皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1556年 家操23歳 多角形要塞 馬上筒

 収穫期が始まると、既存の方法だと不作だったのに、新農法かつ俺がもたらした種籾を使った農家は大豊作となり、違いが顕著に現れた。

 

「すげぇ……領主様の言いつけを守った田は大量の稲穂が並んでいるだ」

 

「これが尾張の殿様の懐刀と呼ばれた方の力だか」

 

「来年は全部の田で教わった農法と種籾を使わなきゃいけんだ」

 

「んだんだ」

 

 通常の種籾で育てた稲は収穫前に来た台風により、倒れて腐ってしまい不作気味であった。

 

 それに対して新農法を行った田の稲は倒れにくい品種でもあり、台風にしっかり耐えて、通常の稲の数倍の穂を実っていた。

 

 これで遠江でも俺の農法の正しさと信用が生まれただろう。

 

 米の収穫後も千歯扱を各村に配って脱穀作業を改善したり(精米は水車がまだ数を揃えられてないので手動だが)し、次は小麦やじゃがいも、キャベツ等の冬野菜の栽培に取り掛かる。

 

 肥料が安定しないので比較的痩せてても育つ作物中心だが、俺の言いつけの正しさから俺から派遣された代官(農業普及要員)の指示に従って春に収穫する作物を育てる準備に入る。

 

 で、ようやく浜松城も生活区画の整備が終わったので妻や子供達を呼び寄せた。

 

 浜松城も多角形要塞と星型要塞を組み合わせた構造になる予定であり、第一段階の星型要塞の建造が完了した。

 

 盛土により周辺より少し高く盛られ、空堀(後々水堀にする予定)と城壁の高低差は6メートルにもなる。

 

 水が入れられれば3メートル付近まで縮まるだろうが、侵入できる箇所が表門と裏門に限られているため平城としては最高級の防衛力を有しているだろう。

 

 これに更に南の浜松城下町を囲むように多角形の要塞を拡張する予定である。

 

 総工費15万貫の大工事である。

 

 形としては

 ★

 ※(八角形の要塞予定)

 

 みたいな感じに北に星型要塞が出っ張っている形になるだろうか。

 

 完成すれば内側からの裏切りがなければ5万人を籠城させた状態で2年は防衛することが可能だろう。

 

 今の星型要塞でも1万の兵を1年は持たせることが可能だろうが。

 

 とりあえず1年も籠城できれば信長様が救援を送ってくれるだろうし、武田家も北条家も補給の概念が薄いし、長期戦をしたら農民兵の足軽が主体なので国の生産力が落ちてしまう。

 

 戦には勝ったが、国元では労働力不足で大飢饉が発生なんてなったら従えている国人衆が一斉に反旗を翻してしまうので長期戦でも半年が限界。

 

 しかも収穫直後から春の植え付けまでの期間である。

 

 勿論そんな状態で兵を取れば裏作はほぼ穫れないと思ったほうが良いし、武田家は不作でも税率が変わらない事で有名なので更に民が飢えることになるだろう。

 

 一方こっちの兵は基本常備兵だ。

 

 籠城時には町を守るために町民を徴兵するかもしれないが、町を守るためと戦意を高く維持することができる。

 

 まぁ外周要塞が完成すれば武田家と北条家両方が攻めてきても守り抜く自信はある。

 

 というか二俣城と浜松城の2つが陥落しなければ三河に大軍で通り抜けることは不可能である。

 

 

 

 

 

「父上!」

 

「おお、球磨! 元気だったか」

 

「はい! 母上や伯父上の言う事を聞いて勉学や武芸に励んでおりました!」

 

「そうかそうか!」

 

 球磨も数え年で8歳、まだ小学生の年齢だが、どんどん新しいことを覚えていると伊達のアニキから手紙をもらっていた。

 

「どれ、今日は一緒に馬に乗って新しい戦い方について勉強をしようか」

 

「やった! 僕も馬術を習ったから僕が手綱を握っても良い?」

 

「お父さんそこまで馬術は上手くないから手綱は握らせて欲しいな」

 

「ええ~父上も苦手な事ってあるんだ?」

 

「そりゃあるさ。でも苦手でも人並みくらいにはできないといけないからな」

 

 球磨とそんな会話をしながら馬小屋に移動する。

 

「大人しい馬がいっぱいだ。他の馬ってもっと気性が荒かったりするけど」

 

「武士は暴れ馬を好む傾向が強いけど、馬に乗るのが苦手な人もいるからな。金玉を取ってしまう去勢というのをすると性格が大人しくなったりするんだ。馬が暴れ落馬して敵兵に討たれる事も多いからな」

 

「なるほど……この馬は金玉付いているけど?」

 

「この馬は種馬だ。体が大きく性格も大人しいから子供にも体の大きさが引き継がれるようにと多くの子供を産ませるのを目的とした馬だ」

 

「父上みたい!」

 

「ハハハ、えぇ~?」

 

「だって父上めちゃくちゃ子供多いじゃん。だから父上みたいだな〜って」

 

「ま、まぁそうだな……じゃあ球磨には特別にこれを見せよう」

 

 俺は銃の先端がラッパの様に広がっている普通の火縄銃よりも短い鉄砲を球磨に見せた。

 

「鉄砲だ! ……でも形がいつもと違う。先端が広がっているよ」

 

「これは広馬上筒……馬上で使う火縄銃だ」

 

 ラッパ銃……ブランダーバスとも呼ばれる鉄砲であり、銃口よりも小さな弾丸を複数個飛ばす初期の散弾銃と呼ぶべき銃であり、銃口先端がラッパの様に広がることで発射時の散布を分散させたり、次弾装填をやりやすくするのに効果的であった。

 

 既存の火縄銃を作る部品を流用しており、銃口はポリゴナルライフリングの形に型どられているが、弾丸はミニエー弾ではなく通常の丸型弾薬が使われていた。

 

「でもこれは失敗作で、実戦では使えないと判断された。なぜか分かるかい?」

 

「え……使いやすくて弾もいっぱい飛ばせるのに……」

 

「答えは射距離が大幅に縮まってしまったんだ。普通の銃が3町(300メートル)に対してこの銃は10丈(30メートル)程の射距離しかない。つまりこの銃で相手に近づく前に敵に倒されてしまうんだ」

 

「なるほど……よい銃だと思ったのですが……」

 

「代わりにこっちが実戦に耐えうる馬上筒だ」

 

「これは普通の鉄砲よりも短いだけでは?」

 

「そうだ。だがこっちは普通の弾丸(ミニエー弾)を使うことができる。弾丸は1発しか飛ばせないし、射距離も2町(200メートル)と短いが、騎馬で近づいて鉄砲を放ってそのまま離脱という戦法は足軽よりも強いとは思わないか?」

 

「確かにそれならば活躍できそうです!」

 

「今鉄砲に怯えない馬を増やしている(馬の牧場近くで射撃訓練を行う)から将来的には騎馬兵を増やすことができると思うぞ。まぁ今の騎馬兵であれば弓の方が扱いやすいがな」

 

「そうなのですか?」

 

「絡繰弓(コンパウンドボウ)があるだろ? あれの射程がだいたい1町(100メートル)ほどで火縄銃と違い連射することができる。まぁ本人の技量に左右されてしまうのは仕方がないがな」

 

 騎馬を使った機動力と一撃離脱戦術に特化させるには最終的に瞬間火力と射程に優れた鉄砲の方に切り替わっていくのは歴史が証明している。

 

 まだ過渡期であるから両立できていると言えるが、部隊運用をする時に射程が揃っていないというのは使いづらい。

 

 なので津田家も鉄砲を用いた騎馬鉄砲隊の育成に力を入れているが、爆発の音に馬がビビってしまいなかなか育成が上手くはいっていない。

 

 ただ慣れることができた馬を使ってその戦術を模擬戦闘で試したところ有用性は確認できている。

 

 武田家ご自慢の騎馬隊も騎馬に乗れるのは武将等の少数かつ甲冑を着ているので重量により騎馬でもそこまで速度は出ない。

 

 でても走るよりやや速い程度である。

 

 騎馬鉄砲隊は斬り合いを目的としていないので軽装備で良いので機動力はこちらの方が上になる。

 

 しかも武将が突出して追いかけてくれば良い的であるし、主力の歩兵では機動力の差で追いつくことができない。

 

 問題はこの戦術が山や森の中ではできない事であるが、防衛予定である浜松周辺は開けた遠州平野が広がっており、二俣城もしくは天竜川を渡ってくる敵兵に対して機動戦を仕掛けることは可能な空間が広がっていた。

 

「球磨も馬術や鉄砲の射撃術をしっかり学ぶんだぞ」

 

「はい! 父上!」

 

 その後馬に乗って町を息子と見て回るのだった。

 

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