奴こそ1万年に1人産まれる伝説の……   作:物体Zさん

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命令

 

 「ん?」 

 

 暫く待っていると部屋から銃声が聞こえた。

 

 部屋を透視するとウォラーが銃を構えているのが見えた。そしてその銃から硝煙が昇り床にはウォラーと共に残っていた人間達の死体が転がっていた。

 

 殺したのか?一緒に働いていた人間じゃなかったのか?なぜ?

 

 「《マジか、あんたの上司かなりヤバイな》」

 「《……そのうち慣れる》」

 

 フロイドがフラッグに言い、それに対してフラッグが疑念を感じさせるような声色で答える。

 

 そしてフロイドが歩き出しながら言う。

 

 「《俺達が悪人?それならお前はギャングだ》」

 

 ウォラーにすれ違いざまそう言うと、部屋から出た。

 

 俺は部屋から出てきたフロイドに声をかける。

 

 「ヤバいな」

 「あぁ、アイツはヤバい。機嫌を損ねたらガチで殺されるぞ」

 「……まだ刑務所の方がマシだな」

 「違いねぇ」

 

 そして部屋からフラッグとウォラーが出てくると、俺達はそれを出迎えた。

 

 「ウォラー」

 「ジョン」

 「ウソでしょ?」

 

 ハーレイが部屋から出てきたウォラーを見て驚きを口にする。

 

 「帰るわよ」

 「帰る?どこにだ?家に帰れるのか?」

 

 ブーメランがごもっともな事を言って、フラッグとウォラーの眉間に皺が寄る。おいブーメラン、やめとけ!殺されるぞ。

 

 「どうせ刑務所だろ?」

 「絶・対にイヤ」

 「おいハーレイ…」

 「ヴーちゃんはお家に帰りたくないの?」

 「いや…うーん…」

 「ゴホンッ!よくやったけど私を怒らせると全て帳消しよ。最初に言った通り私を無事に帰せばあなた達の希望は叶える」

 

 ウォラーがそう言いながら懐から携帯を取り出し画面を俺達に見せた。画面には俺達の顔が映っており、それはフラッグがスリップノットを殺した時に使ったタブレットに映っていた画面と同じだった。顔の部分を押して爆弾を起動させるのだろう。

 

 それを出されちゃ誰も逆らえない。

 

 「屋上に行くわよ」

 

 ウォラーはフラッグを連れそそくさと屋上へ向かっていった。

 

 俺達は誰も反論できなかった。

 

 「イイ女だ」

 「どこがよ…!」

 

 ハーレイがウェイロンにツッコミを入れてバットでケツを叩いた。

 

 2人を追って屋上に行くと、先に屋上へ向かっていた特殊部隊の面々が待っていた。ウォラーを安全に運ぶ為の輸送ヘリを呼んでいたようだ。

 

 しかし、何か様子がおかしい。

 

 「こちら地上部隊、ヘリ応答せよ」

 

 俺達のいる高層ビルの屋上に一機の輸送ヘリが近づいてくるが、無線に反応がない。

 

 「ヘリ応答せよ!」

 

 何度も声をかけるが応答がない。ん〜人は乗ってるけどな。

 

 「着陸態勢は問題なし、しかし応答がありません」

 

 副官の言葉に屋上にいる面々が顔を見合わせる。そして俺達の前にホバリングしていたヘリが向きを変え始めた。

 

 「乗っ取られた!!!」

 

 え?マジか?

 

 ヘリの後方がこちらに向くと、ハッチが開き機関銃を構えた男と顔にピエロの化粧を施した男が現れた。

 

 「ジョーカー」

 

 俺はそう溢すと男が機関銃を撃ち始めた。

 

 「撃て!!!!」

 

 特殊部隊の兵士達が一斉にヘリを撃つ。

 

 激しい銃撃戦が始まり、屋上が一瞬で戦場に変わった。

 

 「ヒャハハハハハーー!!!」

 

 ジョーカーが笑いながら金のAK47を連射する。相変わらず趣味の悪い男だ。全くバットマンは何をやってるんだ?

 

 俺以外の屋上にいた人々は遮蔽物に身を隠し銃弾の嵐をやり過ごす。横を見ると、ハーレイとフロイドが同じ遮蔽物に隠れていた。

 

 ハーレイがこちらを向いてウィンクを飛ばしてきた。行くつもりだな。

 

 そばにいた俺の身体に銃弾が当たるが服に当たった瞬間、潰れ落ちていく。俺のエネルギーによってただの衣服であっても超強化され、銃弾ですら弾き返す硬度になっている。

 といっても今ここで何もやる事はない。俺の任務はあくまでウォラーの救出だ。撃たれまくってるがウォラーは今のところ無事だ。ハーレイが行けば襲撃は終わるだろう。

 

 「じゃあね、ヴーちゃん」

 「…あぁ」

 

 俺だけに聞こえる声でハーレイが喋った。そして立ち上がり遮蔽物から飛び出すとヘリに向かって歩き始めた。

 

 「フラッグ!早く殺して!」

 「駄目です!反応しません!解除されたっ!」

 

 ウォラーの騒ぐ声が聞こえる。そうか、ジョーカーは爆弾を解除したのか。フラッグはタブレットを操作し、ハーレイの顔を連打して爆弾を爆発させようとしているが起動する気配がない。ざまあみろ。

 

 「待たせたなぁ」

 「プリンちゃん!」

 

 ジョーカーがヘリからロープを垂らした。そしてハーレイがそれ目掛け走る。ヘリがどんどん離れていくが、ビルから飛んでロープを掴み脱出した。

 

 「はは、やったな」

 

 思わず声に出た。やっと恋人の元に戻れたな。

 

 ハーレイとは刑務所で出会い、自由時間の時によく遊んだ。

 

 刑務所内の男は全員ハーレイの虜になっていたと言ってもいい。勿論俺も。

 奴の天真爛漫で誰に対しても分け隔てなく接する愛嬌の良さで看守でさえも奴の虜になって、隠れて会いに行っていた。まぁ殺された奴もいるが…

 

 ヘリが離れた事で掃射が終わり遮蔽物から皆が出てくる。

 

 ハーレイがロープにぶら下がりながらこちらに手を振っていた。

 

 「デッドショット、撃ち殺して」

 

 え!殺すのか。

 

 「理由がない」

 「狙撃手として雇ったのよ。殺せば…娘と自由に暮らせる」

 

 そりゃ狡いよ。

 

 「死んでもらう」

 「おいフロイド…」

 「仕事だからな」

 

 そしてフロイドが銃を構える。スコープを覗き照準を定め引き金を引いた。

 

 パン!と乾いた音がなり銃弾がハーレイに向かって真っ直ぐ飛んでいき、首に当たった。ロープから落ちることはないもののグッタリとしたように見える。

 

 まぁ死んでないんだけどさ。フロイドは上手く首に付けられた金のネックベルトに弾を当てた。流石だ。

 

 「きゃは!」

 「あ〜ミスった」

 

 ハーレイが起き上がりあっという間にロープを登ってヘリの中へ入っていった。

 

 「ジョン、ヘリを落として」

 「は?」

 「早く」

 

 おいおい、もういいだろう…逃してやれよ。

 

 「やらないとダメか?」

 「契約を忘れたのかしら」

 「忘れてはないさ……」

 

 くぅー!!!行くしかねぇ!!!

 

 俺は浮き上がりヘリに向かって飛んだ。

 

 そしてハッチを掴み強引に剥がして中に入る。中にはハーレイとジョーカー、ジョーカーの部下と知らない博士がいた。

 

 「ヴーちゃん!」

 「ジョン・ヴロリーかぁ!」

 「すまんな」

 

 俺は間髪入れず、ヘリの床に向かって拳を叩き込んだ。

 

 衝撃が伝播し、ヘリの大部分が大破した。そして揺れの中で目を輝かせヘリの燃料タンクに向かって熱線を放つ。青い熱線がタンクに当たると大爆発を起こした。そして世界のスピードが遅くなる。

 

 まぁ…これでヘリは落ちた。停滞した世界の中で俺は動き始める。

 

 爆発がヘリの中を充満する前に、中にいる者達をこれから助ける。ハーレイ、ジョーカー、ジョーカーの部下と操縦士、そして博士だ。

 

 ヘリの壁をぶち破り大穴を開け、爆発に近い操縦士と博士を掴んで、外に放り投げ、そして次に部下とジョーカーを放り投げた。

 

 彼らがビルの屋上に激突する前にゆっくりと降ろして、すぐにヘリに戻りハーレイを抱いて外に出た。

 

 そして停滞したスピードが元に戻りヘリが落ちていくのを確認して、ビルの屋上へとゆっくり降りてハーレイを降ろした。

 

 「ヴーちゃん…殺さないの」

 「奴にはヘリを落とせと言われただけだからな。もう捕まるなよ」

 

 俺はそう言って飛ぼうと上を向いた時。ジョーカーが声を上げた。

 

 「待てぇ」

 「……なんだジョーカー」

 「あんがとよー」

 

 コイツお礼とか言えんのか。

 

 「じゃあな。ハーレイを幸せにしてやれ」

 

 ちくしょう!!俺もハーレイとラブラブしてぇ!!

 

 

 その後、ビューンと飛んで部隊のいる屋上に戻った。

 

 「やったわね」

 「あぁ、ちゃんと落としてきたぞ。見えてただろ?」

 「確かに爆発は見えた……」

 

 俺は言われた通りやっただけだ。何かあれば後は自分でやれば良い。それに正直もうこれ以上命令を聞く必要はないと俺は思っている。

 

 ウォラーを救出するという任務は終わったからだ。

 

 暫く待つとちゃんとした脱出用のヘリが到着し、ウォラーはそれに乗り込んでいった。

 

 「あなた達は次のヘリで帰りなさい」

 「了解」

 

 フラッグ達にそう伝えるとヘリは摩天楼に向かってフレアを放出しながら急降下していく。俺はヘリポートの淵に立ってそれを見ていた。

 

 ん?なんだアイツ…

 

 ヘリが飛んでいく先の丁度真下に巨躯の怪人が立っていた。そしてそいつが腕を振り上げると、その腕が伸びてヘリに向かう。

 

 「あ〜」

 

 次の瞬間、橙色に明滅する腕がヘリの尾翼部分を破壊した。そしてヘリが火を上げ回転しながら落ちていった。

 

 ………どうすんだあれ、墜ちてったぞ。あ〜あ〜墜ちたヘリの周りにわんさか怪物が集まってきたぞ!墜落の衝撃で兵士は死んだみたいだ。

 

 「ウォラー!クソッ!」

 「《すぐに向え!》」

 

 フラッグが叫んだのと同時にイヤホンから知らない男の声が聞こえた。別の場所で指示を出してる奴か。

 

 撃墜されたヘリを見て、指令を受けたフラッグ達がヘリポートからフロイド達が集まる場所に向かう。

 

 「……救出に行くぞ」

 「待て待て、任務は終わっただろ?」

 「ウォラーを救ってない」

 

 フラッグがフロイドに告げると特殊部隊を引き連れ行ってしまった。みな茫然と立ち尽くしている。 

 

 「ヴロリーさん!どうする!」

 

 フロイドが俺に声をかけてくる。俺はその声に振り返り少し浮き上がってフロイド達のいる所へ向かい答えた。

 

 「行くしかないだろ…ウォラーが死ねば俺達も死ぬことになる」

 「はぁ…そうだな」

 

 そうして俺たちはビルを下りて外に出た。ビルから外に出ると雨が降っていた。土砂降りだ。ビルから出た俺たちの身体を濡らしていく。

 

 そしてビルのすぐ前に停まっている車の上に見覚えのある女性が佇むように座っていた。

 

 ハーレイ・クインだ。ビルから出てきた俺達に気付き軽快な声を上げ車を降りた。

 

 「ハーイみんな!戻ってきたわよー!」

 「ハーレイ!生きていたのか!」

 「うおお!」

 

 ハーレイ!なぜ戻ってきたー!?折角逃してやったのに!爆弾も解除されて自由の身だったろ!?

 

 「いやぁ旦那…流石だぜ」

 

 チャトが茫然と立つ俺の肩を叩く。いや、確かに助けたけどよ…!俺はジョーカーと一緒に逃げてほしかったんだよ!戻ればまた捕まって刑務所に逆戻りだぞ!いや…もしかして俺に会いに…?いや…そんな筈はない。だってハーレイはジョーカーと恋人同士で愛し合っているじゃないか!

 

 「……旦那?」

 「ゴフンッ!行くか」

 「お、おう…」

 

 そうして部隊にハーレイが戻ってきた。フラッグ達は未だ警戒しているが、フロイドらは歓迎していた。

 

 なぜ戻ってきたのかは分からないが、ジョーカーと相談して戻ってきたのなら別にいいだろう…俺がいちいち関与する事ではない。

 

 俺達はまずヘリが墜落した場所まで向かった。

 

 ヘリが墜ちていた場所は閑散としており、何も気配を感じない。ヘリの中にも誰もいなかった。しかし、怪物人間の死骸が何体かある。辛うじて生き残ったウォラーが殺したのか。ヘリの周囲に薬莢が散らばり、使われた銃が墜ちていた。健闘虚しくヘリを墜としたあのデカい奴に連れ去られたのだろう。

 

 デカい奴の大きな足跡が残っている。歩いていった先は光の渦がある場所だ。

 

 結局あそこへ行く事になったか。あの光の渦は最初に見た時よりも大きく、膨大なエネルギーが迸っているのが見える。それに周りをグルグル回るよく分からない物体が増えた。

 

 それを腕を組んで見ていると、ヘリを漁っていたフロイドが俺の元に近づいてきた。

 

 「どうしたフロイド」

 「これを見てくれ」

 「ん?」

 

 フロイドから手渡されたのはトップシークレットと書かれた大きなファイルだった。

 

 ファイルを開き中身を見ていく。

 

 「おいおいおいおいおいコレは…」

 「俺も驚きだよ」

 

 ファイルにはウォラーが結成したタスクフォースXという部隊に所属する者達の情報が載っていた。つまり俺達のマル秘情報である。

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