Re:ゼロから始める異世界UC   作:リクライ

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エルザとの激しい死闘の末、ライトは覚醒し、そして訪れる『ユニコーンの日』


第六話 ユニコーンの日

 

 

「あなた、何者?」

 

 

 変身を終えたライトが

 

 エルザに迫る。

 

「なッ!?」

 

 エルザが腰からナイフを取り出しそれを振り下ろす。

 瞬間、ライトがすれ違うとエルザの右手が切り落とされる。

 ククリナイフが床に落ち刺さる。

 

「クッ」

 

「…ッ」

 

 それを合図に、エルザが逃げるように距離を取りながら投げナイフで妨害する。が、彼女を猛追。

 無駄のない動きで頭、腕、胴の順にそらし、ナイフの間をすり抜けるように執念深く追跡した。

 一体ライトに何が起きたんだ。すぐに意識を再編成させて、呆けてるフェルトに目を向け、

 

「早く行けっ!」

 

 スイッチが入ったようにフェルトが走り出す。二人の戦闘を横目に、ロム爺を治療している偽サテラに駆け寄る。

 

「ロム爺生きてたのか」

 

「まだ安心はできない。それにしても、彼おかしいわ」

 

「あぁ。来翔のあの変わりよう。一体全体何がどうなってるんだか」

 

「それもそうだけど、あの赤い光よ」

 

 「え?」と声を上げるスバルを横目に偽サテラが戦闘を注視しながら言う。

 

「彼の、あの赤い光。あれ全部微精霊なの」

 

 スバルが「微精霊?」と反芻し、「えぇ」と偽サテラが眉を顰めて続ける。

 

「微精霊って属性ごとの色が淡く光ってるの。でも彼の纏う微精霊はそれぞれ属性が違うのに統一して光ってる。まるでそうあることがいつも通りみたいな風に。」

 

「へぇ「それに!」うぇ!」

 

「そもそも争いを好んでないのっ!微精霊は。だからおかしい」

 

 

 

 

 エルザとライトが壁を蹴ってはぶつかりを繰り返している。ライトが移動するたびに赤い軌跡が見え、さながら赤い彗星だなと思うスバル。が、気づく

 

 投げナイフを使い、それに続くようにエルザが向かう。三本目のククリナイフが引き抜かれようとしていることに

 

「来翔!三本目があるぞ!」

 

 ライトが頭目掛けて矢のように放った投げナイフを切り伏せる。

 

「ーーしっ」 

 

 エルザが疾風の如く接近し、その胴を真っ二つにする勢いで横薙ぎの斬撃を放った。

 胴体を切り裂かれ、なき別れになってしまったそれを幻視した。

 

 

 凶刃が切り裂いたのは身体ではなく、

 

 

「…っ!」

 

人型の赤い光だった…

 

 まるで知っていたかのように、赤い残像が見える速さで上体を反らし、流れる動作で勢いのまま、顎を粉砕せんと言う勢いでサマーソルトを放つ。

 

「あら、とても速いのね♡」 

 

 跳ねるように彼女がその場から飛び退き、

 

「よくわかったのね」

 

「実体験があったんでな!んでも、言う必要ねえみたいだが」

 

 自慢、エルザはそれを戯言と判断するが、

 

「ただし、牙は二本だけではないの。仕切り直しに、「ッ!!!」なッ!?」

 

 右手を再生させ終えたエルザが、床に刺さるものを拾い上げながら、ライトを誘う。が、攻撃に移っていたライトが言葉を待たずして迫っていく。

 

「フフッ。あら、待てない子は嫌われるわよ?私は好ましいけど♡」

 

「………………」

 

 軽口をたたくが彼は依然として口を開かない。

 

 

 

 

 青い輝きがロム爺を癒し、左肩の深い傷が消えていく、感嘆するスバルの前で偽サテラが深い息を吐いた。傷のあったところを注視するがその痕跡はどこにもない。

 すると肩に寄りかかる銀髪の少女が。

 

「え、お、おい」

 

「ごめんなさい。ちょっと、、肩を貸して」

 

 浅い呼吸を繰り返し、少し熱っぽくなっている。

 

「ど、どうしたんだ一体?体調でも悪くなっt「違うの」うん?」

 

 少女が戦いに目を向ける。それに続くようにスバルも視線を移す。

 壁の切り傷がそこかしこにリアルタイムで付け加えられていく。

 戦闘が激しさを増していた。

 

「マナが、、、彼に、吸われてる。わかるでしょ?」

 

「いやそんなの、ん?」

 

 言われてみれば、赤い線が展開されている他に、体表を縁取るように赤い膜が薄く覆われているようにも見える。

 

 

 刹那、赤い閃光が部屋を駆け巡った。

 

 

 

 

「強いのね、あなた。まるで別人のようだわ♡」

 

「………ッ!」

 

 二人が壁を足場にし部屋の中央へとぶつかり合う。鍔迫り合い、もう一方でライトの脇腹を切り裂こうとするが、手首を素早くつかまれ投げ飛ばされる。投げたスピードを圧倒するかのように彼女を追う。

 エルザが壁に着地。ひざを曲げた勢いのまま、すれ違いざまにナイフを突き動かす。が、受け流され頬を切られる。

 

「こんなに激しいダンス初めて♡」

 

 エルザがそう言い、その場で立ち止まり迎え撃つ。床に降り立ったライトが弾丸のように彼女目掛けて発射した。大砲のような音が部屋に満ちた。

 

 

 砂煙が舞う。

 

 

 

「再生なんて人間業じゃねえだろ。それを相手にできる来翔も言えてるけど」

 

 砂煙が晴れる。

 

 斬り合い、それを受け流したことで二人の周りを火が開花するように煌々と照らされる。

 緊迫した戦いで汗がまぶたに流れ落ちるがそれを拭って彼らを見ていたスバルが思った。

 二人の表情は真逆だ。エルザは口が裂けんばかりの笑顔。それに対しライトの顔は無だ。無表情で機械的。その瞳に感情は乗っていない。

 偽サテラがライトを見て言う

 

「赤い光が」

 

「え?」

 

「赤い光が弱く、なったような」

 

 それを聞きスバルに最悪の予感がよぎる。「あの姿には強くなる代わりに時間制限があるんじゃないか?」と。だが今はただ、指をくわえて戦いの終わりを待つしかない。

 

 

 

「その顔にももう慣れてきたわ、ねっ!」

 

 斬り合いを崩すように、エルザが横薙ぎの蹴りをライトに放つ。それ膝で受け、片足を軸に一回転したライトが、振り向きざまに右手から伸ばす光を振り下ろす。

 エルザは寸でのところで回避。髪が少し焼き切れ、焦げる臭いが舞う。

 

「っチィ」

 

 壁をピンボールの如くライトの周囲を跳びまわるエルザ。

 ライトの目が、自身の手に移る。身体を覆う光がだんだんと小さくなっていく。

 

「…?」

 

「あら、もう終わってしまうの?楽しい時間はあっという間ね♡」

 

 エルザがそういうと絶する速度でライトに向かう。鮮緑の双眸がその影を捉え、二人の眼が虚空で空中戦を繰り広げた。

 

「……ッ!!!」

 

 彼が右手を構え、頭蓋から胸にかけて切り裂かんとする二つの斬撃を振り受ける。

 

 

 刹那、突風が部屋中を駆け巡る。それに共鳴するように床が苦痛を訴えて割れ、泣き叫ぶ音が響き渡った。

 

 

「フフフッ、アハハッ♡」

 

「………っ」

 

 空中で姿勢を保つエルザと鍔ぜり合うライト。その均衡を、ライトが強引に押しのけ、エルザの体勢を崩す。

 すぐさまククリナイフで受けようとするが、それを割り込むように赤い光がエルザの左腕を襲う。

 ライトに見せる隙としては大きく、その左腕を

 

 

「ぐッ!……フフ♡」

 

 

 断ち切った。

 

 

 その痛みに顔を歪めるが、興奮し妖艶な笑みへと変えたエルザがライトの背後に降り、残る右腕で襲う。

 その攻撃は容易く、右手に握る赤紫の光に受け止められ、腹に突き破らんとする蹴りがライトから撃ち放たれる。

 

 

「カッハァッ…」

 

「……っ」

 

 その瞬間、肋を砕き、内臓から呻くような音が彼女から鳴った。

 互いが吹き飛ぶ。エルザは壁を破り盗品蔵の外へと飛び、ライトは壁に激突し仰向けに倒れた。

 

 ライトの体に走る光線が、役目を終えるように色素を失う。同時に鮮緑の光が双眸から停止するように消え、瞼を閉じる。

 

 手足の先から順に光が霧散していき、日に照った雪の、皚々のような髪色が元の黒髪に戻る。

 

 

 

 

「終わった、のか?」

 

「無事に終わったの?」

 

「あ...ああ。あの傷にあの衝撃。聞くと吐きそうになる音もあった…しばらく起き上がっては来ないだろぉ」

 

 戦闘が終わったと見ると緊張が解け体から力が抜けるスバル、と偽サテラ。ライトは気を失っているのか、電源が切れているようにその場から動かない。

 

「じろじろと見てどうしたの?すごーく失礼だと思うけど」

 

「いや。手足はもちろん、首もちゃんとついてるよな」

 

「当たり前でしょ?怖いこと言わないでくれない?」

 

 スバルの感想は彼女には意味が解らなかったのだろう。

 呆れるように言い睨んでいる彼女に、そらそうだよなと感じに両手を下げる。

 

「そうだな、当たり前だよな。もちろん俺の手も付いてるし背中にナイフが生えてもいなけりゃ、腹にでかい風穴が開いてたりもしないぜ」

 

「生えてたり開いてたりした時期があるみたいな言い方するわね」

 

「そんな時期もあったけどな。そういやーーー」

 

 仰向けになっている今回のMVPに顔を向け、近づこうとする。

 

 壁を切り破り黒い影が出現する。血を滴らせバランスを失いながらも力強く足を踏み出し、加速する。欠けてしまったククリナイフを手に無言でエルザが、ライト目掛けて走って行く。

 

「来翔ッ!」

 

 スバルが叫ぶがライトが起きる気配はない。

 

 

 

 

 

「そこまでだ」

 

 

 

 

 

 屋根を貫き、エルザと気を失っているライトととの間に燃え上る炎が降臨した。

 焔はすさまじい鬼気でもって室内を席巻しエルザの蛮行すらも動きを止めた。

 

「チッ、噂の剣聖とも踊りたかったけれど」

 

 ラインハルト目掛けククリナイフを投げるが、彼を避けるように刃が通り過ぎていく。

 

「いいわいずれこの場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまでは、せいぜい腸をかわいがっておいて」

 

 廃材を足場に、エルザが跳躍し、屋根を足場に逃亡する。

 身軽に建物を飛び越える細身を追うには骨が折れるため、ラインハルトはその背をあえて追わなかった。

 遠ざかる背中を見送って、ラインハルトは銀髪の少女に駆け寄る。

 

「無事ですかーー」

 

「わたしのことはいいの。それより...」

 

 端正な顔に焦燥感を走らせるラインハルト、彼の言を流し、偽サテラは壁際で倒れているライトとそばで同郷を心配するスバルに駆け寄る。

 

「その子大丈夫!?さすがに無茶し過ぎよっ」

 

「お、おぉぉぉぅ大丈夫そうだ。これと言って傷もない。腹も裂かれてなければ、腕もくっついてる」

 

「ほんとだわ。あれだけの戦いをして、服が汚れているだけなんて」

 

「いやあこれはまた別のっていうかなんていうか。そういや、ラインハルト。まだ礼を言ってなかった。さっきの路地といい俺の心の叫びが聞こえたのかよ、友よ」

 

「それができたなら、僕も胸を張れるんだけどね、友達君。彼女が必死で路地を走り回っていたんだ。そして僕に助けを求めた」

 

 心苦し気な顔で、あちらに顔を向けながら言う。

 彼の顔の先を見ると、金髪の少女。フェルトがいた。

 

「お」

 

「あの子は...」

 

「待った待った。あいつがラインハルトを呼んでくれなきゃ、俺たち最悪全滅してたんだぜ?ここは俺の顔に免じて、氷の彫像の刑は見送ってくれよ」

 

「そんな乱暴しないわよ。というか、あなたの顔に免じてって「それはそれとしてっ!」え!?」

 

 左手を腰に当て、その腰をひねりながら、天へと右手を伸ばす。周囲の驚く視線を無視し声を高々に上げる。

 

「俺の名前はナツキ・スバル!そしてこちらで疲れ寝る今回のMVPことタカナシ・ライト!俺たちってば君を守り抜いた命の恩人。ここまでオーケー?」

 

「俺たちっていうより、ライト?が守り抜いてたけど」

 

「そのライトをここまで連れてきた俺の手柄も含め命の恩人ってこと。オーケェー?」

 

「おーけー?」

 

「よろしいですかの意。ってなわけでオーケー!?」

 

 聞きなれない言葉に首をかしげる銀髪の少女に対し、OとKを体で表現するスバル。顔を引きつりながら、「お、おーけー」と応じる。

 

「うんうん。命の恩人、レスキューウィアー。そしてそれらに助けられたヒロインが君、そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか?ないかな!?」

 

「わ、わかってるわよ。私にできることならって条件付きだけど」

 

「なぁら。俺の願いはオンリーワンの唯一無二のただ一つだけだ」

 

 指を一本だけ立てて突きつけ、くどいぐらいに一つを強調。喉を鳴らして悲壮な顔で頷く彼女に、スバルは好色の笑みを向ける。

 

「そう、俺の願いは--------」

 

「うん」

 

 歯を光らせて、指を鳴らし、クールなまなざしを向け、

 

 

 

「君の名前を教えてほしい」

 

 

 

 

 

 呆気にとられたような顔で、少女の紫紺の目が見開く。

 無言が周囲を支配する。決め顔で固まったまま羞恥を耐え、彼女からのアクションを待つ。

 

「ふふふっ」

 

 顔が赤くなるのを感じると

 

「エミリア」

 

「え?」

 

 笑い声に続いて伝えられた言葉に、吐息とともに声が漏れる。

 彼女はそんなスバルに姿勢を正し、唇に指を当て、天使のような笑みを浮かべ、

 

「私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、ライト、スバルっ」

 

 「私を、助けてくれて」と彼女は手を差し出した。その手を見下ろし、今までの苦労が早送りに脳内で再生される。時に腹を裂かれ。時に皆を見殺しにし自分も死んだ。その苦労の先で、報酬が彼女の名と笑顔。

 

「あぁ。割に合わねぇ」

 

 言いながらスバルも笑い。少女の、エミリアの笑顔を見て「それもいいか」と思いながら、固くその手を握り返した。

 

「おっとっと」

 

「大丈夫?スバル?」

 

「あっいやぁ。だいじょびだいじょび。ちょっと気ぃ抜けただけだからうぉっと」

 

 スバルが壁にもたれ座り込む。倦怠の色が全身を薄雲のように包み込んだ。

 瞼が重い……つか、れた…今は、ねむりたい…

 

「ちょっとスバルっ大丈夫!?スバル!スバーーー」

 

 ーー焦っていても可愛いなぁ、異世界ファンタジー。

 

 そんないつかと同じような感想を最後に、疲れがスバルの意識を泥のように包み込み、沈んでいった…

 

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