Magic game   作:暁楓

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 いきなりですが出落ちが発生します。
 省略するところは省略するのが我がクオリティ。
 故になのは達原作キャラの出番が少ないでござる。てかなのはの出番がない。原作主人公()になってる。なりそうじゃなくてもうなってる。


第四十八話

『「夜天の雷!!」』

 

「ぐあぁああああっっ!!!」

 

 海鳴市海上。そこでははやてとの逆ユニゾンをしたリインフォースが、はやてを素体としたマテリアルD――闇統べる王にとどめの一撃を叩き込んだところだった。

 紫の雷が闇王の体を貫き、吹き飛ばした。

 

『あ、あかん……ユニゾン、もう限界……!』

 

「ふわぁあ!?」

 

「我が主!」

 

 元から無理があった融合騎主体のユニゾンが限界となり、ユニゾンが解けてはやてが押し出された。落下するはやてを助けようと、リインフォースがはやての元へと急ぐ。

 その時、はやては見た。

 

(……!? リインフォースの後ろ……何かいる!!)

 

 剣? 槍? 暗くてよくわからないが、何かをリインフォースに向けている。

 

「あかんリインフォース! 後ろ!!」

 

「え?」

 

 闇王との戦いが終わって安心していたところもあって、リインフォースは反応が遅れた。

 

 ドズリュッ!

 

「――ッ!?」

 

「リインフォースッ!」

 

 はやての絶叫が響いた。

 反応が完全に遅れたリインフォースの腹部を、刀と見られる真っ黒い刃が貫いていた。

 

「おいおい、油断大敵……お前は今回その言葉をよく体感したんじゃなかったのか?」

 

「……ッ!!」

 

 はやてには聞き慣れない男性の声。

 リインフォースは声のする真後ろに拳を振るう。しかし、その前に刀は引き抜かれ、よけられてしまった。

 

「我が主……!」

 

 敵が離れ、リインフォースは改めて落下中であったはやてを抱える。

 

「リインフォース、血が……!」

 

「我が主、私なら大丈夫です……っ」

 

「敵がいんのに立ち止まってていいのかよ?」

 

「っ!」

 

 真上からの強襲が来た。

 リインフォースははやてを抱えたまま、敵の斬撃を避ける。

 斬撃は突きが主で、はやてを抱えているリインフォースが細かく動けないのを明らかに狙ってきていた。避けきれず、リインフォースの体に傷がついてゆく。

 

「このっ……!」

 

 だがリインフォースもやられっぱなしではない。ブラッディダガーの全方位射出をして、怯んだ隙に敵との距離を開ける。

 

「おいおい、弱っちいなぁ。闇の書がここまで弱いなんて記憶はねーぞ?」

 

「明らかに理由わかって言うとるやろこの卑怯者! 一体何者や!」

 

 攻撃の手が止まって、ようやく敵の姿を改めて見ることができた。

 

(……誰だ?)

 

 真っ黒な袴と剣道着。剣道のようだが、防具は喉当てがない面を被っている他は防具らしいものは着けてない。そして刃だけでなく、柄も鍔も鞘も真っ黒な日本刀。

 リインフォースは相手の姿を見て疑問を持った。このような姿の魔導師から蒐集をした覚えがないからだ。

 敵ということは、ほぼ間違いなく闇の欠片かそのマテリアルであるはずで、それらには必ず元になる人物、魔導師か騎士がいるはずなのだ。しかし、今まで蒐集してきた中にこのような姿の者は一人もいない。刀を使う者はいたかもしれないが、奴のように面を被っていた記憶はない。

 そんな装備の敵は、はやての怒りの声を聞いてやれやれと被りを振った。

 

「子供が……戦いに卑怯なんてある訳がねーだろ。あの時油断して接敵の確認をしなかったお前らが悪い」

 

「なんやと! 面外しぃ! もう一度言うけどあんた一体何者なんや!」

 

「何者ねぇ……おい闇の書。お前もまだわかんねえのか? 散々やり合ったじゃねえか。まあお前の一方的展開だったがな」

 

「え……?」

 

「まあいいや。顔見ればわかるだろうしな」

 

 クックックと彼は笑う。

 とても楽しそうで、それでいてとても冷たい笑い声。復讐を目前に喜んでいるような、そんな狂気。

 面に手を当て、面を魔力に変換して消した。金色の髪が露わになる。顔はまだ手が邪魔で見えない。

 

「俺は――」

 

 その手を、彼はどかした。

 顔が、露わになる。

 

「―――――ッ!!」

 

「リインフォース……!?」

 

 彼の顔を見たリインフォースの身体が、びくりと震えた。はやての声が頭に入らないくらいの恐怖が湧いた。

 金髪に、血のような赤い瞳、闇の書の狂気に歪んだ笑み。ここまで変わってしまっても、それに見覚えがあった。今更だが、彼の発する声も、『彼』によく似ている。

 よく知っている『彼』。今回の闇の書事件で、限界まで自分に立ち向かい続けた『彼』。そして、今回自分が最も傷つけてしまった『彼』。

 まさか、と否定したい。

 だが、それは現実だった。

 彼の口が、動く。

 

 

 

 

 

「―――――お前が殺しかけた男の、マテリアルだよ! 闇の書ぉっ!!」

 

 

 

 

 

 朝霧綾を素体とした、マテリアル。

 物語には存在しないはずの、四人目のマテリアル。

 ――イレギュラーが、リインフォースの目の前にいた。

 

 ビュオッ!!

 

「ッハァッ!!」

 

「くっ……!!」

 

 加速強化(アクセル)付与による瞬間的接近からの刺突。それを間一髪で避け、ダガーを射出、リインフォースは綾のマテリアルからの逃走を試みる。

 逆ユニゾンの反動で動けないはやてを抱えたままでは不利だ。とにかくまずは、はやてを安全な場所へ避難させなければ。

 マテリアルの攻撃に備えるため後ろを確認する。

 が、いない。

 

「!?」

 

「リインフォース、前や!」

 

 はやての言葉で前を見る。前方十数メートルに集束させた魔力を拳に溜めたマテリアルがいた。

 

加速強化(アクセル)の多重付与? 違う、転移!? いやそれより……!)

 

 リインフォースはその場で停止し、はやてを片腕で抱えて空いた右手で防御魔法を展開する。

 直後、発射された砲撃が防御魔法陣に衝突。風圧が彼女の白銀の髪を掻き乱す。

 

「くぅぅっ……!」

 

 予想外の威力に、リインフォースが苦悶の声が出た。

 予想外というのも、リインフォースは綾の魔力ランクがC程度だと事件後に聞いたのである。あの時、闇の書としての自分の砲撃を押し返す程の砲撃は夜天の写本に蒐集した魔力を行使したものであるということも。他にもいくらかの魔導技術や適性も聞いていて、決して高い実力を持つ訳でもない彼を自分がなぶり殺しにしようとしていたという事実が心を抉った。

 しかし、今受けている砲撃の威力はあの時程ではないにしても、魔力ランクCの魔導師が片手で放てるようなものでもなかった。

 飛行適性がないはずなのに飛んでいたことといい、先程の転移、そしてこの砲撃。

 

(考えられるとしたら、あのマテリアルは――)

 

「リインフォースッ!」

 

「――っ!?」

 

 はやてに呼びかけられ、気づいた時にはいつの間にか接近していたマテリアルに側面から蹴り飛ばされた。

 

「かはっ!」

 

 壁に背中を打ちつけ、肺から空気が押し出される。

 思考している隙に近づかれたらしい。運良くはやては無事だったものの、こんなことでは騎士失格だ。

 

「だらしねえなあ。たった数日でロストロギアがこんなに弱くなるもんなのか? それとも、こんな奴に死にかけるオリジナルがマヌケなのか?」

 

「……自身のプログラムを書き換えているからというのは、ないのか」

 

 マテリアルを睨みつけてリインフォースが問う。自分が馬鹿にされるのは構わないが、暴走する自分に立ち向かい続けた彼を、自分が生きていける最大の要因である綾を罵倒することは許せなかった。

 そして、プログラムの書き換え。リインフォースはこれが奴が異常なまでに強くなっている理由と見た。

 その名の通り、プログラムの構造を書き換えるそれは、魔法プログラム生命体であるリインフォースや守護騎士が行える荒技だ。適性のないスキルを扱えたり、術の威力を底上げすることが可能だが、無理な書き換えは大きな負担がかかり、最悪の場合書き換えに失敗して自身が消滅してしまう、賭けに近いものだ。

 しかしマテリアルはケラケラ笑い、リインフォースの予想を裏切った。

 

「書き換え、ね。まあ確かに飛行適性をちょいと書き換えはしたが、それ以外は何もいじってねえよ」

 

「なっ……そんなはずはない! 彼はお前ほどの魔力なんて……!」

 

「この魔力が本来の俺だからな。わざわざ能力の低いとこまでオリジナルに合わせる必要はないだろ?」

 

「だが、魔導資質だって……!」

 

「できるんだなぁ、それが。オリジナルの奴は演算能力がすげえいいんだよ。知識さえありゃ術式を一から組み直すのも簡単にできるぐらいにだ。俺はうまく自分用の適性値を計算して使ってんだよ。まあ飛行だけは適性が低すぎて身体に手ぇ加える他はなかったがな。ちなみに、俺は闇の書の断片であるから、やろうと思えば誰の魔法を使うぐらいできるんだが、それは言わなくてもわかるよな?」

 

 まさか、マテリアルが自分が撃てるように計算し直しているとは思わなかった。

 つまり、奴は綾が持つ頭脳に闇の書の強大な魔導の力を掛け合わせている。非常に厄介だ。

 

「さて、そろそろ無駄話もしまいにしようぜ。その荷物置くならとっとと置きな。せっかくこのオリジナルの体と記憶を選んだんだ。てめぇを徹底的に苦しめてやりてえんだよ」

 

 マテリアルは不適な笑みを浮かべ、クイクイと指で挑発する。

 リインフォースは、はやてを壁際に降ろした。

 

「リインフォース……」

 

「我が主、ご心配なさらずに……私は、あのような者には負けません」

 

 不安げなはやてを安心させようと微笑みかけ、そしてマテリアルへと向き直る。

 マテリアルはヘラヘラ笑ったまま、肩を刀の反りで軽く叩いていた。

 

「負けない、ね。オリジナルとは違うってことはもう教えてやったんだし、その自信は俺がオリジナルとは別人だから遠慮の必要はないってとこか?」

 

「……ああ」

 

 リインフォースは拳を固め、構える。

 マテリアルは特に構えないまま、さらに笑みを濃くした。本当に楽しそうに、面白そうに。

 

「ククククッ……いいぜ……その虚栄に覆われた心的外傷(トラウマ)、じっくり、たぁっぷり炙り出してやるからよぉっ!!」

 

 狂気の笑みを抑えぬまま、刀を構えてマテリアルは突進した。




 イレギュラーの正体が判明。綾を素体としたマテリアルでした。
 マテリアル、といっても出落ちした王様やその他二基のマテリアルとは別物なのですが、それはさらに先に予定しているGOD編で。このBOA編では無理です。綾を素体としているため記憶も引き継いでいるのですが、それも同じく。
 後、話の中では書けなかったのですが、このマテリアルの武器、及びにバリアジャケットの選出理由なのですが、まず、武器については綾の頭脳を手に入れ(術式の知識は闇の書の防衛システムからいただきました)、自力で大体なんとかなるので、レイジングハートのような杖を必要としない上、綾本人が刺突術を体得していることから、マテリアルが刀がいいと判断したんです。バリアジャケットについてもそれにちなんで、剣道着に。しかし、動きづらいので防具は却下。面だけ最初に顔隠すために使いましたが。
 後は……五十話近くになって、A'sでは出番が一切なかったはやてにやっと出番がかかりました。しかし逆ユニゾンの反動で動けない。A'sメインヒロイン(笑)。
 本命ヒロインはアインスでいいと思う。てかアインスであるべきだろ(作者はアインス大好きです)。
 そろそろここまでにしときます。では。

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