カルは今まさに自身の母であるマーサに襲い掛かろうとしていたゾッドに向かって飛びながらタックルをかました。
ゾッドを抱えて殴りながら飛び、目の前に現れた石油タンクに叩きつけた。
「よくも母を!!!!!」
石油タンクを突き破り、猛烈な摩擦と衝撃で爆発を起こしながらもカルはゾッドを離さずに飛び続けひたすら顔を殴り続ける。マスクが破損しゾッドの顔が外気に晒された。
畑を突き抜け市街に到達し、勢いのままガソリンスタンド併設のセブンイレブンに飛び込んだ。
ガソリンタンクにぶち当たり火災が発生する。
ゾッドの背中のマントとマスクから防護鎧に伸びる管に火が燃え移り轟々と燃えていた。
ゾッドは立ち上がり、背中に腕を回すとマントを掴み引き剥がした。そして自身を睨み構えるカル=エルを見据えた。
しかしゾッドは地球の空気を吸い込んだことで急に苦しみ始めた。
ゾッドが自身の手を見ると籠手を突き抜け骨が見えた。何もかもが透過し脳がその情報についていけず目眩を起こす。そして耳が近くの音のみならず遠くの音までも捉えまるで真横で爆音を鳴らされているようだった。
「これは何だ…!?」
「両親に感覚を研ぎ澄ます術を教わった。集中するんだ。見たいものだけに!聞きたいものだけに!感じるか?ヘルメットがないと全ての情報が入ってくるんだ。苦しいだろう!」
「グウウウウウウッ!」
ゾッドが膝をつき、蹲った。
カルが追い討ちをかけようと目を輝かせたその時、クリプトンの小型船が1隻現れカルにエネルギーキャノンを放った。
カルはそれを腕を一振りして弾き飛ばし、再度目を輝かせようとしたところで反対側から車が飛んできた。
カルは車を受け止め静かに降ろした。中を見るとまだ人が乗っていた。
「外道め!」
ドアを開け中にいた人を抱え助けると、逃げるように伝えて車が飛んできた方へ身体を向けた。
2人のクリプトン人の兵士がカルの方へやってきていた。
そしてゾッドの方を見ると、兵士に両脇を抱えられ小型船に乗せられているところだった。
「クソッ!逃した!(ヤバいファオラさんに怒られるっ!)」
小型船はあっという間に飛び去ってしまった。
カルは
街の人々は建物の中に隠れシャッターを閉めた。騒がしかった街が一気に静かになり、まるで嵐が来る前に静けさのようだった。
両者が近づいていく、拳を握り締め飛び掛かろうとした時。カルは後方から何かが飛んできている音を捉えた。
後ろを振り返ると、2機の戦闘機A-10が飛んできていた。そして戦闘機が30mmガトリング報による機銃掃射を始めた。
無数の銃弾がカルとその先にいる2人のクリプトン人に飛んでくる。カルは銃弾を無視して2人を見据える。
銃弾に撃たれた2人は地球人に邪魔をされたことに腹を立て戦闘機に向かって走り跳躍した。
そしてまさに戦闘機に掴み掛かろうとした時にカルが瞬時に間に入り、地面に叩きつけた。
2機の戦闘機が通り過ぎ、旋回を始める。カルは叩きつけたクリプトン人の側に降りて、一瞬の間に近づき拳を叩き込もうとするが、その腕を別のクリプトン人に止められた。
「中々良い動きをするじゃないか」
「お前は!グワッ!」
掴まれた腕を強引に振られ投げられた。幾つもの建物を突き抜け貫通し、ファミレス店まで吹き飛ばされてしまったカル。立ち上がり、周囲を見渡すと幼少期に自身を虐めそして色々あって良き理解者となってくれたピート・ロスが居た。
「クラーク!」
「ピート!逃げるんだ!!!」
声を張り上げた瞬間、屋根を突き破りジャネキ=ニキが現れた。
「エルの息子よ、お前は弱い。自信がない」
「そうかな?」
そしてカルが
そしてカルがジャネキを見下ろし言った。
「僕が弱い?自信がない?それは違うな。いいか?トレーニングは全てに勝る。お前のような軟弱な筋肉では絶対に勝てない。それは歴史が証明している」
「黙れ!!!」
ジャネキが激昂し飛び掛かってくる。しかしカルはそれを見切りジャネキの首を掴むと、そのまま胴体に拳を放った。
とてつもない痛みと衝撃がジャネキの身体に走り吹き飛んでいく。
ファミレスを突き抜けて再度街に飛ばされ、街の銀行の金庫の扉にジャネキ突き刺さるように止まった。
「グハァッ!」
ジャネキが唾を吐き扉から離れると、既に目の前にカルがいた。
「これで分かっただろう。トレーニングをした者が勝つと…」
ちなみにこのカルの言っている事は全てファオラがカルに修行をつけた時に言った言葉だった。カルをボコボコにして、ヴーですらドン引きする筋トレをさせて太陽の前に連れ言ったことだった。
カルの身体は短期間ながらもファオラとの修行によって強くなった。ファオラの持つ戦闘スキルと異次元の筋トレ、そして若くエネルギーに満ち溢れた太陽の光を取り入れた超回復で異常な程成長を遂げていた。
「終わりだ」
カルがジャネキに近づき鎧ごと持ち上げるトドメを刺そうとしたところで、金庫の扉を破壊し、もう1人のクリプトン人が現れジャネキを持ったカルにタックルをかました。
それによって吹き飛ばされ外に飛び出ると、カルはすぐに立ち上がり身構えた。
カルの正面でもう1人のクリプトン人に起こされ立ち上がったジャネキ。
「貴様に助けられるとはな、ゴウ=ダケシ」
「ゆだんするな、やつはつよい」
「ふんっ本気を出せばどうということはない」
コイツ…今までのは本気じゃなかったのか!?と驚くカル。
そして後ろからアメリカ軍の戦闘機とヘリコプター3機が近づいてきていた。
それを察知したカル。
「(彼らを守りながらは流石にキツい…!)」
しかし、やるしかない!そう心に決め2人に飛びかかった。
カルの家周辺にいるクリプトン兵を俺、ファオラ、ララさんで倒した。その後大穴に避難させておいたレインを家の前に連れて、これからどうするか話していた。
此処にいたクリプトン兵は俺に投げられ星になった2人以外は、ファオラとララさんの手で縛られ、船に乗せられ軌道上の宇宙船に自動操縦で戻された。
しかし、クリプトン兵の練度は低かった。地球では太陽光を浴びずとも身体能力が上がるが、それで慢心して俺達に舐めてかかった結果、彼らはいとも簡単に倒されてしまった。
まあ人間相手であればそれでも良いだろうが、俺達の様に長年地球に滞在し身体を慣らしたクリプトン人には悪手だろう。彼らの使うエネルギー銃は身体に当たった瞬間消し飛び意味を為さない。あとは圧倒的な力をもって彼らを蹂躙すればいいだけだった。
ただ、クリプトン人の刃物はちょっと危ないかもしれない。俺には効かないが、ファオラやララさん、カルやカーラはクリプトンで作られた刃物で致命傷を受けてしまうだろう。
何故、クリプトンで作られた刃物が危ないのか…それはクリプトンの鉱物で作られた物だからだ。クリプトナイトという母星にいる時には何ら影響を及ぼさない鉱物が、他星で過ごすクリプトン人には恐ろしい毒になる。無敵だと思ったらブスリと刺されてコロっと死んでしまうだろう。まあこれも俺には何故か効かない。クリプトンで散々実験したから間違いない。
「2人とも怪我はないか?」
「するわけがないだろう」
「ないわね……マーサさんも無事よ」
「良かった」
さて、これからどうしようか。
此処にきていたクリプトン兵は宇宙船へと送り返し、残るはカルと戦っているゾッドとそれの援護に向かった兵達だ。街の方から喧騒な音が聞こえる。未だ争いが続いているようだ。
「大事な話があるわ……!」
レインが必死な顔で俺達に言った。
「どうした?レイン」
「ゾッド達を追い返す方法をクラークのお父さんに教えてもらったわ」
「え?ジョーさんに?」
レインが言うにはカルが乗ってきたポッドを使い、あそこに浮かぶ宇宙船ごとファントムゾーンに放り込むと言うものだった。
ポッドに搭載されているファントムドライブを起動させて宇宙船にぶつけ、宇宙船のファントムドライブと反応を起こし周囲の物を全て飲み込む特異点を生み出す。それがジョーさんがレインに伝えた事だった。
「ジョーが……」
ララさんが話を聞き顔を俯かせた。
「ララさん、ジョーさんが言っていました。地球を救えと」
「そうなのね……わかったわ」
「カルの乗ってきたポッドはあそこの納屋にあるな、それにレインがコマンドキーを持ってる」
レインが俺に言われポケットからコマンドキーを取り出した。エル家の紋章が刻まれた小さな棒だ。これはクリプトン人ならほぼ全員同じ物を持っている。宇宙船を起動させたり、個人を認識させたりする身分証にもなる。ちなみにジョーさんはコマンドキーに意識と記憶を転送し、クリプトンの施設内でのみ顕在できるようにしていた。俺も同じことできるんかな?
「奴らを追い返す算段はついた。カルを助けにいこう」
「私とレインはマーサさんと残るわ」
「わかりました。お願いします」
ララさんが此処に残ってくれると言うので俺とファオラで街に行く事になった。
街は此処からそう遠くない場所にある。空を飛べばすぐに着いた。
そして街ではアメリカ軍の兵士と共にカルがジャネキ=ニキともう1人の知らない奴と戦っていた。
俺達はその間に降り立った。
「ヴーさん!ファオラさん!」
カルが名前を呼ぶ。
「裏切り者……そしてゾッド将軍の副官だったファオラ=ウル…」
「うん?貴様はジャネキか、まだゾッド将軍を信奉しているのか」
「ファオラ!なぜ裏切った!」
「私は裏切ってなどない、元からコイツと共にいた」
「裏切り者には死を!」
ジャネキが声を上げてこちらに向かってくる。
その瞬間、世界のスピードが遅くなった。体感時間が引き伸ばされ、俺とファオラだけが遅くなった世界で向かい合った。
「ジャネキは私がやろう、貴様はアイツをやれ」
「分かった。援護はいらないな?」
「ふっ勿論だ」
そして世界のスピードが元に戻ると、目の前に迫っていたジャネキの攻撃をファオラが受け止め組み合い地面に押し倒した。地面が大きく陥没して蜘蛛の巣状にひび割れた。そのままファオラはジャネキの胸に向かって拳を叩き込んでいた。身体が胸からくの字に折れ曲がり、口から大量の血を吐き出しマスクが血に染まった。
俺はそれを見てから前に跳躍して名も知らないクリプトン兵に接近し、首を掴んだ。奴は突然現れた俺に為す術もなく首を掴まれ、両手で俺の腕を掴み外そうとする。
「グゥ!!はなせぇ!」
「あぁ今楽にしてやる」
俺の言葉を聞き顔が恐怖に染まる。俺は奴をそのまま蹴り上げ空高く飛ばすと飛び上がり追いかけた。
「グボオオ!!!」
奴の声が聞こえた。そして奴の胸を掴み宇宙に向かって放り投げ消える前に追いつき、勢いをつけ奴に向かってラリアットを決めた。
俺のラリアットを喰らい盛大に吹き飛ばされ、丁度後ろにあった月にぶつかると大きなクレーターを残し潰れて死んだのが見えた。
「あ、ちょっと強すぎたかも…….」
ファオラとララさん以外と戦うことなんて滅多になかったから楽しくてついやっちまった。あの2人であれば俺の攻撃を難なく捌いて逆に俺に攻撃してくるぐらいだから、思わずコイツらも反撃してくると思ってやっちまった。にしても弱いな。ちゃんと筋トレして太陽の光浴びてんのか?
地球に戻ってカルとファオラのいる街に降りると2人がアメリカ軍の兵士に囲まれていた。
兵士の中にはハーディー大佐もいる。
「もう1人きたぞ!!!」
兵士達のうちの1人が俺に気づき声をあげた。俺は両手を上げながらゆっくりと降り立ち言った。
「俺はジョン・ヴロリー、味方だ」
「わかっている。俺達を助けてくれた」
ハーディー大佐が俺の肩を叩いた。
「ありがとう」
俺はハーディーにお礼を言ってカルとファオラに近づいた。
「カル、マーサさんの所に戻ろう。ファオラも」
「いきましょう」
俺たちは兵士たちに見送られ空へと飛び上がった。
地球軌道上に浮かぶ宇宙船。
帰還したゾッドが司令室に赴いた。
待っていた科学者が言った。
「ゾッド将軍、ご無事ですか」
「一時的に弱点を突かれただけだ。そしてこちらは何も収穫は無しだった。コデックスの在処は分かったか?」
「奴を調べる前に脱出されたので未だ……」
「……そうか」
ゾッドは目の前に広がる美しい星、地球を眺め考えた。
そして指示を出す。
「ワールドエンジンを設置しろ」
ゾッドの乗る宇宙船からワールドエンジンが切り離され、地球の反対側に飛んでいった。
ゾッドの船はメトロポリスへと近づき、街の中心地で浮遊し待機した。
「ファントムドライブに接続」
船内に設置されたファントムドライブが青く輝き始めエネルギーを迸らせる。
そして破壊が始まった。
「ワールドエンジンを起動させたわ…!!!」
「始まったか」
「え?ワールドエンジンってなんだ?」
「簡単に説明すると、惑星をテラフォーミングする装置よ!」
「ヤバいじゃん……!」
俺はポッドを担ぎながら、ララさんの説明を聞きゾッドの宇宙船を眺めていた。
「あの離れた奴はどこに飛んでいくんだ?」
「惑星の核を挟む様に設置する、つまり地球の裏側よ」