前に現れた俺に驚きつつも、拳を握り殴り掛かってくる。それを右手で受け止めた。
奴の拳が当たった瞬間、轟音と共に衝撃波が起こって俺の髪の毛を揺らした。
俺は受け止めた拳をそのまま爪を立てて握り潰す。よく分からない色の血が噴き出し、俺の顔を汚した。
「ペッ!ペッ!不味い……」
「ガアアアッ!!」
奴が痛みに悶え腕を振り回し離れようとするが、俺の掴む力に抑えられ身動きがとれない。
ふむ…感触はそれほど硬くない。少し力を込めればどうにかできそうなレベルだ。ダークサイド並に硬かったらどうしようかと思ったけど、大丈夫そうだ。攻撃を受けて強化されても耐久力はそれほど変わらないみたいだ。
俺の指が食い込んだ拳を、強引にこちらに引き込み地面に押し倒すと、俺は少し浮き上がり勢いをつけガラ空きになった奴の鳩尾に向かって拳を叩き込んだ。
「ゴハッ!!!!」
俺の拳が叩き込まれた瞬間、地面が陥没し奴の身体が沈む。そして俺は目を輝かせた。
ビィーンという音と共に俺の目から青い熱線が放たれ奴の身体を焼き焦がす。
肉の焼ける臭いがしてきた。なんか腹減ってきたな。
そんな考えを振り払い、一旦熱線を止め更に拳を叩き込む。そして奴が沈むとまた熱線を放ってダメージを与えた。
暫く熱線と拳の叩き込みを繰り返し、奴の身体がペチャンコになったのを確認すると、俺は衝撃によって出来上がったクレーターから浮かび上がって脱出した。
「やったか」
ファオラが側に来て言った。
「うーん……いや、まだだ」
俺がそう言うと、クレーターから大きな気配と地響きと共に赤いエネルギーと熱線が溢れた。
「グゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「うおお!」
「……凄まじいな!」
熱線が空へと伸びて、その後悍ましい咆哮が聞こえた。そして俺たちの目の前を極太の赤い熱線が掠めた。
かなり深くなったクレーターのお陰でエネルギーによる周りへの被害をかなり抑えられた。殴っといて良かった。
そして奴が穴から飛び上がり宙へ浮かび、怒りを滾らせこちらへ襲い掛かろうとした時、上空からソニックブームを纏いながらカルが高速で飛行し、奴にタックルをかました。
盛り上がった小さな山に吹き飛んでそれを貫通すると、幾つもの瓦礫を突き抜けゴッサムの方へ飛んでいってしまった。
「あ」
カルの声が聞こえた。
ゴッサムハーバーの廃墟となった銀行に激突し、建物が崩壊してやっと止まった。
「おいカル!飛ばし過ぎだ!」
近くに浮かぶカルにそう言うと、頭をポリポリ掻きながらこちらへと近づいてきた。
「チャージしすぎて昂ってました…!それよりアイツちょっとデカくなってませんか?」
「あぁ、受けた攻撃のエネルギーを吸収して強くなるみたいだ……」
今まさに起き上がった怪物が咆哮を上げ、また爆発した。毎回毎回爆発して忙しい奴だな。ん?
スーツのポケットに入ってるダークサイドに貰った銀色の玉が震えてる。なんだ?
ポケットから玉を取り出し見てみると、ゆっくりと波打っていたはずの玉が今は激しく脈動している。
んー?なんだこれ?
「《おい》」
「え?」
「《聞こえるか?》」
「あ!デサード?」
銀色の玉っころからデサードの声が聞こえた。これ通信機だったのか。
「どうしたんだ?」
「《お前のいる
「ブームチューブ?」
「《転送だ。お前がそこへ帰る時に使った光の柱のことだ》」
「え、ってことは誰かきたのか?」
「《言っておくがダークサイド様ではない。お前との盟約により
「なにー?」
「《ではな、警告はした。それと……あ!ちょ!》」
「どうした!?」
「《……ヴーよ》」
あ、ダークサイドだ。
「《次はいつ来るのだ》」
「え〜!?つい昨日なんだけどな……戻ったの」
「《はやく来い》」
「《ダークサイド様!返してくれ!というわけだヴーよ!警告したからな!》」
デサードの声が最後に聞こえそれ以降何も聞こえなくなった。玉の動きもゆっくりになった。通信が切れたのか。
「おい今のは……」
「あー…デサードだ。地球に侵入者がいると警告してくれた」
「あの怪物もいるのに侵入者か…」
「あの…デサードとかダークサイドって…」
そうか、そういえばカルは知らなかったな。
「俺がファントムゾーンに吸い込まれたあと辿り着いた場所で色々世話してくれた奴らだ」
「……なるほど」
しかし、侵入者か……どこのどいつだ?こんな大変な時に…あ?
ゴッサムハーバーの先の空に光の柱が伸びているのが見えた。そしてそこにカーラが飛んでいくのも。
「あれが侵入者とやらか、カーラが行った様だな」
ファオラもそれに気付き言った。腕を組みカルに顔を向けると口を開く。
「カル、援護に行ってやれ」
「え?わ、わかりました!」
スパァン!と破裂音がしてカルが空へ消えた。あちらはカルとカーラに任せよう。俺とファオラは怪物の相手だ。
怪物が吹っ飛んでいったところを見ると何やら低空飛行している飛行機を狙って熱線を放っていた。あ、被弾した。
なんだ?あの飛行機?危ねーな…
「なんかヤバそうだ。俺たちも行くぞ」
「うむ」
そうしてゴッサムハーバーに向かうと、墜落した飛行機に追い討ちをかけようと怪物が目を赤く輝かせ、熱線を放とうとしていた。飛行機に乗っている黒ずくめコスチューム男はベルトが引っかかって逃げられていない。
奴の熱線が放たれたその瞬間、俺は飛行機と奴との間に降り立ち手を翳し熱線を防いだ。
そして腕を振り上げ熱線を上空へ弾き飛ばすと、脇を締め
俺の拳から拳圧が飛び奴に炸裂する。全身をタコ殴りされたように吹っ飛んでいくと、上空からファオラが急降下して拳を叩き込んだ。
衝撃波が俺の身体を撫でる。そして後ろを見ると飛行機から男が脱出していた。
「大丈夫か?」
「た、助かった…あなたは…」
「俺はヴー=ロリ、はじめましてか?君は確か…」
「おい、奴が起き上がるぞ」
ファオラが奴から離れ、こちらに来て言った。奴の方を見るとエネルギーを迸らせ身体を掻きむしっている。来るぞ来るぞー!
「グアアアアアアアアアアアア!!!!」
もう見飽きたエネルギー爆発が起こる。俺は後ろにいる男に近づき覆い被さった。
そして爆発をやり過ごし、男を離すと奴に向き直った。
「グガァ……」
「まだ大きくなるのか?これはあまり長引くとヤバそうだ」
奴の姿はさっきよりも更に大きく発達し、もはや最初に見た時の姿とはかけ離れている。顔も筋肉も、そして頭に生えた2本の角。まるで日本の鬼の様だ。
「一気に仕留めないと強化するだけで意味がないぞ」
ファオラがスーツについた汚れを払いながら言った。
そんな事は分かってる。ちくしょう、さっきまでは楽勝だと思ってたんだけどな。ここまで厄介なやつだとは思わなかった。
「まあでも、中々楽しくなってきた」
一方その頃……
ダイアナは銀色の巨大な戦士、ステッペンウルフと戦っていた。
稲妻を纏う巨斧を片手で難なく振い、巨体に似合わない俊敏力でダイアナを翻弄した。
クリプトナイトの槍は早々に離れた場所に投げた。鍛え上げられていない鉱物で作った即席の槍など使い物にならなかったからだ。
「アマゾン、お前は強い。だが……俺には勝てない。大人しく槍を寄越せ」
「く!!」
盾を巨斧で弾き飛ばされたダイアナ。そして怯んで倒れてしまったところに巨斧が迫った。
「女性が1人でいるところを狙うなんて関心しないわね」
しかしその巨斧は上空から急降下し着地したカーラによって止められた。ステッペンウルフの巨体から繰り出された竜をも殺す一撃を、特に何もせず肩で受け止めた。
「クリプトン人…!!」
ステッペンウルフは突然現れ自身の巨斧を止めた女にそう言った。
巨斧を肩で止めたカーラは、その斧に拳を叩きつけ砕くと、そのまま浮かび上がり腕を振り上げてステッペンウルフの顔を殴った。
「グボオ!!」
カーラの右フックで木々を倒しながら吹き飛んでいくステッペンウルフ。
「ダイアナ王女!大丈夫ですか!?」
そしてカーラは後ろへ向き、倒れているダイアナに手を差し出し立ち上がらせた。
「カーラ…ありがとう助かったわ…」
「2人とも大丈夫??」
カルが2人の側に降り立った。
「カル!あの怪物は?」
ダイアナがそう聞くと、カルは歩き2人の前に出ると身構えながら言った。
「あっちはヴーさんとファオラさんで大丈夫です。それよりも今カーラがぶっ飛ばしたアイツです。あの手に持ってる槍は……」
「あ……(マズいマズい!!!)」
ダイアナがカルの背中越しステッペンウルフを見ると、その手には緑色に淡く光る槍が握られていた。
「あれはクリプトナイトよ…」
「え!?なんでそんなものが!?」
カーラが驚きダイアナの顔を見る。クリプトンで育ったカーラにはクリプトナイトが今の状態でどれほど危険か分かっていた。
「え?え?クリプトナイトって?」
カルだけは分かっていなかった。
「私達クリプトン人の母星に存在する鉱物よ…そして私達を弱くしてしまう唯一弱点……なぜ此処に…?」
「ルーサーがあなた達を殺す為に南インド洋から採掘したのよ」
「南インド洋…?それって僕がワールドエンジンを破壊したところだ」
「テラフォーミングで生成されたのね。カル、あれに近づいちゃダメだからね!」
「わか……あ!アイツ!」
3人が身構えたところで、ステッペンウルフはブームチューブを起動し去っていってしまった。
「あのーダイアナ……」
カルが振り向き苦笑いしながら言う。
「非常にマズいわ……!!!」
ダイアナの声が静かな森に響いた。