皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1559年 家操26歳 永禄飢饉

「夏寒かったのに今年も豊作だべな」

 

「領主様から与えられた米のおかげだべ」

 

「んだんだ! 肥料も関係あるんでねぇか? 肥料ケチった隣の権兵衛は不作だったよ」

 

「秋前に田の水を抜いて田を乾かすの忘れた札五郎のところも酷かったな」

 

「まともにやったところは豊作で、昔のやり方でやった所も壊滅的だったらしいぞ」

 

「オラ達は芋や蕎麦さ植えてたから米が駄目でも食うに困らねぇだが、天竜川を越えた村はひどいらしいな」

 

 秋になり、収穫が始まると、ちゃんと農法を守っていた村人達は豊作、手を抜いたり、肥料を追加しなかった村人の田んぼは不作と目に見えて収穫量の差が現れていた。

 

 俺の言われた農法の正しさが更に証明され、俺を生き神様と崇める祠を作る村も出てくるほどだ。

 

 一方、北条家や武田家は冷害の影響をもろに受け、更に甲斐では水害も多発。

 

 信濃平定に軍を進めたり、川中島周辺を侵略することで米を確保した。

 

 北条家は税率を下げて不作に対応し、場所によっては見舞い米を振る舞われる地域もあった。

 

 こうした同盟国の困窮に俺は蓄えたり、年貢で徴税した米、売りに出された米や食料品を安く売りに出し、北条家からは感謝され、武田家からは感謝されるが、侵攻予定地に組み込まれる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 小田原城では北条家の一門衆が集まり話をしていた。

 

 北条家一門衆は初代北条早雲の息子である北条幻庵を長老に、三代目の北条氏康が家長として家中を取りまとめていた。

 

 二代目の北条氏綱の養子の北条綱高や婿養子の北条綱成、北条氏綱の実子で北条の東北への外交を担当していた北条氏尭、四代目当主予定の北条氏政や北条氏康の子供達も小田原に揃っていた。

 

「早川の婿殿である織田信包殿から相場よりもだいぶ安く米が買うことができて今回の飢饉もなんとかしのぐことができそうだ」

 

 そう言ったのは家長の北条氏康である。

 

 氏康は続けて

 

「背後には津田家操が動いていることも分かっている。恐らく当家との繋がりを維持したい考えか」

 

「確かに、織田家からすれば北条との敵対をすれば西に勢力を増やしたいと思っている中、余計な火種は抱え込みたくないだろう」

 

「幻庵様の言う通り、北条は受けた恩は忘れませんからな」

 

 北条氏尭もそう言う。

 

「氏尭殿、北の様子を教えてはいただけますか」

 

「ああ、今回の飢饉で大きく動いた。まずは武田晴信が出家して武田信玄を名乗るようになり、信濃や川中島方面で軍事行動を開始した。長尾景虎はそれに対応するために軍を出しているが、春頃に長尾家が上洛して管領職並み待遇を得ることができたらしい。関東管領の上杉と協力して関東を治めよと命令が届いているのを聞くに今回の飢饉で越後も不作だろう。これが長引くようであれば今年の冬か来年には攻めてこよう。それにより今抑えている関東諸国の国人達が動揺する可能性も高い」

 

「うむ……そうなれば織田家に後詰めを頼むことは可能か」

 

「交渉してみる価値はあるでしょう。織田家も北条と長尾では距離的に接している北条を助けたほうが利になると思いますからな」

 

「うむ……」

 

 氏康はそう呟くと更に関東勢力について話を聞く。

 

「房総半島の里見家は水軍を出し、相変わらず鎌倉を焼こうと躍起になっており、北条水軍との小競り合いが続いています。ここは何時もどおりなので良いでしょう。佐竹家と宇都宮家は婚姻関係を結び当家と距離を置いています。当家が強いうちは良いでしょうが、長尾家の関東侵攻が実現すれば敵対する可能性が高いかと」

 

「関東管領の上杉家は2年前に関東から追放することに成功しましたが、長尾家に匿われており、関東入りが実現すれば勢力を巻き返す可能性が高いかと……長野家は猛将である長野業正が関東管領に従うと表明し、長尾家と協力関係を築いていると見られる。他の家は今は北条支持を掲げている状態です」

 

「更に北の東北は天文の乱の後遺症でどこの家も勢力拡大できずに婚姻関係の強化に勤しむ……何時もどおりの光景ですな。関東への侵攻に協力するとは思えませんので気にしなくても良いでしょう」

 

 氏康は北条氏尭の報告を聞くと

 

「うむ、早めのうちに明確に敵対している里見を潰し、半島からの脅威を取り除いておきたいが……民が疲弊している以上動員することもできん。各々居城の防備を固めるに留めるしかなかろう」

 

「では儂は織田家と交渉を続けよう」

 

「お願いします幻庵様。あと私も家督を氏政に渡すことにしよう」

 

「なぜでございますか! 氏康様は病気でもなくご顕在ならば」

 

「だからだ。氏政に経験を積ませ私に何かが起こったとしても北条家を引き続き運営してもらわなければ困る。それに代替わりを利用して徳政令を発布し、民の窮困を少しでも収めなければ」

 

 徳政令をすることで確かに農民や下級武士は助かるのだが、商人は少なくない打撃を受けてしまう。

 

 経済的に徳政令は一時的に借金を無くして豊かになったように見えるが、商人の信用が減るので乱発すれば商人が寄り付かなくなってしまう場合もある。

 

 ちなみに乱発して一番混乱したのは室町幕府で、徳政令欲しさに一揆が多発し、応仁の乱の混乱に拍車をかけたという説もある。

 

 信長や家操は経済の重要性と商人の必要性を理解している……どちらかと言うと重商主義的政策を推し進めているので、楽市はしても徳政令の発布はしないと商人達に約束をしていた。

 

 まあ北条家の徳政令は今回の様な飢饉では効果がある政策であるのは確かである。

 

 北条氏康はこれを機に家督を北条氏政に譲ったが、死ぬまで権力は握り続けることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「北条家が攻撃された場合援軍に向かうべきだと思うか家操」

 

「そうですなぁ私的には長尾家と関係が悪化してでも助けるべきだと思いますが」

 

 俺は信包様に呼ばれて二俣城に登城していた。

 

 そこで北条幻庵経由で関東管領軍や長尾家が北条領内には侵攻してきた場合援軍を要請したいと書かれていた。

 

「信長様には?」

 

「家操とよく相談せよとしか」

 

「うむむ……援軍に出すとしたら浜松城兵4000を動かしましょう。二俣からも1000名出していただければ助かります。信包様、指揮は私にお命じください」

 

「うむ、あくまで援軍だからな。矢面に立つことはないだろうが、任せる。弾薬は足りるか?」

 

「大量生産していますし、船で運ぶことができますので大丈夫です」

 

 信包に命じられてもし、北条が攻められたら5000名の兵を率いて援軍に向かうと約束するのだった。

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