Re:ゼロから始める異世界UC   作:リクライ

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もう一つの『出会い』貧民街の姫君との厄介な(楽しい?)交渉が始まる。


第二話 出会い 【後編】

 

 

「ーーエルザ・グランヒルテよ。」

 

 

「俺は小鳥遊 来翔。こっちは菜月 昴」

 

 その名前をエルザは聞き目を細め、頭の中で反芻する。獲物を捉えるように。

 その目線にライトが笑顔を引きつらせ、冷や汗がこめかみに伝うのを感じていると、

 

「タカナシ・ライトに、ナツキ・スバルね。それじゃあ、失礼するわ。あなたたちとはまた、会えそうな気がするわね」

 

「えぇ!また今度!」

 

「あぁ。次は明るくて人がいっぱいいる場所だと、俺もリラックスできるぜ…っ」

 

 スバルの言葉が詰まる。流れる動作に気づかなかったライトが横を見やる。

 スバルの横顔を見つめ腹を抑えている手を愛おしく撫でるエルザ。まるでいつでも腹の中身を見ることができるかのように。

 

 

 

 エルザが黒い外套を翻してその後ろ姿がだいぶ小さくなった頃....

 

「ったはぁ…。はぁ、生きた心地がしなかった。助かったぜライト。マジサンキュ。お前のとっさの弁解で、寿命が一日延びたわ」

 

「いやそこは、十年とか二十年とか、大げさに言うところじゃないのか?…でも確かに、あの、エルザさんの目が、まるで獲物を見る獣のようだった。恐ろしかった。それでも、何はともあれ、調子が戻ってよかった」

 

 ライトがそう言い、スバルの背中をさする。

 

 

 

「ここがそのフェルトちゃん?の住処なのか?」

 

「あってるはずなんだが…まさかすでにエルザが暴れたあとって可能性はないよな」

 

「エルザさんがあんな目をしていてもそんな事するわけないでしょ。あとそれ、仮にも本人の前で言わないほうが良い、って、昴!」

 

 ライトの言葉を待たずして、スバルが我先とフェルトが住んでいるであろうねぐらに入っていく。

 血の匂いはしないが生ごみの臭いがするだとか言っているスバルに手を伸ばすライト。その手を下ろし、頭を掻き呆れる。スバルへの尊敬が下がったような気がした。

 

「あぁっ、本当に入っちゃったよ。昴ってあんな風に用心深くなるのに、なんで今度は…。どんな神経してるんだ?昴って本当…」

 

 ライトが一呼吸おいて、物色するスバルの背に軽蔑の意を唱える。

 

「失礼な人だな」「失礼な奴だな」

 

「えっ?」

 

 隣から同じような言葉が耳に入る。声のした方向に目を向けると、金髪の少女の赤い双眸と視線が交わった。

 

 

 

「それこそねぐらっつーんだから、間違いじゃねえと思うけどよ...」

 

 そろりそろりと忍足で進軍を再開。

 中には廃材のソファをベッドにし、脇には食器やらが几帳面置かれていた。

 あんな小さな女の子がここで暮らしていると思うと不憫に感じる。金に貪欲なのも仕方がないと許せるような気がしてくる。

 そう思い、眉をひそめていると、

 

「うわぁ「うわああーー!?」っ!?」

 

 来翔の悲鳴が聞こえて急いで外に出る。

 

「(まさかここにエルザが!?入れ違いで来るとか知らねえよ!?)」

 

「大丈夫か!?来、翔…」

 

 内と外での光の差に目を細め、悲鳴の聞こえた方に目を向ける。だんだんと視界が戻っていくとその語尾が弱まっていく。それもそのはず、

 目的の少女、金色の髪をもつフェルトが来翔を揉みくちゃにしていたからだ。

 

「…えぇっと。どうぞごゆっくりー」

 

「違うよ!?ぅ痛っ」「ちげえよ!?」

 

 二人が顔を赤くし、フェルトが、拘束していたライトを雑に地面へと押し飛ばす。

 

「さっきっからあたしんち言いすぎだろ!?とるものなんざ何もねぇ!とっとと帰りやがれ!!」

 

 スバルの侮辱に声を荒げながら、未だ顔の冷めないフェルトがナイフを構え飛び掛かってくる。

 

「ちょっ待って違う違うそうじゃ「うっせぇ 問答無用だ!」ドゥワアッ?!」

 

 必死に訳を説明しようとするが、胴を狙うナイフに邪魔され、スバルが驚愕し弁明を中断。

 寸でのところでフェルトの胴を狙う素早い薙ぎ払いを回避する。風を切る音が聞こえて戦慄する。

 が、そんな暇も与えんと斬撃が次々に飛んでくる。

 

「ちょ待って…っ。やめろ落ち着けっアッブね!争ってる場合じゃッ」

 

「やっ!ふっ…シッ。たぁっ!」

 

 フェルトが必死に、ナイフをスバルに振り続けていく。

 段々と詰められ後ろの逃げ場がなくなっていくスバル。スバルの頭頂部スレスレで柱にナイフが刺さり、少しばかり調子を取り戻したフェルトが

 

「日が暮れる前にとっとと消えなっ」

 

「だから そうじゃっ なくてっ!」

 

 帰るように自分の住処を荒らした不届者に言う。が、その不届者が異をとなえるのを見る。彼女が眉を上げて、柱に刺さるナイフを力任せに引き抜き、

 

「え?ちょまっうぅお!」

 

 フェルトの薙ぎ付けを横に飛び転がることで回避。地面に転がるとその先で突きが来るが上半身を捻って避ける。

 少女の足ががスバルの頭を捉える。首跳ね起きで、スバルがその足から逃れる。

 踏みつけた足で地面を掴み少年の頸を切り狙う。

 

 瞬きをした瞬間終わるほどの攻防。

 

 連続する回避。スバルが転がった先にあった机を盾にする。

 

「しつけぇな兄ちゃん!とっとと消えろつってんだろ!」

 

「にっ…ぐぅっ。だから話をっ ちょっおっと~ぅわー!?」

 

「あっ!?」

 

 スバルが下がりながらフェルトの攻撃を机で受けるが、踵が石に躓き、ねぐらへ倒れこむ。それが功を制し斬撃から逃げることができた。

 が、必死のフェルトが勢いのまま腕を振り切り、柱を切ってしまったことで、

 

「ぅえっ...うぅわあぁーー!!」

 

 ねぐらが倒壊しスバルが下敷きになってしまった。

 

「っ…はっ!昴っ!?っぐ ! うぅ…」

 

「ハァ ハァ...っえ?」

 

 ライトが駆け寄ろうとするが痛みで動けず足をもつれさせる。

 少女の足が逃げるスバルの胸を踏み、捕らえる。少年の顔に刃を向ける。

 視界の焦点が、顔面を狙う刃にそろい「いぃっ⁉︎」とスバルが声をあげるが、

 

「たっ頼む話を聞いてくれフェルト!!大事なようがあって来たんだ!!」

 

 フェルトが自分の名前を言ってきた少年に眉をひそめ、疑念の声を漏らし刃を外す。

 

「あたしの名前知ってんのか。盗みの依頼か?ハァ だったら最初からそう言えよ」

 

「いきなり襲い掛かってきたのお前だろ」

 

 痛みに耐え、やっと二人に近づくことができたライトが、自分を棚上げするように言い返すスバルに顔をしかめながら、

 

「いやっ。自分の家を物色されて、その上侮辱までしたら襲われて当たり前でしょっ。昴!」

 

 スバルに物申すためフェルトの背後から体を出すライトがツッコみ、貧民街を木霊した。

 

 

 

「つうかアコギな商売しやがって!手癖の悪さが自慢か!あとお前からはマジレスがストレートで来てノックアウトだわ!申し訳なくなっちまったよ!ほんとすんませんっ」

 

「ほんとだよあたしんち返してくれよ。それとこれは生きる手段の問題!これなきゃ体でも売るしかねぇ。んで要件ってなんだよ?とっとと言え」

 

 三人とも落ち着いたところでフェルトが、お淑やかのかけらもない座り方。胡座をかきながら本題を迫る。

 

「俺の要件は一つだ。お前が盗んだ徽章をこちらで買い取りたい」

 

「依頼人の姉さんとあんたとは別口だよな?商売敵か何かなのか?」

 

 怪訝そうな表情をし、目だけをこちら側に向け、スバルの続きに促す。

 

「商売敵というか親の敵のような相手というか。むしろ俺の敵みたいな感じ?」

 

「(それじゃあ俺でも分かんないよ)」「分かんねえよ」

 

 目を瞑って眉を寄せるフェルトと、思考が偶然にも一致した瞬間であった。

 

「まあ、あたしとしては買取価格が高いほうに売りつけるだけだ。儲かる可能性がある話なら何だって聞くぜ?」

 

「たくましいことで。こっちは聖金貨で二十枚以上の価値があるもんを用意してる。その条件でお前の徽章を買い取りたい」

 

 親指と人差し指をつけお金の意味合いを持つ手をするフェルト。その彼女に、スバルはポケットから交渉材料を取り出す。

 

「これは、巷で大流行のミーティアってやつだ」

 

 そう言いスバルがどう見ても時代遅れなガラケーのシャッターを切り、シャッター音が響く。

 

「これがミーティアの力だ。時間を切り取って凍結させることができる世界で一つだけの貴重品...どったの来翔?」

 

 「ものは言いようだな」とスバルの肩に手を置いたライトがポケットから、時代の最先端、『スマートフォン』を取り出す。

 

「ん?そっちの兄ちゃんの奴は何だ?」

 

「お前、それって!」

 

 取り出した物に目を見張るスバルと、ただの板にしか見えない物、眉を寄せるフェルト。そんな二人にライトが続ける。

 

「そう。あっちのミーティアの大幅に進化したミーティアだ。そっちのと同じくこの世で一つしかないお宝さ」

 

 ライトが隣をたたきフェルトがそこに寄る

 画面が光り、彼女は数多くの四角が写る画面を見る。目のような絵をたたくと板の向こう側にある風景が映し出される。

 ライトがその画面を注視するフェルトに白色の円形を指を差す。彼に促され、彼女がそれを押すと、

 『カシャッ』と、乾いた音が鳴り、切り取った風景が写る。空を飛ぶ鳥さえも綺麗に切り取られている。

 目を見開いている彼女にライトは続けて、

 

「それに加えて、こんなこともできる」

 

 ライトが桃色の四角を叩くと、この世にはない四角い絵が複数に現れる。

 燃え盛る場所を背景に、天へ伸びる一角を持つ鮮緑の双眸を持った、白皙の横顔の絵を彼が触ると見知らぬ言語が横に羅列している。

 頭の上にクエスチョンマークを浮ばせるフェルトに、風景を切り取った時のようにライトが上から二番目のそれを指さす。

 そんな彼を見て、再び画面に触れると、

 

 静かに頂点へと向かっていく音色が奏でられる。

 

 この間、誰も喋らず、紡ぎ出される音に傾聴する。四分強の時が経ち、終わりを迎える。

 

『完全勝利の音~~♪』

 

「負けたー!」

 

「わはぁーすげぇ!これも売るのか!?」

 

「あぁ。今なら、このミーティアをより長く使えるようにできる、これ専用の外部魔力も付けるから大体…」

 

 情報過多で興奮して目を光らせているフェルトが、固唾を吞む。

 

「聖金貨四十枚ってところかな?」

 

「おぉー。う゛う゛ん。たっ確かに物珍しさは認めるけどよ。聖金貨二十枚と四十枚ってのは眉唾だぜ」

 

 本人はポーカーフェイスだが動作がうれしそうで微笑ましい。

 

「ぁあたしだって交渉相手の言うこと丸飲みしてやるほど、頭空っぽってわけじゃねえんだ」

 

「いやまあ、それは客観視してくれる人に判断してもらうのは当然か」

 

 ライトとスバルはそう提案するだろうと予想していた。

 

「貧民街の奥に、盗品蔵がある。そこにいるロム爺って偏屈爺さんに鑑定してもらうのが公平だぜ」

 

「そうか」「やっぱ、そう来るか」

 

「「ん?」」

 

「よし分かった、行こう」

 

ライトとフェルトの疑念が重なるが、待たずしてスバルが急かす。

 

「すぐ行こう。ぱっと行こう。ちゃちゃっと行こう」

 

「えぇっ」

 

「ただしチャット見てもらってスパッと終わらせてバシッと出るかんな!」

 

 そういいスバルがフェルトを押して盗品蔵へ行く…

 思索にふけっているライトを残して。

 

「(なんで昴はあそこまで焦っているんだろう?それにあのエルザにあったときの尋常じゃない反応)って、ちょっと!置いてかないで!」

 

 

 

「なんだよ兄ちゃん。なんでそんなに焦ってるんだよ」

 

「別に徽章が逃げるってわけじゃないんだからもう少し落ち着いても」

 

「ッ」

 

 スバルの歩くスピードが落ち着いてフェルトが横に並ぶ。フェルトの後ろから二人の間の後ろへライトは移動する。

 フェルトがライトの方を見る。

 ライトはその顔を不思議に思うが思い当たることがあり、ポケットから交渉材料を取り出す。

 満足げにそれを受け取るのを見て、「合っていて良かった」とライトは思った。

 

「汗ダラダラだぜ、強く生きろよ」

 

「貧民街だとみんなそれ言うんだけどなんかスローガン的ななんかなの?」

 

「なんかその言葉、同情されてる感じになるよね」

 

 フェルトの言葉に不思議に思うスバルと、情報収集していた時の同情の目を思い出すライトがそれぞれ思ったことを口に出す。

 

「あんな奴らと一緒にすんな。あいつらみんな、口だけで強くとも何ともねえ。性根のしみったれた負け犬どもだよ」

 

「いくら何でも言い過ぎだろ」

 

「(口だけは達者なトーシロー(元コマンドー風)っていうことなのか?)」

 

 フェルトが二人を追い抜いて前に立ちふさがる。自分は他人とは違う、強き者だと証明するかのように。

 

「あたしはここにいる奴らとは違う。こんな路地裏で一生を終わらせる気なんてさらさらねえんだ」

 

「それで、聖金貨二十枚と四十枚括弧仮でその夢は叶いそうなのかよ」

 

「目標にかなりでっかく近づくのは間違いねえよ。あたし一人でムリすりゃ、やってけねえこともねえだろうけどよ」

 

「一人なら?」

 

 スバルがそう言い何かを思い出している。

 

「なんでもねえよ」

 

 フェルトがそう言うとすこし恥ずかしそうに語尾を弱める。スバルはその反応で何かに気づいて微笑んでいた。

 

「(フェルトちゃんにも大切誰かがいるんだね)」

 

「ッチ んだよそのにやけ面!腹立つなぁおい」

 

 ライトは自分の顔を触って確かめる。確かに頬が緩んでいて、にやけている。だが、彼女はライトに言ったわけではないらしい。

 すると、スバルがフェルトに近づいて頭をなでていた。

 

「ぅえっちょちょっと、おいなにすんだやめろ!んもちょっと!ーーーーーー」

 

 フェルトを見て、どれだけ強く見せてもまだ子供なんだなと思い、かわいらしいと思うライトがいたが...

 夕陽に照らされ、輝く少女の八重歯が、

 

「いい加減にしろっつうの!」

 

「ギャーー!!」

 

 スバルの手に噛みつき、彼の汚ない悲鳴が貧民街に残響した。

 少し前の言葉を撤回しかけるライトだった。

 

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