皆の意見や知識で動かせ戦国物語 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
『わぁ! 尾張米って凄く美味しいんですね! びっくりしました! 家臣達もこのお米なら米だけでも何杯もいけると喜んでいます! これだけ美味しいお米ならお酒にしても美味しいんでしょうね! あ、塩もありがとうございます! 品質の良い上物の塩ですね! 日本海側でも塩作りはしているのですが、ここまで均一な品質の塩は滅多にありません』
『この塩で漬けた梅干しは本当に塩辛くて美味でした! 家臣達も喜んでいましたよ! 信長殿が羨ましいです。貴方みたいな気の利いた家臣がうちにももっと居れば私も出家騒動みたいな事を起こさないで済むのに……』
『そうそう、陶磁器作りで四苦八苦していると聞きましたので、もしよければ越後の妙高山の麓の粘土を少し贈ります。うちでも陶磁器作りを推奨しているのですが、中々上手くいきません。技術交換ができたら嬉しいなぁ』
『津田殿は内政の天才と耳にしたので越後をもっと豊かにできる方法があればお手紙ください
上杉謙信より』
上杉謙信とメル友ならぬ文通友達になって数ヶ月、1ヶ月に1度のペースで文通しているが、相変わらず乙女の様な文章をしているな。
「これが軍神と謳われる人の手紙か……乙女みたいですね」
そう言うのは長男の信球こと球磨である。
小田原城の籠城戦や小田原夜戦でビビりながらも鉄砲を放って敵を討ち取る活躍をしていた。
初陣が籠城戦というのは心臓に悪いかもしれないが、年の近い本多忠勝の大活躍を見て最近は武芸の稽古にも熱心である。
それと同じく政務にも積極的に参加していた。
今回は外交文章の取り扱いとして謙信の手紙を読ませていた。
「まぁこれは文通友達みたいなものだから相手の位を傷つけなければ結構自由に書いて大丈夫だからな。今回は」
『上杉謙信様へ
苧麻の布や越後の粘土等送っていただいてありがとうございます。今粘土を使って窯で陶磁器を焼いていますので完成したら贈ろうと思っています。なるべく酒を入れたら酒が美味く感じるような仕上がりにしたいと思っています』
『お酒が好きということなので尾張米で作った清酒と呼ばれる透き通った酒、蜂蜜を使った黄金酒、芋を使った芋焼酎を贈らせていただきます。芋焼酎は強い酒なので水で割ってお楽しみください』
『越後に行ったことがないので詳しいことは言えないのですが越後には平地ながら沢山の潟がある湿地帯が広がっていると聞きます。大規模な土木工事になると思いますがその地域が開墾できれば越後の民が飢える心配は無くなるでしょう。また寒冷地でもよく育つ種籾を贈りますのでよろしければお使いください。
津田家操より』
「こんな感じだな。相手の好きな事を全面的に押し出しつつ、相手が求める事を書くのがコツだ。そうすれば互いに利益のある文章が出来上がる。上杉家は金持ちだが米がなかなか穫れないから食料が輸入できるようになれば関東への遠征をしなくても良くなる。それでいて金払いは良いから交易相手にはうってつけだ」
「今は海路で貿易をしていますよね?」
「ああ、千石船なら多少海岸から離れても問題なく航行することが可能だからな。それにあの船には方位を知ることのできる羅針盤を備え付けている。北条と友好関係の伊達家の港やその血縁関係の深い最上の港も使うことができるから上杉家までは比較的楽に移動できる」
「なるほど、だから更に千石船の増築をしているのですね」
「ああ、あとは堺との貿易を増やせれば良いが、志摩国の水軍衆が邪魔でな」
「遠回りしなければいけなくなっているんでしたっけ」
「ああ、まぁ畿内の経済力と需要は大切だからな。商品を大量に作るこっちとしては買ってくれなければ金が手に入らないからな」
「なるほど」
そんな事を話していると大黒屋の長男の宗一郎がやって来た。
「商いの話しですか!」
「流石商人の息子だな」
「えへへ!」
「大黒兄さんは今回の販路拡大を何か言っていたか?」
「めちゃくちゃ喜んでましたよ。関東や東北、越後の各地に暖簾分けした支店を増やしてダブついていた親族の大半を店持ちにできたし、越後行きの船に色々な積荷を載せられるので銭が潤って仕方がないと言っていました」
「そうか、それならよかった」
「あとは信長様が占領した美濃の岐阜城城下で楽市令が出ましたので上手く市場に割り込めたと言っていました。できれば椎茸の生産量をもっと上げて欲しいとも言っていました」
「はは、わかったわかった」
「そう言えば父上、北条から援軍の報酬は貰えたのですか?」
「信球には言ってなかったか。北条領内での商いの自由と海上無税の権利、あとは1000貫分の銭と兵糧分の代金だな。兵糧置いてきたからこっちも秋まで軍事行動ができんがな」
「なるほど……あ、予備の備蓄米を上杉に贈ったのですか」
「どうせ古古米だ。高値に転売もできんからな。だったら将来の投資として贈った方が良いだろ」
「はへぇ……発想がやっぱり凄いですな父上は」
「信球も宗一郎もこれから津田家を支えなければならないのだから色々頑張ってもらうぞ」
「「はい!」」
秋の収穫は昨年サボった者達も気持ちを切り替えた為に冷夏ながら収穫量は豊作基準となっていた。
各地で収穫祭が開かれ、俺や子供達も出来る限り出席する。
「領主様、今年は領主様が安く売ってくださった備中鍬や牛が大活躍でした! 田や畑が深く掘り起こされ昨年よりも冷夏がきつかったのに豊作を維持できました!」
「それはよかった。果樹園や養蜂、養蚕の方はどうだ?」
「へい、果樹も蜜柑が今年から実がなる様になりました。養蚕もぼちぼちでっせ! 養蚕は村の者と色々工夫しながら頑張ってます! それも良いですが、今年は茶が豊作でしたのでだいぶ金になってありがたかったです。これなら来年は脱穀用の水車を村で作ることができそうでっせ」
「そうかそうか! それならよかった」
こんな会話を各地で行う。
俺の領地の農民達は貧民でも他の領地なら中農、中農や豪農達は普通に金持ちで飢える心配は無かった。
食事も米や芋、野菜類に官営の養鶏場から卸されれる鶏肉を買って肉料理も増えており、栄養状態も戦国時代にしては良く、背丈の高い人や肉付きが良い人が増えていた。
今まで三河、遠江、駿河の3国で一番栄えていたのは今川の本拠地のあった駿河であったが、今では遠江が尾張に次ぐ経済力を持ち、織田家の第二の工場地帯として栄えていた。
その恩恵を遠江の国人衆も貰っており、農法が伝播して生活が少しずつ良くなりつつあり、無理に軍事行動に招集しない織田家の方針で国人衆達の金銭的圧迫も減り、懐にだいぶ余裕ができているのであった。
そのため最初は武田家や北条に近かった遠江国人衆も織田寄りの姿勢に代わりつつあった。
「よう大将!」
「孫一じゃないか、祭りは楽しんでいるか」
「おうよ! 小田原で大活躍だったからようやく俺も家老入りできたしな」
「出世が多くて評定衆や家老の数も増えてきたからな。また新しい役職でも作るか?」
「そうしてくれや。できれば戦方の家老と内務の家老を分けた方が良いぜ」
「いや、それをやると文官と武官の対立が起きそうだな……まぁそこは調整すれば良いか……」
「おっと祭りなのに政務の事を考えさせて悪かったな! ほれ焼き鳥」
「おう、うむ、美味いな」
「次の戦も呼べば飛んでいくからな! また新しい兵器を作っても使いこなしてやるぜ」
「おう、頼りにしているぞ」
俺はその日は政務を忘れて祭りを楽しむのであった。
「小麦達もまた懐妊か。出産は年明けかな?」
「そうなりますね」
相変わらず性欲ギンギンな俺は4人の妻を孕ませていた。
目指せラグビーチーム2チームである。
「そう言えば弟の秀吉と秀長も男の子が今年生まれたって手紙が届いたよ」
「本当か智! これで木下家も安泰だな」
「本当、猿だった弟も今じゃ城持ちの立派な侍だもん。何が起こるか分からないものね」
「智は最近不便なことはないか?」
「全くないわね。毎日が楽しいわ!」
「ならよかった。これからもよろしくな智」
「はい! 家操さん!」
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