Re:ゼロから始める異世界UC   作:リクライ

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激動の一日を終えたライト。
混乱のまま『目覚め』、彼の先に待ち受けるものは……


第二章 『居場所の確証』
第七話 ロズワール邸での目覚め


 

 

 手を繋いで、壁に描かれている絵を見ている子供と男がいた。

 この絵をどこかで見たことがあるという感想を抱くとともに、その情景が離れていく。

 既視感に襲われながらその二人に手を伸ばして、再び闇へと消えてしまう。

 

 

 

 

 眼を開けると、そこは知らない天井だった。

 

 

「ここは一体、ん?」

 

 起きあがろうとライトが腕を上げようとするが、布団を僅かに鳴らす程度だった。腕がいつもより重く、どちらかと言えばだるく感じる。重い風邪を引いたときみたいで、意識も朧げだ。

 自由に動けないもどかしさに、もぞもぞと四肢を僅かに動かすライトが眉を顰める。

 

「なんで、こんな?」

 

 起き上がって部屋を出ようにも動けず、ただ天井へと独り言を語りかけることしかできなかった。

 

 体力回復のため眼を閉じて、おそらく昨日に起こったであろう盗品蔵での件を思い出す。スバルがエルザに奇襲を仕掛け自らを囮にした。が、自分の名前とフェルトの名を悲鳴混じりに言われたことで、咄嗟にフェルトちゃんを庇ったのだ。

 だがここに来るまでの記憶が一切ない。しかしわかることといえば、あの一件の後に身体の異常が起こったということだけだった。

 

 あの子はちゃんと守れたのだろうか。

 

 しかし、夢を嗤われ肩を震わせて可能性を摘まれることを待つことしかできなかったフェルトを、その凶刃から庇ったとき、想像を絶するほどの力を出せたのは単なる鍛冶場の馬鹿力で片付けることができるのだろうか。

 

 沸々と湧き上がってくる疑問に頭を悩ませるライトだったが、その意識もだんだん薄れていき、沈んでいった。

 部屋は再び一人の寝息が静かに鳴る。

 

 

 

 

「うん?」

 

 慌ただしい足音に目が覚め、扉の外に意識を集中させる。まばらな足音から複数人がこの部屋へと足を進めていることがわかる。

 スバルと、精霊と一緒だった銀髪の少女だろうか。しかしそれでは、明らかに音の数に対して足の本数が足りないのではないか。このいかにも立派な一室から、他にも使用人の様な人もついてきているのではないのだろうか。

 

 ライトの思考回路がトップギアへと登ろうとしたとき、扉の前から揃った声が聞こえてきてその扉を目だけ動かして凝視する。

 

 突然、扉が勢いよく開き、

 

 

 目つきの悪い、これからうるさくなるだろう白衣姿の無一文が現れた。

 

 

「グッドモーニングッ!! 寝坊助さ、ん……」

 

「どうしたのスバル? 何か、ひゃっ」

 

 スバルの語尾が弱まり、異変に気付いた女の子が部屋に入り小さな悲鳴をあげた。二人の視線がベッドで未だに仰向けで寝ている者に注がれる。

 驚くのにも無理はない。眼前には布団に包まるライトがいた。

 

 瞳孔が絞られ、まるで獲物を見る獰猛な目をこちらに向けた彼が。

 

 

「うるさいよ昴。でかい声出さなくても聞こえるし、もう起きてる。いつも思うんだけどそのテンションって疲れないのか?」

 

 そう言うライトだが一向に起きる気配がない。そんな彼にクネクネした動きでスバルが近づき、茶化しながら、

 

「おやおや、見栄をおはりで?命の恩人様もっ布団の魔力には勝てないようでっ」

 

 だがしかし、これは布団の魔性によるものではない。本当に身体が重くてだるいのだ。ライトはあのあと二度寝と洒落込んだわけなのだが、少しばかりは体調が良くなるだろうと思ったら、朧げな意識がはっきりしたことと腕が僅かばかり動かせるようになったことだけだ。

 

 未だ目を向けている彼に、スバルが強引に布団をひっぺがすと、その白衣姿が剥き出しになる。

 そしてしょうがないと肩をすくめるスバルが、強引に両肩を持って起き上がらせる。

 

「本当に大丈夫だよ。「よいしょっと」昴、ありがとうな。えぇと、そちらの方は、盗品蔵で会った……」

 

「よしっ起きたな? やっぱすごいよなぁオフトゥンの魔力って。あと俺のこれはいつも通りオールウェイズこれだっ……ということで、そう! こちらにいらっしゃるお方が、俺たちが助けたヒロインのぉぉぉ?」

 

「もうっ茶化さないの。私の名前はエミリア。昨日はありがとう。あなたすごーく強いのねっ。でも大丈夫? なんだか疲れてるようだけど」

 

 ここにきて銀髪の少女の名が判明した。彼女の名前はエミリアとのことだ。エルフという種族が全員こういう感じかはわからないが、とても可憐な少女である。

 紫紺の目に心配の色を乗せてこちらを見てくるエミリアとしばらく無言のまま目が合っていると、

 

「お? ライト、もしかして見惚れてらっしゃる?そうだよなぁ、この天使を前にしたら例えどんな人でもそのこころが柔らかくなってしまうのさ。うんうん」 

 

 盗品蔵での印象と、随分と違うのだなと思っているだけだ。あのときは緊急というのもあってツンケンした言葉になってしまうのも無理はないが。

 ライトが呆れとしか言えない表情を、両腕を組んで、まるで自分が褒められているかのように一人うなづくスバルに向ける。

 ものすごくうなづくスバルにエミリアが苦笑いしていると、

 

「こちらのお客様も目覚めましたね、姉様」

 

「そうね、目覚めたわね、レム」

 

「はぁ……。えと、息ぴったりで俺の状況を報告するのは誰……」

 

 息のあった事細かに状況報告をする声に顔を向けてみると、そこには並ぶ二人の少女がいた。

 瓜二つなところから双子だと判明。身長は百五十センチくらいで大きな瞳で艶やかな唇、幼さと愛らしさを兼ね備えたその顔立ちには可憐としか言いようがない。髪型は、ショートボブで揃っていて、右目と左目を片方ずつそれぞれが隠している。

 これにはこのライトも声を震わせざるおえなかった。

 

「か」

 

「「か?」」

 

「かわいい……え? あっすみません口が勝手に……」

 

 黒と白を基調にしたクラシカルなメイドスタイルでありながら、独特なデザインが施されている。細い肩は露出していて、腕を上げてしまったら脇が見えそうだ。メイド服といえばスカート丈が足首まで伸びていて、あまり露出はないイメージだった。だがこうして目の前でメイド服と分かった時点で、自身の固定観念が消えてアップデートされていく。

 メイド二人の姿に色々と考察を繰り広げていると、ずっと見てくるライトを不快に感じたのか、

 

「またですよ。今、お客様の脳内で卑猥な辱めを受けています、姉様が」

 

「まただわ。今、お客様の頭の中で恥辱の限りを受けているのよ。レムが」

 

「え? いやっこれは何ていうか、俺の住んでた国とはまた違ったメイド服って思っただけで、って……また?」

 

 頬をかきながら弁明していると先ほど言われたことに違和感を覚えて、ライトが真顔になる。何度か瞬いてメイド二人の視線の先の、スバルの方をグリンと頭を回転させると、

 

 固まっていた。腕組みは普通だが、うなづいていた頭が変なところで止まっている。

 

「昴、もしかしてこの子達に失礼なことを言ったのか?」

 

「そうですお客様。あそこの変質者がいやらしい手つきで恥辱を尽くしていたのです。姉様に」

 

「そうよお客様。あそこの変態が汚らしく欲情したのよ、レムに」

 

「ちげぇよそこまでやってねぇわ! こいつらに穀潰しだの、ろくでなしがどうだのステレオちっくに俺を罵倒したからであって「本当は?」……二人を妄想の餌食にしてました……」

 

 スバルのどうしようもなさにはため息しか出てこないライトが額に手を当てて彼に説教しようかと項垂れ考えてるが、動きが止まる。

 仕切りに首の周りを触って探すが何かがないことに気づいて血の気が引いて周りが白っぽくなっていく。

 気づいたのだ。

 

 ──ネックレスが、ない……。

 

 

「どうしたライト顔色わるいぞ。まさかあいつにやられたのか!?」

 

「ネックレス……あのっ、俺が首につけてた白金のネックレスって知りませんか? とても大事なものなんです」

 

「それでしたらお客様。こちらに……」

 

 青髪の子。レムが隣の机に近づき棚を引き出すと、白金の幻獣が掘られたネックレスを取り出してくれた。焦っていたこともあって視野が狭まっていたのだが、こんな近くのものに気づかないとは情けない。

 

「それですっ。よかったぁ、あって。ありがとうございます。えぇと、レムちゃん?」

 

「構いません」

 

 そっけない態度で言葉を返される。が、左手に優しくネックレスを受け渡してくれた。態度は冷たく他人行儀なのだが、所作はどことなく優しい雰囲気を持っていた。

 しっかりとネックレスを受け取ったと思えば、すぐに首に取り付け終える。首の装飾品に確かなもの感じれば、ライトが部屋にいるみんなを見渡した後に外を見て、

 

「昴に説教しようと思ったけど、「え゛っ」その気も失せちゃった。「んだよぉー」……」

 

 冷や汗を浮かべてやれやれと首を振るスバルに、先ほどから言葉を挟まれて、気持ちが揺らぐライトが笑顔を向ける。

 エミリアがライトの顔を見た瞬間に口の前に手をやってアワアワするがそんなに酷い顔なのだろうか。

 

「どうした? 昴。もしかして、そんなに俺の説教を受けたいのかぁあ?」

 

「いえいえそんなご冗談を。もうしっかり反省しておりますので……説教だけは勘弁してくださいっ」

 

 スバルが胸に手を当てて丁寧に喋ったと思えば、ライトの足元にスライディング土下座をかました。

 そんな彼を見た後、エミリアと目があって一緒に吹き出してしまう。

 そんなことをしていると、双子が元の着替えを持って戻ってくる。それを見るとライトが姿勢を正して、

 

「よーし。まだ動けないからスバルに肩貸してもらうとして、気分転換に外出てもいいかな?」

 

 

 盗品蔵の事件を乗り越えて、最初の一日が始まった。

 

 

 




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