Magic game   作:暁楓

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 半分ギャグ、半分シリアス回。
 綾が頑張った後、彼に待っているものは? そう、奴が来る。


第三十四話

 まあ、やはりというか、予想通りというか、ここまで来たら当然と言うべきか。

 何を言いたいかというと、毎回無茶をした後必ずあるアレが来るということであってだ。

 

「反省、しているのかしら?」

 

「「しています……」」

 

 現在、リンディさん……いやいや、リンディ様の説教タイムなのである。俺も氷室も正座で。

 もう、素晴らしいほどの笑顔が素晴らしいくらいに怖い。笑顔=怒っているって構図、いつ生まれたんだろうね。俺達の真の天敵ってリンディさんなんじゃないだろうか。

 あ、ちなみに言っとくけどこの場に末崎はいないのだ。俺達より離れたところにいたから関わってないと勘違いされ、それをいいことに回避に成功したらしい。おのれ……!

 

「話聞いてるかしら? 現実逃避しても聞いてなかったところからちゃんと再開してあげるから♪」

 

「はい」

 

 ああ、ヤバいな。さすがに四回目になれば限界が来るよな……これがリアル『仏の顔は三度まで』なのか。そうなのか。

 

「聞いてなかったわね。じゃあまたリピートします」

 

 すいませんマジでごめんなさい。

 

「……おい、俺達って、怪我人だよな?」

 

 氷室がすごく小さな声で震えながら訊いてきた。

 ああ、怪我人だな。ついでに言ったらまだまともな手当てを受けていない状態だ。そんな状態で正座して聞くのだからもう色々ヤバい。

 あと、氷室。それは今口にすべきことじゃないぞ。さもなくば……

 

「氷室さん……? その怪我人になった原因が自分達にあること、理解してますよね……?」

 

「あ、はい。すいません」

 

 ……とにかく黙って聞いていよう。そうしよう。

 

 説教から解放されたのは、それから一時間弱経ってからのことだった。怪我の手当て? 説教聞きながら医務員にやってもらったよ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「ヤバかったな……」

 

「ああ、ヤバかったな……リンディさんの説教」

 

「いや、自業自得ですよね」

 

 ユーノも辛辣な言葉を使うようになったな。

 アースラの医務室に移送された俺達は、検査を受けた後ベッドでおとなしく横になっていた。

 以前、フェイトとやり合った後の時は医務員に回復魔法をかけてもらっていたのだが、今回はそういうのが一切ない。

 なぜか。リンディさん曰わく、「あなた達は回復させたそばから無茶をするから、反省の意味も込めて回復促進なんてやりません」とのこと。……うん、俺が悪いんだな。うん。

 

「綾さんは無茶をしすぎです。ついこの間の怪我が治りきってない状態でまた無茶をして……本当に危険ですよ?」

 

 フェイトが心配そうに言った。

 現在の医務室にいるのは俺と氷室の他に、ユーノとフェイトが来ていた。海斗達? 入れたら騒がれそうだとリンディさんが規制したらしい。説教といい、もう扱いがわかってきてるな。多分。

 

「まあ、大丈夫だろ。お前達よりは体はできてる」

 

「綾さんもまだ体が出来上がってないんですから、ダメです」

 

「お前達よりはって言ったろ」

 

「屁理屈はいいです」

 

 何だろう、ユーノが厳しい。ここまで厳しさでできてたっけこの子?

 

「ところでユーノ、頼みがある」

 

「ダメです」

 

「まず聞けよ」

 

「どうせ回復魔法をかけてくれって感じでしょう。ダメです」

 

「左手の傷口を塞ぐだけでいい」

 

「ダメです」

 

「リンディさんに止められてるのか」

 

「それ以前の問題ですよ。ミッドの検査を甘く見ないでください」

 

 言うと、ユーノはモニターを展開した。

 モニターに映し出されているのは誰かの……ていうか俺のレントゲン写真だった。借りたのかわざわざ。

 そしてユーノはそのモニターを指差して叫んだ。

 

「一体どう戦ったら身体の中がこんなにボロボロになるんですか!! 説明してくださいよ!」

 

「強化魔法を合わせて七つ付与させた。うち四つ……いや五つか。強化魔力を追加した」

 

 ブチッブチッブチッ。

 

 あ、ユーノがキレた……ん? 二つ効果音が多いな。なんでだ?

 

「どんだけ強化超過(ブーストオーバー)してるんですかあなたは!!」

 

「そうですよ! 死んでしまいますよ!!」

 

 うち一つはフェイトからだった。

 彼女には珍しく強い口調で、身を乗り出して本気で怒っているのだが、その際両手を置いた位置が俺の、中身がボロボロな腹の上で、そこに体重をかけている訳でだ。

 

「ぐぇぶっ」

 

 潰れたような声を出してしまった。痛い! 苦しい!

 なのはだったらまだわからなかったのかもしれないけど、フェイトは訓練を積んでるからなぁ……過剰強化の危険性も知ってるのだろう。後に危険なフォームを開発する癖に。

 というか俺の腹に手を置くこれって、天然? それともわざと? どっちにしろ凶悪だと言わざるを得ない。

 ところで、あと一つは?

 

「……………」

 

「……あの、リンディさん?」

 

「何かしら? 綾さん」

 

「その、恐ろしいほど素敵な笑顔の理由を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「ついさっき、あなたの検査結果を見せてもらいました。ついでに、今の話も聞かせてもらいましたよ? 具体的には、あなたがした無茶について」

 

「……ああ」

 

 リンディさんの説教。それは、ひょっとしたら指令以上に避けられないものなのかもしれない。

 

 ……ぎゃー!

 

 

 

   ◇

 

 

 

 またリンディさんの説教を受けてもう寝ることはできず、いや、もはや寝る気になれず、そのまま昼になった。アースラの中だから景色は変わらんけど。

 

「……さすがに二回目は効いたわー」

 

「だから、自業自得じゃね?」

 

 言うな。

 現在、見舞いを解禁された海斗が来ていた。竹太刀はバイト、由衣は学校である。ああ、休日明けの学校ってことは今日フェイトが聖祥小学校に転校する日だったか。別に関係ないけど。

 

「で、結局どうなったんだ?」

 

「回復魔法はかけてくれなかった。勝手に俺達がやらないようにデバイスも没収されちまった。正直、マズい」

 

 まだ来てないが、夜天の写本を持ったことで来るはずの指令に備えるためにも、少なくとも左手の怪我だけはなんとかしたい。

 という訳で。

 

「海斗、デバイス貸してくれ」

 

「悪い、俺も緊急時以外は預かるってことでリンディさんに没収されちまった」

 

 おのれぇ!! リンディさん見切ってやがる!

 じゃあ、氷室は!?

 

「今連絡入れてみたが、同じく没収されたらしいぜ」

 

 シィィィット!!

 ある意味最大の敵が味方にいようとは。あ、リーゼ姉妹も管理局か。

 

「で、どうすんだよ?」

 

「どうするか……」

 

 才に頼むか? いや、あいつはまだ守護騎士攻略で忙しいから、今頼むのは迷惑か。見つかって没収なんてことになれば攻略不能になりかねないし……

 

 プルルルル。プルルルル。

 

「ん、電話?」

 

 誰からだろう? そう思いながら携帯を開き、差出人を確認して……今の悩みがその瞬間、すぅっと消え去った。

 差出人は、管理者。神からの、呼び出し電話(コール)だった。

 ゴクリと唾を飲み込み、通話ボタンを押し、耳に当てる。

 奴の声が、聞こえた。

 

『守護騎士全員の攻略、おめでとう』

 

「……それを言うためだけに、電話をかけにきた訳じゃないだろう?」

 

『……そう。汝に、更なる指令を与える。汝の場合は、拒否は認めない』

 

 緊急指令と同等、ということか。

 ……何が来る?

 

『アルハザードにて、夜天の魔導書……正しくはその写本を手に入れたな? 十二月二十四日、闇の書覚醒の時にそれを持って覚醒場所の半径五百メートル圏内へと行け。……指令は、追って説明する』

 

 言うだけ言って、奴は一方的に通話を切った。

 まだ内容を言うつもりはないか……だけど闇の書覚醒場所付近に行けってことは、管制人格と勝負しろってことか?

 ……それと、『俺の場合は』? どういうことだ?

 

「綾? 一体誰からの電話なんだ?」

 

 海斗が訊いてきた。

 ……さすがに、ここに海斗を巻き込むのは危険か。これは俺が夜天の写本を持ち出したことから生まれた問題だ。写本のことは知ってるとは言え、本当に巻き込む訳にはいかない。

 

「……いや、竹太刀からな、調子はどうだってさ」

 

 俺はおどけたような顔をして、嘘を言った。

 

「ん、そうか? 急にマジな顔になるから、何かあったのかと思ったぜ」

 

「ああ。こんな時間に電話かけてくるものだから何かあったのかと思っちまった」

 

「ふーん。じゃ、そろそろ戻るよ。また来るからなー」

 

「ああ。今度来た時は何か暇つぶしの道具も持ってきてくれ。片手でできる奴な」

 

「うーっす」

 

 海斗が出て行き、自動ドアが閉まってから、氷室が声をかけてきた。

 

「おい」

 

「なんだ」

 

「実際、何の電話だったんだ? あいつに言ったのは嘘だろ?」

 

「……クリスマスイブに、闇の書覚醒の現場付近に行け……だとさ。後は当日説明するらしい」

 

「行くのか?」

 

「緊急指令同様、強制だと。俺はな」

 

「お前はって、どういう意味だ? お前への指令じゃねえのか?」

 

「俺にもよくわからない。けど、そういうことらしい」

 

「一人で行くのか?」

 

「ああ。誰かを巻き込むつもりはないし、これは俺と神の勝負だ」

 

「言うねえ。その身体でか?」

 

「まだ三週間近くある」

 

「左手のそれとか、三週間程度じゃ治りようがないと思うがな」

 

「……………」

 

 俺が黙ると、氷室は溜め息をついて携帯を操作し、どこかにかけた。

 

「おう、俺だ。お前、今デバイスあんだろ? それに回復系の魔法あるか? ……ああ、そうか。ならすぐそいつのデバイス持ってこい。……ああ、今すぐだ。デバイス取られんなよ」

 

 ピッと、氷室が電話を切った。

 

「今由樹に訊いたところ、田鴫のデバイスに回復魔法が組まれてるらしい。今持ってくるだと」

 

「氷室?」

 

「そんな身体じゃまともに動けねえだろ。せめて自分の魔力でできるだけ回復しとけ」

 

「……ありがとな」

 

「礼なら由樹のチームに言いな。俺はお前の戦いを拝見させてもらうぜ」

 

 ……氷室らしい言い方だ。

 俺は身体を横にし、デバイスの到着を待つことにした。

 

 十二月の二十四日に、神との勝負。

 失敗は、許されない。




 ここからイブまで綾の出番が急激に減ります。
 だって、動く必要ないし動けないもの。
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