ぬいぬい不知火?   作:KIKI的状況

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7話 演習

 

 鎮守府管理棟2階ーー執務室。

 

「気をつけ!」

 不動の姿勢に/服装に乱れなく、整然と提督の眼前に並ぶ6人の艦娘。

 提督が頷くと同時、最右翼に立つ霞が、半ば左向け左/十度の敬礼をもって申告する。

「霞、以下6名よろしい」

「了解。出撃前ブリーフィングを行う休め」

 休めの姿勢/12の視線を向けられて/肌に刺さる皆の戦意を自覚する。

 吐き出した口調ーー何時もと変わらないことに安堵して、提督はホワイトボードに貼られた海図上/伸ばした指示棒を踊らせた。

「本日の天候、晴。訓練海域での潮流は東へ1ノット。演習発動時刻は1900。訓練海域へ他の誰かが入ってくる予定はない」

 伝えるべきは最新データ。

 無言/意識を全て海図に向ける6人に向けて、最後の説明を淡々と。

「艦隊は、1855に西端中央付近のα地点を通過し、演習海域に突入するが如く行動する。陣形は複縦陣。左から響を先頭に、霞とぬいぬい。右は北上、夕立、時雨の順だ」

 言葉はなくとも視線を交わし、6人は互いに頷きあう。

 やるべきことは今日までの一週間で何度も話し合ってきた。故に、長台詞は必要ない。

 それが、いつものことだった/僅か3文字の決意/屋内に充満するアドレナリンへ着火する。

「勝つぞ!」

「はい!」

 皆の言葉/生み出た反響音が、部屋の窓を震わせた。

 

 乱れのない回れ右/6人が執務室を後にして10分後、

「霞の水雷戦隊が出るったら」

 煙突から鼓膜を突き破らんばかりの超長音を響かせて、今日のために編成された第一艦隊は抜錨した。

 

 

 

「1855、ポイント通過。遅れ進みなし。バッチリっぽい!」

「外力東へ追いの1ノット。この潮だと楽に走れていいね」

「緊張します」

「大丈夫。ぬいぬいは霞っちの後追いかけてたらいいからねー」

「ワタシノケツヲナメテミローって霞は言ってくれるから」

「言わないったら! そんなこと。響は変な言い方しない!」

「そうかい?」

 作戦を間際に控えーー不知火の緊張を解すかのように少女達の談笑は続いていた。

「舐めるなんて高度なプレーはあたしも無理だなー。おさわりならしたいかもねー」

「手をわきわきしない」

「ぬいぬい、今ならこのハイパー北上様がついてるから積年の恨み辛みをいざ! いざいざいざ!」

 女が3人集まれば姦しい。ならば6人ではーーその答えが今の艦隊であった。

 霞の舌打ち/それでも騒ぎは収まらず、少女はイライラを溜め息と共に吐き出した。

 灯火管制/唯一灯すのは、靴の踵部分で淡く輝く航跡灯/道標。

 そんな隠密行動の試みも、姦しければ意味はない。

「1900、時間です」

 真面目に/時雨の言葉/唾を飲み込む音が闇の中に木霊した。

「って言っても、まだ敵さんがどこにいるかわかんないしなー」

 大きく背伸びする北上の空いた脇ーー遠慮なく霞はぶん殴る。

「始まったんだからしゃんとする!」

「……痛い」

「身体で覚えたいの?」

「それは、やだなー」

 気の抜けた返事に/気合いを入れろと背中を叩きーー意識を全ての基本/索敵へ。

 所々で月明かりに照らされる白波/視覚だけでなく、耳を/聴覚を研ぎ澄ます。

 空母でもない。

 戦艦でもない。

 駆逐艦は、水上機/偵察機は搭載出来ず/大型の電探は載せられずーー関係ない/今できる技能でもって最善を。

 言葉は止まり/沈黙を。

 視線は鋭く/六分割された担当方位の警戒を。

 

「向こうは、もう見つけたみたいね。やるじゃない」

 

 潮騒以外は沈黙する海の上/レシプロ音が鼓膜を震わせる。

「機影1。右40度、……高角は60度」時雨/淡々と事実の報告を。

「さっそく飛ばしてきたみたいね夜偵を」霞/感心深げに相手の分析を。

「居場所ばれたっぽい!」夕立/驚きにつられ、癖毛が跳ね上がる。

 

 

 ーー同時刻。

「見つけた! 速力このままで南下していったらT字戦法に持ち込める!」

 瞳を爛々と輝かせ/始まる夜戦を待ちわびて、拳を握って喜ぶ川内に神通は頷いた。

「わかりました。このまま行きます」

「おっけー!」

 いざ行かん! 拳を天高く突き上げて/意気揚々ーーされど、川内は神通へと振り返る。

「何か……嫌なことあった?」

「ありません」

「お姉ちゃんはごまかせないよ!」

 表情を変えない神通に/可愛い妹の額に指を突きつける。

 何がおかしいのかわからずとも/何かあることはわかるーーそんな川内/妹思いの姉に神通は気持ちを「今日の相手の編成……」ぽつりと吐き出した。

「編成?」

「不知火がいました。練度も他の娘と比べたら遥かに低いのに」

「そうだったねー」

 眉間に皺を/軋ませる奥歯の音色を川内は静かに受け止めた。

 

 妹のかつて所属していた鎮守府/現在は敵艦隊。

 訳あって転籍したものの、それまでの神通の遺産/駆逐艦の娘達に施した訓練が、敵艦隊の実力の礎となった事実は川内も知っている。

 共に過ごした戦友は今日の敵。

 北上ーーいつも訓練を嫌がって/ここぞの時を除けば集中力は保たなくて。

 夕立ーー提督に甘えることと戦場で戦うことが大好きで。

 時雨ーー誰よりも真面目に/誰よりも自分以外のことに気をかけて。

 

「右、砲雷撃戦用意!」

 

 響ーー戦場でも/提督の馬鹿な頼みでも、愚直に職務を遂行し。

 霞ーー口が悪くて/敵も味方も誰であろうが容赦なく/手加減をみせず。

 不知火ーー。

 

 一度解体されて/それ以降は編成されることのなかったソコに混じる1人の少女。

 何故そこに居るのだと。本来あるべき姿が脳裏に浮かび/知らず握られた拳/グローブ越しに、深く爪は食いこんだ。

 

 苛立ちは、本気の勝負において、部隊の足を引っ張る存在を容認した敵の司令官+旗艦を勤める霞の2人に向られけてーー単なる弱小艦の訓練の場にしたとでも言いたげな編成に、自分のよく知る5人がいることが許せない。

 

 

 

 ならば、彼女が選ぶ選択肢はただ一つ。

 

 T字戦/一息に片付けようと缶の出力を上げたその瞬間、

「嘘!」

 神通は川内の叫びに気を逸らす。

 呆然と/信じれれないと口元に手を当てる姉の一言に、神通の瞳は全開に開かれた。

「夜偵、落とされちゃった」

 

 

 

「それじゃあ行くわよ」

 右腕から黒煙/発砲煙をたゆらせながら、霞は言葉を吐き出す/散歩にでも行くように/あっさりと。

「3人は、指示した通り行動すること。……夕立!」

「っぽい!?」

「頑張りなさい! 今はあんたが鎮守府最先任なんだから!」

「……頑張るっぽい!」

 互いに手を合わせ、やがて右翼と左翼は分離する。

 作戦の発動。

「面舵一杯!」

 右手を水面に突き刺して、大きく右へと舵を取っていく夕立達を見送りながら、霞達もまた僅かに右へ/T字戦法を狙っていた相手を予測して。

「同じ高さを速度も変えずにちんたらちんたら。ほんッと舐められたものね」

 思い出すのは数分前。

 動揺してるであろう相手を思い、霞は鼻で笑う。

 たかが夜偵。戦闘速力を出すでもなく/高速で爆弾を落とそうと迫ってくるでもない、ただの動く的=造作もない。

 たかだか『3つ』の目標だ。

「もしもの時を考えて予備も上げていたのは……まあ、及第点ね」

 わかりやすい場所に的を飛ばし、あえて落とさせることで油断を誘う相手の狙い。そして、上空の2機に気を取らせ、海面すれすれを追走させる夜偵を隠匿する狙いはさらに上々。

「ま、落とされたら意味ないけどね」

 1人呟く霞に向けて、先頭を駆ける響が振り返る。

 夕立と同じ/提督の開いた鎮守府を最初期から見続けた少女は問いかける。

「少しいいかい?」

「なに?」

「わかっていると思うけど」

「大丈夫よ、言わなくても。どれだけの付き合いか忘れたの?」

「そうだね」

 苦笑を隠すように帽子を押さえ、呟いた。

「初撃は引き受ける」

「任せる」

 水平線上のシルエット/越えるべき敵は、すぐそこに迫っていた。

 

 

 

「来るわよ!」

 瞬間、轟音。響の右肩から12.7ミリ砲が吹き飛んだ。

「さすがにこれは……恥ずかしいな」

「響!」

「大丈夫。これが私の役目だからね」

 一瞬で大破したことを気にする素振りを見せず、近寄ろうとした不知火へと首を横に振る。

「それに、不死鳥の名は伊達じゃないよ」

 恐らくは6人からの集中放火/伸ばして吹き飛んだ右肩の砲塔は不知火を庇うため/それでも戦闘不能にはなっていない=航行可能

 ずれた/焦げた帽子の位置を整える/先頭を霞に託し、2人を守るように列を出る。

 

 耐えられると約束した/仲間に向けて。

 耐えられると言い聞かせた/自分に向けて。

 そして何よりもーー久しぶりに提督に頼まれた。

 

 わずか数瞬ーー向けられる砲口を/発射管を前に、響は1人だけ笑っていた。

 迫る砲弾/魚雷が幾重にもーー回避は当然選ばない。

 動くのは、2人がもっとも被害の小さくなる位置へーー生き残るのではない/守り抜くための死地へと舵を切る。

 オーバーキルであろうソレ等ーー本能は悲鳴を叫ぼうとして/理性が否決ーー決意の咆哮で打ち消した。

「ウラアアアァァァァ!」

 

 

 

 

「響が戦闘不能、ぬいぬいと霞は小破したみたいだね……」

「響以外の被害は極力避けたかったけど、やっぱりそれは無理かー」

 沈んだ気持ちを吐き出せど/波を切り裂き、少女達は全力で波の上を駆けていた。

 戦闘はまだまだ序盤。どのような結果が先の一戦であろうとも、全てはこれからの一撃に掛かっている。

「けど、響にはありがとうって言わなきゃなー。一隻中破にしてくれたし」

「霞も一隻中破にしてるし、次で僕達が巻き返せば大丈夫」

「そうだねー。開戦には遅刻しちゃったけど……ぽいぽい?」

 真後ろからの悪寒に振り向けば、揺れる癖っ毛/変わらずに背後を駆ける夕立の姿が目に留まる。

 黙り続けていた夕立の視線は、左前方/水平線の少し前。

 炎と煙が巻き上がる舞台を見つめ/獲物を見つけ、にこりと笑う/狂気に/炎と同じ紅蓮に瞳を光らせる。

 ゾワリと/蠢く狂喜が漏れ出たように。

 カチリと/何かのボタンが押されたように。

「さあ、素敵なパーティーしましょ!」

 ーー発動。

 北上が/夕立が/時雨が、最大戦速ーー缶への負担を考えず、温度/タービン回転数の安全装置からの警告に無視をして、今出せる最速をもって漆黒の海面を駆け抜ける。

 潜水艦の恐怖も機雷の恐れも存在しない/故に3人は全力全開で。

 ーーAs Soon As Possible.

 ーー(できる限りとっととやっちまえ!)

 

 瞳がはっきりと捉える6人/交戦を終え、弾薬を装填中/僅かな気の緩み/狙い時。

 ふいに、前から2人目/神通と目が合ってーー遅すぎる。

 これから起こることを予測し/後悔し/臍を噛む相手に微笑みを送りーーT字戦法に持ち込んだ瞬間、3人は装填した全ての魚雷を解き放つ。

 

 雷跡/結果を待つのは十数秒。

 盛大な爆風/痛々しい悲鳴/何かの焦げた匂い。

 確実な戦果の証を耳で/鼻で/瞳で捉えーーそれでも彼女達は終わらない。

 

 波飛沫/航跡を大きく膨らませ、離脱することなく取舵をーー反航戦ーー熱気/異臭の溢れるその場所へ。

 やるならば徹底的に。

 散発的に返される些細な弾幕をかいくぐり、敵艦隊の後方/慌てふためく少女達へと砲撃を開始した。

 

 

 

「神通ごめん」

「これで動けるのは綾波と潮だけですか」

 台風一過のように穏やかな海上/6人の艦娘は漂っていた。

 

 俯く敷波/大破/行動不能。

 唇を噛み締める曙/大破/行動不能。 立ち上がれない川内/大破/行動不能。

「どうやら、自分達に慢心してしまっていたようですね。私もそうですが」

 感情の映らない神通の平坦な声音に、潮/中破の肩はびくりと小さく揺れていた。

 

 

 

「これで数の上では5対3」

「まあ、そのためにも合流できないと意味ないんだけどね」

 目的を達成し、3人は予め定めた合同地点へと舵を取る。

「神通をまけていたらいいんだけど」  北上のぼやき/霞達とは離れるように動いた針路の結果、間に存在する神通の部隊を迂回する事は必要最低限のことだった。

 ありったけの魚雷は、妹を庇うように動いた川内に集中し、神通の損害/小破/ほぼ無傷。

 たったそれだけのダメージだけでは危険であることは、身にしみて/魂に刻まされて知っている。

 わざと合同地点とは逆の方向に舵を取るりながら、

「だめだねー弱気になったら。いいこと……」

 なにもない、漆黒の海面/不安を煽る闇を見つめながら、北上は弱音を吐き出した。

 先頭を進むが故に湧き上がる強烈な恐怖を押さえ込む/轟沈はない/それでも、喉元に刃を突きつけられたかのように冷や汗が止まらない。

 神通を知っているからこそ、息をする呼吸音ですら聞こえてしまうのではないかと考える。

 

 何も見えない/漆黒が鎮座する海上に、ごう、と風が吹く。

 前方には誰もいないーー本当に? 待ち伏せ? 進路を変えるべき?

 思案は一瞬。

 胸のざわめきに北上は素直に従った。

 右手を上げる/同じように何かを感じていたのか、夕立は頷いた。

「砲戦用意。いつでも速力上げれるようにしないとね」

 何もなく合流できるとは思わない。

 奇を狙った攻撃/戦果は確実に神通の戦意を刺激したはずだ。

 来るならどっちからーー現状/勝ってはいるものの、怯えるような思考に陥る自分を否定したくて/首を横に振り、「あ」背後から息を飲む音に気付くと同時/世界は白く染まっていた。

「時雨は取り舵!」

 悲鳴/叫ぶような夕立の言葉を聞きながら、身体中ーー腕/腹/額に生まれた灼けるような痛みに北上の意識は飛ばされた。

 

 

 

「……遅い」

 予定地点/時間で待機すること10分ちょうど。

 未だ現れることのない待ち人に、霞は小さく舌打ちした。

 

 浮かぶ予想。

 あり得るその解に霞の眉間は皺を産む。

 望まぬ予測を頭の片隅に/霞は砲塔を動かした。

 気温とは異なる寒さ/悪寒を感じ取り、背後の不知火へ呼びかける。

「現海域から離脱する。一度北上して十分な距離を取ったら、最初の交戦ポイントに向かうわ。両舷前進半速」

 仲間が来るべき方位から視線を逸らし、気にかけるべき仲間/不知火へ。

「わかりました」

 何時もと変わらぬ端的な答え/されど、僅かに掠れた声音がのどの渇き/緊張を告げていた。

「固くなってるけど……やれるの? 本当に」

「いえ、その……論理もない感覚的なことですが……」

「……この空気がわかるなら、問題ないわ」

 縦列から横列へ/小さく肩をすくめ、取り出した水筒を不知火に押し付ける。「ありがとうございます」

「感謝されることじゃないわ」

「いえ、感謝されることです」

「……勝手にすれば」

「はい」

 休むためではなく、あくまで水分補給/飲むのは一息に。

「妖精と仲良くなれば、色々作ってもらえるから上手くやりなさいよ」

 水筒を受け取って/不知火の穴あき水筒が目に留まる。

 どこにでもある/皆が持っている支給品。霞のものより僅かに薄く軽いもの。

「本当に強くなりたいなら、必要なのは、射撃や航海術だけじゃないわ」

 幾分軽くなった水筒をしまい込み、視線は前へ/横列は変わらない。

「昔と違って1人で戦ってるように思う時もあるかもしれないけど、1人じゃない」

「艦隊運動を行う時でしょうか?」

「それもあるし……この言葉は受け売りだけど……あたしには、この12.7ミリと四連装魚雷……艤装があるわ」

 掲げる2つの兵装/無機質な鉄で出来たもの。

「これが……ですか」

「きちんと面倒見て、信頼すればこの娘達は応えてくれる」

 口調は僅かに強く/小首を傾げる不知火へ霞は頷いた。

 

 沈黙は数拍の間。

 思考の海に沈みかける不知火の肩を叩き/ジェスチャー/警戒を怠らないように促しながら、

「それに、自分が1人なんて考えてたらあのクソ司令官が凹むわよ」

「……そうですね」

 言われた言葉に不知火は自然と首肯した。

「頼りにならないし、貧弱だし、へっぽこだし、何考えてるかわからないし、臆病になったし……」

 止まらぬ言葉は非難の嵐。

 それでも霞は忌々しそうに/迷惑そうに/困ったように口にする。

「けど、あのクソはあたし達の司令官。そうでしょ?」

「はい」

「で、そのクソ司令官が勝ちたいって言ったんだから」

「勝たないといけませんね」

 頷いてーー瞬間、2人の間を白光が駆け抜けた。

 

 一秒後/不知火の理解は追い付いた。

「この馬鹿!」

 叫ばれた/同時/前へと水面を蹴っていた。

 ドドドドと背後に水柱/白いカーテン/さっきまでいた場所/目視不能。

 着水と同時、4筋の雷跡が白波の中から躍り出る。

 避けても至近弾/即決/回避を選択ーーバランスを捨て置いて/着水後の隙を考えることを諦めて/右足へ力を/左へ身体を跳ねさせる。

 一つは外れ、発射管を盾に/被弾/被弾/水面に近かった左足/至近弾。

 不格好に転がりながら/膝をついて起きながら/それでも動けることに安堵する。

 小さな拍手。

「着任からの期間を考えたら優秀ね」

 言葉の先へ砲口を/敵/探照灯を光らす神通へ。

 視線は反らさず、意識は右足へ/再起動/片軸のみでの航行可能。

「けど、まだ足りない」

「わかっています」

 自分の能力/今の限界を指摘されーー肯定。

 今は、1人ではない。

「そんなあたし達に負けそうなのはどこの誰よ!」

 駆け抜ける雷跡/不知火へと狙いをつける神通を邪魔するように/水柱。

「降参したら?」

 霞と不知火/神通を挟んで円を描く/L字の態勢へ。

「できない相談ね」

「みじめよね!」

 霞に合わせて魚雷を解き放つ。

「狙いが甘いですよ」

 着弾時間の誤差を小さく笑い、不知火にはどのように軸を/推力を用いたのかわからない鋭角軌道を披露する。

 言うなれば演舞のように。

 見惚れた瞬間、不知火の頬を空気が切り裂いた。

 背後で弾着/水柱。

 舞踏を終えて向けられた視線/冷え切った瞳に映されて、前を行く霞の航跡から不知火ははみ出した。

「殺る気がないなら帰ってください」

 照らすのは探照灯/己の正確が位置がわかるのを気にせずに不知火を光で包み込む。

「それとも帰しましょうか?」

 微笑みは数瞬。

 神通は舵を取っていた。

 

 身体が強張って/それでも迎え撃つように舵を取る。

「馬鹿ッ!」

 迫る神通ーーその背後、一杯舵で/左手を水面に触れさせながら取舵をきめる霞が目に留まり/違和感。

 

 霞の後方/白波の形が変わっていた。

 

 

 不知火の叫びと同時、2つの爆発音が木霊した。

 




一話で終わるはずやったんや(-ω-;)

響と夕立には始めた時から大変お世話になりました
(o_ _)o
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