奴こそ1万年に1人産まれる伝説の……   作:物体Zさん

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Suicide Squad
収監


 あれから数ヶ月が経った。

 

 俺は酒を飲み、飯を食い、トレーニングもサボってダラダラと毎日を過ごしていた。なんというか、自暴自棄というやつだ。カルを守れず、死なせてしまった。そのただ一点が俺の心に暗い影を落とした。

 

 ララさんやマーサさんにあわす顔がなく、俺は2人に何も言えないまま逃げるように姿を消した。

 

 カルの葬式にも出ていない。とてもじゃないが俺は葬式なんて出れる状態じゃないし、申し訳なくて出れなかった。

 

 最初こそカルを殺した奴を探し回っていたが、奴は一向に姿を見せないし、地球へやって来る気配もなかった。

 

 アポコリプスにいるデサードに協力を仰ぎ、カルを殺した者の素性を教えてもらった。銀色の流動する刺々しい装甲を身に纏った巨軀の異星人。顔はダークサイドやデサードに似ていた。その事をデサードに伝えると、少し戸惑いを感じる声色で俺に言った。

 

 「《そいつは恐らくステッペンウルフだ。ダークサイド様を裏切り、アポコリプスを追放された者(奴め…まさか地球に手を出すとは…死んだな)》」

 

 ステッペンウルフ。それが卑怯者の名だった。奴の目的は地球に存在する3つのマザーボックスという道具だという。よく分からんが、デサード曰くユニティがなんちゃらで一瞬で世界を滅ぼせる代物らしい。そんなもんなんで地球にあんだよ!と聞いたらダークサイドが昔地球へ侵略した時に持ち込んだ物で、敗北の際持ち帰るのを忘れてしまったと言っていた。

 

 本当にいい迷惑だ。

 

 そんな大量破壊兵器は地球には置いておけないって事でセミッシラのアマゾン族が保管するマザーボックスはアポコリプスに転送した。他の2つは場所が分からなくて何もできていない。

 

 だが…奴がそれを狙って必ず地球へやってくる。その時が奴の最期だ。

 

 しかし、待つのは性に合わない。何処にいるか知っているか?と聞いても把握できていないと言われた。まぁ…デサードがそう言えばそうなのだろう…

 

 地球を離れ探しに行こうとしたが、俺がいない間にステッペンウルフがやってきて誰かを殺したなんてなったら俺はもう立ち直れない。だから地球を離れる訳にはいかなかった。

 

 奴がクリプトナイトを持っている限り、俺以外のクリプトン人では対処できない。

 

 奴は強い。ダイアナが苦戦する程だと言っていた。クリプトン人には手も足も出ない奴ではあるが、それはクリプトナイトを持っていなければの話だ。アレがある限り、俺を除いてクリプトン人は誰も奴には勝てないだろう。

 

 そんなこんなでステッペンウルフを熱心に探していた俺だが、奴は一向に現れない。

 

 そしてカルが死んで2日、3日、1週間と経ち、奴が現れないまま数ヶ月が経ち、俺はダラダラと過ごすどうしようもない男になっていた…というわけだ。

 

 何を言ってるか分からねーと思うが、俺は今牢屋にぶち込まれてる。牢屋っていうか刑務所だ。

 

 バーで酒飲んでたら金がなくてよ…店主に通報されてあれよあれよと捕まって、なんでか知らんがベル・レーヴ刑務所に収監されちまった。まぁ…時折やってくる看守以外は静かな場所でいい。独房には俺1人だけだし、周りは鉛と少量のクリプトナイトで固められてて見えない。俺にクリプトナイトは意味ないし、鉛はただ周りが見えなくなるだけで簡単に破壊できる。出ようと思えば出れるけど、1人になるには最適な場所だった。

 

 1日に1回独房を出て刑務所内にある広場で自由時間があるんだが、そこで俺以外の囚人に会える。あ、勿論外に出る時は手錠をする。俺の手錠は特別製でなんと貴重なクリプトナイトを使ってる。まぁ…独房の壁と同じく少量ではあるし、全くもって意味がないから間違えて破壊しないように気をつけている。

 

 なぜ脱獄しないのか?

 

 たまには1人でゆっくりしたいだろ!!!

 

 

 この刑務所には普通の人間以外にも特殊な能力や才能を持った奴が収監されている。

 

 メタヒューマン(超人類)と呼ばれている奴らだ。人間だけど、特殊なパワーを持っている者達のことだ。俺も一応その枠組みに入っているのかな?

 

 この前入ってきたのは爬虫類みたいな人間だ。キラー・クロックと呼ばれていたな。人間だが、病気で鰐みたいになっちまったらしい。気の毒だ。本名はウェイロン・ジョーンズ、広場で会って話したが良いヤツだった。独房は俺と違って地下の水場らしい。テレビが欲しいと言っていた。

 

 俺より前にいたチャト・サンタナという全身に入れ墨を入れた男は自身の持つパワーで妻と子供を殺してしまったという。コイツも気の毒な奴だ…俺よりも気の毒だと言っていい。コイツのパワーは炎の悪魔を召喚して自身の身体に宿らせその力を振るえるようだ。見せてもらったが中々綺麗だった。

 

 それと俺と同じくらいのタイミングで入ってきたフロイド・ロートンという男。コイツはプロの暗殺者で百発百中の凄腕…と自分で言っていた。広場で静かに過ごしていた俺に最初に喋りかけてきた男だ。そして初めての刑務所内の友達だ。娘がいて、娘の為に金を稼いでいたらバットマンに捕えられ、収監された。

 バットマン…俺が助けた黒ずくめのコスチューム男の事だ。ゴッサムシティで犯罪者を懲らしめている正義のダークヒーロー。ここにいる囚人達は大体バットマンに捕まり此処へ送られた。俺は違うけど…

 

 その他にも色々な奴がいる。どいつもこいつも個性的で面白い奴らだ。

 

 そんな事を考えながら、俺は固い床に仰向けで寝ていた。

 

 鉛の無機質な天井には俺の熱線で描かれたステッペンウルフの姿があった。

 

 カルを殺したコイツを毎日眺めながら俺は独房で静かに過ごしている。

 

 「おい!ジョン!」

 

 寝ようかなと思っていたら扉が開き、格子をガンガン叩かれ呼ばれた。

 

 「なんだよ…」

 

 せっかく寝れそうだったのに…

 

 独房の外を見ると看守長のグリッグスとその取り巻き達がいた。

 

 「ほれ!飯だ!」

 

 格子の隙間から食べ物を投げ入れた。

 

 俺は寝ながら床に落ちたそれを拾い口にそのまま放り込んだ。

 

 「どうもな」

 「お前は相変わらずよく分からねぇ…」

 

 そう言ってグリッグスはつまらなさそうな顔をして立ち去った。

 

 「早く自由時間こねーかな…」

 

 俺は与えられた飯をムシャムシャ食いながら考え耽る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜……政府高官のアマンダ・ウォラーはとあるレストランで人と会う約束をしていた。

 

 雨の中、政府の車に乗り込みレストランに向かう。

 

 そしてケースと鞄を持ち車から降りてレストランに入店すると、約束していた人物のいるテーブルへと向かった。

 

 レストランは政府の手によって貸切状態で、会談を行う者達しかいない。

 

 アマンダは席へと座り、先に食事をしていた人物を見る。

 

 「1人のヒーローを失ったというのに、君は嬉しそうだ」

 

 食事をしていたアメリカ軍将校が言った。

 

 アマンダはニヤリと笑いながらそれに答える。

 

 「獲物を捕まえた。苦労したけど、やっと手に入れたわ…最凶の連中よ」

 

 そう言って鞄から分厚いファイルを取り出し、テーブルに置いた。

 

 「ふむ……噂では特殊な能力を持つ者がいるとか」

 「ええ、その通りよ。メタヒューマンの問題点は能力ではなく人間の部分。死んだスーパーマンは人間的だったけど次は分からない」

 「危険すぎる」

 「力には力を、悪には悪で対抗する」

 「タスクフォースXを再開させる気か?」

 「今回は実現させる」

 

 アマンダがそう言うとテーブルに置いたファイルを開きながら、部隊の候補になる()()()を紹介していく。

 

 デッド・ショット、本名フロイド・ロートン。プロの暗殺者。

 

 ハーレイクイン、本名ハーリーン・クインゼル。大犯罪者ジョーカーの恋人で狂人。

 

 キャプテン・ブーメラン、本名ティガー・ハークネス。ぬいぐるみフェチの強盗。

 

 エル・ディアブロ、本名チャト・サンタナ。ギャングのボスで炎を操る。

 

 キラー・クロック、本名ウェイロン・ジョーンズ。隔世遺伝疾患で爬虫類に退化した凶暴な男にして下水道の王。

 

 エンチャントレス、本名ジューン・ムーン。異世界からやってきた魔女に取り憑かれた哀れな女性。

 

 アマンダがファイルをめくり紹介していき、最後のページに差し掛かったところで手を止めた。

 

 「最後に……メトロポリスをゾッドの手から救い、ルーサーが放った怪物を殺し、そしてスーパーマンを守れなかったクリプトン人」

 「待てクリプトン人だと…?」

 

 将校が食事の手を止める。

 

 「ジョン・ヴロリー、本名ヴー=ロリ。クリプトン最強の男」

 「ジョン・ヴロリー…そんな男をどうやって捕まえた?」

 「無銭飲食よ」

 「はい?」

 「まぁ…それだけではないわ。彼は他にもロシアの極秘軍事施設に無断で侵入し兵士や研究員を皆殺しにした。他に政府の人工衛星を落としたり、余罪がかなりあるの」

 

 そしてファイルを鞄に戻すと、大きく深呼吸してナイフとフォークを手に取り料理を口に運び始める。

 

 将校がそれを見てグラスを持ち、一口含むとアマンダを見て言った。

 

 「こんな者達をどうやって纏めるつもりだ?」

 「弱みを持っている者もいれば条件を出して服従させる者もいる。エンチャントレスはこの心臓があれば自由に動かせるし、デッドショットは娘を口実に従わせる」

 「クリプトン人の彼は?スーパーマンと同じだろう。刑務所なんてあっという間に脱獄してどこへにでも行ってしまうのでは?」

 「そうね…その通りよ」

 

 アマンダは食事の手を止めナイフとフォークを戻すと、グラスを取り注がれていたシャンパンを一気に煽った。そして飲み干すと鞄から先ほどとは違うファイルを取り出しテーブルに広げた。

 

 「これは?」

 「これは彼の仲間の詳細よ」

 「ふむ……おい待てファオラ・アレクサンドラだと?彼女もクリプトン人なのか?」

 「そうよ、傭兵会社キャピタルダイナミクスの社長であり自身も傭兵のファオラ・アレクサンドラ、メトロポリスの像のうちの1人ね。それに世界的外科医ララ・ローヴァンもそうよ」

 「そ、そうなのか……ん?カーラ・ダンバース!?あのモデルもそうなのか!?一体この星には何人宇宙人がいるんだ…?」

 

 そうしてアマンダ・ウォラーとアメリカ軍将校の会談が終わり、悪には悪をぶつける極悪犯罪者部隊【スーサイドスクワッド】が結成された。

 

 アマンダ・ウォラーはワシントンDCホワイトハウスへと赴き、早速エンチャントレスによる能力の実演を行いメタヒューマンの有用性を証明した。

 

 しかしそれが新たな危機の始まりだとは、まだ誰も…いやエンチャントレス以外は知らなかった。

 

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