Magic game 作:暁楓
第二十二話
――六月九日――。
差出人:管理者
件名:指令2
内容:
次の指令を指定期間内に実行、達成せよ。
指令内容:闇の書の守護騎士ヴォルケンリッターと勝負し、二人以上に勝利せよ。同一人物との複数回勝利はカウントされない。
期間:闇の書事件終了まで(闇の書防衛プログラム消滅まで)
報酬:報酬は勝利した相手によって以下の通りになる。
シグナム……4個
ヴィータ……3個
ザフィーラ……2個
シャマル……1個
なお、報酬は二人以上に勝利した時点で配布され、その後は勝利ごとに上記の個数分配布される。
◇
プルルルル。プルルルル。
……ガチャ。
『もしも〜し』
「俺だ。聞こえるか?」
『オレオレ詐欺は堪忍やで〜』
「冗談言ってる場合かど阿呆」
『阿呆やないで。わいの成績は常に上位や』
「いいから、さっさと本題入るぞ」
やや語尾を強くする。ようやく相手の真面目な声が届いた。
『ん。ほんで、電話かけてきたのは、指令の話なんやろ?』
「ああ」
六月九日の午前八時。俺は自分の部屋で竹太刀に電話をかけていた。
今日の午前零時。神から指令のメールが届いた。その対策を話し合うためである。
『読んだ感じ、綾の言う通り勝負は戦闘以外もありっぽそうやな。リリカルなのはの世界っちゅー先入観で戦闘一択に見えなくない書き方やけど』
「ああ。でも戦闘以外もありならなんとかなる。包みの中にある、『2』の番号が振ってある紙だ。それを由衣と一緒に読め。後、『1』の番号の紙も読んどけ。もし戦闘でやらなきゃならない場合、準備として必要なものを書いてある。可能な限り揃えてくれ。できれば俺達がいない分浮いた金もそこに当ててくれ」
『1の番号と2の番号やな。どころで訊くけど、なして2番は由衣も読むんや?』
「んなの、決まってるだろ」
俺はニヤリとした。
電話なので竹太刀に俺の表情は見えないだろうが、それでもそれがわかるくらいの口調で、こう言った。
「ヴィータを狩るのが、由衣だからだ」
◇
竹太刀は綾の言う通り、包みから『1』と書かれた紙を取り出してその指示に従って行動していた。
『2』の紙は由衣と一緒に読むようにということなので、まだ開いていない。今日は休日なのだが、由衣は午前からなのは達と会う約束をしていたので、すでに出掛けていた。
なので由衣が帰ってくるまで紙を開くのは待つとして、先に1の指示に従うことにしていたのだった。
「打ち上げ花火……四個以上、可能な限り多く。モデルガン……一丁。……バッチ……大きめのもので、とりあえず十個……」
歩きながら、綾曰わく必要だとする物とその個数をブツブツと読み上げていく。
綾が必要とするものは、しかし竹太刀は納得のいかないような顔をしていた。
「花火は、まあわかるわ。モデルガンについても納得したる。せやけどバッチってなんや。しかも大きさにはこだわって数はアバウトやん。何でやねん。他にも奇天烈な品要求しとるな。何でやねん」
打ち上げ花火は、中身を分解して火薬を手に入れたり、花火そのもので爆弾の代わりにするつもりなのだろうと予想できた。モデルガンもブラフとして使うつもりであるのが見える。
だが、意味がわからないものもいくらか書かれており、それが竹太刀の頭上に疑問符を置く原因になっていた。
まあ、包みの中に入っていた『1』の紙に二種類あり、その内の『準備編』と書かれた紙しか見てない故の疑問符なのであるが。
「……いやいや、あんな分厚いの読んだら日暮れてまうわ。何やねん『実戦編』て。あれはもうメモやあらへん。本や。本にする前の原稿や」
守護騎士それぞれに対して、細かい指示まで綴れば当然量が多くなってしまうことは致し方ない。
ともかくは指示に従って、書かれた品を買い集めていくため、竹太刀は歩を早めた。
◇
「はぁー。まーこんなもんやろか……花火はまだ夏やないからしゃーないとして」
数時間街を回って、買うべき物はある程度買うことに成功した。
しかし打ち上げ花火だけ例外で、まだ夏と言うには早すぎてスーパーやデパートには売られていなかったため手に入れることはできなかった。仕方ないと言えば仕方ない。
しかし元はと言えば実戦用。夏までは闇の書の収集は始まることもないであろうから問題ない。
「さーてと、今日の晩御飯はなんにしよかなー」
帰路に着きながら、最近毎日一回は口にしている悩みに、今日はあーでもないこーでもないと呟く。
と、その途中、周りに異変が起きた。
「ん?」
竹太刀は一旦立ち止まって首を傾げる。
その間に、影は彼の背後を狙って素早く迫って――
「ほいっと」
「!?」
横一閃。しかしすでに察知していた竹太刀は難なく身を低くして潜り抜けた。
その上で腕を振るい、相手の足を躓かせる。
「うあっ!?」
「でやああああっ!!」
「!」
竹太刀が一人を転ばせた直後、第二の刺客が物陰から飛び出て、跳躍。真上から唐竹割りを仕掛ける。
「気配丸出しで当たる訳ないやろ」
竹太刀は指摘の後で軽く横へ回避。
そして相手を大外刈りの要領で地面に押し倒す。畳の上ではないため綺麗な音はしなかったが、鈍い音が竹太刀の耳にも入った。
「がはっ!!」
「大人しくせえ。そっちの倒れとる自分も、逃げ出そうとせえへんようになー」
「ぐっ……」
相手の動きを素早く封じる。先に抵抗しないよう言っておいてから、竹太刀は二人に訊くことにした。
「さて、自分らなしてわいを襲おう思うたんや? しかも結界なんぞを張って」
「……お前、転生者なんだろ」
「そやけど、それが何やねん。まさかこのデスゲームが始まって二ヶ月経つ言うのに、まだルール知らんとか言うんやあらへんやろな?」
「……はぁ?」
二人は揃って訝しげな表情を取った。
そして一人が、竹太刀にとって衝撃の一言を言った。
「デスゲーム? 始まって二ヶ月? 何言ってんだよ。転生してから
「……なんやと?」
竹太刀はしばらく固まっていたが、ややあってから突然封じていた方の転生者の胸倉を掴んで引き寄せた。
「うわっ!? 何すんだよ!」
「その話、よく聞かせえ! 今すぐ、全部や!」
今日は竹太刀にとって特に忙しい一日になりそうだった。
◇
竹太刀の方から電話がかかってきた。
何かあったのかと思って出てみたら、なかなか急な事態だった。
「……なるほどな。つまり補充要員、と」
『……やろな。最初の指令で全滅せえへんようにする算段っちゅーことやろ』
竹太刀が捕まえた新規転生者の話では、転生者の人数は百人。つれてこられた場所は俺達と同じ居城。神は俺達の時と同じく必要な情報を故意に抜いたルール説明の後に海鳴市へ転送。
なおその時、神は願いを叶えてもらうのに必要なスターチップは一つからでいいと
ちなみに、竹太刀に襲いかかって返り討ちにされた二人は竹太刀によってルール説明書とこの世界の現実を知った後、顔を真っ青にして帰っていったそうだ。
「おかしいと思ってたんだ。ついさっき失格者通知が来たから、もうヴォルケンリーターに仕掛けた奴がいたのかと」
『ああ、その時わいは二人に現実教えてた。失格者通知を読んだ二人の顔、真っ青になってたなぁ』
なお、その百人によるものと思われる失格者はすでに出始めている。竹太刀が電話をする前に二人、この世界から消滅した。しかし今までとは違い残り人数の表示がなくなっていて、それも疑問に感じていた。
「……竹太刀。これからしばらく、由衣の学校の登下校時、送り迎えに行ってくれ」
『了解や』
俺の指示に竹太刀はそう返した。
ルールによってスターチップが奪われる心配はないとはいえ、それも知らずに転生者が襲ってくる可能性が高い。未然に防ぐことができないにしても、予防線を張らねばならない。力の無い由衣は特にだ。
「……で、話は以上か?」
『おお、そんな感じや』
「じゃあ、今後変わったことがあったら連絡してくれ。あと、くれぐれも気をつけろよ。以前みたいな強硬派がいる可能性だってあるんだからな」
『わかっとる。ほなな』
ブツッ。電話はこれで終わった。
(海斗や才、氷室に由樹にも伝えとかないとな……)
現在海鳴市にいる氷室と由樹はこの事態に気づいている可能性はあるが、念のためだ。
(……波乱にならなければいいんだけど)
俺は才のように運が超絶に良くも、勘が鋭い訳でもない。
けど、なぜだか……嫌な予感が脳裏に纏わりついていた。
この世界の恐ろしさを知らない百人が転生。総勢百十七人(二人が既に失格)が死と隣り合わせのデスゲームに挑む。
転生者補充は前から決定してました。感想で減りすぎて大丈夫か? という旨の質問が来る前に。
ちょっとネタバレになるかもしれないですけど、一気にこう、バーッと一網打尽にされるというの好きというか、かっこいいじゃないですか。
指令を先読みした綾ですが、大丈夫ですかね?