皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1559年 家操26歳 養蚕 真珠養殖

 1559年 家操26歳

 

 永禄飢饉が発生(原因は冷害が1年以上続くため)

 

 

 

 

 

 

 

 年が明けて、俺は早速動いた。

 

 義銀が鷲狩りに出かけた時に狩り後に野武士に扮した忍び衆を動かして鷲狩りで護衛が少なくなった時を見計らい襲撃を仕掛けた。

 

 20名ほど護衛が居たが、50名近くで襲撃し、義銀は毒の塗られた矢に当たり絶命。

 

 護衛も全員が討ち取られて、全員を土葬し、馬や証拠になりそうな物を全て回収してその場を離れた。

 

 義銀は家臣を連れて失踪扱いになり、各守護代が政務を代行すると宣言し、信長様はまだ冬で寒い時期に家臣500名を連れて上洛を果たした。

 

 信長様は義銀様が職務を放棄して出奔してしまった事を将軍足利義輝に説明、多額の献金と立派な太刀を献上すると上機嫌となった足利義輝は信長を尾張、三河、遠江守護職に命じ、次は大規模な軍で上洛して、将軍を支えるようにと厳命し、信長様初の上洛は終わった。

 

 少人数かつ電撃的な上洛、しかも将軍と顔合わせをするだけなので美濃の勢力以外は基本手出しはしてこない。

 

 斎藤義龍的にはここで信長を討てれば最高だが、それをすると幕府に逆らう逆賊扱いになり、周辺勢力全てが敵になるし、ただでさえ離れ気味の国人衆の人望が終わりかねないので行きの段階で討てればどうとでも理由をでっち上げられたが、帰りの段階では手出しすることはできなかった。

 

 信長様にしてみたらローリスクハイリターンの賭けだったらしいが、これで斯波家は職務放棄をしてお家取り潰し扱い、織田家は幕府に再度忠誠を誓うことで斯波の所領を継承することができた。

 

 あとは平手の爺様や五位様を使い、幕府のご機嫌取りをしながら朝廷工作を行い、従五位上の尾張守の官位を賜り、官位を上げることにも成功する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「多聞丸、難しい任務を与えてしまい済まなかったな」

 

「いえ、今までが温すぎただけで、忍びの正しい使い方であると思いますよ」

 

「それでも……だ。任務で亡くなった2名の遺族と怪我をした者にはそれなりの額を支払おう。遺族の子供は召し抱える」

 

「死んだ者も浮かばれると思います」

 

「任務参加者には口止め料を別途支払う。奪った馬は好きに使え」

 

「は!」

 

 多聞丸に斯波義銀暗殺の任務の恩賞を話し、別の話題になる。

 

「武田も北条も防諜能力は高いか」

 

「はい、北条とは互いに町の様子を探る程度なら見逃す協定を結んでいますが、武田は厳しいため、町の様子を探るのにも命がけです」

 

「武田の調査頻度は減らして良い。遠江の防諜と遠江の国人達の動きを監視しろ」

 

「は!」

 

 豊作が続いた為に種籾や芋が他国に流出する事件が多発していた。

 

 村民間での取引なので止めれるとは思ってないが、肥料を使うこと前提の現代産の作物が肥料が無ければ戦国時代の作物と大差ない生産力になると思うが……。

 

「多聞丸、関東の米相場をしっかり調べておけ、今年は不作の気配が強い。恐らくどこもそこまで米は穫れないからうちから余剰米を放出することになるだろうがな」

 

「は! 調べておきます」

 

 多聞丸との会話も終わり、俺は別の政務に手を出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 大内が滅亡して、8年が経過していたが、尾張にも絹職人が流れ着き、その職人を保護して絹織物の生産を開始した。

 

 農民達も2年連続での大豊作で資金的に余裕ができ、養蚕業に手を出す農家が増えていた。

 

 俺も養蚕を始めるための農書や道具を安く村々に売り込み、桑の木の苗木を下賜したりと準備を進めていた。

 

 だいたいの村には桑の木が生えている場所があるので小規模なら養蚕に必要な葉の量も足りるが、生産量が増えればそうもいかないだろうからと投資した形だ。

 

 で、今年の春に少量ながら絹が生産できたので絹織物を作ってもらったが、品質はお世辞にも高いとは言えない。

 

 大陸から流れてくる絹よりも品質が良くない。

 

 これは蚕の質が悪いのか、道具が悪いのか、蚕の繭から絹を取り出す為の練度が低いからなのか、あるいはそれら全てか……。

 

「陶磁器と同じで品質が低いか……」

 

 養蚕と同じく陶磁器生産も領内で行っていたが、粘土の質が悪いのか日用品ならまだしも、茶器としてつかうには品質がたりてなかった。

 

 そのため俺は牛の骨を骨粉にしてそれを粘土と混ぜて磁器にするボーンチャイナの開発に取り掛かっていたりもしたが……。

 

「養蚕と陶磁器の品質が安定すれば大きな金になることは間違いないからな。農地面積もこれ以上は劇的に増えることも無いからな。あとは流民や増えた人口を使って教育を施して、工場を増やしていくしかないな。真珠養殖でも考案してみるか?」

 

 真珠は日本でも寿珠として使われたりと翡翠と同じくご利益ある宝石、もしくは砕いて薬として取り扱われていた。

 

 将来の南蛮貿易を見据えれば真珠を養殖する価値は計り知れない。

 

 南蛮……ヨーロッパでは真珠の価値は日本の数十倍高く、王族貴族が品質の良い真珠を求めで海外に戦争を仕掛けるくらいには需要が高かった。

 

 マルコ・ポーロのジパングでも日本は黄金と真珠の国と紹介されていたが、戦国時代の混乱で真珠の確保が盛んな場所がことごとく戦場だったり水軍の活動区域だったことで採取量が減っていた。

 

 それと鎖国政策により日本が真珠が豊富に採取される場所と認識されずに大航海時代の真珠を求めた植民地確保合戦から忘れられることになるのだが、金になるのは間違いない。

 

 南蛮貿易で東南アジアから香辛料だったりゴムが確保できれば産業が更に活性化する。

 

 代金として金銀の代わりに真珠を出せれば日本の金銀流出や人身売買の抑制になるだろう。

 

 人を運ぶよりも物を運んだほうが利益になるなら人身売買は起こらないからね。

 

「真珠は浜松では育てづらいから大野の方が良いかな。入江になっているから波も穏やかだし……久しぶりにアニキに会いたいし行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、真珠養殖か? どうやるんだ?」

 

「真珠貝に他の貝殻を細かく砕いて球体にした核を入れて2年から3年育てれば真珠が取れるはず……真珠貝は大量に転がってるだろ?」

 

「ああ、浜辺に沢山打ち上がっているな」

 

「生きている貝殻を拾ってきて実験してみるか」

 

 大草城で政務をしていた伊達のアニキに真珠養殖の話をすると、直ぐに食い付いた。

 

 浜辺に行って真珠貝を拾ってきて割って中を確かめる。

 

「真珠があればここを触れば真珠がポコポコ肉の中にあるからな。この貝にはないけど」

 

「なるほど……ここに真珠核を入れれば良いのか?」

 

「そうだな。半開きくらいにして、その中に針みたいな道具を使って中に入れればできると書物で読んだが」

 

「うーむ、不思議だな。それでできるのか」

 

「でも真珠の養殖ができれば更に常滑は潤うだろ?」

 

「そうだな。最近は陶磁器の質も良くなってきて買い付けが殺到していてな。和物だが、質が良いと評判だ。うちの武蔵こと武家が陶磁器作りにハマってな。暇さえあれば自分で陶磁器作って五位様と茶の湯を楽しんでいるぞ」

 

「五位様もお人好しだな」

 

「そうそう、園城寺和尚が最近亡くなったが、その話は聞いているか」

 

「あの人亡くなったんだ……50半ばだっけか」

 

「いい年だったからな。せっかく尾張に来たんだ。中村に寄って和尚の墓参りと親父達にも顔を出してこいよ」

 

「ああ、そうする……そう言えば長門ももうすぐ元服か? 時が経つのは早いなぁ」

 

「俺も家操も25過ぎて人生の折り返しだ。息子達が安心して暮らせるように頑張らないとな」

 

「そう言えば大和(家和)は結婚しないのか?」

 

「大黒屋の娘さんに良い子が居るからその子と婚約しているよ」

 

「大黒兄さんの娘さん……あぁ怜ちゃんか」

 

「今14だから年も近いしちょうど良いだろ」

 

「そうだな。はぁ息子達の婚約とかを考えないといけないと考えると頭が痛いよ」

 

「そっちは数が多いからな。また妊ませたんだろ?」

 

「今年も無事なら4人産まれる予定」

 

「産まれたら20人か?」

 

「そうなる。種が強かったのかねぇ」

 

「まあまあ、そう言えば秀吉と秀長の所も懐妊したって聞いたぞ」

 

「秀長の方も足軽大将に出世して頑張ってるらしいからな。こんどお祝い持ってかねぇとか」

 

「数少ない親戚付き合いだからな。そう言えば秀吉、津島の守将の平野長治殿を家臣に引き込んだらしい」

 

「平野長治殿って津島十五家の? 尾張でも中々の名門じゃん」

 

「うちと大黒屋の関係に近かったらしい。秀吉の愛嬌の良さに惹かれてだと。普通は平野殿の部下になるくらいの地位なのに平野殿が信長様に秀吉の部下になりたいと懇願したらしいからな」

 

「ほへぇ……凄い話もあったもんだ。でも平野殿なら安心だ。こんど平野殿との商売の規模を増やすか」

 

「そうしろそうしろ」

 

 伊達アニキと実りのある話をした後、甥っ子達にお土産を渡し、そのまま中村に行って和尚の墓参りをするのだった。

 

 伊達アニキは4年かけて真珠養殖に成功し、織田家の南蛮貿易を支える商品の真珠を相当量卸して織田家の財力を高めることにも成功するのだった。

 

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