皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1562年 家操29歳 上洛1

 側室は上洛が終わったら婚姻の儀をする段取りとなり、俺は上洛準備に取り掛かる。

 

 といっても俺は上杉謙信に呼ばれた位で幕府に何かやるってことは無く、朝廷にも貴族の役員さんに献金して官位を受け取るのみである。

 

 なので基本やることは特に無い筈である。

 

「上洛準備は進んでいるか?」

 

 そう俺は右筆の富士信氏に質問する。

 

「(織田)信包様とも連絡を取り合っていますので何も問題ありません。信包様が500名、津田家が1000名を出し、織田家全体で1万の兵を動員する予定ですが、規律重視と言われていますので兵の厳選を行っています」

 

「今回道中や京で狼藉を行えば俺の部下でも容赦なく斬首だから気をつけるように言い聞かせろよ」

 

「は!」

 

 信長様から一銭切りの令が通達されており、例え盗んだのが1銭だとしても斬首という厳しい処罰をすると言われており、上洛軍はいつも以上に規律重視である。

 

「朝廷への贈り物の選別はどうなっている?」

 

「本多正信様と石川数正様が選別作業をしています。硝子の茶器や蜂蜜、椎茸、砂糖、干しアワビ等高級品を揃えております。官位を授かるために5万貫を献上するのでよろしいので?」

 

「ああ、俺と信包様両方の官位を得るための工作資金だ。問題は無い」

 

「は!」

 

 準備も整い、美濃の雪解けが始まった頃に上洛軍の招集の声かけが行われた。

 

 

 

 

 

 

 上洛軍は織田家の中核人材がほぼ出陣しており、秀吉とかも軍を出していた。

 

「家操のアニキと同じ領主としての立場で行軍できるなんて夢みたいだ!」

 

「ハハハ、秀吉も鎧を着るとより立派に見えるな! 横で騎乗している美男子が竹中半兵衛か?」

 

 スラッとした女性に見間違えるような若い男が馬に騎乗していた。

 

「お初にお目にかかります。木下秀吉の家臣竹中半兵衛でございます」

 

「アニキ、こいつは知恵者でな、佐久間殿が美濃攻めの際に手痛い打撃を受けたのは半兵衛の伏兵策が刺さったからなのだ! 半兵衛はワシの頭脳とも言える人物でな! 美濃では神童と呼ばれていたのだぞ! アニキと同じだ」

 

「よせ秀吉、俺はもう神童という年じゃねぇよ、半兵衛、秀吉はこういうヤツだが気の良いヤツだ。家臣として支えてやってくれ」

 

「言われるまでなく」

 

「ハハハ、秀吉! 良い家臣を得たな」

 

 秀吉と挨拶をしたら、そのまま柴田勝家の方に向かう。

 

「柴田様」

 

「おお、鶴か! 久しいな! 正月ではあまり話せんからな」

 

「柴田様もお元気そうで何よりです。全体的にピリついて居ますな」

 

「ああ、気を引き締めなければならんな」

 

「今回は武勇を誇ることができそうになく残念です」

 

「いやいや、鶴は上杉謙信と戦ったりして武勇は全国に広まっているではないか! 次は儂の番じゃて」

 

「いや~小田原では流石軍神の軍勢でした。関東諸将の兵は倒せても謙信公の軍勢には弾丸が当たらなかったですからな。毘沙門天の化身と言われていますが、本当に神のご加護があるとしか言えない戦いぶりで」

 

「ほほお! そんなに謙信公は凄まじいのか! 是非一戦戦ってみたいものだな」

 

「でしたら邪魔な朝倉を潰さなければなりませんな」

 

「織田家は成り立ちからして朝倉とは敵対しているからな。今回の上洛に反応して上洛してくるようなら良しだが、来ない様なら幕府軍として上杉謙信と共同で潰す可能性もあるからな」

 

「ええ、朝倉は幕命に背き続けておりますからな。朝倉宗滴公が生きていた頃は強さ故に許されておりましたが、朝倉宗滴公亡き今の朝倉では織田家単独でも倒すことができますでしょう」

 

 ちなみに朝倉のした悪行は上司である斯波氏を追放した。(これは織田家も似たような事をしているのでほぼ同罪であるが斯波氏追放の前に激しく抵抗し、内紛状態になり越前全体を混乱させているので規模は朝倉の方がでかい)

 

 応仁の乱の混乱で京を焼いた。(他の大名もしている)

 

 幕府が困窮し支援を願った時に出兵出来る状態でありながら支援しなかった。

 

 加賀一向一揆鎮圧を理由に度々幕命無視。

 

 等で幕府で高い位を貰っていながら結構な無法を働いており、足利義輝が三好にボコボコにされている時も反三好を掲げながら日和見をしていたし、独自に将軍を擁立出来る足利一門を抱えていた為に中央との政争に協力しなかったり……。

 

 麻雀で例えると小さい役が積み重なり数え役満になったみたいに……野球で例えると毎回失点してコールドゲーム目前みたいな感じか……。

 

 というか史実では最初の朝倉討伐命が出た時に朝廷と幕府両方から潰せと信長様が命令されている官軍だったのでそれくらい朝倉は上層部から嫌われていた。

 

 普通はこうはならんやろ……っていうくらい外交的失点を積み重ねていた。

 

「朝倉は正直どうでも良い。鶴、今回上杉家と織田家が上洛することにより幕府の権威はどうなる」

 

「一時的に上がるでしょうなぁ。西は尼子が上洛はしないですが幕府を支える姿勢をしていますし、三好とは和解をしたことで幕府と三好の二重政権ながらも幕政が崩壊していた一時期よりも復権するでしょう」

 

「ただ織田家と上杉家は畿内が混乱するのは求めていませんからね。そのまま三好討伐まで飛躍しないと良いですし、三好は畿内のほぼ全域を抑える巨大な領地を持ち、動員するなら5万人は出せますからな……」

 

「ふむ……となると織田家としては幕府に再度忠誠を見せて美濃統治の正当性を確保し、上杉と友好関係を築ければ良いと思うか」

 

「上杉家との友好は北条を刺激する可能性が高いですが、上杉家は関東管領の権威を持っていますから正当性では北条よりも高い。できれば上杉と北条を近づけ、対武田包囲網に持っていければ最高ですが」

 

「おいおい武田家は同盟関係だぞ」

 

「今川の様に弱ればどこでも襲いかかる狂犬の様な武田家の同盟を信用できますかね」

 

「できんな。信長様もそれをみすえているのか?」

 

「畿内進出はその後からになるだろうと……上杉も領内が飢えなければ対外進出は限定的ですから」

 

「ふむ、なるほど……」

 

 柴田勝家様と話しをし、本格的に上洛が始まったので進軍を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 六角領内を通過するが、流石に六角というか、山地が多い割には栄えているように感じた。

 

 その六角領内で1夜過ごす為に野営をしていると多聞丸から話したい人が居ると連絡が入る。

 

「お初にお目にかかります! 家操様、伊賀衆の百地正永と申します!」

 

「伊賀衆か、甲賀衆と対を成す忍びの里ではないか」

 

「おお、伊賀衆をその様に評価して頂き光栄です」

 

 百地の話しを聞くと是非とも伊賀衆も雇って欲しいという話であった。

 

 甲賀衆が津田家の忍び衆となってから生活が良くなったのを見て、甲賀の技術に負けないと自負する伊賀衆も売り込みをしようということになり、評定衆の服部一族の血縁もあるのでどうか雇って欲しいと願われた。

 

「うちとしては忍びが増えるのはありがたいが、甲賀衆と揉めるようなら直ぐに契約を破棄するからな。そうだな……うちには未婚の家臣が多いから娘達と婚姻して少しずつ関係を強めながら、甲賀衆と協力して任務にあたってもらいたい。忍び1人に年収10貫、中忍に30貫、上忍に50貫出そう。多聞丸の様に忍び頭になれば年収150貫も夢でないから頑張れ」

 

「は! 誠心誠意忠義を尽くします!」

 

 こうして伊賀衆の一部を雇入れ、彼らを京に連れて行くわけにもいかないので、情報収集が得意な者以外は浜松へ俺が書いた書状を持って向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 近江国の浅井家とは結局軍事同盟ではなく不可侵を結ぶに留まり、近江は普通に通過することができた。

 

 そして京に入ったが、想像通り荒廃していた。

 

 道には餓死者が転がっており、野犬がそれを貪っている。

 

 腹を膨らませて(腹が痩せすぎてガスで膨らむ)動けなくなった子供が力なく崩れた壁に寄りかかり、貴族が物乞いをするのが今の京である。

 

 その京でも比較的まともな建物が御所であり、そこで足利義輝が政務を行っていた。

 

 ちなみに有名な二条御所の着工は1564年なのでもう少し先のことである。

 

 信長様が将軍足利義輝公に挨拶を行い、取り決め通り美濃の守護職も信長様に贈られ、それの返礼として5万貫が幕府に寄贈され、織田家領内で打たれた上物の太刀も一緒に贈られた。

 

 足利義輝は幕府を蔑ろにした斎藤義龍討伐を喜び、そのまま御所にて宴会が開かれた。

 

 宴会に参加できない一般兵である我々は京の周りで待機である。

 

 尾張から運んできた兵糧でなるべく美味い料理を兵達に食わせるように心がけており、最近量産できるようになったバターを使ったリゾットもどきや京野菜を使った味噌汁等工夫して料理を振る舞い、京滞在中の規律維持に苦心した。

 

 しかし規律違反者はどうしても出てしまい、酒を飲んで暴れた者、京の女子に狼藉を働いた者等が見せしめで斬首されて晒し首にされ、暗黙の了解で兵達は禁酒するようになる。

 

 織田家到着の少しあとに上杉謙信率いる上杉軍と三好長慶率いる三好軍も合流し、約5万の大軍が京に集結することになるのだった。

 

 

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