皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1563年 家操30歳 クリスタルガラス 勉強会 息子達の妻

 1563年 家操30歳

 

 元管領細川晴元死去

 讃岐で大干ばつ

 宣教師ルイス・フロイス来日

 観音寺騒動

 毛利隆元死去

 

 

 

 正月が終わってすぐに、朝廷と幕府に本格量産が始まった永禄通宝(黄銅貨)の献上を行った。

 

 献上理由は旧公方御料所(幕府直轄地)の上納金と禁裏御料所(朝廷の土地)の上納金である。

 

 幕府や朝廷も想定よりも出来の良い貨幣の質に納得し、鋳銭司として励むように織田信包様に褒美となる太刀が贈られた。

 

 また、将軍様より引き続き織田家が北伊勢を管理すること、朝廷からは著名な刀鍛冶が多くいる桑名の運営を引き続き織田家に任せるという書類をいただくことが出来た。

 

 また、これにより織田家内だけでなく畿内でも永禄通宝が普及していくことになる。

 

 そんな大仕事を終えると俺はガラス製品の品質を上げるために酸化鉛を加えたクリスタルガラスの製造に踏み切った。

 

 酸化鉛を使うので製造過程に気をつければ鉛中毒になる事は無く、酸化鉛を加えることでクリスタルの様な綺麗さ、透き通る美しいガラスとなる。

 

 作られたクリスタルガラスの茶器を信長様に贈ると

 

「美しいな。これに果汁を入れれば……おお、透き通っているから液体の色を見ることができるな。これならば毒殺を防ぐことも出来るだろう」

 

 今までのガラスは色を付けることで差別化し、それぞれ畿内を中心に高値で取引されることになる。

 

 

 

 

 

 

 

「米を作りすぎると米価が下がり豊作貧乏になる可能性が高く、作物の転換を行うべきである。そこで小麦、大豆、じゃがいも、てん菜を順に植え、違う作物を作ることで土地の疲弊を防ぎつつ、多くの作物を作ることが出来る。これによりじゃがいもの連作障害を防ぐこともできる。詳しくは新しく書いた四輪作についての農書を読んでほしい」

 

 俺は各村との連絡役を担う奉行衆でも一番下の村奉行の役人を呼び寄せて勉強会を開いていた。

 

「この4年を1期とする農法ですと二毛作ができなくはないでしょうか」

 

「良い質問だ。確かにこの農法を行うと二毛作は難しくなる。しかし米を作らないので米価に左右されにくいというのも特徴だ。別に全ての田んぼを転作しろというわけではない。田んぼにしにくい畑を転作して作物を作る場合、この四輪作を行った方が収穫量を維持することが出来るという約8年常滑と浜松で実験した結果が出ている」

 

「それに二毛作をやる場合でも米の他に裏作として小麦、菜種、じゃがいも、大根、長ネギ、てん菜、レンゲソウ等が育てられることで有名だが、換金作物を作る場合二毛作とも言ってられんからな。木綿は1年草故に二毛作することもできないからな。できる作物とできない作物がある」

 

「じゃあ二毛作ができる米が良いと思われるが、津田式農法が各地で広まりを見せている現状、上方(畿内)や東北、越後に余剰米を売ることで米価を守ってきたが、来年も米価が維持できるとは限らない。俺の予想では現状維持か下落してしまうだろう」

 

「豊作貧乏ほど馬鹿げたものは無い。それ故に他の作物への転換を行い価格の維持に努めて欲しい」

 

 奉公衆の1人が声をあげる。

 

「米の代わりに表作として植えられる物があれば二毛作を維持できるのでは?」

 

「いや、米が毎年土地が痩せないで収穫できるのは水田を使っているからだ。四輪作は植えることで土地が最も痩せにくくしているに過ぎないし、肥料を与えなければこれらも結局は痩せていく。米の代わりとなると薩摩芋、時期をずらした玉菜(キャベツ)、瓜や夏野菜等か……単年でやるのは良いが、複数年やると土地が痩せて1年休ませないと収穫量は戻らんからな」

 

 こういう勉強会は時折開かれ、農法の研究に役立つ。

 

 例えば俺は失念していたが、裏作でレンゲソウを育てることで家畜の餌にしつつ、地中の窒素を結合させて土壌を良くする効果があったりする緑肥を広めるきっかけになったのもこの勉強会からだ。

 

 村奉行達は年貢の一部が俸禄として支払われるため、皆真剣である。

 

 他にも勉強会は行政に関する物だったり、軍の戦術の研究成果を発表したりと色々ある。

 

 旋盤の有無による生産力の違いの研究を発表したときは物議を呼んだが、調べた者には報酬を与えたこともあった。

 

 俺と大きくなった息子達はなるべく参加するようにしている。

 

 この勉強会も立派な政務であるからである。

 

 特に智の長男である信球は他の兄弟よりも必死に勉強をして領地経営で役立とうと必死だ。

 

 お嫁さんである鳥居元忠の妹の桃を孕ませてからより顕著で、やる気に満ち溢れていた。

 

 そんな兄の姿を見て他の息子達も頑張るからお嫁さんが欲しいと俺にねだってきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 年長順で言うと霞の長男北家と千秋の長男大家が適齢期であり、良い娘居ないかな〜と探していると、本多正信が

 

「正室は後から決められます。それに家臣を一門入りさせまくれば後々更に派閥を作る可能性がございます。養子入りさせるのも手だと思いますが、純粋な一門を増やしたいなら家格の低い娘を娶らせて別家を建てさせるか、側室でお茶を濁すかになるかと」

 

「ちょっと息子達に聞いてみるわ」

 

 …………というわけで北家と大家を呼び出して家督放棄して別家を建てるかという話をすると

 

「俺も大家もこんな巨大な津田家を運営する器量は無いから最悪仏門も覚悟していたから別家建てさせてもらえるなら全然!」

 

「分家になっても本家ささえるよ!」

 

「親父的にも有力分家が複数あったほうが良いでしょ。一門から徐々に譜代家臣に格下げになると思うけども」

 

「信摩(智の次男)も別家建てられるらしいし、俺らそっちの手伝いに飛ばすのも手だと思うけど?」

 

 北家も大家も家督継承は放棄しても良いらしい。

 

 まぁ元々側室として嫁いできたが霞と千秋の息子だ。

 

 そこら辺はよくわかっているのだろう。

 

「信摩を支える人も必要か……一度信摩と相談も必要だな。とりあえず2人は家格の低い娘を嫁がせるで良いな? それなら女中や忍び衆から良さそうな子を見繕うが」

 

「女中から良いの!? だったら俺、歩美ちゃんが良い!」

 

「僕は葉月が良いなぁ」

 

「なんだ気になる子が居たのか」

 

「城勤めの子で母さんの側付きの侍女で歳も近いし、良くしてもらっていたんだ……というか遊び相手」

 

「僕もそんな感じ……よく一緒に双六したり和歌を楽しんだりするんだ!」

 

「そうかそうか。好きな人と恋仲になるのが一番だからな。今度俺が一度面接するがそれは許せよ」

 

「「はい!」」

 

 ということで侍女の2人を面接することになった。

 

 

 

 

 

 

 

「私達何かしたかな……」

 

「領主様に呼び出しって……いつの間にか失態をしてしまったかも……」

 

 俺が応接の間に入ると歩美と葉月は平伏した。

 

「頭を上げろ。別に叱るわけではない」

 

 俺の言葉にきょとんとしている。

 

「2人は北家と大家は知っているな」

 

「「はい!」」

 

「それぞれ霞の侍女と千秋の侍女をしているらしいが、息子達の印象を教えて欲しい」

 

 するとまずは歩美から語り始めた。

 

「わ、私は霞様の侍女をしていますので北家様とよく話します。私にはよくわからないような数学や軍学を師を通じてよく学んでおりますし、火縄銃の扱いも上手で射撃場で鍛錬する際には手伝いをさせていただいてます。下賤な出自の私にも優しく、頼れる殿方であると思います」

 

 続いて葉月はハキハキと

 

「私は千秋様の侍女をしておりますが、大家様と話し相手になる事が多く、優しいお方であると思います。武芸は苦手なようですが、苦手でも克服しようと努力する姿は立派だと思っています!」

 

 と言い切った。

 

 少し経歴を調べたが両者甲賀のくノ一の家系で、常滑では石鹸工場で従事し、浜松に工場移転に伴い、工場勤務態度が真面目だった為に侍女適性があると城勤務になり、下働きを踏んで、2年前に侍女に抜擢された今年15歳。

 

 工場勤務が9歳からなので6年以上勤務していることも把握した。

 

 特に裏も無く素性も問題ない。

 

「実は息子達が2人を娶りたいと話がある。歩美には北家を、葉月には大家を妻として支えてはくれぬか」

 

「は、はい! わ、私で良ければ」

 

 歩美は即答。

 

 葉月は

 

「お断りします」

 

 と断言。

 

「なぜだ?」

 

「私のようなどこの馬の骨の様な娘ではなく武家から大家様は妻を娶るべきでございます。妾ならまだしも妻になれる身分ではございません」

 

「身分は問題ない。2人は家老の林龍次郎と前田利虎の養女として入ってもらい、その娘と嫁がせる……性格は嫌っては無いのだろ?」

 

「はい、立派な方だと思っております」

 

「ならこれは命令だ。息子達の妻となり息子達を支えて欲しい。そして妻になったからには領主である俺よりも息子達を第一に見て欲しい」

 

「……わかりました。妻となり家内統制の一石としてお使いください」

 

「わ、私も領主様の命に従います!」

 

 最後はやや強引だったが、息子達に嫁がせる事が出来た。

 

 この会話を横の部屋で聞いていた息子達は戸を開けるとそのまま娘達に抱きついた。

 

 よほど好きだったのだろう。

 

 俺は若者達を残して静かに部屋から出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうか拙者達を家操様の家臣の末席に加えてくれはしないでしょうか!」

 

「お願いします!!」

 

 息子達の嫁の問題が片付いたら次は浪人かよ……しかも知り合いだし……。




クリスタルガラスで鉛中毒になる事は無いらしいです。

ただ製造時に誤ると製造者が鉛中毒になる事はあるらしいです。

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