奴こそ1万年に1人産まれる伝説の……   作:物体Zさん

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怪物殺し

 

 「なに?クリプトナイトの槍を奪われただと?」

 

 怪物と戦っていると、離れた場所でファオラの声が聞こえた。

 

 光の柱に向かったカーラとカル、そして其処にいたダイアナがゴッサムハーバーにきていた。横目でチラッとダイアナを見ると、ものすごく申し訳なさそうな顔をしている。でも美人だ。あ、目が合った。

 

 途中で助けた黒ずくめのコスチューム男は帰ってきたカルとあれこれ話し、避難していった。

 

 というかクリプトナイトの槍?そんな物があったのか?しかも奪われた?

 

 「ファオラさん…申し訳ないわ…私のせいよ」

 「うむ……その奪った奴は?」

 「光の柱に乗って何処へ去ってしまったわ」

 「そうか、いやまさかクリプトナイトが現存していたとはな…そちらのほうが驚きだが…ん?なるほど、貴様はアレを殺す為に」

 

 てかみんなそこで話してないで、こっち手伝ってくれないですかね。

 

 「そう…南インド洋で見つかったクリプトナイトをルーサーが保管していたの。アレはクリプトン由来のものでしょう?だからイケると思ったんだけれど…」

 「まんまとしてやられたわけか」

 「ええ……それにさっきセミッシラにも襲撃があったみたい。母から連絡があったわ。太古から守り続けてきたマザーボックスを奪いにきたと……まぁ失敗に終わった様だけれど」

 「チッ…奴の娘達が活躍したのか……なるほどそれでクリプトナイトの槍を奪いにきたわけか」

 

 クリプトナイトがあれば目の前のコイツを簡単に殺せたんだがなぁ…まぁダイアナが焦るのも無理はないか、クリプトナイトはクリプトン人にとっての唯一の弱点みたいなもんだ。俺には関係ないけど…ファオラやカル、カーラにララさんはちょっとヤバいな。どんなに鍛えていても死ぬかもしれない。セミッシラにいる…お、俺の娘達も…あ〜ヤバいファオラの殺気をひしひしと感じる。

 

 おっと!

 

 俺は奴の剛腕から放たれた拳を身体をズラし避けた。風圧が俺の髪を揺らし、身体の後ろにあった瓦礫が吹き飛んだ。

 

 俺はそれを見届けると超スピードで後ろに下がり、距離を離した。

 

 普通の人間がこんな攻撃に当たれば吹き飛ぶどころか、爆発四散して肉片と内蔵を撒き散らすことになるだろう。だが…当たらなければどうという事はない。

 

 それにコイツ、俺と戦ってる内にどんどん強くなってやがる。身体とかの強度とかじゃなくて、戦闘センスというか、戦い方が上手くなってるんだよな。

 

 ついさっきまでは雑で子供の喧嘩みたいな動きをしていたコイツは、今ではちょっとした格闘家ぐらいの動きをしている。まだまだ乱暴さは残っているが、攻撃の一つ一つに鋭さをというかキレを感じてきた。

 

 ゾッド将軍を素体に産み出したんだ。まあ当然か!クリプトンにいた時も俺の攻撃に対処していたし、地球でもまだ完全に適応していないにも関わらず、カルやカーラを圧倒していたと聞いた。

 

 もし彼が与えられた役割を捨てることができたならば、クリプトンというものに拘らずに自身の未来を考えることができていれば、きっと良い未来があったと思う。

 

 今ではこんな怪物に成り下がってしまった。

 

 俺とファオラの攻撃によって身体は倍以上に大きくなり、肌は赤く常に赤く光っている。口に乱雑に生えた牙は大きく太く生え揃い、見るからにヤバい。死して尚人間に利用され、安らかに眠ることもできない。ただ目の前にあるものを破壊し尽くす怪物に……

 

 俺の目の前にいる怪物が動いた。

 

 奴の放つ右ストレートを腕を振い弾き、次に飛んできた左フックを下から拳を入れて打ち上げ、至近距離で拍手による風圧を起こして大地に向かって落とした。

 

 幸い動きはまだまだ捉えられる。苦戦する事はありえない。

 

 轟音と共に落とされた怪物がすぐさま巻き上がった土煙から飛び出てくる。

 

 浮かんでいる俺に、鋭く尖った爪を振おうと手の平を鉤爪のような形にして高速で接近してきた。

 

 「おー怖い怖い」

 

 俺は攻撃を避けるために上に飛んだ。スパァン!と音が聞こえ景色が変わる。

 

 下を見ると、奴も俺を追って浮かび飛んできていた。

 

 飛びながら振り向いて、目を輝かせる。

 

 「くらいやがれ」

 

 俺の目から青い熱線が放たれ奴に直撃した。

 

 「グガァ!!」

 

 奴の胴体に熱線がぶち当たり、落下していく。俺は熱線を放ちながら落ちていく奴を追って急降下をしていった。

 

 そして奴が地面に当たるすんでのところで、超スピードで下に回り込み、踏み込んでアッパーを背中に喰らわせ、また空へと打ち上げる。

 

 「スウウウウウウウ………」

 

 空へと上っていく奴を見上げながら息を思い切り吸い込み、全身にエネルギーを滾らせる。俺の全身の筋肉が膨張を始め大きくなる。身体の周りを溢れでたエネルギーが迸りバチバチとスパークが起こり始めた。

 

 「ハアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 一気に気合いを入れて、大地を踏み飛び上がった。

 

 爆発音が響き大地に大きなクレーターを残し空へと飛ぶと、一瞬で奴に追いついた。

 

 奴の背中に向かって両手を前に突きだしながら飛び、奴の身体ごとどんどん空を上っていくと、大気圏を一瞬で突破して宇宙空間へ出た。更に奴の背中に1発拳を叩き込み地球から離すようにぶっ飛ばした。

 

 「もうすぐ太陽が出る」

 

 横目で地球を見ると、影から陽光が見えた。そろそろ決着をつけないと奴はもっと強くなる。

 

 ………正直、際限なく強くなる怪物とずっと戦っていたい気持ちもあるにはあるが、これ以上ゾッドが変わり果てるのを見たくない。見ていて可哀想だ。誇り高いクリプトンの将軍がこんな醜い怪物になってしまうなんてよ!

 

 「終わりにしてやる」

 

 俺は目を輝かせ、緑色に輝く熱線を放った。

 

 怪物の大きな身体を全て飲み込むほどの極太の熱線が俺の目から放たれる。

 

 「グゴオオオオオオオオオ!!!」

 

 奴も両目から熱線を放ち、俺の熱線にぶつける。

 

 そこで俺は更に力を込めた。

 

 「ウオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアア!!!!」

 

 エネルギーが高まる…溢れる…!!!!

 

 俺の身体を気持ちの良い全能感が支配する。

 

 そのままどんどん出力を上げていく。奴の放っている熱線を押し返し突き抜け消し飛ばすと、緑色の熱線が奴を飲み込む。

 

 周囲の宇宙空間が俺のエネルギーに染まり、そして光に包まれた。

 

 怪物が光の中で粒子へと変わっていくのが見える。不死身の怪物を殺すには再生できないくらい粉々にしてしまえばいい。

 

 そうして俺は完全に怪物が消えたのを確認すると、地球へと戻った。

 

 

 

 

 

 地球へ戻ると、ファオラ達が焦土と化したゴッサムハーバーで待っていた。

 

 戻ってきた俺に気づいたファオラが腕を組み睨みながら俺に言う。

 

 「しっかり殺したんだろうな」

 「見えてただろ?楽勝だよ」

 「ヴー君、槍は必要なかったみたいね」

 

 ダイアナが近づき、俺に声をかける。

 

 「あ〜ハハハ、いやーダイアナ!君はいつ見ても綺麗だね。決して下心はないけどさ、今度お空をビュンビュン一緒に飛んでみないか?」

 「おい…」

 「フフフ」

 「あ、ファオラ。ダイアナにはこう言ったけど本命はお前だけだ。愛してるぜ……あ!俺の筋肉が好きなんだろ?ほら触ってみろ………あれ」

 

 俺の足に金色輝く縄が巻きついていた。あ〜これってダイアナが使ってるヘスティアの縄だっけ?真実を吐かせるっていう……あ、あ、あ、汗が止まらない。

 

 「グボオオホッ!!!」

 

 ファオラが一瞬で近づき俺の鳩尾に向かって強烈な一撃を叩き込んだ。

 

 皮膚と内蔵が背中側に突き抜けるような感覚がした。

 

 「お前を殺す」

 

 なんて強烈な一撃だ…!さっきの怪物よりも凄い衝撃だ…!

 

 ファオラが両目を赤く輝かせ殺気を放ちながら歩いてくる。

 

 「待て待て待て!!うごおおおおお!!」

 

 ファオラのタックルによって地面に押し倒され馬乗りにされると、顔面と胴体に超高速で連続で拳を叩き込まれた。

 

 「ギハギゴグハゴゴハガハガゴハゴハハガホッホホホッハガハァ!!」

 「ファオラさん!死んじゃう死んじゃう!」

 「やっちゃったわね」

 

 カーラの止める声とダイアナの声が聞こえる。

 

 ファオラは制止を振り切り俺に次々に拳を叩き込み、そして首を掴み持ち上げると空へ飛び上がった。

 

 「お、おいファオラ…!」

 「ふんっ!」

 

 そして俺を上空へ投げると、熱線を放った。

 

 ファオラから放たれた熱線が俺の身体に当たり、蒸気が上がる。

 

 ちょっと熱い!

 

 「ハアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 ちょ!アイツ本気だ!

 

 ファオラの熱線が収束を始め赤から紫へと変わり、そして真っ白に変わっていった。

 

 ヤバいヤバい熱い熱い!

 

 熱線が当たっている俺のスーツが赤熱を始め、俺の皮膚にまで熱を伝える。俺のエネルギーによって強化されたスーツを貫通する事はないが、猛烈な熱を俺に伝えている。

 

 そうしてそのまま熱線によって宇宙にまで打ち上げられた俺は、いつの間にか追いついていたファオラによって再度掴まれ月に向かって投げ飛ばされる。

 

 「ガハァ!」

 

 月に叩きつけられ身体の力が抜けた。

 

 そして着地したファオラがゆっくり歩き俺に近づいてくる。

 

 「ダイアナやカーラの前で私に恥をかかせるとはいい度胸だな。お前は忘れていると思うが私は“年上"だ。これ以上……ん?」

 「なんだ?なにか…」

 

 地球から何か聞こえた。

 

 叫び声のような……

 

 「嫌な感じだ。戻るぞ」

 「分かった」

 

 バァン!と音を立て月から飛び立ち、超速で地球に突入。そして叫び声が聞こえた場所に着地した。

 

 「アアアアアアアアアアア……」

 「カル=エル!!!」

 

 俺とファオラの目の前でカルがクリプトナイトの槍で背中から心臓を貫かれていた。

 

 「てめぇ!!!!」

 

 俺は踏み込み槍を持つ銀色の巨大な異星人に腕を振り上げ殺そうとするが、突如として現れた光の柱に阻まれ弾き出された。

 

 「まずは1人……!」

 

 銀色の異星人がそう呟き、光の柱の中に消えていった。そしてカルが地面に斃れそうになったところを、俺はすぐに近づき抱えた。

 

 「カル!!!」

 「クリプトナイトか……!」

 

 カルの身体、心臓のあった場所にはポッカリと穴が空いており、再生が始まる気配もない。

 

 傷口をよく見ると小さな緑色の結晶がついていた。クリプトナイトだ。

 

 カルは口からドス黒い血を吐き出し、目がゆっくりと閉じていく。

 

 ダメだ……なんてことだ……!!!そんな!!!

 

 「太陽だ!太陽を!」

 「無駄だヴー……」

 

 カルを抱え飛び立とうとする俺の肩をファオラが押さえ止める。

 

 「もう死んでいる」

 「こんなことがあっていいのかよ……」

 

 俺の腕の中で冷たくなったカルを見て言った。

 

 息も、血も、脳に走る電気信号も、何もかもが停止してしまった。

 

 「な、なにが!」

 「まさか…」

 

 カーラとダイアナだ。

 

 「そんな……」

 

 カーラが俺の腕で眠るカルを見てカーラが悲痛な声を絞り出す。

 

 何かが俺の中で渦巻く。

 

 「ヴー……」

 

 

 

 「アイツは俺が殺す」

 

 

 

 




???「でぇじょうぶだ、マザーボックスで生きかえれる」
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