俺はトラックの運ちゃん、ジョン・ヴロリーだ。
はい、ヴー=ロリーです。人間社会では俺達クリプトン人の名前は使えない。いや使えない事もないけど、違和感しかないから地球用の名前を考えた結果、俺はジョン・ヴロリーとなった。ファオラはファオラ・アレクサンドラ、ララさんはララ・ローヴァンとなった。
カル君を探し、33年もの月日が経ってしまった訳だが、一向にカル君が見つかる気配がない。俺達は人探しが苦手なようだ。
33年の間に地球で知り合った人物。地球の古き神々の血が身体に流れるアマゾンの戦士ダイアナと、とある事件で出会い割と仲良くなった後、カル=エルの事を伝え探して貰ったけど彼女も見つけられていない。
あ、アマゾンというのは地球にあるジャングルが生い茂る国アマゾンではなく、神秘の結界によって断絶された孤島に住む女性達の総称だ。その島は女性だけしか住んでおらず、その女性達は皆一騎当千の猛者達である。中には5000年以上を生きる戦士もいた。アマゾン達を率いるはヒッポリタという女王だ。彼女は何千年生きてるか知らないが、美しく衰えを感じない偉大な戦士だった。
ダイアナはそのヒッポリタの娘で、なんとヒッポリタが粘土から作り上げた赤子の泥人形に古き神々達が命を吹き込んだと言う。そうしてダイアナは産まれ、古き神々の血が身体に流れ、地球上で並ぶ者がいない程の実力者となった。
ダイアナは美しい。なんてファオラの目の前で言ったらサンドバックにされた事がある。もうやめてほしい、ファオラも太陽で強くなってるから俺の身体にしっかりダメージが入るんだ。
俺はアメリカ全土をトラックで運転し、様々な土地に荷物を配送しながら、強大な力を持っている筈のカルの痕跡を探した。そして33年もの時を探し遂に俺達以外のクリプトン人の痕跡を見つけたんだ。
それは各地で実しやかに囁かれる都市伝説のような噂だった。なんでも、大火事があった建物に平然と入っていき人々を助けたり、海にある石油プラントで火に包まれながらも人を助けたりと各地で超人の様な謎の男の噂を聞いた。
その噂を調べていると同じくそれを調べていた記者を見つけた。メトロポリスにあるデイリープラネットという新聞社に所属するロイス・レインという女性だった。
彼女は現在、極寒の地で見つかったという謎の物体を調査しに向かおうとしていた。俺もその【謎の物体】というのが気になったので、物資の納入の仕事と言う程で潜入した。
俺にとって気候なんてものは体調になんら影響を及ぼさないが、周りは皆寒そうにしているので上着を着込んで物資を運び入れた。
そして、見つかった謎の物体をこの目で確かめた。
おいおいおい、あれはクリプトンの船じゃないか!随分と氷の下に埋まってるな。それにあの船…。
最近騒いでる温暖化とかで氷が溶けて出てきたのか。だが…随分と古い船だな。俺には詳しく分からんが、この氷の厚さだと数千年は経ってそうだが……ララさんなら分かるかもしれないけど、今は呼べない。
とりあえず、自分の荷物を設営されたテントに置いて仕事に取り掛かった。
暫くすると、アメリカ政府の調査団や、軍のお偉いさんが続々と現地入りを果たし、更にそれらをサポートする民間のボランティアの人達が入ってきた。
その中に1人気になる男を見つけた。
髭面の若い男だ。身体は大きく体格もガッシリしている。しかし、どこか達観した様な表情を浮かべ、周りとは違う雰囲気を感じた。そして溢れるエネルギーも。
俺は彼に近づいて自己紹介をした。
「よお、新人か?」
「え?あぁ、そうです。ジョーと言います」
「ジョー?俺はジョンだ。ジョン・ヴロリーだ。よろしく」
彼と握手をした。
ん?
何かを感じた。だが何か分からない。しっかし凄い筋肉だな〜よく鍛えられている。体内を見れば全ての臓器が健康に機能して、病気なんて1つも見当たらない。素晴らしいな。
「あの……なにか?」
「ん?いや、あっはっはっは。なんでもないよ」
「じゃあ僕はこれで」
俺がジロジロ見ていたせいか怪しまれてしまった。なんかすまんな。
彼は俺から離れるとボランティア専用の仮設テントに向かっていった。
その後ろ姿を見送ると、俺もその日は仕事をやめて外部従事者の仮設テントに向かった。
次の日、ロイス・レインがヘリに乗ってやってきた。
俺とジョー、そして俺達に指示を出す北極航空のジェドがヘリを出迎えに向かった。
ジョーはヘリから降りようとしていたレインを簡単に抱えて下ろした。まるで子供の様に抱いて下ろしたぞ。随分力持ちだな。
「どうも!」
「レインさんですね?北極航空のジェドです」
「基地は遠いの?」
「すぐそこですよ。案内します。荷物はジョンとジョーが持ちます」
「ありがとう、重いから気をつけて!」
重い?俺はジョーと顔を合わせる。そんな重くないよな?
俺とジョーはレインの荷物を手分けして持ち、レインとジェドについていった。
レインの荷物を、割り当てられた
俺は物資の搬入を手伝い、ジョーは北極航空を手伝いに向かった。
そして俺は物資を搬入しながら、レインの入っていったテントで行われている話を聞いていた。
「NASAの観測衛星が探知しました。氷棚のここに何か埋まってます」
「旧ソ連の潜水艦?」
「全長300メートルもある。当時の技術ではあり得ない」
「そうです。しかも……物体の周囲の氷は2万年近く前のものです」
数千年どころじゃなかった。2万年か…!大昔じゃないか!なぜそんな昔にクリプトンの船が?よく分からんな。
夜になったら調べてみるか……
そうして仕事を終えて、テントに戻り寝たフリをしながら夜を待った。
皆が寝静まったのを確認すると外に出た。夜になると気温がグッと下がる。まあ俺には関係ないからタンクトップのまま外に出た。
外は暗く、唯一ある灯はクリプトンの船が埋まっている分厚い氷の上に建てられた鉄塔で光るものだけだ。
そしてその鉄塔の下、氷壁の人がやっと通れる様な足場に1人の女性の姿が見えた。ロイス・レインだ。何故あんな危険な場所に?
そして彼女が行くであろう足場の先の氷壁の中から音が響いている。何か照射している様な音だった。氷壁に目を凝らし集中して見ると、氷壁が透けていき中の光景が見えていく。ジョーが目から熱線を放ち氷を溶かしながら進んでいるのが見えた。
「カル=エルなのか?」
俺は周囲を確認してから、氷壁の上へと飛んだ。
カルやレインが歩いた場所を辿っていくと、氷壁に熱線によってできた丸い大穴が真っ直ぐ伸びていた。かなり深い。
音を出さないように少し浮かんで進んでいくと、開けた場所に出た。氷が解けて空間ができている。そしてクリプトンの船の下層部が見えた。そして今まさにレインがハッチから入ろうとしていた。
俺はレインが入ってから少し待って船に入った。
中は広かった。探査船だろうか?しかし、あまり中を見通せない。俺の目を阻害する金属で作られた船だ。俺が知ってる船とはやはり違う、古い時代の船だ。
船に電力が通ってるな、起動したのか?
通路を進んでいくとレインが船を巡回するマシーンに近づき、カメラを構えていた。マズいぞ。
レインがカメラのシャッターを押すとフラッシュが起こった。攻撃と勘違いしたマシーンから機械触手が伸びてレインを吹き飛ばした。
「キャアッ!!!!」
レインが吹き飛ばされ船の壁に激突してグッタリと倒れ込んだ。下腹部を怪我したな。いくか…と思ったが、ジョーが奥から現れレインとマシーンの間に入り、マシーンを両手で掴むと、そのまま潰してしまった。やはりクリプトン人だ。見つけたぞカル=エル。やっとだ…!
マシーンを潰したカルはそのまま、レインに近づき下腹部を見ていた。
そしてカルがレインに言う。
「出血が酷い、傷口を焼いて止血する」
「はぁ…はぁ…どうやって?」
「特殊な力があるんだ。手を握って、痛むよ」
そうしてカルが目を輝かせて熱線をロイスの下腹部の傷に照射した。極限まで威力を低くして表面のみを焼いたのか。すごい技術だな。上手く力を扱えている。俺も勿論できるよ?やろうと思えばね!
「キャアアアアアアアアアア!!!!」
レインの叫びが船内に響き渡り、レインはそのまま気絶してしまった。
俺はそれを確認すると2人の前に姿を現した。
「ジョー、いやカル=エル」
「……あなたは!」
ジョー、いやカルが俺の声に気付き振り向く。その目は赤く輝いていた。俺に熱線を放とうとしていた。怖いって。
「ジョンさん、なぜその名を」
「俺
カルが静かにレインを床に寝かせると、俺の前に近づいてきた。
「あなたは何者ですか?」
「俺も君と同じだ」
そう言って俺は目を青く輝かせた。俺の熱線は青いんだよなー…だから出そうとすると青く輝くんだ。
「ですよね?ジョーさん」
「あぁヴー君。久しぶりだな。息子よ、彼は敵じゃない」
俺の横に死んだはずのジョーさんが現れた。
カルは驚いている。
「俺はヴー=ロリ。クリプトンの生き残りだ」
「まさか…そんな…」
「ハハハ、積もる話は後にしよう。とりあえず、そこのレインさんを人目につく場所に置いて俺達は船で移動しよう」
そうしてレインを基地の近くに降ろし寝かせると、船を操縦して数百キロ離れた場所に船を停めた。
そして船をジョーさんに案内してもらった。
まさかジェネシスチェンバーを積んでいる船とは思わなかった。ジョーさん曰くこの船は一万年以上前に地球に探査で訪れた船らしい。しかし乗組員は何かが起こって全員死亡。船は極地に放置されそのまま氷河に閉じ込められたそうだ。
ちなみに何故死んだはずのジョーさんがここにいるのかと言うと、カルが持っていたコマンドキーに自身の記憶と意識を保存していたそうだ。厳密に言えば本人ではないが、意思はあるので幽霊みたいなもんだろう。
亡くなった後もこういう事を予期して準備しておくのはジョーさんらしいな。
「ちょっと待ってくれ、電話を入れる」
俺はポケットから携帯を取り出し、電話をかけた。
少し待つと相手が出た。
「ファオラ、俺だ。遂に見つけたぞ」
「《嘘だろう?》」
「ホントだよ!!ララさんにも伝えてくれ。場所はゴンザカに探知してもらえ」
「分かった」
俺は電話を切って、携帯をポケットに入れた。
カルが俺に聞いてくる。
「あの、ララって人は…」
「会ってからのお楽しみだ」
「ヴー君…まさか」
ジョーさんは冷静を装っているが声が震えていた。
それからジョーさんやカル君と色々話し、俺達は外に出た。宇宙船に何故か用意されていたエル家のスーツをカル君が身に纏い、共に空を飛んだ。
最初カル君はまだ空の飛び方を知らなかった。クリプトン人が空を自由自在に飛べるという概念を知らないから無理もない。彼は地球人として育てられたんだ。しかし太陽の光をしっかりと浴びて飛び上がれば後はもう簡単だった。
広い大地を飛び、海を飛び、ソニックブームを伴いながら、そのまま宇宙へと出た。太陽の光を浴びたクリプトン人は無敵だ。生身でも宇宙空間で生存できる。空気を肺に溜めて圧縮すれば数時間は自由に動き回れる。
太陽に近づいた。2人で両手を広げ光を目一杯浴びた。
身体にエネルギーが満ち溢れていく。毛、皮膚、筋肉、骨、血、そして細胞。身体を構成するあらゆるものが活性化されていく。
「カル君、これが太陽の力だ」
「す、すごいです」
そうして、また地球に突入して思う存分に飛び回った。
ヘンリー・カヴィルのスーパーマン好き。