Magic game   作:暁楓

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第十三話

(同志……!)

 

「僕は……ずっと君のような人を探してた……!」

 

 俺と才が……同志……!?

 

「……………」

 

「……………」

 

 沈黙……いや、俺の場合は硬直と言った方が正しいものだった。

 後ろでは末崎が吹き出して、馬鹿馬鹿しいとか色々言っているが、耳に入っていかない。

 

「……いつ? どうしてそう思った?」

 

「……君を見て、ふっ……と、そう思った」

 

「は……?」

 

「時々、あるんだ。勝負の時とか、探し物をしている時とか……無意識にそうだって感じたら、それが寸分違わず当たるってことが」

 

 さっきのポーカーも、ふと「勝てる」と感じ、それが当たった。そう彼は付け足した。

 

「勿論それだけじゃ確証足り得ないから、君のことについて調べてみた。クロノに訊いてみたり、後は今の勝負だってそうだ。いや……君の質問した内容ですでに、実力のある人だって確信はできていた……凡人だったら、ただ慎重な質問ばかり並べていくだけだから……」

 

「……それで、どうするつもりだ? 俺のチームは四人埋まってる。誰かを捨ててお前と組むなんてことはしないぞ」

 

「必要ないよ……神を討つ時、そんな制度に関係なく肩を並べて戦う……僕は、その時を待ってるよ」

 

「……これから、どうするつもりなんだ?」

 

「逆に訊くけど、君はどうするつもりなの?」

 

「……ジュエルシードを、全部回収する」

 

「……そっか」

 

 表情に変化はない。だが、その言葉を待っていたと言っているような、そんな雰囲気がした。

 

「誰もその気がないなら、僕がやるつもりだったけど……それは君に譲るよ。僕はもうしばらく、ここで本を読んでる……」

 

「いつ――」

 

 いつ、策を思いついた? ……そう訊こうとして、やめた。それを訊いたら、俺では一生及ばない――そんな気がした。

 才は紙とペンを取り出して何か書くと、それを折り畳んで俺に握らせた。

 

「協力が必要なら、いつでも喜んで力を貸すよ……じゃあ僕は、ちょっと昼食をとってくる」

 

 言って、才は医務室を出ようとする。

 俺は、それを呼び止めた。

 

「……名前」

 

「ん……?」

 

「フルネームを教えてくれ。戦いで肩を並べる相方の名前も知らないってのはどうかしてる。俺の名前は朝霧綾。……お前は?」

 

「……フフ」

 

 彼は笑って、しっかりと体をこちらに向けた。

 

「そっか……まだ言ってなかったね。……天翔(あまかける)才……それが、僕の名前……」

 

 才は医務室を後にした。

 紙には、携帯の電話番号が書かれていた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 それからは、何事もないように時間が経っていった。

 あれ以降も才は特別な動きはせず、部屋の隅で静かに本を読んでいる。

 俺はあの後ギプスを勝手に壊したことが医務員にバレ、こっぴどく怒られた。しかしもう左腕が動くことから、ギプスを付け直すことはなかった(安静にしているよう強く言われたが)。

 氷室や由樹は才について勧誘することは諦めたらしい。彼に話しかけることはなかった。

 

 そして、次の日。

 俺と才がいつもの通り医務室で術式資料本を読み漁っていると、海斗が念話で声をかけてきた。ちなみに、今医務室にいるのは俺、海斗、才の三人だけである。

 

『なあ』

 

『なんだ。念話でないといけないことなのか?』

 

『いけないっつーか、なんつーか……まだ一日しか経ってないけどあれ以降お前と才が何かをするってことも全然ないけどさ、お前才のことどう思ってんの?』

 

 どう思って、ねぇ……。

 そうだな……。

 

『……今のところは、とても越え難い存在だな。とても大きく、ずっと先を進んでる……』

 

『そこまで……』

 

『でも、いつかは追い付いて、乗り越える。乗り越えてみせるさ』

 

 そう、才に負けては、その更に先に居座る神にはその元へ辿り着くことすら不可能だろう。少なくとも、彼に追いつけるようにしなくては。

 そのためにも、『譲る』という形で俺に差し出された、全ジュエルシード回収という『お題』……これを完全にクリアしなければ……。

 

 ビー!! ビー!! ビー!!

 

「!」

 

「な、なんだなんだ!?」

 

「……早いね」

 

 喧しいサイレンと夥しい『EMERGENCY』の文字の中、才は呟いた。

 俺達が聞き取ることを意識したその呟きは少し大きいものだった。

 

「……早い? それって……」

 

「え? てことは何、もう海のジュエルシード!?」

 

「……そんなに早いのか?」

 

 訊いてみると、海斗が物凄い勢いで振り返った。

 

「はえーよ! 海のやつは本来なのはちゃんがアースラに協力してから十日目なんだぞ!? まだ三日もあんだぞ!」

 

「ジュエルシードの回収効率はとても良かったからね……」

 

「っと、それよりも! 早くブリッジに急ぐぞ!」

 

「おい、引っ張んな! わかったから! ……才は行かないのか?」

 

「変わんないよ……僕達が関わっても関わらなくても……」

 

「……違いないね」

 

 本を読み続ける才に苦笑しながら、俺はブリッジへと急いだ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 俺達がブリッジに着くと、すでになのはや他の転生者メンバーも揃っていた。

 

「状況はどうなんだ!?」

 

「敬語ぐらい使え。……で、そこんとこどうなんですか? つっても、まだ見始めたばかりですかね」

 

「……ええ、そうね。でも見たところ、このままでは確実にあの子は墜ちるわ」

 

 やってきた俺達に呆れたような疲れたような、そんな様子リンディさんが答えた。……多分、氷室達ですでに注意して無駄と悟ったんだろうな、これ。

 

「あの、私、フェイトちゃんを助けに……!」

 

 だがなのはの意見はクロノによって止められる。

 

「その必要はないよ。放っておけば、勝手に自滅する。仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」

 

「そんな……」

 

「今の内に捕獲の準備を」

 

「私達は、常に最善の選択をしなくてはいけないわ。残酷に見えるかも知れないけど、コレが現実……」

 

「……ま、艦長が判断したからには従うしかないだろな」

 

「綾さん!?」

 

「綾、てめぇ!」

 

「……………」

 

 俺の一言に、ほぼ全員から驚愕、非難、怒り、疑念、警戒と様々な視線が……って、待て。氷室と由樹は若干気づいてるっぽいけど、なんでリンディさんとクロノまでこっち見る。さっきの台詞に警戒する要素があったのか。

 

「綾、お前あいつがあんな目に遭っている状態でそんなこと言うのか!?」

 

 俺の胸倉を掴み、声を荒げる海斗。

 俺は溜め息を吐いて海斗の手をほどく。

 

「落ち着け海斗。ちゃんと考えがあって言ってる。……リンディさん」

 

「……何かしら?」

 

 静かに、しかし確実に警戒を強くされる。もうすでにここまで読んでいるようだ。

 

「なのは、ユーノ、クロノの三人に現地への出撃命令をお願いします」

 

「……君は人の話を聞いていたのか?」

 

「ああ、聞いてたよクロノ。『常に最善の選択をしなくてはならない』という考えに基づいて俺なりに客観的に考えた結果、直ちに三人を現地に向かわせるのが最善と判断した」

 

「理由を……聞かせてもらえないかしら?」

 

「主にジュエルシードの暴走、それに伴う被害によるものです。まず、彼女が自滅するまで放置するということは必然的にジュエルシードも暴走したまま放置するということになります。そうなれば暴走の範囲が拡大し、民間人への被害が予想されます。六個同時ともなれば、被害が甚大なものになる可能性は、あなた達もわかっているはずです」

 

 ジュエルシード一個で中規模次元震を起こすのだから、それが六個になった場合の被害は小さくはないはずだ。

 これは持論だが、警察組織の最優先事項は犯人確保や危険物押収ではなく、民間人の安全確保だ。時空管理局もある意味では警察組織。そして民間人の安全確保を最優先することは管理世界だろうが管理外世界だろうが関係ない――少なくとも、リンディさんはそう思えるはず。

 

「確かにそうね。でも、それだとあの子に逃走の力を残してしまうわ。あの子もジュエルシードを持っている……逃がしてしまえば、彼女が所有しているジュエルシードが暴走してあなたが言っていた被害が出る可能性があるのよ?」

 

「彼女が疲弊しているというのはあなた達もわかっているでしょうが。加えて三対二なら数の差で有利ですから、沈静化させてから確保も十分可能でしょう。次いつ起こるかわからない火事の分の水がなくなるからと目の前の火事を見過ごすのと同じですよ、それ」

 

 しばしの間沈黙が流れる。なのは他落ち着きのない奴らのそわそわした音やモニターから流れる音がうるさい。

 

「……綾さん。私は艦長としてなのはさんやあなた達を含め、このアースラに乗っている全ての人の命を預かっているの。その命を危険に晒す訳にはいかないわ」

 

 ……くそ、やっぱ大人相手に論破はきついな。というか余計に厳しいところをついてきやがった。

 ええい、なんとかなれ。

 

「……疲弊状態や単独で向かうならまだしも、体力や魔力が十分整っている三人なら大丈夫でしょう」

 

「リンディさん、お願いします! フェイトちゃんを助けたいんです!」

 

「僕からも、お願いします!」

 

 なのはとユーノが頭を下げる。

 リンディさんはそれを見てしばらく黙っていたが、やがてやや深めの溜め息をついた。

 

「……わかりました。なのはさん、ユーノさん、そしてクロノ。直ちに現場に向かってください」

 

「「はいっ!」」

 

「……了解しました」

 

 なのは、ユーノ、クロノが転送ポートへと駆け、フェイトのいる沖合へと転送されていく。

 

「綾さん」

 

 三人の転送を見送ったところで、リンディさんが再び口を開いた。

 

「はい」

 

「今回はあなたの意見が一理あるものとして、特別に許可しました。ですが、さっき言ったように私はアースラの艦長として乗員の命を預かり、乗員の安全を最優先に判断する義務があります。……今後は、くれぐれも勝手な言動は控えるように」

 

「ええ。合理性皆無の我が儘は俺もする気はありませんよ」

 

 あっさりと言ったのが疑わしかったようでしばらく疑いの目が向けられたが、それ以上はなかった。

 

「……そう。他の皆さんも、よろしいですね?」

 

「ええ。というか、大人に真っ向から意見言うなんて綾(こいつ)しかできないでしょう」

 

「ま、確かにそれはそうだねぇ」

 

 氷室の言葉に、由樹他複数名がうんうんと頷いた。

 その後、氷室から念話が入ってきた。

 

『しかし、綾。どうしてこんな時間かけてまでリンディに許可出させた? ほっといても勝手に行ってただろ?』

 

『言ったろ。あれが最善だと考えたからだ』

 

『はあ? クロノ込みで送り込むことのどこが最善なんだよ』

 

 末崎が会話に入ってきた。

 

『寧ろ、最悪じゃねぇか! お前も言ったろ! フェイトは疲弊してるし、三対二! 捕まっちまうぞ!』

 

『いいじゃないか。虐待から保護できる』

 

『あっ……!』

 

『へえ、やっぱりそうだったんだ?』

 

 由樹も割り込んできた。気づいていたようである。

 

『あそこでフェイトを捕まえることができれば、直接プレシアの虐待から保護することにもなる。逃げられても、管理局員がいて、状況的に不利だと明確にわからせればフェイトが全て回収できなかったとしてもプレシアが虐待を免除もしくは軽減する可能性がある……でしょ?』

 

『ああ。まあ、クロノがいることがわかればフェイトも警戒していつでも離脱できるようにするだろうから、逃げられるだろうと思ってるけどな。ついでに言ったら、警戒を跳ね上げている分封印直後に速攻でジュエルシードをかっさらっていくだろうから、フェイトとアルフ合わせて四つ以上持って行っちまうかもな』

 

『それも、虐待軽減になってくれるかも……って?』

 

『ああ』

 

 モニターを見やる。

 ユーノ、アルフ、クロノの三人がバインドで竜巻を押さえつけたところに、ちょうどなのはとフェイトが砲撃を撃ち込むところだった。

 




 文才がないなあとつくづく思います。そこそこ自分で凹んでます……。
 ここから先、ご都合主義とか、超展開とか出てくるかと思います。いえ、もう出てるんでしょうね。余計そういう展開になっていくと思います。
 ……頭脳的に限界なんですよ。ええ。
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