東方庇護録   作:まほろばのーぶる

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第2話 夢のふりした現実


A Few Moments Later……

 

 

 ……どれくらい、そうしていただろう。

 

 森の奥から響いていた怪物のような鳴き声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。

 

 代わりに戻ってきたのは、風に揺れる木々のざわめきと、どこか遠くで鳴く虫の声。

 

 さっきまで世界そのものを震わせていたような恐怖の咆哮は、嘘みたいに森の闇へ溶けている。

 

 けれど、私の身体はまだ震えていた。

 

 もし、さっきの咆哮の主がこちらへ向かってきていたら。

 もし、木々の隙間から巨大な影がぬっと現れたら。

 もし、怪物に頭からバリボリ食べられてしまったら。

 

 そんな想像ばかりが頭の中をぐるぐる回って、顔を上げることすらできない。

 

 ……でも。

 

 いくら待っても、何も来なかった。

 

 私を食べにくる怪物の足音も。

 枝をへし折る音も。

 荒い息遣いも。

 

 何も、聞こえない。

 

 もしかすると、さっきの鳴き声はかなり遠くから聞こえただけなのかもしれない。

 

 少なくとも、今すぐ私の目の前に怪物が現れる気配はなさそうだった。

 

「……ふぅ、ふぅ。だ、大丈夫……大丈夫です……」

 

 まだ心臓は、どきどきとうるさい。

 

 けれど、自分に言い聞かせるように声を出す。

 

 大丈夫。

 たぶん、大丈夫。

 

 全然大丈夫じゃないけれど、大丈夫ということにしておかないと、そろそろ心が折れてしまいそうだから大丈夫。

 

 ……うん。

 

 大丈夫とは。

 

 自分で自分に言い聞かせておいてなんだけど、言葉の意味がだんだん迷子になってきた。

 

 ……せめて何か。

 何でもいいから、落ち着くための手順がほしい。

 

 

 そんな時、ふと記憶の奥から、ひどく懐かしい“おまじない”が浮かんできた。

 

 手のひらに【人】という字を指で3回書いて、それをぺろりと舐める。

 

 緊張した時にやる、古典的なおまじないだ。

 

 ……ぺろ。

 

 藁にもすがる気持ちでやってみる。

 

 すると、不思議なことに、ほんの少しだけ呼吸が楽になった気がした。

 

 もちろん、これで状況が改善したわけではない。

 怪物が消えたわけでもないし、森から出られたわけでもない。

 

 でも、震える心を無理やり押さえつけるための取っ掛かりにはなった。

 

 ……そういえば。

 

 このおまじないについて、誰かと話したことがあった気がする。

 

 

『それ、条件反射みたいなものじゃない? パブロフの犬ってやつ』

 

『条件反射だけじゃなくて、手のひらには労宮っていうツボもあるらしいわよ。緊張を和らげる効果もあるみたいだし』

 

 

 得意げに説明する声。

 

 それに対して、少し呆れたように補足する声。

 

 ……。

 

 ……誰の声だったんだろう。

 

 会話の内容は思い出せる。

 声の調子も、2人が楽しそうに話していたことも、ぼんやりとは覚えている。

 

 時たまに思い出せるのは、そんなやりとりの記憶の断片ばかり。

 

 名前は、やっぱり出てこない。

 

 大切だったはずなのに。

 確かに、私はその2人を知っていたはずなのに。

 

 胸の奥に残っているのは、声だけだった。

 

「……どうして、思い出せないんだろ」

 

 ぽつりと呟いてみても、答えてくれる人はいない。

 

 森がただ、静かにざわめいているだけだった。

 

 ……いや。

 

 いつまでも座り込んでいる場合じゃない。

 

 ここがどこなのかは分からない。

 私が誰なのかも分からない。

 この身体が何なのかも分からない。

 

 でも、少なくとも分かっていることが1つある。

 

 夜の森で一人きりは、たぶん良くない。

 

 いや、すごく良くない。

 

 物語的に言えば、完全に“何かが起きる前振り”だ。

 できれば、そういう前振りは伏線のまま未回収でいてほしい。

 

 

 ガサガサッ

 

 

 背後で、何かが草木をかき分ける音がした。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………ほらね。

 

 いまさらながら、自分が置かれている状況を再認識する。

 

 さっき聞こえた、おぞましい怪物のような咆哮。

 それを抜きにしても、ここは深い森の中。

 

 おぼろげに覚えている私の生活習慣の記憶から察するに、私はたぶん超インドア派だったはずだ。

 そんな私でも分かる。

 

 手つかずの森では、幼い人間なんて食物連鎖の階段を垂直落下する。

 

 つまり、もしクマや野犬が現れたら、私は格好の獲物。

 

 すなわち、今夜の晩ご飯である。

 

 ……。

 

 …………。

 

 恐る恐る、背後から聞こえた音の方へ振り返る。

 

 そこには――。

 

 全裸で狼のマスクを被った人っぽい何かが、じっとこちらを見つめて立っていた。

 

 ……。

 

 …………。

 

 良かったぁ。

 クマではなかったみたいだ。

 

 私はほんの一瞬だけ、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………いや。

 

 

「ふぁ!?」

 

 

 いやいやいやいや!?

 

 普通に怖すぎるんですけど!!??

 

 なんならクマより断然恐ろしい獣が目の前に現れちゃったんですがぁ!??

 

 ……はぁ、はぁ、はぁ。

 

 お、落ち着け、私。

 

 頭の中で現状にツッコミを入れても問題は解決しない。

 

 そうだ。

 素数を数えると落ち着くと聞いたことがある。

 

 素数を数えて、少し冷静さを取り戻そう。

 

 2、3、5、7、11……。

 

 …………1109、1117、1123。

 

 ……よし、少し落ち着いてきた。

 

 落ち着いたところで、状況把握開始。

 

 まず、目の前の存在。

 

 全裸で狼のマスクを被っているので、仮に“変態狼マスクさん”と名付けておこう。

 

 よく見ると、そのマスクはかなりリアル志向だ。

 毛先一本一本まで、本物そっくり。

 

 ハロウィンの仮装だとしたら、人気者になること間違いなしのクオリティだ。

 

 ……。

 

 …………いや、こんなことを考えている場合じゃない!

 

 はっ。

 しまった。

 

 落ち着きすぎた!

 

 大事なのは、マスクのリアルさでも、ハロウィンで人気者になれるかどうかでもない。

 

 なぜ、こんな森の奥地で。

 そしてなぜ、全裸なのか。

 

 問題はそこだ。

 

 ……いや、全裸でなくても夜の山奥で見知らぬ人に遭遇したら十分恐ろしい。

 

 それなのに、全裸でコスプレまでしている変質者だなんて、恐怖体験としては天元突破している。

 

 しかも今の私は、幼女と言っていいほど小さな女の子の姿。

 

 絵面だけでも超事案案件だ。

 

 これはもう、泣かないでいられる方が無理な話である。

 

 とにかく、どこかのテレビ番組で見た知識を思い出す。

 

 森でクマに出会ってしまったらすること、その一。

 

 目を離さず、視線を向け続ける!

 

 クマじゃないけど!

 

 そうしてしばらくの間、恐怖で動けずに、涙がこぼれそうな目で必死に変態狼マスクさんを見上げていると……。

 

 変態狼マスクさんの大きくてギョロっとした目と、涙で滲んだ私の視線が交差した。

 

 変態狼マスクさんは、私の全身に熱烈な視線を送ってくる。

 

 そして、今にも泣き出しそうな私へ、とどめの一言を放った。

 

 

「おまえ、うまそうだな」

 

 

ぴっ!?

 

 じわり、と視界が滲む。

 

 これはだめだ。

 もうだめなやつだ。

 

 今すぐ泣きたい。

 というか、もう半分泣いている。

 

 怖すぎて、意識がふわっと遠のきかけた。

 

 ……いや、待って。

 ここで気絶したら終わりでは?

 

 失神した幼女が、全裸の狼マスクさんの前に無防備に転がる。

 

 そんな絵面、どう考えても据え膳食わぬはなんとやらっていうやつじゃないか!

 

 私は必死に、遠のきかけた意識を引き戻した。

 

 ヤバいことを言われているはずなのに、なぜか私の頭には、デフォルメされたティラノサウルスの絵本が浮かんできて……。

 

 ……。

 

 だから、言われた内容を理解するのにワンテンポ遅れた。

 

 ……おまえ、うまそう。

 

 つまり、文字通り私を食べる気なのか。

 

 それとも、え、えっちな意味で食べちゃう気なのか……?

 

 

 た、確かに今の私は、自分で言うのもなんだけど、全裸で森の中にいる変態さんが狙いそうな、いわゆる薄い本の導入にありがちな【森で迷子になった美少女】の完璧な見本みたいな状況にいる。

 

 きれいな銀色の髪は腰まで伸びているし、声も可愛い。

 

 鏡も水面もないから自分の姿は見えないけれど、小さくて超可愛い女の子になっている気がする。

 

 そんな少女が、こんな夜中に狼マスクの全裸変態に捕まったら――。

 

 これはもう、深夜アニメの放送コードギリギリのシーンが待っているに違いない!

 

 ……それか、本当に捕食的な意味で食べられてしまうのか。

 

 エッチもカニバルも、どっちにしても考えたくない最悪の展開だ!

 

 【森で迷子の美少女、変態狼マスクに遭遇して……】

 

 なんて、明日の夕刊の三面記事になりたくない!

 

 そんなこんなで、わりと凄まじい恐怖体験の真っ只中なのに、頭の中だけが妙に忙しい。

 

 変態狼マスクさんに声をかけられてから、まだ一秒にも満たない。

 

 ……今さらながら、自分の思考速度の異常さにびっくりする。

 

 まるで漫画の主人公が内心モノローグを延々と繰り広げているみたいに、頭の回転だけが妙に速くなっている。

 

 不思議だなぁ、なんてのほほんと思いながら、ふと変態狼マスクさんを見ると――。

 

 鼻息荒く血走った目で、こちらに向かって全力疾走してきていた。

 

 

「グルルルルルァァァァ!!」

 

 

「ひわぁぁぁぁ!?」

 

 

 自分でも気が抜けるような変な声が出た。

 

 なにせ、文字通りの変態狼マスクさんが、十メートルほどしか離れていない場所から、リアルに喉を鳴らしながら、陸上競技選手顔負けの美しいフォームとめっちゃ速い速度で走って突っ込んでくるのだ。

 

 もう、めっちゃくちゃに怖い。

 粗相しちゃいそうなくらい、めちゃくちゃに怖い。

 

 ……と、とにかく、今は考えろ。

 

 まるでゲームのポーズ機能みたいに、時間を止めて思考できるくらいの思考速度。

 

 変だけど、この際、この超能力を有効利用するしかない。

 

 

 小さい女の子の身体で、ちゃんと走って逃げられるのか。

 逃げるとして、どこへ?

 

 警察……はいない。

 当然、携帯もないから110番もできない。

 助けを呼ぶ……却下。

 呼ぶ相手がいない。

 交渉する……却下。

 相手の第一声が「おまえ、うまそうだな」の時点で、話し合いの余地があまりにも薄い。

 死んだふり……絶対却下。

 そのまま本当に食べられそうだから。

 

 脳内会議に次々と提出されていく解決策は、ブラック企業の有給申請みたいな速度でことごとくが却下されていく。

 

 頭の中だけが、とてつもない速度で回転していく。

 

 怖いくらい俊敏な変態狼マスクさんの動きさえ、スポーツ中継のスローモーションみたいに見えた。

 

 変態狼マスクさんの血走った目が、まるで「そぉーら、まずは味見から始めようねぇ」と言っているみたいで、怖すぎて失神しそうになる。

 

 とにかくこのまま固まっていたら、捕食か事案か分からない最悪のルートに直行する。

 

 そう考えた瞬間、身体が勝手に動いた。

 

 とりあえず手のひらに【人】の字を書いて、ぺろりと舐めたあと。

 

 変態狼マスクさんとは反対方向に、無我夢中で走り出した。

 

 今さらながら気づいたけれど、今の私の服装は、深い青のロングスカートに、薄い緑と白のドレス。

 その上に、黒に近い藍色のローブ。

 

 いわゆるゴスロリで、RPGの魔法使いっぽい服装だ。

 

 全力疾走には絶対向いていない。

 

 けれど、そんなことは気にしない。

 

 ただひたすらに走った。

 

 後ろも振り返らず。

 ただひたすらに。

 

 走って。

 走って。

 走って。

 

 そうして走って、大体三秒ほど経った時。

 

 突如、視界が開けた。

 

 森を抜けたらしい。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………ん?

 

 三秒で、森を抜けた?

 

 いやいや、思考が加速しているせいで三秒が十五分くらいに感じるんだけれど――って、そうじゃなくて!

 

 森を……抜けた?

 

 上空を見上げると、さっきまで木々に阻まれて見えなかった綺麗な満月が輝いている。

 

 こんな状況でも、なんだかお月様がいつもより綺麗に見えるなぁ、とか呑気に考えている私は、案外図太くたくましいのかもしれない。

 

 とりあえず、疑問を口に出してみることにした。

 

「走って三秒くらいで抜けられそうな森でしたっけ?」

 

 後ろを振り返る。

 

 すると、果てしなく遠く――たぶん三キロくらい離れた場所で、さっきの変態狼マスクさんが唖然とした顔で口をあんぐり開けているのが()()()

 

 私と変態狼マスクさんの間には、幅一・五メートルほどの一本道ができていた。

 

 草木や岩が一直線に抉られている。

 

 まるで、何かが地面を削り取ったような、完璧な直線の軌跡。

 

 ……うん。

 

 抉れた草木や岩は、見なかったことにしよう。

 

 現実逃避は大事だ。

 

 ……。

 

 とりあえず、自分の状態を確認する。

 

 服には傷どころか、汚れ1つない。

 

 ……さて、ここから先は空想科学的な話になる。

 

 約三キロを三秒で移動した。

 

 つまり、秒速一キロ。

 時速に換算すると三千六百キロ。

 

 だいたい、マッハ三くらい。

 

 ……戦闘機かな?

 

 そんな速度で地上を疾走すれば、辺りに衝撃波が吹き荒れて大変なことになる気がする。

 

 有名な話で言うと、邪智暴虐の王許すまじと時速一万三千キロで疾走し、周囲二キロ範囲にあるガラスを衝撃波で破壊する走力を持つメロスの、1/4くらいになる。

 

 ……こう考えるとメロスってすごいな。

 

 けれど、周囲の草木は、私が通り過ぎた跡以外、風1つ感じていないかのように静かに佇んでいる。

 

 どうやら、この世界では空想科学は適用されないみたいだ。

 

 ……じゃなくって。

 

 それよりも、マッハ三に耐える身体や服もおかしい。

 そもそも、マッハ三で走れる女の子という時点でおかしい。

 

 次々と湧いてくる奇想天外な謎に、すでに頭はパンク寸前だった。

 

 ……それにしても、気づいたことがもう1つ。

 

 今の私は、視力も明らかに人間離れしている。

 

 三キロ先の変態狼マスクさんの、ギザギザした牙の本数まで数えられそうなくらい鮮明に見える。

 

 ……あ、虫歯発見。

 

 ……。

 

 ……まあ、とにかく。

 

 変態狼マスクさんからは逃げ切れた……はず。

 

 それにしても、今さらだけど、あれは明らかにマスクじゃなかった。

 

 全身が毛むくじゃらだったし。

 顔もマスクというより、本物の狼そのものだった。

 

 もしかして、いわゆる“狼男さん”だったのかもしれない。

 

 民話に出てくる、満月の夜に変身するあの有名な伝説の生き物。

 

 もう一度、狼男さんの方を見る。

 

 すると、また目が合った。

 

 果てしなく距離があるのに。

 

 なんとなく、狼男さんに笑顔で手を振ってみる。

 

 すると狼男さんは、ビクッと震えた。

 

 そして、その場に膝をつき――。

 

 

「申し訳ありませんでしたぁぁあ! 吸血鬼さまぁぁ!?」

 

 

 なぜか、ものすごい勢いで謝られた。

 

 しかも、果てしなく遠いはずなのに、その声がはっきり聞こえた。

 

 ……吸血鬼。

 

 今、確かにそう聞こえた。

 

 その言葉が、やけに重たく胸の奥へ沈んでいく。

 

 吸血鬼。

 

 前世――記憶は曖昧だけど、多分人間だった頃。

 オカルト雑誌で何度も目にした、夜に生きる怪物。

 

 人の血を啜る、物語の中の不死者。

 美しくて、恐ろしくて、人間ではないもの。

 

 ……え?

 

 ……私が?

 

 反射的に否定しようとして、言葉が喉の奥で止まった。

 

 違う。

 そんなはずがない。

 私は人間で、吸血鬼なんて物語やオカルト雑誌の中にいる存在で――。

 

 そう思いたいのに、さっきから積み重なっている現実が、私の逃げ道を1つずつ塞いでいく。

 

 暗闇が妙にはっきり見える目。

 ありえない速度で走れる身体。

 遠く離れた声さえ拾える耳。

 

 お願いされたらなんでも聞いたくなっちゃうような魔性の可愛らしい声……は、いったん置いておくとして。

 

 考えれば考えるほど、否定する材料が見つからない。

 

 ……いや、そもそも待ってほしい。

 

 目が覚めたら知らない森にいて。

 身体は幼い女の子になっていて。

 なぜかマッハ三くらいで走れて。

 狼男さんらしき相手には、吸血鬼さまと呼ばれた。

 

 夢です、気のせいです、目が覚めたら終わります。

 そんな便利な言い訳で逃げるには、何もかもが生々しすぎる。

 

 頬を撫でる夜風の冷たさも。

 足元の草を踏みしめる感触も。

 胸の奥でうるさいくらいに跳ねている心臓の音も。

 

 全部、都合よくぼやけてくれる夢なんかじゃなかった。

 

 目を閉じれば消えてくれるわけでもない。

 起きなきゃ、と念じれば朝の布団に戻れるわけでもない。

 

 ここにあるもの全部が、嫌になるくらいはっきりしている。

 

 ……これは認めるしかないのかもしれない。

 

 認めたくない。

 できれば全力で否定したい。

 

 けれど、目の前に広がる夜の森も。

 遠くで土下座している狼男さんの姿も。

 

 全部、夢にしてはあまりにもはっきりしていた。

 

 

 これは、目が覚めれば終わる優しい夢なんかじゃない。

 

 

 そう思った瞬間、嫌なくらいすとんと腑に落ちてしまった。

 

 そして私は、少しずつ気づき始めていた。

 

 これは、目が覚めれば終わる夢なんかじゃない。

 

 夢のふりをした、現実なのだと。

 

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