ファオラとカルの修行を見届け、俺とファオラは自分の船に戻ってきていた。カルとララさんは地球の親に挨拶に向かった。俺も行きたかったけど、家族の時間を邪魔するわけにはいかないだろう。
船でゴンザカに、クリプトン星崩壊から今日までに地球に飛来した物体を検索させた。これで見つかれば1番良い。
ゴンザカが世界を覆うインターネットに侵入し、世界各国のサーバーにアクセスした。クリプトンの技術をもってすればこんな事は簡単にできる。カルを探す際にも同じ事をやったが、カルの乗ったポッドはタイミングよくどの国の監視網にも引っかからずに堕ちた。だからいくら調べても辿り着く事ができなかった。
カーラの場合も、もし監視網に引っかからずに落ちていたらどうしようかと思ったが、そもそも地球に来ているかどうかすら分からない。カルを追っている事を祈る。
「ヴー様、検索条件に一致する物体を発見。ロシアに33年前、宇宙より飛来した未確認物体から1人の少女が出現したというものがありました」
「ええ!?今はどこにいる?」
「ロシア、シベリアの秘密軍事施設にて拘束されています」
捕まってるのか?どうして逃げないんだ…?
でもそうか……俺のように直ぐ地球に適応できる訳じゃないから、慣れないうちに拘束されて陽の光の当たらない地下なんかに連れて行かれたら逃げられない。それでもクリプトン人の生命力ならば今も生きていると思うけど……
俺はファオラに言った。
「カーラの居場所が分かった。ロシアだ」
「ロシア?そうか」
着替えてから2人で船を出て空に飛び上がった。雲を突き抜け軌道上に出るとロシアの方へ向かった。
近くにやってくると、上空から秘密軍事施設を見下ろし、施設内を透視して確認した。ダムの上に作られた建物の下、地下に更に大きな施設があった。
施設内は軍人やら研究者が大勢いた。カーラを捕え研究しているのだろうか?クリプトン人を研究してどうなるんだ?あんまり意味がないと思うが…
カーラも見えた。鉄球の様な檻に閉じ込められている。
随分と衰弱してるな……可哀想に。早く助けてあげよう。
「許せんな」
「そうだな」
ファオラが怒りで目を輝かせる。
「とりあえず、助けよう」
俺はファオラの肩に触れ、施設に降りていった。
地下へは一直線に空いた大穴があり、そこから入れそうだ。
ゆっくりと浮かびながら降りていき、最下層まで来ると、ガラス張りの部屋が幾つかあり中に研究者がいた。何をやってるんだ?
床に降り立つと同時に、部屋にいた研究者が俺達に気づいた。そして、警報を鳴らした。
施設内に警報が鳴り響き、俺達の侵入がバレた。まあ、何もせずに普通に入ったからな。そりゃバレる。
俺達の近くに続々と兵士達が集まり、俺とファオラに向けて銃を構えた。
俺は両手を上げながら少し前に出て言った。
「俺達は同胞を助けにきただけだ、何も……」
バババババババババッ!!!!
俺が最後まで言い終える前に、兵士たちが一斉に銃を撃ってきた。
はぁ……
放たれた弾丸が俺とファオラの全身に満遍なく当たっていく。弾丸は身体に当たった側からひしゃげポロポロと落ちていった。
空間が銃口から出た硝煙に満ち、マガジンに入った銃弾を全て撃ち尽くすと、次のマガジンをリロードしようとしたところで、ファオラが呆れるように言った。
「私はコイツの様に優しくはない、貴様ら全員に死をくれてやろう」
「……」
止める事はしない。此処にいる奴等は、いくら強いクリプトン人とはいえ、拘束し卑劣な実験を繰り返した。許される事じゃない。
ファオラが残像を残し兵士の前に移動すると、1番前にいた兵士の首を掴み、そのまま数人集まっている場所に投げ飛ばした。そしてまた移動して兵士を殴ると、殴られた兵士が吹き飛び壁に埋まった。別の兵士に銃を撃たれてもお構いなしに素早く動き、次々と殴り屠っていく。
そうして、1分にも満たない時間であっという間に兵士を倒すと、俺の元に戻ってきた。
「やはり人間は弱いな」
「そう言うな」
確かに人間は弱い、だけど彼らは知恵を絞り圧倒的強者を屠る時がある。恐ろしいのはそれだ。
兵士達をあらかた始末すると、カーラの囚われている場所に向かった。
通路を歩いていくと、何人か研究者然とした人間と出会ったが、それは俺が全て始末してカーラの囚われている場所に着いた。
目の前には大きな鉄球の様な物があり、中に力なく横たわるカーラが見えた。
「今助ける」
俺はそう言うと近づいて鉄球に取り付けてあった大きな扉を掴み引きちぎった。
中は真っ暗だった。
中に入り奥に進むと、横たわるカーラがいた。酷く衰弱し、身体は痩せ細り、今にも死んでしまいそうだった。
俺は側に落ちていたエル家のスーツをファオラに渡し、カーラを抱き抱えて外に出た。
「酷い事を…」
ファオラがカーラを見て言った。
「行こう」
もう何も此処に配慮する必要はない。
俺は上を向いた。そして両目から極太の青い熱線を放つ。轟音が響き、施設が大きく揺れる。
施設ごと地中を貫通する極太の熱線を放ち大きな穴を空けた俺は、熱線を放ちながら地上へと飛んだ。
施設を突き抜け外に出ると、太陽が俺たちを照らした。
更に高く飛び、カーラに太陽の光を当てた。そしてカーラを見ると痩せた身体が徐々に膨らみ、血色が良くなってくる。そして目覚めた。
「ここは……!?」
「カーラ・ゾー=エル。俺だ。ヴーだ」
「あなたは……わ、私はカルを守る為に……」
「落ち着け、もう大丈夫だ。カルもお前もな」
ヴー=ロリが青い極太の熱線を放った頃。地球の側に一隻の巨大宇宙船が現れた。ゾッド将軍とその配下達が乗った船だ。
巨大なイカの様な見た目の宇宙船が移動して地球軌道上に待機したその瞬間、船の横を青く途方もないエネルギーを秘めた極太の熱線が掠めた。
船に搭載されたありとあらゆる警報が作動し、船内にいたクリプトン人が慌ただしく動いた。
「なんだ!何事だ!報告を!」
ゾッド将軍が突然の揺れに困惑し配下に報告を求めた。
「ハッ!ゾッド将軍!船の側を巨大な光線が掠めました。船の損傷、人員被害はありません!いかがなさいますか?」
「巨大な光線だと……?地球からの攻撃か!?」
「不明です!」
「すぐに偵察船を出動させろ!」
「了解!」
ゾッド将軍が指示を出すと、船から一隻の小型偵察船が発進し地球へと向かった。
ゾッド将軍、そして配下達は気づいていない。それがヴー=ロリから放たれたものだということを……過去1万年に産まれたクリプトン人は他星に赴かずクリプトンで産まれ、そして死んでいった。
科学者や芸術者、宗教家に分類されるタイプは唯一アクセスできる大書庫でクリプトン人が若くエネルギーに満ち溢れる黄色太陽を浴びた時、細胞が活性化し、絶大な力を手に入れると、あくまで記述として知っているが実際に体感した事はない。そして宇宙船を作る技術はあれど、それはクリプトン軌道上を移動する為のものであり、他星に赴く為に使われるものではない。他星に赴く事は元老院が禁じていた。
つまりゾッド将軍もその配下達も太陽光を浴びたら、自分達がどんな事ができる様になるか詳細には把握できていなかった。船外で活動する時は必ず防護鎧とマスクを着用した。それによって太陽光は阻害され完全に適応ができていない。地球はクリプトンよりも重力が軽い。それによって得られる恩恵が通常よりも身体を素早く強く動かせるだけで、真の意味でクリプトン人の力を発揮できていない。
「地球人にメッセージを送るぞ」
ゾッドが更に指示を出す。
彼らは空を飛んだ事もなければ、目から熱線を放った事もない。
ヴーがクリプトンを自在に飛び彼らを捕えたが、その力は本来の1割にも満たない。
彼らは痛感する事になる。
地球に染まったクリプトン人の恐ろしさを……
そして同時刻、地球にて。
地球に住む人間達は空を見上げていた。
巨大な宇宙船が見えた。一瞬昇った巨大な光柱も。
全世界の人々が観るテレビに宇宙船が映し出され、報道機関が、大騒ぎしていた。
そして、映し出された画面が突然明滅を繰り返した。画面が暗転し、不気味な白黒のザラザラに文字が映し出され、音声が流れる。
「【君たちは独りではない】」
「【YOU NOT ALONE】」
「【你并不孤单】」
地球上に存在するあらゆる言語で伝えられた。
メトロポリス、デイリープラネットのインターンのジェニーがハックされたテレビを見ながら言う。
「RSSフィードを経由、携帯にも来てる」
全世界のあらゆる通信デバイスに同じものが映し出され、メッセージが繰り返された。
そうして暫く同じ事を繰り返すと、人が映る。
「《私はゾッド将軍、遠い世界から来た。星の海原を旅して諸君の元に来た》」
育った家で談笑していたカルとマーサと実の母親ララはテレビを観ていた。
「ゾッド将軍……」
「ララ母さん、あれが何か知ってるのか?」
「此処に来てはいけない存在よ」
「なんか大変そうね」
ララがそう言って家の外に出た。そうして遠くの空に見える船を見た。
「《我が星の住民が《2人》この世界に潜んでいる。この者を当方に引き渡してほしい。何らかの理由で……》」
カルがマーサを見る。
「クラーク……大丈夫よね?」
「大丈夫だ、母さん」
そうしてカルも外へと出た。
「カル。ゾッドはこの世界を滅ぼし、クリプトンを再興しようとしている。あなたの身体には……」
「僕の身体に何かあるのか?」
「いえ、これは知らなくてもいい」
ララは知っていた。カルの身体にはクリプトン人10億人分のDNAが刻まれ、クリプトンを再興させる為に必要不可欠なものだと言う事を。そしてそれが意味する事。ジョーが何故わざわざ危険を侵してコデックスを奪い、それをカルへ転写したのか……
(あなたは死なせない。今度こそ私が守る)
「《カル=エル、ヴー=ロリ、24時間以内に降伏せよ。さもなくばこの世界に災が及ぶ》」
地球上全ての人間がクリプトン人の存在に気づき、そしてそれが身近にいた事を知った。
ロイス・レインは自身を助けてくれた男性がそうだと気付き、地球を守る為に彼の情報を差し出すか、それとも彼を信じ地球の命運を知り合ってまもない一度助けてくれただけの男性に託すか……その狭間で揺れ動いていた。
しかし、周りはそうはいかない。ロイスは調べていた事をクラークの事を知る前に、知人の記者に渡してしまった。テレビをつければ今まさにその知人がロイス・レインが潜む宇宙人の事について何か知っていると公表してしまう。
「最悪ね!!!!」
そしてロイスはそれから異星人の情報を持っている重要参考人としてFBIに捕らわれ政府に引き渡された。
「なんて執念深い奴なんだ」
「クリプトンを守る為に作られた。当然だ」
俺とファオラがクリプトンの宇宙船を見上げながら言った。カーラをジョーのいる船で休ませ、2人で気晴らしに飛び回ってるところで至る所からゾッドの声が聞こえた。奴は俺とカルの存在を地球中にバラしやがった。
俺は平気だが、ロイス・レインに色々探られていたカルはそうもいかない。奴の放送が終わった後のニュース番組でレインの事を喋っていた男がいた。今頃この事態をどうにかしたい者達にレインは追われる事になるだろう。もう捕まってるかもしれんな。
宇宙船を見ながら考え事をしていると空から大きな音が聞こえ、こちらにカルが飛んできた。
「カル」
「ヴロリーさん、ロイスが捕まりました」
「やっぱりか」
「僕は彼女を助けにいきます」
「俺も行こう」
「おい!私はどうする」
「ファオラはララさんとマーサさんを守ってくれ」
そうして俺とカルは軍が集まる場所へ飛んでいった。