皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1539年 佐助6歳 勉強 洗濯板

 親父がペコペコと村の坊さんの園城寺笑安という和尚に貢物をして息子達に勉学を教える機会を与えてくれた。

 

 中村近くには寺も神社も両方あり、園城寺和尚は元々高僧だったが尾張に下野してきた僧でここらへんの寺社のまとめ役をやっている方だ。

 

 そんな方に勉学を教わるとなるとそれ相応の月謝が必要になるが、養蜂での利益と、親父の産まれの家系的に武士への復権もあり得るということで和尚に俺と伊達のアニキは勉強を教わりに行った。

 

「お、佐助も来たのか!」

 

「伊達のアニキも来たんですか」

 

 そう話しかけてきたのは虎徹と伏龍丸で、虎徹は長老衆を担う豪農の一家で、中村でも親父よりも発言権がある家だ。

 

 伏龍丸は尾張林家庶流でれっきとした武士の家で、15石の領土を持っている。

 

 虎徹は俺と同じ年、伏龍丸は俺の1つ上の兄ちゃんだ。

 

「なんだお前らも勉強か?」

 

「一応武士の家系ですから……」

 

「俺も村での役割があるから字の読み書きと簡単な算術くらいは使えねぇと税の納入でめんどくさい事になるらしいですし」

 

 知り合いがいてくれて助かった。

 

 園城寺和尚と顔合わせをし、早速授業に移る。

 

 この時代文字を教えるのはいろは歌なんてのが島津でできたばかりであり、教え方もまちまち。

 

 だいたいは歌にしてそれを地面に書いてなぞって覚えるのが一般的だ。

 

 あとは昔話や落語みたいな物語を聞いて話術みたいなのも学んでいく。

 

 物語の中に目上の人への対応の仕方や人の動かし方、褒め方なんかが学べるようになっていた。

 

 いわゆる戦国時代の一般常識というやつだ。

 

 午後から日が暮れるまでの授業だったが1日でも充実して学ぶ事が出来た。

 

「皆よくできたのぉ。また来ると良いぞ」

 

 そこから週に1度の頻度で園城寺和尚の所に勉強をしに行くのだった。

 

【知力が上がった 算術はカンストしている(転生者の常識) 話術が上がった 統率が上がった】

 

 

 

 

 

「ちわっす。大黒屋っす!」

 

 行商人の兄ちゃんが中村にやって来た。

 

 どうやら中村の収穫に合わせて商品の仕入れに来たらしい。

 

 大黒の兄ちゃんとは俺もアニキも顔馴染で大黒の兄ちゃんが親にひっついて行商をしていた時に遊んでもらっていた。

 

 今は独り立ちして親から中村の販路を引き継ぎ、物の売り買いをしに中村に来ていた。

 

 まぁ中村は商業地の熱田と津島に近いので行商の人もそれほど儲けは出ないだろうが、外部との繋がりという意味や運ぶ手間を考えると行商を使った方が得の場合があり、こうやって村に来る。

 

「へぇ村長、この村では蜂蜜が採れたんすか!」

 

「そうなんだ。ただ今年は良いが、採算が取れるとなると領主次第では税にされるかもしれないと思ってな。なるべく直ぐに売っぱらってしまいたいのだ」

 

「わかりました。こちらも定期的に蜂蜜を卸してくれるならなるべく秘匿しながら売りましょう」

 

「助かる」

 

 そんな話しを村長達としている大黒の兄ちゃんは俺とアニキを呼んだ。

 

「久しぶりだな伊達に佐助。元気だったか」

 

「うん! 元気だよ!」

 

「大黒の兄さんも元気そうで」

 

「ああ! ようやく独り立ちできたからな。まだ熱田の座の権利は親父が持ってるからほぼ仕入れ役だがな」

 

「将来的にはお店を?」

 

「そうだな。大黒一家としては熱田や津島の通りに店を持つのが夢だからな! 今は行商だが、必ず金を貯めて店を持ってやる」

 

 そう大黒の兄ちゃんと喋ると尾張の情勢を教えてくれた。

 

「尾張の織田弾正忠家の織田信秀様がここら一帯を支配しているのは知っているな。最近だと尾張をまとめ上げて三河への侵攻を強めているな。三河の松平の殿様が家臣に暗殺されてから松平家はごたついているから好機と思ったのだろう。西三河の一部は織田家の支配領域になってるぜ」

 

 大規模な動員も行われておらず、領主の織田秀敏もそこまで大きな動きをしていない。

 

 三河攻めの担当から外れているらしく、行くとしても援軍だろうか……今親父が亡くなると家の家計が苦しくなるのでなるべく平穏でいて欲しいが……。

 

「とまあこんな感じか。お前達も何か売れそうな物があれば気軽に言いに来いよ。なるべく高値で買ってやるからな!」

 

 大黒の兄ちゃんはまた忙しそうに他の村の顔役達に挨拶に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『天啓! 天啓ですよ!』

 

 冬のある日、神様からまた天啓を告げられた。

 

『隠し田とかやらないのですか?』

 

「やるにしても大人の許可が無いと無理だな。とはいえ何もしないのも癪だから家庭園レベルで来年は芋系を植えようと思う。あとは果実の木を植えるのも今だと難しいっすわ」

 

『むぅ……ならば洗濯板とかはどうです?』

 

「洗濯板っすか。それならできそうだと思います。養蜂の関係で木材を使う権利があるので、それで村の女衆を引き込めればって感じでしょうか」

 

『神童という噂が広まれば武士への道も開けるでしょう。あとは今持っている知識をホームセンターのどこかに纏めておいた方が良いのでは? 知識は忘れていくものですよ』

 

「確かに……時間を見つけて知識をまとめておきましょう」

 

『あとは椎茸の栽培をしてみてはどうですか?』

 

「椎茸の栽培だと木を切り倒す必要があるのですが、道具も俺の体も非力でできません。せめてガキ大将になれれば変わってくると思うけど、恐らく林の伏龍丸が次のガキ大将になると思うので」

 

『なかなか上手くいきませんね』

 

「ボチボチやっていきますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 天啓に従い、洗濯板の作成に取り掛かった。

 

 洗濯板は木の板に溝を等間隔に入れて衣類をこすりつける事で汚れを落とす。

 

 水に伝統的な灰を入れることで更に汚れを落とせるようになる。

 

「まーた何か作ってるのか」

 

「アニキ!」

 

「今度は何をつくってるのか?」

 

「お袋の洗濯が辛いって言ってたから楽になる物を作ってる」

 

「それがこの板か?」

 

「こうやって布をこすれば」

 

 ゴシゴシと水洗いをする。

 

 すると汚れがみるみる落ちていく。

 

「おお、踏み洗いよりも汚れが落ちるな」

 

「使えるかなアニキ?」

 

「お袋も喜ぶと思うぜ。これ沢山作れるか? お袋だけじゃなくて村の女達が欲しがると思うぜ」

 

「そうだね……ただ木材を結構使うのだけど」

 

「あぁ、養蜂の余りで作っていたのか……ちょっと親父に相談してみるか」

 

 アニキが親父に相談し、親父がまた村役を集めると養蜂の時の様に男達が集まった。

 

 それで俺が実践してみる。

 

「うむ、ガキでも綺麗に汚れが落ちるなら便利だな」

 

「洗濯物に灰を混ぜるとよく落ちるのか」

 

「うむむ、こりゃおっかあが喜びそうだ」

 

 加工も簡単なのでやり方を教えると早速真似して洗濯板の普及が広まっていった。

 

「佐助君ありがとうね! 洗濯物が楽になったわ!」

 

「佐助! ありがとう!」

 

 なかさんや智も大喜び。

 

 構造が簡単なので直ぐに真似されると思うが、それは仕方がないと割り切って周りの評価上げに使うのであった。

 

【村人の評価はカンストだ 村の女衆からの評価はカンストだ】

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