皆の意見や知識で動かせ戦国物語 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
伊勢侵攻が終わって、信長様は幕臣や幕府関係者の保護を積極的に行い、三好から京の政治を簒奪する気満々の政治工作を開始した。
ただこういう時に役立っていた平手爺さんや五位様もつい先日亡くなり、京と織田家を繋ぐ役割の人材が少なくなっていた。
そこに準一門の俺の息子に公家の娘を嫁がせることで政治工作をしやすくする目的があったのかもしれない。
特に羽林家(大臣の1つ下の位 名家と呼ばれる家の総称)からの申し込みが多く、堀河家や四条家等名のしれた家から娘を頂いた。
まぁ本当の娘ではなく経歴ロンダリングこと更に低い位の貴族から養女に入ってもらってそこから嫁ぐ方法が取られ、四条家の娘だけど家業の包丁術を全く知らないなんてこともある。
とにかく実家となる羽林家には300貫、本当の実家には100貫を毎年送ることにすると凄い喜ばれた。
まぁ貧乏すぎてお化け屋敷みたいな屋敷に住んで、乞食みたいに落ちぶれていた人達からすれば、人並みの生活が送れるのだから喜ぶだろう。
しかも繋がりができた家と信長様は結びついて京の政治工作を順調に行っているし……。
幕府が混乱している隙に信長様は朝廷から従五位下から従四位下に引き上げられていたりする。
結婚がだぶ付いていた男子達は一気に結婚となり、婚姻の儀を岐阜城下で執り行い、集団結婚式となったが、信長様からそれぞれに一言を貰い、全てが済んでから浜松に帰還となったのだった。
浜松に帰ると淡、望、巴の3人が赤ん坊を無事に産んでおり、順に神風、朝風、春風と名付け、健康祈願を行い、少し後に信龍の息子太郎丸も産まれて直系が繋がることになる。
そうこうしていると秋になり収穫期を迎えるが、俺は忙しい中時間を作り、駿河に移動した。
理由は北条幻庵様が茶会をやろうと言ったからである。
というわけで俺の義理のお祖父様の北条幻庵様の所に行くのであった。
「お久しぶりです幻庵様」
「おお、家操殿呼び出して悪かったな」
いつも通りヤカンで湯を沸かして茶を淹れていく。
「ふう、駿河のお茶は美味いですね。遠江の茶葉も更に質を良くしないと」
「なに、これは今川の遺産を引き継いでいるだけだ。儂らも研究はしているが、年季の差だ。そっちは紅茶という新しい茶を開発したと聞いたぞ」
「ええ、茶葉の収穫方法とあえて乾燥させることで風味を引き立てるのですよ」
「ほう……今度飲んでみたいな」
「ええ、是非とも飲んでいただきたいです……さて、本題に入りましょう。今日は何用で?」
「1つは淡に息子が産まれたからそれのお祝いだ。早川殿も頑張っているそうでそっちも含めて本家は喜んでいたな」
「北条との繋がりが深くなりますからね」
最近浜松の名物になり始めた芋羊羹と茶を飲みながら話しを進めていく。
「2つ目が北条の立場についての話だ」
「立場ですか」
「今関東を平定せんと軍を進めてはいるが、巨大になった地方政権を中央が許すとは思えん。良くて大内、悪ければ奥州藤原の様に滅ぼされかねんからな」
「あー、幻庵様なら分かると思ってましたが……」
「まぁ分かるな」
「私の予想で良いですか?」
「うむ、聞かせてくれ」
「織田家が天下を取った場合関東に残るなら伊豆、相模、武蔵3国約90万石に減らされるかもしれません」
「ほう、そこまで残るか、伊豆も怪しいと思ったが」
「私が政治工作をしますので必ず関東3国以上の維持は約束します。もっとも関東を平定していた場合になりますが」
「うむ……伊豆1国から始まった北条家だ。天下泰平となるのならば関東平穏の役割も無くなるであろう……となると家を残すことを優先しないといかんな」
「その場合関東の見張りとして北条の血縁である信包様が最大勢力になるように動くと思われるので、私の予想では最低が遠江、駿河2国、最大は上野、下野、常陸3国の領有になるかと……あくまで予想ですが」
「うむ……なるほど場合によっては下総方面(千葉県)もありうるか」
「まぁ関東の重石として北条の役割は引き続き重要視されるかと」
「儂としてはここまで膨張した織田が畿内を抑えるようになれば天下は治まると見ている。ただ将軍次第でまた戦乱に逆戻りになるが」
「とりあえず明確に惣無事令の様な法令(各家での戦争の禁止令)が出るまでは関東は北条の物でしょう」
「うむ、織田家と北条の連絡役は信包殿と家操殿に絞る事にしよう。政治工作を頼むぞ」
「わかりました。私も織田家と北条家は共存可能だと思っているので……」
「上杉はどうする?」
「上杉は越後1国であれば安泰でしょう。謙信公も拡張よりも内政に注力されていますし」
「再び関東遠征などしなければ良い。上杉と同盟を結んだことで明確な反北条家の諸勢力の炙り出しはできたからな。佐竹が邪魔じゃな」
「火縄銃と火薬の輸出をしましょうか?」
「噂に聞く火砲は無理か?」
「それは難しいかと……織田家でもまだ数が少ないですし……運用費が火縄銃よりも高いので……」
「うむむ……仕方がないな」
その後は世間話をして終わるのであった。
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短いけど許して