皆の意見や知識で動かせ戦国物語 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
収穫時期が終わり、ようやく帰路に着くことにできた俺は兵達を先に帰しながら、幹部クラスは二俣城に寄って信包様に挨拶するのだった。
「よう家操、大変だったな」
「本当ですよ。甲斐に約1年も拘束されるとは……」
「お疲れ」
「信包様も2人目おめでとうございます」
「ああ、家操に負けないくらい早川に子供を産んでもらわないとな」
場所を茶席に移し、右筆の富士信氏に茶を点ててもらい、お茶を飲みながら話をする。
「二俣に寄ったってことは何か話すことがあるんだろ?」
「ええ、甲斐への街道整備の話です」
二俣城(正確にはその更に奥の銅鉱山や鉄鉱山)までローマ街道風の道が繋がっていたが、それを信濃の信包の領地を貫通させて甲斐街道を整備すれば浜松から甲斐まで直通の道が出来上がる。
そうなれば浜松の産物を甲斐に運びやすくなるし、甲斐の鉱石を浜松に運びやすくなる。
中間の信包の領地にもメリットの大きい案だった。
「技士送ってくれれば人夫はこっちから出すが」
「人夫への賃金は支払えますか?」
「人夫に金を払うってのが家操独特の考え方だと思うが」
「人夫が金を得れば商品を買って、物を売るために商人が集まり市ができたり町ができる。そうすれば商人から上納金や地税が取れるようになる。そうなれば領主に金が戻って来るって寸法だ。人夫に金を支払えばやる気を出してより良い街道や工期が早くなったりするからな」
「本当に家操には内政に関して勝てる気がしないな……意味が分からん」
とりあえず街道整備は信包様も資金と人夫を集め、こちらが材料と技士を提供することで合意した。
岩室殿にも同じ契約をしているので、これで甲斐までの街道ができる。
「あとは浜松を中心に遠江の東海道整備をしないといけませんね」
「まぁそれは家操に任せる。新しく港町を作っても良いぞ」
「そうですね、浜松も将来的には手狭になるでしょうから同等の港町を作ろうと思います」
「場所はどうする?」
「豊浜(現代だと福田漁港がある辺り)にしようかと。横須賀城の改築も必要ですし」
「そうか……ん? 家操の管理している城は浜松城だけだよな?」
「はい、今はそうですね。ただ行政拠点としての館は幾つかあります」
防衛拠点として浜松城をガッチガチに固めた代わりに行政拠点は点在していた。
例えば浜名湖の水運を管理するために雄踏という土地に館があり、御所の様な作りになっていた。
現在は館代官として望月保高に屋敷を任せており、望月は仕事の無い日は近くの浜名湖に出かけて船釣りを楽しんだりしていて、館代官手当もあるため、重臣の中には館代官を望む者も居た。
まぁ言ってしまえば俺の別荘の管理である。
「しかし城じゃなくて館なのだな」
「まぁ大砲に耐えられる城となりますと莫大な費用がかかりますし、今までは浜松城だけで事足りましたからね。支城を作るよりも1つの巨大城郭の方が防御性能が高いので……」
ちなみに横須賀城は現代だと大須賀と呼ばれる地なので改築後は大須賀城にするつもりである。
町も大須賀に改名して……。
「横須賀城もあの多角形の城にするのか?」
「そうですね、横須賀城も山城から平城にして、規模は小さくなりますが五角形の城造りにするつもりです」
大須賀の土地は平地も多く、しかも三熊野神社(熊野本宮)があるので門前町も発展している。
城作りと並行して町作りも積極的に介入するつもりである。
「とりあえず家操には自由にさせろと兄上(信長様)もおっしゃっていたので自由にやって良いですよ。貴方の領地ですし」
「は!」
「横須賀周辺が賑わえば早川と一緒に三熊野神社に参拝も行きたいものですねぇ」
「奥方が安全に移動できるように街道をしっかり整備させてもらいます」
「頼んだぞ」
「は!」
信包様の所に寄ってから浜松に帰り、長旅の疲れを癒した。
「お背中流しますよ」
「おお、淡、ありがとうな」
巴も淡も望もしっかり食べて運動しているし、現代だったらピチピチのJKの年齢になったので少女と女の間になっていた。
「できれば夜一緒に寝たいのですが……抱いてくれませんか? 私も巴も望も子供を欲しがっているので」
そう言われて火が付かない男は居ない。
疲れも吹き飛んで若い側室達を産まれたての子鹿みたいに足腰がガクガクするまで抱くのだった……。
そんな楽しい時間を過ごしながら俺はスーパー内政モードに突入する。
「甲斐は山で木々も豊富だから炭を多く用意できるし、鉄鉱山も多いから鉄が豊富に手に入る。となると鉄器職人が育ってきたし甲斐に送って工場建てるか」
「やっぱり水力だけでは動力に限界があるな……エンジンバラして燃焼機関の仕組みを勉強しないといけないな」
「お、俺が居ない間に豚と大陸の馬が届いて牧場で繁殖を始めたか……領地広がったし牧場の拡張をしないとな」
「今年は米価が安定していたか……東北や畿内、九州への米売りが功を奏した感じかな。転作で米の収穫量は30万石まで低下か……まぁ基本15万石とされているから上々だね」
溜まっていた書類をガンガン目を通して決済していき、業務を回していく。
「ふむ、新しい寺の建築か……まぁ一向宗じゃないなら許可するからな」
「フアンが今度会いたいと言っていたか……予定では来月に入港だったな。歓迎してやろう」
「色街を城壁外に移すか……流石に外城の中は高級娼館を残して移転させて拡大した色街を作ったほうが経済的な利点が大きいな。水路を引いて風呂屋と一緒のソープみたいなのにするか」
アイデアが色々と湧いてくるため書類に纏めて新しい町の割り振りを行っていく。
一番は転作によって木綿が増えたので紡績工場の拡張や、町で排出された糞尿を肥料にする肥料場の拡張、人口のさらなる増加を見越して水路の拡張工事等も行っていく。
歴史的にはこの時の事を浜松第二普請と呼ばれ、外城の更に外の町の整備を目的とした工事であり、外城内が工業と市場を中心とした町作りに対して、更に外周部は寺社や色街、飲み屋街等の娯楽を中心とした町作りになっていた。
今まで外城の外は東海道のみが舗装された道であったが、脇道もこの時に整備され、東の京とも言える町が出来上がりつつあった。
この普請(工事)のおかげで流民や食べ物と着る物が増えたことで子供が死ぬのが激減して人口が激増した人々に職を行き渡らせ、町を更に巨大化させることに成功するのだった。
学校も1校では足りずに5校及び学校卒業者に私塾を開く許可を与え、領主公認の私塾が沢山でき、それが寺子屋と呼ばれるようになり、浜松の教育レベルを引き上げた。
そうこうしているとフアンが来航する日となり、フアンを城に呼ぶのだった。
「久しいなフアン」
『領主様もお元気そうで何よりです』
「前に頼んでいた豚や馬等俺が居ない間に持ってきてくれたらしいな! 感謝するぞ」
『はい、今回はカボチャやトウモロコシの種、香辛料を持ってきました』
「うむ、こちらから硝子食器や乳白色茶器(ボーンチャイナ)、茶葉や布を売ろう」
『ありがとうございます』
「そうそう、俺手柄を立てた功績で新しい港町を作ることになった。フアンの屋敷もそこに構えるか?」
『よろしいので?』
「流石に土地は与えられないが、住むことは許すし、金を払えるのならば五千石船も売ろうか? そちらのキャラック船よりは性能は劣るかもしれないが、外洋にも耐えられる船だから雇われから商団の長に返り咲けるぞ」
『その場合家操様の御用商人になりたいですな』
「別に良いぞ。ただうちは商家との独占契約は無理だぞ。複数の商家と様々な契約を結んでいるから……多少の優遇程度だぞ」
『いや、それでもありがたいです。特に真珠を作っている領主様と家操様は御兄弟と聞きます。真珠はヨーロッパでは黄金よりも価値があるので、是非とも多く購入したい』
「別に構わないぞ……あ、水夫を個人的に雇うのは構わないが奴隷売買はうちの領内では禁止だからな」
『わかりました! あと今日は海外の様子をお伝えに参りました』
フアンの話しによると又聞きになるがヨーロッパでは宗教対立による戦争(ユグノー戦争)がフランスで起こったらしい。
それでどうなるという話しであるが、右筆である長谷川が気がつく。
「ん? フアン殿、ヨーロッパとやらで信仰されているキリスト教は1つではないのか?」
『キリスト教は現在カトリックとプロテスタントという2つの宗派が争っています。カトリックが金稼ぎの為に免罪符という札を発行して揉めたのが原因です』
俺はキリスト教がカトリックとプロテスタントがあることは知っているが、日ノ本の人々はカトリックしか来日してないからカトリックしか知らないよなと思った。
「それとは別にユダヤの民が信仰するユダヤ教もヨーロッパの宗教だな。日ノ本が浄土真宗や臨済宗、禅宗や日蓮宗みたいに色々な宗派があるのと同じだな。今日ノ本に来ているのはカトリックだったか」
『よくご存知で……家操様の知見の広さは流石ですな』
「……これ宣教師との交渉材料になるな……良いのかフアンもそんな話をして」
『私ユダヤ教ですし、キリスト教の揉め事は気にしないので』
「まぁフアンは商人だからそうか……早く金貯めて独立しろよ」
『それにはもう数年かかりそうですが頑張ります!』
フアンはその後部下達と娼館に遊びに行って接待役の俺の部下に娼館のルールを教わったらソープ風の娼館にドハマリしたらしい。
ユダヤ教は体を清める事を良しとする教えも合わさり、入浴に忌避感が無いのだとか。
しかも鶏肉や牛の肉も金を払えば食べられるし、持ってきた香辛料を頼めば料理してくれる場所も見つけてステーキとじゃがいもで美味しそうに麦酒を飲みながら楽しむ姿が見られるのであった。