皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1558年 家操25歳 信長とのピロートーク

 信長様がどうしても会いたいということで小牧山城に向かい、寝室でしっぽりした後に城内にある蒸し風呂(サウナ)で汗を流していた。

 

「ふぅ、気持ちよかったぞ鶴」

 

「こっちはケツアナがガンガン付かれて痛かったです……で、信長様が私を呼んだということは何か重要な話があるのでは?」

 

「うむ、ここならば誰にも聞かれることが無いからな……義銀が怪しい動きをしている。余の従兄弟である織田信清が義銀から余に反抗するようにという文が届いたと報告があった。信広からも同様の報告を受けている」

 

「なるほど、お飾りでは我慢できなくなりましたか」

 

「あぁ、黙って担がれていれば良いものを……」

 

「となると追放ですか」

 

「あぁ、ただ頃合いというのもある。下手を打てば余に本当に反抗してくる者が出かねんからな」

 

「……いや、ここは事故の方がよろしいかもしれませんね。義銀様は確か鷹狩りがお好きだったハズ……私に準備を任せてはもらえませぬか」

 

「鶴……汚れ仕事になるぞ」

 

「忠臣は多少濁っていた方が安心できるでしょう。潔白の忠臣より少し黒い方が逆に安心できるのでは? それに私は良い思いを結構していますし」

 

「わかった。義銀には息子も居ない。このままお家を断絶させて頃合いを見て余は三好を刺激しない範囲で上洛して尾張、三河、遠江3国の守護職を引き継ごう。何貫あれば良いと思うか」

 

「そうですね、前回斯波様が3国守護に拝領したのに5万貫を支払ったので今回も5万貫と今川家から借金の担保で分捕った太刀が幾らかありますので、将軍様は大層刀がお好きな様なのでそれを幾らかお譲りすれば貰えるかと。資金も刀の用意も私にご命じくだされ」

 

「悪いな鶴」

 

「いえ、信長様の役に立てて嬉しい限りです。そうそう私の息子の多摩がいい具合に育ちましたので信長様の小姓としてお使いください。きっと信長様も気に入る整った顔立ちをしていますから」

 

「ほほう! そうか! そうか! それは楽しみだな……美濃の国盗りはあと5年はかかるだろう。天下布武を考えると美濃は必ず抑えなければならない地だからな」

 

「少し暑くなってきましたな。一回上がって寝室で語りましょう」

 

「そうだな」

 

 井戸水で汗を流して清め、体を拭いてから寝室へと移動する。

 

「お、今日の部屋守りは岩室殿(岩室重休)だったか」

 

「お久しぶりでございます家操殿!」

 

 岩室重休信長の小姓頭であり、信長親衛隊の隊長格である赤母衣衆にも所属している。

 

 信長様のセフレであるが美男子で性格も竹を割った様に真っ直ぐで織田家でも多くの人に好まれていた。

 

 史実では織田信清が謀反を起こして犬山城を占拠し、それを取り返す為の一連の戦いの中で合戦の最中不運にもこめかみを槍で突かれて亡くなっている。

 

 生きていれば織田家重鎮もしくは国持ち家臣になっていた可能性も高く、亡くなった事に信長様や家臣の多くは涙を流し、その才覚を惜しんだという逸話がある。

 

 実際に小姓頭としての実務能力、中美濃攻めでも精鋭鉄砲隊として武功を上げ、美濃に500石の知行を加増されていた。

 

「なんだ鶴、岩はやらんぞ」

 

「いえいえ、岩室殿を引き抜きはしませんよ。それよりも部屋守りの仕事も良いですが、今から部屋で話す事は岩室殿の為にもなる話かもしれませんからどうです? ご一緒に」

 

「信長様」

 

「岩もせっかくだ加われ。鶴の知恵が聞けるぞ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 寝室に再び入り、綺麗に敷き直された布団の横に紙を敷き、筆で周辺の地図を描いていく。

 

「本当にお前は凄いな。離れていても美濃だけでなく畿内までの地形が頭に入っているのか」

 

「忍びを使って調べさせております。最近は歩き巫女を使って独自の地図を作っておりますのである程度は」

 

「ほぅ、歩き巫女を諜報に使うか」

 

「武田信玄も同様の組織を構築しております。北条家も風魔党という忍び衆を抱えておりますので情報が行き交っております……まぁ信長様は商人に仲の良い者がいるようで」

 

 信長様は本当の商人もしくは忍びが商人に扮した者を使って情報を集めていることが最近発覚した。

 

 信長様の異常とも言える情報収集にはやはり忍びが協力していた。

 

「コホン、話を美濃に移しまして、中美濃に楔を打ち込むことはできました。あとは圧力をかけ続け、野戦に出てくれば鉄砲で撃退することができるでしょう。斎藤義龍や美濃衆が購入している鉄砲は織田家の旧式鉄砲もしくは高い国友から仕入れていますが、射程も短く弾丸も細工されてないので脅威とはなり得ませんからな。鉄砲を仕入れるだけ購入費も運用費も維持費もかかる。商いに注力していない斎藤家や美濃衆が鉄砲を扱うだけで相応の負担になる策を信長様は既に実行しているのですよね?」

 

「ああ、鶴が量産を始めた新式鉄砲は今までよりも弾丸がよく飛ぶからな。従来の5倍か? 威力も上がり、既存の鎧も貫通するからな」

 

「あれを防ぐには鉄板を仕込むしかありませんが、そんなのを仕込めば動けなくなりますからね。まぁ絹が量産されれば弾丸を防ぐ服が作れるのですが」

 

 岩室が

 

「絹の服ですと弾丸を防げるので?」

 

 と質問し、俺が

 

「絹の布に一定の厚さがあれば弾丸を至近距離で撃たれても防げることが確認できました。なので武将には絹の服や袖なし外套(マント)を羽織る事で防ぐ事が出来るかと……斬り合いには弱いですが、その距離まで鉄砲が普及した戦で戦うのは稀ですし」

 

「うむ、いかに良い銃を数揃えるか……財力こそが物を言うのが戦となりつつあるな。鶴の銭を稼げる領地経営はその一環であろう」

 

「ええ、その方が兵を強くできますからね。最近は雑賀衆という鉄砲傭兵を家臣に加えたので更に練度が上がってますが」

 

「ほう、それほど鉄砲に詳しいのか?」

 

「ええ、独自生産の拠点を持つほどには。まぁ若いのを引っこ抜いてきたので今力は激減していますがね」

 

「ようやるな鶴は」

 

「はは」

 

「美濃は時期に落ちる。5年以内に必ず落とす。そこからだ。美濃を取れば武田を蓋をすることになる。武田の領土的野心は膨大だ。同盟を組んでいた今川が弱ったと見や直ぐに攻撃したのでよくわかる。となると西は三好、東は武田に挟まれる形になるな」

 

「三好の勢いに陰りが出るまでは武田と争うことになるでしょう。婚姻に出している姫は」

 

「アヤツは余の妹だが腹違いだし、余に度々反抗する物言いをしておった。仲も悪いから気にせんでよい」

 

「家族思いの信長様にしては珍しいですね」

 

「兄弟皆から嫌われておった。特に小麦や市や犬への態度が酷かったからな。武田という遠くに飛ばしたのもそのためよ」

 

「なるほど……まぁこちらからは攻めませんが、武田侵攻の道筋は遠江を下るか奥三河を進むか美濃を攻めるかになるでしょう。東美濃は大軍を展開するには不向き、城をしっかり守れば時間を稼ぎ援軍を直ぐに送れるでしょう」

 

「奥三河の道筋は論外、尾張と遠江からの挟撃の恐れが強く、戦上手の武田信玄が選択することはないでしょう」

 

「となると遠江が危険では?」

 

「私と信包様の二俣城と浜松城で1年は耐えまする。しかも信包様の所には北条の当主の娘が婚姻して入っています。場合によっては武田は北条との同盟も決裂する可能性もあるでしょう」

 

「なるほど、武田信玄は織田領のどこを攻めても外交戦略は悪化するのだな」

 

「はい、逆にこちらからは奥三河から諏訪方面への進撃で武田領土を揺さぶっても良いですからね。奥三河に詰めている柴田様なら三河兵を率いれば精鋭武田とも戦うことができるでしょうし」

 

「武田を本格的に切り崩すにはどうすれば良いと思う」

 

「手っ取り早いのは長尾と同盟を結ぶことですが、北条との関係が悪化します。武田に取られた信濃の村上領土の奪還協力の密約程度が良いかと」

 

「ふむ」

 

「信濃国は美味い土地ですが甲斐国は痩せているし武田家の本領ということで統治難易度は凄まじく高いでしょうから統治が上手い人物か一度爆発してから再度根切りをする三河と同じ方法をとるのが良いかと」

 

「岩」

 

「は!」

 

「余に嫌嫌服従している者を纏めろ。将来甲斐に飛ばす」

 

「は!」

 

「鶴、根切りした甲斐はいるか?」

 

「正直行きたくありません。田んぼの水に足をつけると奇病に感染して死ぬらしいので米を作ることのできない土地ですし」

 

「米を作ったら死ぬか……恐ろしいな」

 

「陸田なら作れますが収穫量も味も落ちますのでね……まぁ金山があるらしいのでその金を使っていかにその間に田んぼに頼らない農業ができるかが鍵でしょうな」

 

「話を聞いていると鶴しか甲斐を統治できる気がしないのだが……もし誰かが統治することになったら手伝いに行ってやれ。じゃないと統治不可能だ」

 

「……わかりました」

 

「統治の前に武田を倒せるかだな手痛い打撃を与えれば無理な拡張戦略が破綻して一気に瓦解する可能性もあるが」

 

「遠江に攻めてきてくれれば楽なのですがね。武田家は無理に動員しても1万5000人の兵が限界でしょうし」

 

「対するこちらは美濃を取れれば3万5000人の兵を動員することができるな」

 

「遠江の完全に織田領と言える地域で守備だけなら5万の人員を動員できるように整えておきます。攻勢には使えませんが」

 

「うむ、岩勉強になったか」

 

「将とはここまで先を読まなければならないのですね……準備の大切さも実感しました」

 

「うむ、岩も将来国を治める立場になるかもしれんからな。期待しているぞ」

 

「は!!」

 

 こうして夜は更けていったのだった。

 

 

 




なんで信長様とイチャイチャしている時は筆が乗るのか……
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