おっす、ヴー=ロリだ。ララさんを助け、宇宙船に飛び乗ってクリプトンの星域からなんとか脱出する事ができた。
あと数秒遅ければ星の爆発に巻き込まれて全員お陀仏だっただろう。いや、俺は多分星の爆発に巻き込まれたくらいじゃ死なないだろうけど、まあ危うい状態にはなっていたかもしれん。
俺の突然の高速飛行で気絶してしまったララさんを起こして、これからどうするか話し合っていた。
俺はララさんにカル君を何処の星に送ったのか聞いた。
「地球よ」
「地球ですか……ゴンザカ、地球を映してくれ」
ナノボットにそう言うと、ナノ粒子が揺れて地球の詳細が表示された。クリプトン人に似た知的生命体が星を支配していて、まだまだ若い星だった。太陽も若く、此処でならカル君は強く育つだろう。だが……なんか変な感じがする。懐かしいというか、俺はこの星を
「良い星じゃないですか」
「私は心配よ。姿形が同じと言えど、私達クリプトン人は陽の光を浴びれば人間より強くなる。カルが迫害されなければいいけれど…」
「まあ…それは分かります」
俺もクリプトンでは力を見せず普通のクリプトン人として過ごした。星の崩壊直前まで隠していたわけだが、それは父と母の教えがあったからだった。然るべき時にその力を振るえと言っていた。でも、その教えを守っていて良かった。ゾッドは自然交配をしたジョーさんとララさんを異端者呼ばわりした。たかが
「ララさん、行きましょう地球に」
「でも、もうカルが地球へ行ったのは1週間前よ?もしかしたら……」
「大丈夫ですよ!カル君は強い子です。それに俺達はもう死んでるみたいなもんです。クリプトンはもうない、縛るものは何もないんです。好き勝手やろうじゃないですか!」
流石に暴れ回ったりはしないけど、カルを見つけて見守るくらいならいいだろう。
「えぇ…分かったわ…」
「ファオラもいいな?」
「私は別に構わん。ただ……」
「ただ?」
「クリプトンの崩壊で維持していたファントム・ゾーンが解放されたかもしれんな。ゾッド将軍が出てきている可能性がある」
マジか、そうか。クリプトン星の軌道上に維持装置も浮かんでたっけ…でもゾッドが乗っている船はファントムドライブを積んでいないはずだ。流石に追ってはこれないだろう。
「あの船はジャンプできないよな?」
「ああ、恐らくな。だが奴等には科学者もいたはずだ。時間があればどうにだってなるだろう」
「分かった。じゃあ急いで地球に向かおう。ゴンザカ!船の発信装置を切れ!進路は地球だ」
「かしこまりました。発信装置オフ、進路地球。ファントムドライブ起動します」
クリプトンの船は発信装置が搭載されている。もし宇宙で迷子になったら母星から助けに来てくれるが、もう母星はない。それに装置を切っておかないと奴らにバレる可能性もある。
まあバレたとしても、全員殺してしまえばいいんだけど……
そうして船が光に包まれ次元を移動した。1分も満たない時間で地球の近くにジャンプする事ができた。少し移動してガス惑星を通り過ぎる、青く綺麗な星が見えてきた。あれが地球か。綺麗な星だ。
クリプトンとは違って、海の面積が大きい。カル大丈夫かな?海に落ちてないよな?星をスキャンするとクリプトンとは大気の構成が違うようだ。少し慣れないといけない。
「とりあえず人気のない場所へ降りよう」
俺がそう言うとゴンザカの操縦の元、地球へ突入を始める。大気圏を抜けて、地球へと入った。本当に綺麗な星だな。こんな青い海は見た事がない。
それにかなり深いな。海中にもチラホラと人影が見えるが、陸にいる人間とは何か違うな。
「あれはアトランティス人ね」
ララさんが言った。え?知ってるのか?
「地球の事調べたんですか?」
「ええ、送り出した後にどんな星か気になってクリプトンの大書庫で調べてたのよ」
「へぇ!俺達には縁もゆかりもない所ですね」
「兵士タイプは入れない場所だから……地球には約5000年前に惑星アポコリプスの大軍勢と戦ったという記録があったわ」
惑星アポコリプス?なんだそれ聞いた事ないな。
「それはすごいな。今も平和という事は奴らを退けたのか」
え、ファオラも知ってるのか?俺だけかよ知らないの……
「そう、この地球にいる全種族が団結して戦ったと記録にあった。人間、アトランティス人、アマゾン、当時太陽系を担当していたグリーンランタン、そして古き神々…」
「そうだろうな。そうでもしないと奴らには勝てない」
ララさんが色々教えてくれた。
惑星アポコリプスというのは数多の世界を悪で支配するダークサイドという輩の本拠地らしい。それが5000年前に地球を狙って侵攻してきたそうだ。戦いは熾烈を極め、地球側は多大な犠牲を払いながらもダークサイドを追い返したんだってさ。すげぇな!地球!
「その中の種族の一つが、あの海の中のいるアトランティス人なんですね」
「そうよ。というかあなた見えるのね」
「ララさんも外に出れば見えるようになりますよ。まあちょっと最初はキツいかもしれませんけど」
そう言っている間に、人の反応のない、島に着陸した。
船のハッチを開けて外に出る。身体に陽の光が当たり、大気に包み込まれた。
俺はマスクを取り、空気を思い切り吸い込んだ。
「美味い」
クリプトンよりも遥かに澄んでいて美味しい。そして何よりも太陽の光がエネルギーに満ち溢れ、俺の身体を更に活性化させる。これ間近で光を浴びたらヤバいかもしれない。
クリプトンの大気の構成物質とは違ったから、最初は窒息でもしたらどうしようかと思ったけど、全然平気だった。それに身体が異常に軽く感じる。重力が軽いな。
「ファオラ!ララさん!いいですよー!」
「いくか」
「ええ」
2人も最初はマスクをつけて外に出た。
「身体が軽いな」
「確かにそうね…」
「クリプトンより重力が軽いから良く動けると思いますよ」
俺がそう言うとファオラがいきなり飛び上がった。
バァンと音がして砂埃が俺にかかった。
そしてすぐに元の場所に着地して、今度は縦横無尽に動き始めた。
「フッフッフハッハッハ!すごいな!身体が軽い!」
「ほらララさんも」
「え、ええ…」
ララさんが身体を動かし始める。飛んでみたり、走ったりして感覚を確かめていた。ララさんも良く動けている。
「2人ともマスクをとってみよう」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫!大丈夫!最初はちょっと苦しいけど慣れたらビビるほど体調良くなるぜ?」
「そ、そうか」
俺がそう言うとファオラがマスクを取った。そして息を吸い込むと咽始めた。あ、だ、大丈夫か?
「ガホォ!ゲホォッ!ゴホッ!なんだこれ…!目が!音が!」
「ファオラ!大丈夫だ!徐々に慣れていくはずだ!」
俺もクリプトンで能力を自覚した日はこんな感じだった。俺の目が見たくないものまで見え、耳が遥か遠くの物音まで勝手に捉えてしまう。だけど、数分で慣れた。慣れるしかなかった。
ファオラの背中をさすりながら暫く待つと、だいぶ慣れてきたのか、落ち着いてきた。しっかりと息を吸い込み陽光を浴びてるように言うと、俺はララさんに近づいた。
「じゃあ次はララさんです」
「私もやらなくちゃダメ?」
「ファオラを見て下さい」
俺がファオラを見るよう促すと、既にそこにはいなく、遥か上空を高速で飛び回っていた。流石ファオラだ、適応力がすごい。というかソニックブームでうるさいなぁ俺が飛んでる時もこんな感じなのか?まるで空が割れるような音が響いている。
「こんな元気ですよ」
「そ、そうね」
そうして2人を地球に順応させ、これからどうするか話す為に再度船に戻った。
「ゴンザカ、カル君の乗ったポッドはどの辺に落ちたんだ?」
「不明です」
「え、マジ?」
「マジです。地球周辺にファントムドライブでジャンプした形跡が残っていたので地球に向かった事は確実ですが、どこに落ちたかまでは不明です」
「地球には到着してるのか……」
どうしようか…とりあえず、まあゆっくり探すとして地球に違和感なく溶け込まないといけないな。俺達が人間達のいる街に飛んでいったらきっとパニックになるだろう。それだけは避けたい。
「ララさん、地球には到着してるみたいなんですが…」
「そう……ならいずれ会えるわ。ゆっくり探しましょう」
「そうですよね!よし!じゃあこれから勉強だな!ゴンザカ!地球の事教えてくれ!」
そうして俺達は地球の言語や文化を学んでいった。
街に違和感なく溶け込む為に地球上で最も強大な国を探し、そこの身分証をゴンザカに偽造させ、船を山の中に隠し、誰もが寝静まっている夜に静かに入国した。そこはアメリカという国で、情報が最も多く集まる国だった。
俺は生活の糧を得る為に、偶然訪れたメトロポリスという街で運送屋になった。大型トラックに乗って物を運ぶ仕事だ。車の運転は中々スリルがあって楽しい。それに、運送屋であれば色々な場所を訪れる事になる。カル君を探すのにうってつけだった。
そしてそれから俺とファオラ、ララさんで手分けしてカル君を探した。だが…まだ力を発現していない子供が見つかるわけもなく、捜索は難航した。
地球を揺るがす大惨事が起きたりもした。それは人知れず俺達が介入し止めた。そこで古き神々の血が流れるアマゾンの戦士ダイアナと出会い、カル=エルの事を話し捜索を手伝ってもらうが、それでも見つかる事がなく、俺たちが地球に訪れて33年の時が経ってしまった。
時は遡り、クリプトン星崩壊時。
カル=エルの乗ったポッドが地球に近づき突入した。夜の闇を切り裂く様に煌々と光るポッドが空を駆け、地上へと近づいていく。
そして轟音と共にアメリカ、カンザス州スモールヴィルにある夫婦の営む農場の納屋に墜落した。
墜落の衝撃と轟音で、住居で寝ていた2人が目を覚ます。
「なに!?」
「地震か!?」
2人が飛び起きて、急いで窓から外を見た。納屋から光が漏れていた。
「何か爆発したの!?」
「そ、そんなものは置いてないはずだが……」
上着を羽織って外に出て、納屋を確認しにいく2人。夫が手に持つ懐中電灯で納屋を照らした。納屋の屋根に大きな穴が空いていた。何か巨大な物が空から落ちてきたようだと、夫は思った。
「中を見てみる」
「気をつけて…!」
意を決して夫が納屋の扉を開けて中に入った。そこには見た事もない大きな物体が横たわっていた。
「なんだこれは?」
そして、近づくと声が聞こえた。
「ん?」
物体に近づくにつれその声は大きくなっていく。夫婦がこの世で最も迎えたくて、そして決して迎えることができなかったものの声。魂が震える感覚がした。全身の毛が立ち、鳥肌が広がる。
「マーサ!!!」
「どうしたの!?……えっ!?!?」
夫が妻の名前を叫ぶと、妻が大慌てで中に入ってくる。そして声に気づいた。
「ジョナサン!すぐに!すぐに助けてあげて!!!!」
「分かっている!!!」
何の声か気づいたマーサが夫ジョナサンの肩を叩く。そして、ジョナサンが機械の隙間に近くに置いてあったバールを差し込み、テコの原理で強引にこじ開けていく。
そうして中を開けると、毛布に包まれた赤子がいた。元気に泣いている男の子だった。
「ジョナサン…!」
「マーサ……」
ジョナサンが赤子を抱き上げると、赤子はどこか安心したように眠ってしまった。
「この子は私達で育てよう」
「今日、こんな事が起きるなんて…!ええ!私達が育てなくちゃ!」
マーサが涙を浮かべ、ジョナサンから赤子を受け取る。マーサは赤子を受け取り、更に涙を溢した。
「う……うぅ……神様……ありがとう」
「マーサ…」
神なぞ信じない2人だったが、この日ばかりは神に感謝した。
そして、2人は天から飛来した赤子にクラークと名付け、育てることになった。