皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1562年 家操29歳 検地

 秋……それは実りの季節。

 

 今年は例年以上に忙しく、そしていつもより輝かしい金色の田が広がっていた。

 

「す、凄い……上杉ではこんな光景見たことなかった」

 

「わぁ……北条でも私が生きてきた間にはこんなにの豊作は見たこと無いです」

 

 天守閣の最上階から見下ろしながら巴と淡は感嘆の声をあげていた。

 

 他国出身者から見たら異常とも言える大豊作である。

 

 3年ほど冷夏が続き、それでも豊作であったが、津田家の農法が完全に普及し、気候が安定していた今年は例年以上の大豊作となった。

 

 奉行人達は今年は大忙しで検地が進められるが、ここまで豊作だと農民達の抵抗もほぼ無く、検地協力金も支払われるので村によっては検地を早く終わらせようと積極的に協力する場所もあった。

 

 足踏み回転脱穀機と唐箕と呼ばれる道具が大活躍し、足踏み回転脱穀機は文字通り脱穀を、唐箕は脱穀し、精米した米を回転ハンドルを回して風力で米、籾殻、チリゴミを分別する道具である。

 

 それに各村に設置された水力式精米機も大活躍。

 

 これらの道具により米の精米作業が楽になり、空いた時間を養蚕や他の作物を作ることに繋がった。

 

 各地から収穫と検地が終わり、年貢の計算が始まる。

 

「この枡、例年よりも小さくねぇか?」

 

「あぁ、今年から枡の大きさが統一されてな、今までの年貢用の枡が大きすぎたから津田様が改定した。これならば重さが変わるってことも無いからな」

 

「おお!」

 

 1升1.5キロ、10升で1斗(15キロ)、2斗で1俵(30キロ)が戦国時代では一般的な1俵の考え方であり、1俵が60キロに変わるのは史実だと江戸時代からで、今は30キロ1俵の考え方が普通である。

 

 1石5俵(150キロ)で更に計算される。

 

 収穫を行い、収穫量から石高を計算し、年貢が決まるという感じだ。

 

 織田家では田んぼを等級で分けて年貢を取るという方法ではないので、各村ごとの収穫量で純粋に計算したのが出る。

 

 あと米だけでなく今回の検地では芋や野菜等の他の作物の収穫も計算している。

 

 収穫終了から1ヶ月が経過した頃、城に検地結果が各地から運び込まれ、それの合算作業が始まり、全体を把握できたのは更に半月経過した時であった。

 

 信長様に渡された時の津田領は9.5万石が表石高であったが、田畑は流民が流れ込み、再開墾されたり、新しい村ができて耕地面積は加増時より1.2倍増え1反(田んぼ1枚の面積)計算と浜松の町の拡張で田を潰したのも合わせて11万石で、1.5万石増であったが……

 

「実際収穫量は平均1反4.5石、米だけでも約49.5万石。これに芋や野菜等を合わせると約20.5万石……約70万石……面積に対して約6.3倍か」

 

 米は年貢として取り立てるとして4割の約19.8万石が税となる。

 

 1石1貫計算で19万8千貫。

 

「これ以上は年貢の税を上げるのは難しいな」

 

 ちなみに浜松の人口調査をしたところ信長様から加増した時が人口8万人だったが、浜松城下に10万人、農村に10万人の20万人が住んでいることが分かった。

 

 人口増加分の12万人のうち自然増加が半分、残り半分は流民といった感じか。

 

 商人達に掛けている地税(場所代)で3万5千貫、各種工場や特産品の利益が55万貫、新通貨の交換による利益が12万貫、他交易による利益で10万貫(大幅変動あり)、織田領内への投資の利益で4万7千貫。

 

「合計105万貫……人件費や材料費で60万貫、武器弾薬や食料代で15万貫、工場の拡張や町への投資代金で20万貫……雑費で5万貫……貯金は5万貫か、もっと稼がないといけないな」

 

 この全ての内訳を纏めた物を信長様に見せると

 

「内政巧者の鶴でも利益は5万貫なのだな」

 

「はい、これも外交費や朝廷献金などをすると無くなってしまう額になりますし、軍事行動をした場合は赤字になるでしょう」

 

「やはり米を中心とした徴税方法だと限界があるな」

 

「はい、ちなみにですが、裏作は徴税していないのでだいぶ農民に有利にしていますが……」

 

「これだと米を作らない農家は無税な気がするが」

 

「あ、その分は他の作物で徴税しているので問題ありません」

 

「そうか……鶴の手腕でも約10万石に対して常備兵は5千名が限界か」

 

「はい。それ以上となると農民や町人を動員しなければなりませんが、戦闘能力は数段落ちるかと」

 

「うむ、尾張兵も常備兵にすることでようやく他国と渡り合える強さと練度になったが……余の領地でも常備兵は1万が限度じゃな」

 

「軍隊は金がかかりますね」

 

「全くだ。何か収益を大きく上げる方法は無いのか?」

 

「となると……南蛮や明との貿易になるでしょうか。有力な鉱山を抑えるというのも手ですが……」

 

「貿易か。商品はあるのか?」

 

「堺衆の話しを参考に、南蛮人は真珠に目がない様なので、常滑で真珠の養殖を行っています。明へは椎茸や工芸品の数々が高く売れるらしいです。しかし南蛮人とのコネも無いですし、明は貿易を制限していますので……」

 

「堺も飯の種の南蛮人を尾張まで呼ぶのは良い顔をせんからな」

 

「一番日ノ本で需要が高いのは火薬ですが、織田家内で使う分を製造するのでこちらも厳しいですね」

 

「まぁだろうな。浜松から無償の火薬供給助かっておる」

 

「あとは東国の大名達との貿易が更に盛んになれば利益が出せるでしょうが……東国は銭が足りてないので銭を行き渡らせるところから始めなければなりません」

 

「ままならんな」

 

「砂糖も莫大な利益を織田家に与えていますが、これ以上の量産は砂糖の値崩れを起こす危険もありますので控えさせてもらいます」

 

「うむむ……む」

 

 信長様は地図を見ながら伊勢を指さした。

 

「北伊勢は国人衆が多くいる地域で北畠も手出しできん地だな……ここを取ればどうなる」

 

「北伊勢を取れれば私と仲の良い伊賀の国と接続しますし、伊勢湾の海運の範囲を更に広げられますが……やはり志摩国が邪魔ですな」

 

「志摩は九鬼水軍の調略は完了したが、それ以外の水軍とは敵対関係が続いている。陸路で行こうにも北畠の領地を通らねばならんからな」

 

「とりあえず北伊勢を攻略し、伊賀と接続するのを優先した方が良いかと。伊賀から京に抜ける道もございますし」

 

「近江を通らずに京に行けるのは大きいな。北伊勢の調略は滝川に任せるか」

 

「それがよろしいかと」

 

 俺は信長様に検地の報告をしに行ったのに、なぜか北伊勢攻めの話しになっていたのだった。

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