皆の意見や知識で動かせ戦国物語 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
開拓民は集まらないかな〜と思ったが、第一陣となる約2千名は普通に集まった。
俺が主体となっての開拓で支援も手厚いということで、俺を信用している農民や町民、金で雇われるよりも土地を求めた下級兵士等が集まり先行部隊として志願した。
その中には織田家によって攻め滅ぼされた浅井家の残党も混じっていた。
実は史実でも優秀な事を知っていた浅井家残党に声をかけていたのだが、その中で家長となっていた浅井長政の弟の浅井政元は
「攻め滅ぼされた織田家に下るのは武家の秩序として拒みます。ただ何処にも所属しないで家臣を養えるほど浅井家も豊かでは無いので良い機会です。津田家の台湾への入植に参加して新しい浅井家を一からやり直しますよ」
まだ21歳の若者であったが、真っ直ぐな目をしていた。
こういう若者に俺弱いんだよなぁと思いながら
「開拓できれば100万石の領有も夢ではないからな。頑張ってくれ」
と背中を押した。
そして彼らを乗せて開拓船団が旅立っていくのだった。
俺の名前は大黒宗一郎……東日本では押しも押されぬ大商人となった大黒屋の長男で、大黒屋を大商人に押し上げてくれた津田家操様が家臣が少なくて困っている時に家臣となり、そして今回は台湾入植事業という大事業を任されるに至る。
「くうぅ! 戦では活躍できなかったけど内政で頑張っていたからの大役! しっかり果して見せる!」
「兄貴、熱くなっているところ悪いけど台湾の簡単な地図と地形の把握を頼むわ」
こいつは弟の夷三郎で探検が大好きな変わり者だ。
ただそんな探検好きにより日ノ本周辺海域を何回も旅をしては新しい島を発見したり、津田様に教わった三角測量によって海岸沿いの地図を作ったりして大きな成果を上げていた。
俺が今から行く台湾についても探検の過程で見つけていたらしい。
「台湾は測量した限り中華大陸に近い島で広さは九州と同じくらい……まぁここまでは兄貴も知っているよな」
「ああ、それは知っているが……なんでそんな島を中華は放置しているんだ?」
「1つは倭寇の拠点として栄えては無いけれど小さな漁村くらいは各地にある。倭寇の拠点だから中華が強い時には焼き討ちや討伐で荒らされて……てのを繰り返されたから日ノ本みたいに統治する者が出てこなかったんじゃないかと思う」
「あとは先住民族と疫病が厄介というのもあると思う」
「先住民族と疫病?」
「兄貴、津田様に蚊取り線香を大量に持たされたし、種も多く渡されただろ?」
「ああ、貰ったが」
「蚊を媒体とした疫病が流行っているらしい。俺も探検した時に船員が急な発熱で体調を崩した者が出た。おそらくその疫病が原因だろうな」
「なるほど」
「そして先住民族は首狩族と言う。海岸沿いの民は比較的温厚な部族も多いが、内陸に進むと首を狩る部族が住んでいる」
「それ武士と何か違うのか?」
「……あんまり変わらねぇな」
「まぁ敵対する者は見せしめに殺して、温厚な部族は取り込む。それの繰り返しになるだろうな」
「一応食糧と作物の種や種芋、種籾は置いていくけど、最初は漁業を重点にした方が良いと思うぞ」
「ほう、そんなに魚が捕れるのか?」
「俺達が今から運ぶ基隆という場所は良質な漁場がある場所だ。そこには小さな漁村があるから入植には最適だろう……ただ台湾の東側は港に適した場所が少ない感じだ。中華と近い西側への開拓を進めた方が良いと思うぞ」
「なるほど……ありがとう。助かる」
船の中で最終調整を行い、台湾入植がいよいよ始まる。
基隆に到着すると確かに船が入りやすい入り江があり、船を海岸に接岸して船を降りる。
開拓民達も降りると暖かく過ごしやすい気候に喜んだ。
これならば話しに聞いていた通り作物の生育には困らないだろう。
『大きな船ですね。何処かの国の人ですか?』
漁村の中国人らしき男性が中国語で話しかけてきた。
男性に拙いながらも中国語で中華の皇帝が日ノ本の王にこの島(台湾)を割譲したことを話すと男性は
『我々を追い出す感じですか?』
と聞いてきたので、そんな事はしないが、拠点を建てて畑を耕したりすると言うと
『あぁ耕すのは別に構いません。ただ山の方には首狩族が住んでいますので気を付けてください』
とのことだった。
その他にも漁船を船から降ろしたり、食糧を運び出して、漁村の方々と宴会を開いたりもした。
最初の頃は食料庫を作ったり、住むための家を建てたりとやることは多い。
小さいながらも畑を作って芋を植えて、あとは漁業に力を入れた。
漁師だった村人や漁村の方々から漁を教わり、対価として食糧の一部を渡した。
金属製の道具を目新しそうに漁村の方々は見ていたが、一部譲るとそれを使って漁に使う網を編むのが楽になったり、船の修繕が楽になったと喜ばれた。
首狩族にも遭遇したが、武士の武具を着用した侍達には敵わずに、最小の被害で対処することができた。
浅井残党の皆さんは、そのまま首狩族の村落を攻め落として支配領域を拡大したりもした。
そうこうしていると追加の人員が来たが、船団を率いてきた夷三郎に
「今回追加で来た4千人で当分は大丈夫だ。というかこれ以上は開拓に間に合わない」
「なら拠点ができるまでは物資の補給をメインにしよう。津田家操様も兄貴の事を心配していたが」
「とりあえず蚊取り線香のお陰で熱病に侵される人も少なく、大丈夫そうだな。できれば解熱剤となる竹瀝(竹を切って炙って出てくる液体の事 解熱作用があるとされ、浜松でも解熱剤として使われていた)を多く運んできて欲しい」
「それなら竹の種を持ってこよう。現地で作れた方が良いだろう」
「助かる……食糧も運んできてくれるお陰でこの人数なら2年は持つだろう。その前に基盤を作らないとな」
「まぁこれからは野分(台風)の季節になるから次の物資運搬は3ヶ月後になるだろうから無理はするなよ兄貴」
「おう!」
周りの木々を切っていき、木製の家をどんどん建てていく。
運んできてくれた金属製の道具で開拓はどんどん進んでいき、丸太を組み合わせた丸太小屋が立ち並ぶ様になる。
そして台湾は雨が多い。
雨具を着て開墾作業を進めるが、雨季になると雨が多くて殆ど晴れる日が無くなるくらいだ。
ただ米作りには水を大量に使うのでこの雨は恵みの雨になるだろう。
水路を整備し、田となる畑を作っていき、秋以降に植えられる作物を植える準備を進めていく。
身分による差は殆ど無く、皆一生懸命に開拓作業に従事して町を形成していった。
秋に植えた小麦は十分に育ち、石臼を使った旧来の粉挽きを行ったが、水車で慣れていた人々は非効率に不満が噴出したため、冬には技術者を開拓に送ってもらい、水車が多数建てられ、その水車を用いて木材加工が始まり、更に木造建築の家が増えるという循環が出来始めた。
そして入植2年目には米作りが始まり、津田家の農法をできるだけ真似した結果、場所は違えど豊作になることに成功し、台湾の温暖な気候であれば米の二期作ができる為、積極的に米の二期作が行われ、そして大豆も作って味噌と醤油作りが始まり、大量に獲れる魚をおかずにご飯を食べる生活が続くことになる。
各地の漁村に米を分ける代わりに魚を譲ってもらうというので支配領域をどんどん増やしていき、武士の面々も首狩族を倒して支配領域を広げた。
結果、基隆市と呼ばれる地域全域を占領し、一帯の安全を確保するのであった。