奴こそ1万年に1人産まれる伝説の……   作:物体Zさん

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真実

 

 任務の最重要目標であるHVT1を救出する為に街に入った俺たち犯罪者部隊と軍の特殊部隊は、敵の襲撃に何度か遭いながらも目標が待つ高層ビルまで到着することができた。

 

 目的地に向かう途中で別行動していた特殊部隊が一部音信不通になったりと少しトラブルがあったが、俺達と共に動いていた兵士達は誰も犠牲にならずに済んでいる。

 

 空高く天まで伸びた超高層ビルは明るく雲を照らしていて、一際目立っている。このビルの最上階にHVT1が待っているらしいが…

 

 ビルに突入する前に俺は大変な事に気づいてしまった。

 

 ビルの中には怪物人間がウジャウジャといるのは勿論なんだが、最上階の部屋で待つHVT1とやらは俺のよく知る人物だった。

 

 目を凝らしてビルの最上階を見れば、厳重に隔離された部屋の中で巨大なモニターを見て各所に指示を出す女が見える。

 

 そう、アマンダ・ウォラーである。

 

 奴こそが俺達が救出に向かう最重要目標HVT1だった。

 

 何が絶対に死なせてはならない人物だ。貴重な人員を自分を助ける為にこんな危ない場所に派遣しやがって…というかなんで此処にいるんだよ。お前みたいなのはもっと安全な場所で指示を出してる筈だろ。

 

 「行くぞ」

 

 俺が上を見上げながら考え耽っていると、フラッグが指示を出した。

 

 ビルの大きなガラス扉をぶち破り中に入ると、高層階まで吹き抜けになっていて真ん中にエレベーターが2機設置されていた。そして今まさにそのエレベーターにハーレイが1人で乗り込み登っていく。ハーレイがこちらに手を振って煽っている。

 

 「おい!待て!クソッ行くぞ!」

 

 それに気づいたフラッグが指示を出し部隊を引き連れて隣にあるエレベーターに乗り込んだ。

 

 「フラッグ、俺はこのまま飛んでいくぞ」

 「好きにしろ!」

 

 許可を貰った俺はエレベーターに乗らず飛び上がった。

 

 吹き抜けを飛んでいき、ハーレイの乗るエレベーターを目指す。

 

 俺の視界にはハーレイの乗るエレベーターに怪物人間が近づいているのが見える。アイツ1人でも大丈夫そうではあるが、一応援護しに行こう。

 

 登っていくエレベーターに追いつくと、ハーレイが丁度1人の怪物人間と戦っていた。

 

 ハーレイが不意打ち気味に背後から羽交締めにされるも、自身の体重を後ろ側にかけながらエレベーターの壁を蹴り後ろにグルッと回り込むと、腰のホルスターからリボルバーを抜いて怪物の頭に銃弾を放った。

 

 「グャハッ!!」

 

 やるじゃないか。華奢な身体つきだがちゃんと戦えている。その辺にいるゴロつきとはやっぱり違うな。

 

 俺はエレベーターに近づき、ハーレイに手を振る。そして上からエレベーターに乗り込もうとしていた怪物に一瞬で近づき、階下に向かって投げた。

 

 床に激突して大きなシミになったのを確認した俺はエレベーターを追い越して目的の階に向かった。

 

 エレベーター横の壁をぶち破って中に入ると、先回りしていた部隊と合流した。

 

 壁をぶち破ってやって来た俺に銃を向けるてくるが、すぐに降ろす。

 

 「ビックリさせるな!ハーレイは?」

 「無事だ。もうすぐ来る」

 

 俺がそう言うとフロアにエレベーターの到着音が流れた。

 

 そして扉が開き、ムスッとした表情のハーレイが出てくる。

 

 「ちょっとヴーちゃん!私も連れてってよ!」

 「いや、エレベーターに乗ってたからいいじゃないか…」

 「もういい!!」

 「えー…」

 

 何故か俺が怒られ、ハーレイはプンプンと怒りながら先へ行ってしまった。

 

 「振られたな」

 「ドンマイだ」

 

 フロイドが俺の肩を叩き、ウェイロンがニヤつき牙を見せながら呟いた。

 

 

 ハーレイを追ってフロアを進むと、どこかの会社のオフィスフロアに着いた。

 

 「この先に非常階段がある」

 

 フラッグが場所を示す。HVT1がいるフロアに繋がるエレベーターは壊れていて使えなかったみたいで、非常階段を登るしかない。

 

 ……それにしても誰も気づいていないのか?

 

 「《モーションセンサーに反応がある。敵がいるわよ。戦闘態勢》」

 

 兵士達のイヤホンからウォラーの声が聞こえた。

 

 オフィスに敵の姿は見えない。

 

 「嫌な予感がする」

 「そうだな」

 

 フロイドがそう言うと、フラッグも同じくこのフロアの嫌な雰囲気を感じ取ったのか身構えて言った。

 

 「ヴロリー、上にイルゾ」

 「あぁ、分かってる」

 

 俺の目には天井で静かに息を潜める無数の怪物人間が見えていた。それにオフィスではなくビルの外壁にもへばり付き隠れている奴もいる。

 

 ウェイロンは自然的な感覚で敵意を察知して待ち伏せに気づいていた。唸り声を上げて牙を剥き出しにした。間近で見るとやっぱ怖い。

 

 そしてフロイドがポケットにしまっていた白いマスクを被りゴーグルを起動させた。

 

 「キモッ!」

 「うるせぇ黙ってろ」

 

 ハーレイが本心なのか分からないがフロイドに悪口を言う。デッドショットのマスクは不気味だ。

 

 そんなこんなで待ち伏せしている敵がソワソワし始めた。俺たちが中々足を踏み入れない事に嫌気がさしたのだろうか?

 

 「フラッグ、来るぞ」

  

 フラッグにそう言った瞬間、天井を破って無数の怪物人間が降ってきた。

 

 「敵襲だ!撃て!」

 

 兵士達が銃を撃ち始める。

 

 ものすごい数だ。このビルにいた人間達だろうか?スーツを着ている者が多い。それにチラホラと俺たちと共に街に入り、途中で別れた兵士達と同じ格好の者がいる。やはり何か特殊な力で人間を変異させているのか。にしても、趣味が悪い。もっとマシな造形にできないのか?

 

 「ウゴゴゴゴギャギャ!」

 

 大きく膨らんだ頭に目玉が沢山ついている。口や鼻、耳はない。全面にビッシリと蠢く目玉が俺を睨みつけ、そして奇声をあげながら向かってくる。

 

 俺は向かってきた怪物人間の元へ一瞬で近づき顔面に向かって腕を振るった。

 

 スパァン!と破裂音が響き頭が消し飛ぶと、仰向けにそのまま斃れた。

 

 そしてまた次の怪物人間の元に移動し腕を振るう。

 

 正直言うとめちゃくちゃ弱い。パラデーモンでもコイツら相手であれば無双できるレベルだ。生前の行動を元にしているのか銃を使う怪物もいるが、生きている人間には敵わない。

 

 だがそれでも数が多い。

 

 俺や他のメタヒューマンには手も足も出ず簡単に殺されているが、人間はそうもいかない。現にフロイドやハーレイ、ブーメランはちょっとキツそうだ。フラッグ達特殊部隊の連中も囲まれると危ういだろう。

 

 それにフラッグ、アイツだけよく怪物に囲まれている。これまでも何回か襲撃があったが、毎回連れ去られそうになっている。怪物相手にモテても仕方がないというのにな…

 

 ほら今も。

 

 「またフラッグだ!!」

 「はぁ!?またぁ!?」

 「イイカゲンニシロ!」

 

 フロイドが最初に気付き声を上げ、一斉に皆んな気づいた。

 

 フラッグの護衛のカタナに至っては刀を振いながら怒りを露にしている。まぁ、ああやって何回も連れ去られそうになって助けていたら、怒りたくもなるわな。

 

 「クソォ!!!」

 「ヴロリーさん!死なれたら困る!」

 「わかってる!」

 

 フロイドが俺に向かって叫ぶ。確かにアイツが死ねば俺達は非常に困る事になる。

 

 「伏せろ!!!」

 

 俺はフロアに声を響かせ一瞬で周囲を見渡し、味方が全員伏せたの確認すると、目を輝かせた。そして横に薙ぎ払う様に熱線を放った。

 

 俺から放たれた細い青い熱線が一定の高さにいるものを全て焼き切り両断していく。フラッグを囲い連れ去ろうとしていた怪物や、フロアに溢れていた怪物達が胴体や首を失いボトボトと斃れていった。

 

 「ふぃ〜流石ヴロリーさんだ。もう俺達必要ないだろこれ」

 

 フロイドが立ち上がり言った。

 

 再度周囲を見渡し、怪物がいないことを確認するとフラッグの元に近づいた。

 

 手を差し出し立ち上がらせる。

 

 「怪我は?」

 「な、ない…また助けられたな…」

 「いいんだ。()()だからな」

 

 そうして襲撃を掻い潜り非常階段を登ってHVT1の元に向かった俺達は、無事に目的地に到着した。俺達の先にある防護扉が隔てる部屋の中にHVT1が待っている。部屋にはウォラー以外にも数人の人間がいた。

 

 「ここで待て、俺が連れてくる」

 

 フラッグがそう言ってパスワードを入力し防護扉を開けて中に入っていくのを見届けた。

 

 「誰なんだろうな?」

 

 フロイドが言う。もう分かることだし言っちまうか。

 

 「ウォラーだ」

 「え?マジかよ」

 「アイツ自分を助ける為に私達を使ったの!?」

 「そういうことだな」

 「ちょっと行ってくる」

 

 あ、おい。フロイドが行っちまった。

 

 まぁいいか!俺達はここで待つとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃…

 

 ミッドウェイステーション駅で地球を滅ぼす為の最終兵器を作成中のエンチャントレス。

 

 彼女は変質させた奴隷達が一向に憑依しているジューンの恋人であるフラッグ大佐を連れてこない事にイライラしていた。

 

 憑依対象の恋人なぞどうでもいいが、エンチャントレス自身フラッグに恩を感じていた為に彼だけは助けてやろうと思っていた。奴隷に連れてくるよう命じたが一向に現れる気配がない。

 

 それに奴隷達との繋がりが次々に消えているのを感じ取っていたエンチャントレスは奴隷の視界からとある存在に気付く。

 

 「弟よ」

 「なんだ姉よ」

 

 エンチャントレスは、同じく封印されていた弟を人間に憑依させて蘇らせていた。

 

 自身とは違うベクトルで強大な力を持つ弟だ。

 

 「クリプトン人に邪魔をされている」

 「この星にいるのか」

 「アマンダ・ウォラーが従えている奴だ。なぜ従っているのか分からんが……」

 「どうする?」

 「早急に最終兵器を作らねばならん。もっと魔力を集めろ。我ら兄弟でこの世界を征服するのだ」

 「分かった」

 

 弟にそう命じたエンチャントレス。

 

 クリプトン人は大した障害ではない。古代においては何度も奴等と対峙した事がある。奴等は魔法に弱い。物理的な障害を物ともしない強大なパワーを持った者たちではあるが、奴らはそれに慢心して魔法防御が疎かになっている。魅了や洗脳といった魔法や、単純な魔力を纏わせた攻撃に弱い。然程脅威とは思っていなかった。

 

 しかしエンチャントレスは知らない。ジョン・ヴロリーというクリプトン人が普通のクリプトン人ではないという事を。

 それに、彼がダークサイドと戦いオメガエフェクトというパワーの極地に触れているという事に。

 

 「愚かな人間、また我らが神となり支配してやる」

 

 エンチャントレスは光の渦に魔力を込めながら言った。

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