皆の意見や知識で動かせ戦国物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1563年 家操30歳 長谷川と佐脇

 長谷川橋介と佐脇藤八……共に史実では信長様の小姓頭の地位に居たとされ、岩室重休の次に小姓頭になっていた人物達である。

 

 これに史実では加藤弥三郎も加えた小姓頭3人体制であり、桶狭間の戦い開始時に信長様が出陣の際に飛び出した時に付いてきた5人のうちの4人が上記のメンバーであるが、今世では桶狭間の戦いが無かったのと岩室が生きているので出世が遅れていた。

 

 それでも親衛隊の中だとトップクラスの母衣衆に抜擢されていたし、次期小姓頭の地位も確約されていたのに、信長様の愛馬を殺してしまい、追放処分となってしまったようだ。

 

 愚連隊時代からの付き合いで、弟分として長谷川も佐脇も可愛がっていたし、佐脇は家で評定衆として成長している前田利家の実弟でもある。

 

 そんな二人が俺を頼るのは自然だが、正直追放された話を聞いた時に森可成の方を頼ると思っていたが……(近いし、織田家の中で今一番信長様のお気に入りだし)

 

「森様は信長様に近すぎるのです。追放した者が身近に陪臣になったとは言え居れば信長様も良い気分にはならないでしょう」

 

「不可抗力とはいえ信長様の逆鱗に触ってしまったのは事実……家操様なら距離的にも適度に離れていて、しかも人手不足で我々も力を発揮しやすいと思った次第で」

 

「うん、2人の実務能力も武士としての才能も幼い時から知ってるからよくわかる。2人が家臣として支えてくれれば嬉しい。とりあえず2人には右筆の役目を与えるから家の先輩になる富士信氏に仕事内容は聞いてくれ。流石に最初から土地は与えられないが、銭は結構な額出すから」

 

「「ありがたき幸せ」」

 

 まだ2人共に23歳と若く、信長様の小姓頭候補は実力主義を掲げる織田家ではめちゃくちゃエリートかつ有能でないと就けない地位である。

 

 大きな失敗をしているのも良い……彼らは大きく伸びるだろう。

 

「将来大名になれる才能を持った人材が転がってきたんだから喜ばないとな。長谷川、佐脇、とりあえず浜松に来るまで疲れたろ、湯に浸かって疲れを癒していけや」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

 

 

 

 

「なんだ佐脇、お前も信長様に追放されたのかよ」

 

「利家兄さんもだろ……こっちで奥さんと仲良くやっていてよかったよ……」

 

「おう! 松とこの前2人目も産まれたぞ!」

 

「こっちは利家兄さんが復帰できるように頑張っていたのに……」

 

「悪かったって……飲め飲め、俺が奢るから」

 

 佐脇と前田利家は久しぶりに顔を合わせたので、城内の酒場で飲み会っていた。

 

「しかし、佐脇も運が無いな。信長様の愛馬の暴走に巻き込まれるとは」

 

「ああ、虫に刺されたのか酷く暴れて、俺と長谷川は無事だったが、小姓の1人は体を蹴られて大怪我。俺と長谷川はその場で馬を斬り殺して信長様の逆鱗に触れたってわけだ。大怪我の奴は怪我で槍や刀を持てなくなって暇(解雇)を言い渡されていたけどな」

 

「なにはともあれ無事でよかった」

 

「利家兄さん、津田家は織田家とどう違う?」

 

「そうだな……家操様が温厚かつ切れ者だから皆伸び伸びやれる。ただどの職務にも算術ができないと一定の職に就けない仕組みになっているな。佐脇と長谷川は小姓時代にしっかり学んでいるから大丈夫だと思うけど」

 

「算術には自信があるが、利家兄さんが算術?」

 

「今は槍よりも算盤を持っている時間の方が長いくらいだ。算盤あると便利だぞ」

 

「へぇ……俺も揃えておこう」

 

「俺が買ってやるよ。懐に余裕無いだろう」

 

「ありがとう兄さん」

 

「おう、長谷川の分も買わないとな」

 

 水割りの芋焼酎を飲みながら話を続ける。

 

「今織田家の席順はどうなっているのだ?」

 

「席順は平手様がこの前亡くなったのは知ってるだろ」

 

「ああ、家操様が慌てて尾張に向かっていたな」

 

「筆頭は佐久間信盛様、次席が林秀貞様、三番手が柴田勝家様……まぁここらへんは不動の順位」

 

「次点で森可成、丹羽長秀、滝川一益と続きます」

 

「ほう、滝川一益殿がそこまで出世したのか」

 

「はい、外様出身者の希望となっております」

 

 家操も成り上がりの代名詞であるのだが、幼少期の頃から信長様を支えた事実があり、成り上がりでも再現性が無い特殊なものであった。

 

 それに比べて滝川一益は美濃攻略、北伊勢攻略と着実に積み重ねた武功による出世だったので、言ってしまえば頑張れば可能性がある再現性が高い出世である。

 

「それに続き母衣衆の方々が続きます」

 

 河尻秀隆とか岩室重休とかがこの位置でほとんどが城持ちか城代クラスに出世していた。

 

 信長様も子飼いの部下達なので可愛がっているし、実働部隊としても高い戦力になっていた。

 

「母衣衆の次に出世していると言えば徳川家康殿も頑張っておられます」

 

 徳川家康も史実のような基盤が無いなりに常滑の学校から輩出された秀才達を家臣に加えて若々しい家臣団を形成し、鳴海城主として頑張っていた。

 

 泥炭を売った金で領内も潤っており、鉄砲も常滑産のを安く揃えて美濃攻め、北伊勢攻めと活躍していた。

 

 この家康の次くらいに木下秀吉が入ってくる。

 

 5000石の領主は織田家では多数いる前線司令官の1人でしか無いが、滝川一益の様に一気に数万石に出世できる可能性を秘めた地位とも言える。

 

「今そんな感じなのか……家操様はどの辺りになるんだ?」

 

「石高だけなら家臣の中で一番多いでしょうが、地位となると森殿、丹羽殿、滝川殿と同列かと」

 

「まぁ信包様も認めてはいるが、信長様の直臣ではないからな」

 

「実際には遠江の責任者ですがね……国持ちに匹敵する権限は与えられておりますが」

 

「家操様は産業を発展させて10万石もいかない領地から100万貫を超える銭を産み出すからな……」

 

「利家兄さんから見ても家操様は異常?」

 

「良い人なんだよ、家臣には優しいし、同じ目線で話してくれるし、カリスマもある。ただ金儲けに関しては商人でもついていけるの大黒屋の店主くらいじゃねぇか? 堺の豪商でも理解できないと思うぞ」

 

「それほどですか……」

 

「事実種籾と農法を広め、経済圏に組み込むことで敵だった上杉家を味方に引き入れたからな……何処まで考えているのやら」

 

 酒のつまみとして味噌こんにゃくをつまみながら更に話しを広げる。

 

「織田家としては今後どう動くんだ? 西は将軍と縁のある家が固まっていて動けないし……朝倉は将軍へ謁見して一応許されたし……」

 

「織田家としては武田家をやはり仮想敵として動くようで、税制度を今一度貫高制に直そうという動きが起こっていました」

 

 貫高制とは石高制の前身の税制度で収穫量に応じて銭で税を支払う事である。

 

 今まで銭不足で米による物納が許されていたが、銭を作れるようになったことで米や作物を換金してから銭を徴収したほうが理にかなっていると信長様は今年度の年貢を銭で支払うように通告していた。

 

 家操も領地でも信長様が貫高制に移行するならと昨年検地した記録を元に銭による徴税を実行する予定である。

 

 こうなると換金作物を作っていても銭として徴税されるが、単価が高い作物を作れば税で取られる量よりも収益が増えるため転作する農家が増える結果となる。

 

 転作により米の収穫量は減ったが、税収は米による年貢よりも1.5倍近くの増収することになるのだった。

 

 まぁそれだけ銭が回り津田家領内や津田領に隣接する国人衆も利益を得ることになる。

 

 俗に言う給料が上がる、買い物を人々が良くする、商品が売れる、給料が上がるの好循環が発生……しかも東海道の整備として公共事業による後押しもあり、好景気状態に突入していた。

 

 衣服や食事の質が良くなった事で母親が死ぬことや、赤ん坊が死ぬことが減り、金があるので子供を養える家庭が多く、ベビーブームや流民による人口増加も引き続き起こっている状態である。

 

 それが更に景気を後押ししていた。

 

「武田家を仮想敵とするとやはり美濃か遠江のどちらかが攻められる場所になるな」

 

「ただ武田も織田を殴る大義名分が今はない状態なのでしょう。場合によっては北条を先に殴るかもしれませんよ」

 

 前田利家と佐脇の話しは続いていくのだった。

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