「つまりお前の恋人であるジューン・ムーンに憑依した魔女がこの事態を引き起こした張本人って訳だな」
「……そうだ」
俺はファイルを持ちフラッグ大佐に問い詰め、フラッグの口から今回の事態の真相を聞いた。
ファイルにはタスクフォースXの隊員の情報が事細かく載っており、ミッドウェイシティを壊滅させた元凶もこのファイルに載っていた。
その魔女の名はエンチャントレス。
全てはコイツが引き起こした事だった。
古代より存在し古の神々によって封印されていたが、考古学者であるジューン・ムーン博士が探検中に隠された遺跡に落ち、そこで魔女の封印を解いてしまい憑依された。しかし、完全に表在化することはできずムーンが機会を与えた場合にのみ身体を乗っ取り力を振るえていた。
その後アマンダ・ウォラーによって心臓を抜きとられ、更にムーン博士にフラッグ大佐をあてがい恋人にする事で意のままに操れる傀儡にした。だがしかし、タスクフォースX結成前夜密かに自身の弟を解放してミッドウェイシティを壊滅させると、エンチャントレスはジューンに一度戻り、ウォラーの命令でフラッグ大佐と共に街で暴れる怪物を殺しに向かった。
そこで爆弾を怪物の元まで運ぼうとジューンがエンチャントレスに身体を開け渡すと、エンチャントレスは爆弾を起動させ逃げた。
アマンダは心臓を潰したが、何故か魔女は消えず活動を継続。そして俺達がミッドウェイシティ派遣された。とエンチャントレスの項目に記されていた。
「俺達はお前達の尻拭いをさせられてたってわけか?」
俺の横にいたフロイドが言った。
「……ぐっ」
フラッグが苦虫を噛み潰したような表情になる。
「頼む……力を貸してくれ…!」
フラッグが雨に濡れながら俯き俺達に言う。
「俺たちを殺したきゃ殺せばいい、俺はそこのバーで一杯飲んでくる」
フロイドがそう言って目の前にある建物に入っていってしまった。
部隊の皆んなもフロイドについていく。そしてカタナとフラッグの部下達も。
残ったのは俺とフラッグだけになった。
「おい」
「……ヴロリー」
俺はフラッグに近づき肩を叩く。
「お前は恋人を助けたいか?」
「え?」
「助けたいのかと聞いている」
「もちろんだ…!」
「そうか、なら俺が今から行って全て終わらせてきてやる。その代わり…」
「その代わり…」
「俺の極秘データを全て消せ」
「……分かった」
俺はフラッグに条件を伝えると地面を揺らし飛び立った。そして元凶がいる場所を見渡せる上空に留まり観察を始める。
光の渦は今もなお大きくなっている。溢れたエネルギーが周囲の建造物に向かって放たれ削りとっていた。建物の破片や、周囲にあったであろう車なんかが浮き上がり渦に吸い込まれている。
そして先ほどまでは感じなかった強大な気配を渦の真下に感じた。ウォラーが乗っていたヘリを墜とした巨躯の怪人の気配も感じる。ファイルには姉弟と書いてあった。あの腕が伸びていた奴は弟か。
とりあえず行くか。
俺は渦の真下。ミッドウェイステーション駅に向かった。
駅の天井を突き破り開けた場所へ着地した。
そして前を向くと、街で見かけた怪物人間よりもガタイの良い怪人の集団と、妖艶な動きを繰り返しエネルギーを手から放出する女、着地した俺を見据える巨躯の怪人がいた。
「クリプトン人…」
光の渦にエネルギーを送り込んでいた女がこちらに振り向いた。
ファイルに乗っていた顔色の悪くて汚れていた魔女とは違い、綺麗な古代の装束を纏い、目玉が6個ついた立派だが不気味な王冠?を被っていて、身体には怪しく見た事ない光る紋様が現れており、どこか神秘性を感じられる姿に変わっていた。今は亡き元老院のジジババ共の格好に似ているな。
「何故邪魔をする」
「逆に聞くが何故こんな事をする?」
コイツらのやっている事は意味が分からない。
封印を解かれ自由の身になったかと思えば、無辜の人々の命を弄び、街を破壊した。
ウォラーにこき使われた事がよっぽど気に食わなかったのか?
「我らを裏切った人類を滅ぼしメタヒューマンの世界を作るのだ」
「ほぉ」
「貴様もウォラーに良いように使われ悔しくないのか?全て見たぞ」
「……待て。
「ああ、ウォラーの頭を覗いた。貴様が……ゴッハァ!!!」
奴が言葉を言い終える前に瞬時に奴に近づき鳩尾に拳を叩き込んだ。身体が折れ曲がれ吐瀉物を撒き散らしなが吹っ飛んでいく。
「【姉上!!!貴様!!!】」
近くで待機していた巨躯の怪人が怒りを露わにし俺に向かって腕を伸ばしてきた。飛んできた腕を身体を少し横にずらして避け、そのまま腕を掴み握り潰した。
血のような、橙色に光る液体を撒き散らして腕が引っ込んでいく。
「おい、お前も
「グウウゥゥゥ!!(なぜ俺の身体に触れられる!?)」
俺が握り潰した腕を即座に再生させると、今度は大きな身体を揺らしながら走ってきた。
誰が見ても遅いと言えるスピードで向かってきた奴は大きく太い腕を上へ伸ばし鞭の様にしならせながら飛び込んできた。
腕が俺の頭上から降ってくる。
俺は右腕でそれを受け止めた。
ズンッ!と轟音が響いて、俺の身体を伝わり逃げた衝撃が地面に大きなひび割れを残し、少しだけ足が埋まった。
「まあまあ強いじゃないか」
結構な衝撃だった。幼少期の俺ぐらいの力はある。
腕を振るって受け止めた奴の豪腕を払い除けると、浮き上がり目を輝かせた。
俺の目から青い熱線が放たれ奴の身体に直撃する。熱線に押されていき壁に当たり止まった。
俺は壁に倒れる奴に近づき首を掴み持ち上げ、浮き上がった。
「おい、もう一度聞く。お前も
「グフッ!ナ、ナンノコトダ……」
ん?コイツは見ていないのか?俺の勘違いか?だが、女の方は確実に見ている。ウォラーの頭を覗いたと言っていた。間違いなく見ている。
「まあいいか、とりあえず死ね」
俺のアレを知る者は生かしてはおけん。それにコイツらはここで殺しておかないと人がどんどん死ぬことになる。
俺は奴を掴んだまま反対の腕に力を込めて顔面に拳を放った。
パァン!!と大きな破裂音が響き奴の頭が消し飛ぶ。
「ん??」
まだ心臓が動いてるな。お?
掴んでいた首から光が漏れ肉が盛り上がってきた。徐々に顔ができあがっていき、ものの数秒で元に戻ってしまった。
「すごいな」
「ヤ、ヤメロ…!」
なんて言ってるかわかんねーよ。
コイツは頭を消し飛ばしても死なない。普通の生き物じゃないみたいだな。
それなら、目の前に見えているビクビクピッカピカと脈動する巨大な心臓を潰せば死ぬか?やってみるか。
心臓に向けて拳を放つ。
俺の拳が奴の心臓を突き抜け貫通。腕が身体を通り抜け壁に突き刺さった。
「ゴフッ!」
奴が口から血反吐を吐き出し、身体がグッタリとした。そして全体的に光り輝いていた身体から光が失われ黒く濁っていくと、石の様に固まってしまった。
「死んだか」
石になってから再生が始まる気配がない。心臓を潰せば死ぬのか。
腕を引き抜き、壁から離れると光の渦を見た。
光の渦は未だ轟いており、エネルギーを迸らせている。
「弟よ!!!!」
渦の先で魔女の声が聞こえた。起き上がり、こちらへゆっくり歩いてくる。
「今更起きたか…お前らはもう終わりだ」
「き、貴様だけは許さない……!」
「何を…」
そして魔女が俺に手を翳した。目の前が一瞬光り、俺の目を眩ます。眩しくて思わずギュッと目を瞑ってしまった。
「おい貴様、早くしろ」
「え?ファオラ?」
目を開けると目の前にファオラがいた。どういうことだ?俺はさっきまでミッドウェイシティにいたはずだが…突然知らない家にいた。
それにファイラが赤子を抱いている。男の子で、何となく俺に似ている気がする。
「何を寝ぼけてるんだ?さっさといくぞ」
「え?え?あ、あぁ…」
なんだこれ?
「ヴーさーーん!いきますよー!」
この声は?カル?
「おい本当に大丈夫か?今日は……ゴバッ!!!」
「え?」
目の前にいたファオラの胸から突如緑色の槍が飛び出た。抱いていた赤子と共に貫通し、夥しい量の血が噴き出て俺に血がかかる。
「は?」
そしてファオラが倒れ血の中に沈んでいく。
血が俺の足元に流れ侵食していき、次の瞬間に周囲が真っ暗になった。
「これは……」
真っ暗な場所から何かが這い出てくるのが見えた。それは最初粘土のような不定形だったが段々と形になっていき、人型になると起き上がった。
「カル……?」
「どうして…助けてくれなかったんですか?」
胸にポッカリ穴が空いたカルが俺を憎悪に満ちた表情で睨みながら言ってくる。
「貴様がちゃんとしていれば助かったのだ」
さっき目の前で死んだファオラが言った。
「やめてくれよ2人とも」
なんなんだこの悪趣味な夢は…!!!すっげぇリアルなんですけど!!!