かつてステッペンウルフは甥であるダークサイドを裏切り、ダークサイドの座す玉座を簒奪しようとした。彼は捕まり死よりも恐ろしい拷問を受け、アポコリプスを放逐された。
しかし彼はダークサイドの元に戻りたいと考えた。彼の隣に立ち、彼と共に数多の世界を征服したかった。
だが裏切り者をそう簡単にダークサイドが許すはずもない。そしてダークサイドは言った。
「5万の世界を我に捧げよ。さすれば我の隣に立つ事を許可しよう」
ステッペンウルフはそう言われダークサイドの名のもと世界の征服を始めた。宇宙を駆けずり回り無数の世界を滅ぼし、ダークサイドへと捧げた。だが…まだまだ5万には程遠い。
そんなある日、ステッペンウルフは強大な気配を察知した。
「マザーボックスが目覚めた」
マザーボックスとはかつてダークサイドが使用していた正方形の箱の事だ。破壊と創造のパワーを秘めており、事象の書き換えや物質の変換を行う事ができる神秘の道具だ。それを3つ合わせユニティという現象を引き起こす事で、世界を一瞬で滅ぼす事も可能だった。
5000年前ダークサイドが地球を滅ぼそうとした時に使用したが、敗北した事で地球に置き去りになり、そのまま忘れられたものだ。
3つ持ち込まれたマザーボックスは地球の種族によって厳重に封印され隠された。しかし、それが1人のとあるクリプトン人によって封印が緩みマザーボックスが目覚める事となる。
マザーボックスには意思がある。邪悪で卑劣で狡猾な意思だ。その意思は封印されていても箱の中で生きていた。
そしてヴーが地球へ帰ってきた日、ファオラの踵落としによって地上へと墜されたヴーの身体に滾った極大エネルギーと、ヴーの持っていた極小のマザーボックスから放たれるダークサイドの濃密な気配が、地上に墜された衝撃による爆発で地球全体に伝播した。
そうして地球の各地に封印された3つのマザーボックスが目覚めた。
アトランティス王国。サイラス・ストーン博士の自宅。そしてアマゾン族の住まう人界から隔絶された秘島セミッシラ。
ステッペンウルフは最も封印が解け場所が判明しているセミッシラのマザーボックスを手に入れるべく、マザーボックスに座標を合わせブームチューブに乗ってセミッシラに侵入した。
セミッシラのマザーボックスは島の僻地にある石のドームに隠されており、そこにはアマゾン族の中でも一騎当千の選りすぐりの戦士達が警護に当たっていた。
封印が緩み、マザーボックスを包む強固な封印がヒビ割れ邪悪な気配を醸し出すのをアマゾン族の女王は見ていた。
「なぜ目覚めたの」
「分かりません…ただつい先程感じた
「確かに
マザーボックスから放たれる邪悪な気配と鼓動が強くなったのを感じ取った女王ヒッポリタが娘達に号令を出す。
戦士たちが盾を構え剣を抜き放った。
「「「ヤァーーーーーーッ!!!!!」」」
戦士たちの大気をも震わせる雄叫びがドームを揺らし、パラパラと砂粒が落ちてくる。
そしてマザーボックスの鼓動が一瞬止まると、上空から光の柱がマザーボックス目掛け勢いよく落ちた。
光の柱が大地に着いた瞬間、衝撃波がドームを襲うが女王は護衛に守られ、マザーボックスを囲っていた戦士たちは微動だにせずそれをやり過ごした。
そうして光の柱からパラデーモンとステッペンウルフが現れた。
稲妻を纏う巨斧を携えたステッペンウルフが周囲を見渡し、そしてマザーボックスを見ながら言った。
「んー……守護者か……貴様らは数多の世界を守りきれず滅ぼした。貴様らに大暗黒を思い知らせてやる!恐れ慄くがいい」
ステッペンウルフがそう言うと、女王ヒッポリタが剣を抜きながら前に出た。
「セミッシラの娘たちよ!恐れるか?」
「「「我らは何も恐れぬ!」」」
そして戦いが始まった。
周囲を飛ぶ無数のパラデーモンが手に持った銃を戦士に放つ。銃から灼熱のエネルギー弾が放たれ戦士に向かっていくが、戦士はそれを盾で弾き、
それを見たステッペンウルフは驚き声をあげる。
「なぜだ!!!」
戦士たちが続々と浮かび上がり、ドーム内を飛行してパラデーモンを剣で叩き斬り、両手を打ち鳴らし風圧で吹き飛ばし、目から熱線を放ち焼き貫いた。
アマゾンの女戦士達が縦横無尽に動き回りパラデーモンを殲滅していく。
「なぜ……奴らは絶滅したはず…!」
1人の戦士がステッペンウルフに剣を振り上げながら近づく。それを手に持った巨斧でなんとか防ぎ大きく斬り払いをして戦士を離すと、何としてもマザーボックスを手に入れようと手を伸ばした。
しかし、マザーボックスとの間にまた別の戦士が降り立ち、両腕を大きく広げ手を鳴らした。
「グハァッ!!」
戦士の放った風圧で吹き飛ばされ石壁に叩きつけられたステッペンウルフ。
「グウウウ……!!貴様らクリプトン人と交配したのかぁ!!!!」
「フフ…強い男に惹かれるのは当然の摂理…」
ヒッポリタが微笑みながら壁にめり込むステッペンウルフの首に剣を向けた。
ステッペンウルフが周囲を見渡せば、連れてきたパラデーモンは全て殺され地に伏していた。
そして誰1人として犠牲者の出ていないアマゾンの戦士たちが全員目を赤く輝かせステッペンウルフを睨みつけていた。
「地球から出ていきなさい」
「覚えていろ…!!!」
ステッペンウルフはブームチューブを起動し消えた。
「女王……良かったのですか?殺さなくて」
側近が剣を腰の鞘に仕舞った女王に尋ねた。
「いいのよ。どうせ何もできやしないわ」
「……そうですね!」
そうしてマザーボックスを守り抜いたアマゾン。
警護に当たっていた次世代のアマゾンをドームに残し、女王は居城へと戻った。
「今も彼を感じる。ダイアナに知らせなければ……」
我らの王が帰還したと……
アマゾン族はヴーというクリプトン人の中でも強い遺伝子を持った男と交わり子を成した。そうして産まれたのがアマゾン族とクリプトン人のハーフだ。元より強靭な身体を持つアマゾン族と太陽の光を浴びる事で無敵のパワーを持つクリプトン人。それが交わればどうなるだろうか?
ヴーが地球に訪れてから約35年が経った。その間地球では様々な事が起きた。自然による大災害、人間の過ちによる人災、ヴー達はあまり干渉せずにカルを探していた。しかしある時、とんでもない事件に彼ら(主にヴー)は巻き込まれる。
それがマックス・ロードという男が引き起こした全世界を巻き込んだとんでもない大事件である。
その事件というのは古の邪神の道具。なんでも願いが叶う石を用いたものだ。石に向かって願いを言えばそれが叶う…しかし代償に自身の何かを奪われるという代物だ。
マックス・ロードはそれを使って世界中の人間の願いを叶え、代償として奪った様々な権力で世界の王となろうとした。
ダイアナはそれを止めるべく自身の願いで蘇ったスティーブ・トレバーと共に奔走した。しかしダイアナも代償として、自身に宿る神々の力を奪われ事態は悪化していく。
そこに現れたのがヴーだった。
テレビを観ていたヴーは、見知らぬ男が願いを言えば全て叶う!と豪語していたのを真に受け「カル=エルはど……」と言おうとしたところを、ファオラにぶん殴られ止められ意気消沈しながら街の上空を飛んでいると、街で奇抜な鎧を着ている女性を見つけた。それがダイアナだった。
ダイアナは傷だらけで、男に縋りつき泣いていた。話を盗み聞くと、
「俺を消せば君の力は戻る!」
「ダメ…そんな事できない…!」
「いいんだ…少し間だけど君と過ごせて楽しかった」
「嫌だ嫌だ…!ダメよ!」
「あ、あの〜〜……」
なんだか見ていられなかったヴーは2人に声をかけ、色々話を聞いた後に協力を申し出て、説得されたダイアナはスティーブの魂を冥土に送り返すと、ヴーと共にマックスを止めに行ったのだ。
そうしてヴーはダイアナと知り合い、暫く一緒に過ごすとダイアナの故郷に案内された。そこでヴーは見た目麗しい美女に囲まれ………理性を捨てた。
そしてクリプトン人の中でも異質で強大なパワーを持つヴー=ロリ。彼はアマゾン族と子を成した。
「グオオオオオオオ!!!アマゾン!!!」
ステッペンウルフは征服した世界で慟哭していた。
簡単に回収できるはずだったマザーボックスを女だけの種族に敗北し、奪うことができなかったからだ。
「まさかアマゾン族にクリプトンの血が混ざっているとは……奴らは俺では殺せない…!クソォ!せっかくマザーボックスを見つけたというのに!あれさえ手に入れれば……」
ステッペンウルフは懐から極小のマザーボックス携帯を取り出し地球の様子を探った。
銀色の玉から地球の様子が映し出され、封印された3つのマザーボックスのうち1つが表示された。先ほど行ったアマゾン族の島セミッシラだ。封印が解けマザーボックスから強大なエネルギーが放出し場所が分かる。しかし他の2つは未だ分かっていない。地球に放ったパラデーモン共に探らせているが見つけるにはまだ時間がかかるだろう。
「マザーボックスを見つけたとしても回収が困難だ。忌々しいクリプトン人め!奴らさえ殺せれば……うん?これは…」
人間が多く集まる街で特異な反応を検知した。荒々しいパワーだ。
その場所へズームしていくと巨大な人型の生命体とクリプトン人が戦っていた。
「ここにもクリプトン人か…!この星には何人いるのだ!!!」
もうこの世界は諦めようかな…と思いズームアウトして表示を終わらせようとした時、何かが目についた。
「……あ、あれはクリプトナイト!!!!」
すぐさまブームチューブを起動し、クリプトナイトの槍を持ちながら走るアマゾンの前に、叩きつける様にブームチューブを呼び出した。
そして恐らく戦闘態勢に入っているであろうダイアナに向かって、恐る恐る声をかける。
「アマゾン…」
もし…槍を持っているアマゾンがあの島にいる奴らと同じだったら…今度こそ俺は終わりだ…と震えながら声に出した。
「姿を見せなさい!」
アマゾンの声が聞こえた。随分と警戒している気配を感じる。
ステッペンウルフは意を決してブームチューブから出現した。
纏った装甲をフルで展開し、全身に力を滾らせ、手に持った愛用の巨斧にエネルギーを充填した。
そしてアマゾンの持つ槍を指差しながら口を開く。
「アマゾン、その槍を寄越せ」
なんて強そうな奴だ。ステッペンウルフは目の前に立つアマゾンを見てそう感じた。
だが…あの槍をなんとしてでも手に入れなければ…
いや、正直こんな世界さっさと諦めて別の世界に行った方が良かった…と実は思い始めているステッペンウルフ。しかし、マザーボックスを揃え絶大な力を手に入れれば、今後の侵略は格段に楽になる。マザーボックスとはそれ程貴重な道具なのだ。
(クリプトナイトの槍、それに3つのマザーボックスを手にすれば俺は返り咲ける…!!!)
そうしてアマゾンと戦いを始めた。
マザーボックスを守るアマゾンと違って、槍を持ったアマゾンの女は弱かった。まあそれでも
ダイアナの隙を突き怯ませ地面に倒し、斧を叩き込もうとした時、いきなり現れたクリプトン人の女にそれを防がれ、愛用していた巨斧を粉砕されたうえに一撃で吹き飛ばされてしまうも、吹き飛んだ先にダイアナの投げたクリプトナイトの槍が落ちていた。
「馬鹿な奴だ…!」
「あ!アイツ!」
そしてステッペンウルフはクリプトナイトの槍をなんとか手に入れた。
だが、失った物がある。
数千年の時を共に戦った
ステッペンウルフは暗黒の空を見上げ一筋の涙を流した。
極小のマザーボックスは移動や通信、世界を覗くぐらいしかしか使えない。