Re:ゼロから始める異世界UC   作:リクライ

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絶体絶命の『死闘』の中、ついに、ライトの”力“が覚醒する。


第五話 死闘

 

 

「うっ...おい、どーいうことだよ!」

 

 

 叫び、前に踏み出し困惑するフェルトだ。彼女は黒服の女性、エルザに警戒を強める。

 

 

「なんで...あなたが...」

 

 

 言葉が詰まる。次に会おうと言い、別れた人物が最悪の形で再開してしまったから。

 

「持ち主まで持ってこられては、商談なんてとてもとても。だから予定を変更したのよ。」

 

 フェルトが殺意に濡れた瞳に見つめられ思わず下がる。エルザが腰に手を当て、もう片方で夕日に反射するククリナイフを持ち上げる。

 

「この場にいる関係者は皆殺し。あなたは仕事をまっとうできなかった。口ばかり達者なだけでお粗末な仕事ぶり」

 

 恐怖で小さくなっていくフェルトを愛おしげに見下して、

 

 

「所詮は貧民街の人間ね」

 

 

 フェルトの顔が苦痛に歪む。それは恐怖ではない。別の感情に見えた。

 この言葉が彼女の琴線に触れてしまったのかわからなかった。が、

 

 

「てんめぇ!」「ふざ、け……さい」

 

 

 ライトとスバルの

 

 

「ふざけんなよ!!」「ふざけないでください!!」

 

 

 降りかかる殺意を忘れるくらい、怒らせる原因となった。

 

 

「こんな小さいガキいじめて楽しんでんじゃねえよ!腸大好きのサディスティック女が!!フェルトだって精一杯、強く生きてんだよ!予定狂ったからちゃぶ台ひっくり返して全部おじゃんって、ガキかてめえは!命を大事にしろ!」

 

「子供が、やってんですよっ!必死に!この貧民街で彼女は、フェルトちゃんがどんなに、どんなに辛い道であっても!歩き続けてきたから!頑張ってきたからこの日まで生きているんでしょ!?それを嗤うなんて、大人のやることですか!!」

 

 

 二人の言葉は止まらない。

 

 

「腹切られるとどんだけ痛いか知ってんのか?俺は知ってますぅー!!」

 

「それに、人を簡単に殺すとか。人を殺して何も思わないんですか!?そんな、命をそんな簡単に失うことはとても悲しくて惨いことなんだっ!!」

 

「なにを言ってるの?あなたたち」

 

「自分の中の思わぬ正義感と義侠心に任せて、この世の理不尽を弾劾中だよ!俺にとっての理不尽はつまりお前でチャンネルはそのままでどうぞ」

 

「命を、生きる力を、なんだと思ってるって、聞いてるんですよ。ハァハァ…」

 

 意味不明なスバルの怒声とライトの命の道徳に、エルザが珍しく呆れたように吐息。

 そんな彼女の態度に二人は傷付きつつも、スバルが勢いのままに、

 

「ほいっ時間稼ぎ終了ーーやっちまえパック!!」

 

「後世に残したい見事な無様さとご教授だったね。それじゃあご期待に応えようか」

 

 指をさすスバルに飄々とした声が応じ、エルザが見上げる。

 立ち尽くす彼女を全方位にわたって取り囲むのは先端を鋭利に尖らせた大量の氷柱。

 この光景はさながらAUOを彷彿とさせるとライトが心中で思う。

 

「まだ自己紹介もしてなかったねお嬢さん。僕の名前はパック。名前だけでも覚えて逝ってね」

 

 直後、全方位から氷柱がエルザに押し寄せ、全身に叩きつけた。室内に白い霧が巻き上がり、彼女の姿が見えなくなる。これは勝負あったかとライトは拳を握る。

 

「やりおったか!?」

 

「そのフラグ立てんなジジイ!」

 

 今まで沈黙を貫いていたロム爺が肝心な時にお約束を口走ってしまう。そのスバルに応えるように、

 

 

 

「ーーー備えはしておくものね」

 

 

 

 氷の塊が内側から破裂するように破られ、ローブを失ったエルザが武器を片手に躍り出る。

 

「精霊術の使い手を舐めないこと。」

 

 氷の盾が展開され、凶刃を易々と防ぐ。刃を止められたエルザはすぐさまバク転で華麗に後ろへ回避。

 それを追うように床に氷柱達が連続して突き刺さる。そちらの攻撃は腕を前に構えるパックによるもの。

 

「戦い慣れしてるなぁ女の子なのに」

 

「あら女の子扱いなんて随分と久しぶりなのだけれど」

 

 軽口をたたきながら攻撃を放つパックと、それをナイフで弾き、壁を巧みに使い回避するエルザ。

 

「僕から見ればたいていの相手は赤ん坊みたいなものだからね。それにしても、不憫なくらい強いもんだね、君は」

 

「精霊に褒められるなんて恐れ多いことだわ」

 

 讃辞に喜びつつもその回避は止まらない。飛んでくる氷柱を刃が打ち払う。

 放った氷柱は数えきれないが、初撃を除いてエルザに届いたものはない。物量で押しているパックだが、いまいち決定打に欠けている。

 

「このままじゃ魔力切れでジリ貧じゃないですか?」

 

 絶望な展開を思い描き、ライトが長期戦は不利だと訴える。

 

「精霊使いの戦いでマナの切れる心配はいらん。じゃが...」

 

 ロム爺が次の言葉に言い淀む

 

「精霊がいつまで顕現できるかが勝負じゃ」

 

「えっ」

 

「なに!そろそろ五時を回るか!」

 

 ライトが目を見開き窓の外を見ると、もう日が落ちかけていた。

 戦闘開始からこれまで魔力をノンストップで放ち続けている。顕現する力も残りわずかなのではないか。

 そんなライトとスバルの不安は

 

 パックの氷の弾幕が緩んできて、それを軽々とエルザが弾いていた。

 

「あらせっかく楽しみになって来たのにつれないわ」

 

「モテるオスのつらいところだね。女の子の方が寝かせてくれないんだから。でもほら、夜更かしするとお肌に悪いからそろそろ幕引きと行こうか」

 

 雑な形の氷柱を放つパックと回避するエルザの目が合う。

 

「あ。は?」

 

 踏み出そうとした瞬間、エルザが立ち止まる。彼女のミスにライトたちが驚くと、その右足が凍結した床に張り付けられていた。

 

「無目的にばら撒いたわけじゃにゃいんだよ?」

 

「してやられたってことかしら?」

 

「おやすみ~」

 

 勝ち誇るように少女の肩に降りる。

 必殺を放つかのように両手を前に突き出すポーズを構え、最大の魔力が集中しーーー放たれるのを見た。

 

 

 

 それは氷というにはあまりにも不定形だった。大きく、膨大で、そしてそれは純粋なエネルギーだった。

 

 

 

 青白い光が射線上を凍てつかせ、盗品蔵を氷の世界に染め上げる。

 エネルギーが直線的にエルザを通過し、入り口の扉も弾き飛び、氷の花が咲いた。

 この必殺は人間すらも氷像にしてしまうこと間違いない。

 もちろん、

 

 

 

「ああ、ステキ」

 

 

 

「死んじゃうかと思ったわ♡」

 

 

 

 当たっていれば、だが

 

 

 

「女の子なんだからそういうのは僕、感心しないな」

 

「パック、まだいける?」

 

「ごめん、すごい眠い。ちょっとなめてかかってた。マナ切れで消えちゃう」

 

 少女の言葉に、あくび混じりに答えるとパックの体が淡くぼんやりと輝き、今にも消えそうになっている。もう時間が残されていないようだ。

 

「あとはこっちでどうにかするから、今は休んで。ありがとね」

 

「君に何かあれば僕は契約に従う。いざとなったらオドを絞り出してでも僕を呼び出すんだよ」

 そう言い残しパックの体が霧状と化し、消える。

 

「いなくなってしまうの?それはひどく残念なことだわ」

 

 はがれた足裏に氷塊を押し当てて、足の高さを揃え終えたエルザが、凶器を構え直し滑るように少女へと襲い掛かる。

 

 手のひらを合わせ氷塊生成に集中している。それに呼応するように氷の障壁と氷の剣が現れる。その数はパックに比べると明らかに、かなり減っている。機動力を削られたエルザが相手でも、勝算がかなり厳しいとわかる。

 

「そろそろただ見てるだけというわけにはいかんなフェルト」

 

「分かってるっつうの。逃げるにせよ、そろそろ動かねえといけねえってな」

 

 エルザの言葉からここまで、一口も利かなかったフェルト。ロム爺の隣に並ぶと、ライトとスバルの方を見た。

 

「さっきはなんだ....ちょっと、救われた」

 

「あ?」「え?」

 

「ちょっとだけだけどな。つか、ガキとかいうんじゃねえよ。あたしはこれでも十五だ。兄ちゃんとほとんど変わんねえだろ」

 

「お...俺は今年で十八だ」

 

「えっと、俺は十七だ」

 

「ぅえっ?白い兄ちゃんはともかく、見えねえガキすぎ。もうちょっと人生刻んどけよ面に」

 

 昴って俺より年上だったのか。童心を忘れていないって良いことだな。調子乗りすぎると止まらなくなるけど。

 

 少女がエルザの動きに翻弄される。

 障壁が耐え切れず割れ、脇腹に足が刺さる。飛んだ先で刃を躱すが商品棚に激突し戦況が変わる。

 

「行くぞッ!」

 

 雄たけびを上げロム爺が戦闘に参加する。

 

「あら、ダンスに横入なんて無粋じゃないかしら?」

 

「そんなに踊りたければ最高のダンスを踊らせてやる!フンッ!」

 

 釘棍棒を大きく振りエルザがこれをナイフで受け流していく。部屋が火花で照らされる。ロム爺の剛腕から繰り出される連撃をエルザがナイフで応じるのを数回繰り返すと、エルザが距離を取りさらに離れていく。

 

「そら、きりきり舞えぇぃ!」

 

 振り切った棍棒が氷華を砕く。回避したエルザがその棍棒の先に降り立つ。

 

「な...何じゃそら??!」

 

「あなたが力持ちだからこんなこともできたのよ」

 

 ロム爺の剛腕に凶刃が迫る。

 

 

「させっかーっ!」

 

 

 振り下ろされる斬撃を叩いたのは、フェルトのナイフだ。だが、

 

「ぐぉぉ」

 

 狙いが甘く、左肩に斬撃が届いてしまった。

 

「ロム、爺ぃ」

 

「悪い子。覚悟も戦う覚悟もない。ならばせめて部屋の隅で小さくなっているべきだったのに」

 

 

 エルザがフェルトに近づいてくる。ナイフを横から真上に構えながら。

 どうする。どうしたらいい?どうしたらこの状況から脱することができる?

 周りを見て考えていると息を呑む声が聞こえ、その方向に見やる。フェルトちゃんだ。あれだけ強く、困難な道であろうとも進み続けた少女。進み続けた先にあるものを信じ見ようと必死になっていた少女。そんな少女の夢を嗤い、摘もうとするエルザに肩を震わせている。

 

 

 ナイフが振り下ろされる。

 

 

 

 気がついた時には体が動いていた。

 

 

 

「は・い・だ・らあぁぁぁーーー!!」「クッ…うおおぉぉぉっ!!!」

 

 小柄な体を抱きかかえて飛んだのは、隣で縮こまっていたスバルだった。が、

 その先で夢を刈り取ろうとする刃を、エルザの腕を、ライトが両手で掴み耐えていた。少女の夢を、可能性を守るために。

 

『可能性という内なる神を…』

 

「人を…人の持つ可能性をアンタに奪わせない!!」

 

 女の腕を強く掴み取っているとその腕から骨が軋むような音がなる。

 足が脇腹に飛んでくる。痛みに耐えるため、目を閉じようとすると、氷塊がエルザに向かっていった。

 放たれていく氷塊達が回避されるがライトたちとの間合いが空く。

 

 スバル達に目を向けて駆け寄る。

 

「大丈夫かっ!」

 

「無茶しやがって、来翔ぉ!」

 

「つかどうして…」

 

「よく聞け、いいかフェルト、来翔。俺が今から時間を稼ぐ。どうにか隙を作ってみせっから、その間にお前ら全力で逃げろ」

 

「昴!それじゃ君が「なんだそりゃあたしにケツまくって逃げろっていうのか?」っ命あっての物種でしょ!昴、俺も一緒に時間を稼ぐ」

 

 はやる気持ちを抑えられずスバルに詰め寄る。

 スバルが彼の肩をつかみ落ち着かせる。

 

「来翔の言う通り命あってだ。だが来翔お前も逃げろ。お前は十五で、十七のお前、そして俺は十八。フェルトが一番、来翔が二番で年下ってことになる。なら生き残る確率の高いとこを選ぶのが当たり前だ。当たり前なんだっ!」

 

「何だよそれふざけんなさっきまでぶるってたくせに」

 

「さっきはさっき。今は今!今ぶるってねえからそれでよし」

 

 今まで自分勝手でも、誰かのために体を張れるスバルを、囮にするようなことをしたくない。

 ここに来てから、彼のおかげでどうにかやっていけた。貧民街でも自分より彼の方がうまく情報を集めていた。うまくいかなかったら、ここにいる人が、フェルトちゃんやロム爺が人知れず殺されていたかもしれない。

 そんな事態を偶然にも防いだ彼を見捨てるようなことをしたくない。

 

 フェルトにそう言いスバルがロム爺の棍棒を持ち上げると、納得できずに目を固く閉じ、拳を握るライトに顔を振り向けて、

 

「だったら来翔、おまえはフェルトを無事ここから連れ出せ」

 

 驚きに目を見開くライトに、続けてスバルが言う。二人に全てを賭けるように、

 

「外に出たらお前らで助けを呼んでくれ。それまで俺たちは耐え切ってみせるからよ。アイツぶっ飛ばしてハッピーエンドだっ」

 

 そう言い残し、氷の障壁に切り付けているエルザの背後に忍び寄り、力いっぱい振り下ろす。

 

 

「んだらぁぁぁぁーっ!!」

 

 エルザは刃の峰で棍棒を叩き、逸らすことで阻止。奇襲が失敗するがスバルが合図する。

 

「今だ!行けよフェルト!来翔ぉーっ!」

 

 本当は一緒に時間を稼いで戦いたい。たとえ命を捨てるようなことでも、目の前の可能性を切り捨てるようなことをしたくない。

 そんな甘い心を振り切り、戦闘を見て気を伺う少女に、

 

「ッー!行こうフェルトちゃん!」

 

「あぁ!」

 

 ライトがフェルトの手を引き、スバルに目を向けず入り口に向かって走る。

 

「(来翔の奴、意外と速いんだな)ッ!」

 

「行かせると思う?」

 

「ぐわっ!」

 

 あんなに大見え張って出たのに情けない自身を嘲笑するスバル。鍔ぜっていた彼がエルザに大外で刈られ背中を床につけてしまった。

 エルザがその隙に懐から三本の投げナイフを投げる。

 入り口へ向かうライトとフェルトに。

 

「つぅ。ッ!来翔フェルト!避けろーーっ!!」

 

 

 

 

 

「フェルトちゃんッ!!」

 

 とっさに掴んでいた腕を引っ張る。

 幸い彼女はとても風船のように軽く、入り口の外へ投げ飛ばすことができた。

 振り向き、手と足を伸ばし、彼女の盾となる。

 

 ナイフが一直線にライト目掛けて迫ってくる。

 

「(ごめんスバル、約束守れなさそうだ)」

 

 ここまでの記憶が、この世界に来る前の記憶も、コマ写しに流れてくる。

 ただひたすらに夢へと、家族のために懸命だったフェルト。心折れずに、ただ銀髪の少女のために、ときにはフェルトのために命を張ることができるスバル。母と俺を捨てた父。気づいた時には一緒だった白金のネックレス。

 

「兄ちゃん!!」「来翔ッ!!」

 

 二人の声と視界が赤く染まるのを最後に、ライトは意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 こんなはずじゃなかった。ライトが、一緒に時間を稼げば誰も死ななかったんじゃないのか。

 目を固く閉ざし後悔する。

 

 直後、肉を刺すような音ではなく甲高い音が鳴り響き、部屋にいる全員が止まった。

 

「は?」

 

 目を向ける。フェルトを庇い致命傷を負ったと思われるライトに、

 

 

 

 

 ライトを中心に赤い光が展開され、弾かれたナイフが床に刺さっていた。

 

 

 

 

 すぐさまエルザが絶する速さで距離を詰め、振り下ろすが、そのナイフが持ち手から弾け飛ぶように刃を失う。

 彼女が距離を取り、その場の全員の視線が宙に浮くライトに注がれる。

 

 赤い光が収まると、

 

 

 

 ライトの髪が、光沢のある白皙に染まり、鮮緑に双眸が染まり輝く。

 

 

 

 煌めく星々の音を鳴り響かせ、全身を赤の一線となって駆け巡る。

 

 

 

 身から溢れ出す星影は躍動するように吹鳴し、光となって赤の領域を広げていき、

 

 

 

 白皙の髪に黄金色のメッシュが混淆する。

 

 

 

 その変化。

 いや、

 

 変身を終えたライトが、右手を背中に伸ばして大きく払う。

 その手からは高密度粒子の剣を出現させ、後ろで構えた。

 

 

 

「あなた何者?」

 

 

 

 刹那、赫耀が黒影へと肉迫するーーー

 

 




星8評価 ヤストモ さん

評価ありがとうございますっ。
これからも続きを書きますので、読んで下さると嬉しいです。
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