Magic game 作:暁楓
一ヶ月の間に本免の試験なり大学の入学式なりで忙しかったこととか、執筆の構想そのものがうまくいかなかったりという理由で遅くなってしまいました。申し訳ありません。
そしてクオリティが下がってると思います。
もう、早いとこ次章に進めたい。でも書くべき部分も多い……。
神への謀反を再度決意してすぐ、俺は面談謝絶を取り払った。
しかし話すべき人の人数が多いことから、数回に分けて先に話すべき順番で俺から呼び出していくことにした。
まず最初にチームの仲間である、海斗と由衣。
「綾さん!」
二人が入ってきてすぐ、由衣が駆け込んで抱きついてきた。
「……ごめん。心配かけた」
「綾……」
「……海斗も、悪かったな。そして、第三指令頑張ってくれたんだよな……助かった。ありがとう」
俺の現在のチップ数は三十八個。第三指令があって、俺が不参加を申請できなかったことから、本来なら三十五個に減っていたはずだったのが、減少がなかった。理由を考えれば、すぐに答えは辿り着ける。
俺が礼を言うと、海斗はバツが悪そうに頬を掻いた。
「いや、俺は……チップの減りを抑える分しか取れなかったし、その分だって、由衣ちゃんの助けがあったからだったし……」
「……それでも、助かった」
「お、おう」
「由衣も、ありがとな」
「……はいっ」
「……なあ、綾」
海斗が声をかけてきた。
「どうした?」
「綾さ……続けるのか? 反逆……」
その質問で、由衣が不安げな表情でこちらを見てきた。
「ああ。俺は続ける」
俺は何の迷いもなく、きっぱりと、即答した。
「……その、チップ使って、左腕とか治さないのか?」
「治さねえよ。使ってられっか」
「……そっか」
「なあ……海斗、由衣」
今度は俺から切り出した。
「これから先、指令はより危険になっていくかもしれない。それを抜きにしても、俺は危険を度外視した活動をしていくと思う。そうしないと、反逆そのものができないかもしれないからだ。はっきり言って……お前達の安全も考えていられなくなる」
「……………」
「……………」
これは警告のつもりだ。
失敗が失格となる指令が出た以上、もうこれから先「チップを持ってるから大丈夫」とはならない可能性が高い。そして、百個のチップを集めるためには今以上にリスクを負う必要も出てくる。
だがそれらは、指令に関わるような状態であればの話だ。指令に関わるような状態でなければ、そのようなこともない。
「チップは十個以上はあるんだよな? その状態なら、指令をリタイアし続ければ、しばらくは命が保証されるはず……これは多分、最後のチャンスだ。身を守るため離れるか……命を捨ててでも残るか……………その選択を、今決めてほしい」
「……へっ、何を今更」
海斗は鼻で笑ってみせた。
「お前がいなけりゃ、俺はとっくの前に死んでただろうぜ? 今更、引くなんてことするかよっ」
そして、海斗は笑みを一旦止めて続けた。
「……それに、これ以上綾に頼りっぱなしにするのは……綾だけに頑張らせるのはやめにしたいんだ」
「……そっか。……由衣は?」
「私も、同じです……できる限りのことはやらせていただきます!」
「……そうか」
……実のところ、できればこれで二人とも離れてほしいと思っていた。
これから先、俺は本当に二人の安全を考えていられなくなるだろう。二人を守ることができなくなる。二人には、安全な場所でこの世界で生きてほしかった。
それなら強引にでもチームを解散すれば良かったのだろうけど……しかし俺は、これまで以上に動けない分を、二人に補ってもらおうと考えてる自分もいた。
おそらく、ほぼ間違いなく、俺一人では攻略はできないだろう。しかし手伝ってもらうということは、二人を危険に晒すと同義になる。どうするべきか曖昧な状態でああ尋ねて、結局この結果になってしまった。
……でも、二人がそう言うのなら。
少しは……二人に頼るのもありかもしれない。
「……じゃ、俺の『左腕』として、頼むぞ」
「……ああ!」
「はい!」
さて、早いとこ他の人達とも顔合わせておかないと……次は誰を呼ぼうか……。
「……あ。なぁ、綾。一つ、話しておかなきゃならないことがあるんだけど……」
「? どうした?」
「実は……」
ここで俺は、闇の欠片事件においてリインフォースが交戦したらしい、俺を素体としたマテリアルについて知った。
◇
「綾さん!!」
次に俺は、アリシアとなのは、フェイトを呼び出した。
アリシアは由衣と同じく、入ってきてすぐ抱きついてきた。
そして、泣かれた。怒られた。
「バカ! クリスマスもお正月も、ずっと心配だったんだから!」
「……ごめんな。心配かけて……クリスマスや正月どころじゃなかったよな」
必死にしがみつくアリシアの頭を優しく撫でてやる。そうしながら、俺はなのはとフェイトへ念話を送った。
『二人にも、心配かけちまったか?』
『あ、その……』
『……綾さん。念話のまま、少し話をいいですか?』
フェイトが念話で話を持ち出してきた。
俺は了承する。
『ん、なんだ?』
『リンディさんから、闇の書事件の報告内容を聞きました。……あれは、本当に綾さんがそう決めたんですか?』
『なんだ、リンディさんの言うことが信用できないか?』
『そうではありません。ただ、あなたが指示したというのも本当のことには思えなくて……それに、隠蔽は犯罪なんですよ?』
『何かを守るためには、手段なんて選んでられないんだよ』
『でも……はやてもリインフォースも、その話を聞いて泣いてましたよ?』
『どうにかなるか、俺がどうにかするさ』
才の時と同じ話が出たが、彼女についてはここでは適当に流すことにする。
俺自身、それについてはしょうがないと思ってる。思った通りにはいかないなんてことはよくある話だ。
『あの、じゃあ、綾さん』
今度はなのはが訊いてきた。
『綾さんは本当に、リインフォースさんのこと……恨んでないですか?』
『恨んでる奴が、あんな報告書出せって言うか? 第一戦いに怪我はつき物だろ。その延長線上で俺は右目と左手を失った。恨んだらそりゃ逆恨みだ』
『そう、ですか?』
『そういうことだ』
少し強引だが、俺はそう言って話を打ち切った。
ああ、そういや、二人にはあれの礼をしなきゃな。
『そういや、あの時勝手に拝借したんだが、レイジングハートとバルディッシュ使わせてもらって、ありがとな。おかげで助かった』
『あ、いえ……』
『……じゃ、お前達との話はこれぐらいか?』
『綾さん、あなたは死にかけたんですから、ホントにもう無茶はしないでくださいね』
『だが断る』
『『ええ!?』』
フェイトの忠告に即答。当然驚かれた。
『悪いが今んところ、立ち止まる気はないな』
『で、でも!』
「……? 綾さん?」
アリシアの声がかかってきた。どうやら、念話に集中し過ぎてアリシアへの対応が疎かになっていたらしい。
「あっ、と……どうした?」
「なのはちゃんやフェイトと、何か話してたの?」
「……いや、大した話じゃないよ。……さて、これからはいつでも話ができるんだし、俺は他にも話をしなきゃならない人がいるから、また今度な」
「……うん」
こうして、三人との話は終わりとした。
あと、話をしなきゃならない相手と言えば……彼女だ。
◇
なのはとフェイトに呼び出しを頼んでから十数分ほど。ドアをノックする音が聞こえてきた。
「どうぞー」
「……失礼しますっ」
緊張したような、少女の声。
自動ドアが開放され、まず車椅子に座った少女、車椅子を押す銀髪の女性ときて、その後ろからはよく顔の知れた相手だったり直接会うのは初めてだったり、そんな守護騎士四人が入ってきた。
「随分大御所だな。まあ、いいんだけど」
「あ、あのっ、その……」
緊張か、戸惑いか、はたまた恐怖か。うまく言葉を出せていないはやてに変わって、まず俺が仕切ることにした。
「話とかで一応全員の名前はわかるにはわかるけど、とりあえずは初めて顔を合わせる人達で自己紹介しないか? 俺は朝霧綾だ」
「あ……は、はい。八神はやてです。この子達の主を、しています……」
「顔を合わせるのは二度目になりますが……リインフォースです。我が主によって、この名前を授けていただきました」
「私は、湖の騎士シャマルです」
「……ヴィータです」
「ん、シグナムとザフィーラは前に顔合わせたから、こんなもんか」
「……あの、綾さん」
少しだけ落ち着きを取り戻したと思われるはやてが俺を呼び、そして頭を下げた。
「この度は……本当に、申し訳ありませんでした!」
それに続いて、リインフォースが頭を下げた。
「綾……これは、私の責任です。私のことは好きにしてもいい……ですから、どうか、我が主のことは……!」
「おい、落ち着け、お前ら。とりあえず顔上げてくれ」
二人が顔を上げたところで、俺は口を開く。
「フェイトから聞いたが、リンディさんから闇の書事件の報告がどのようなものになったのか、聞いたんだよな?」
「それは……」
「お前達が言いたいのは大体わかったが、俺の答えはノーだ。ついでに言っておくが、もう俺達は何の関わりもない扱いになってる」
「でも! 償いは、ちゃんとせえへんと……!」
「償う結果、お前達がもう一生一緒にならないことになるとしても?」
「……っ!」
はやての目が驚きで見開かれた。
その反応に溜め息をつき、俺は言葉を続ける。
「本当の真実が報告書として出された場合、重傷者を出したとしてほぼ間違いなくお前とリインフォースは刑務所行きになる。特にリインフォースは、過去の闇の書事件のことも含められて一生出れない可能性だってあり得るんだ。今リインフォースや守護騎士達が自由なのは、多分今回の事件において重傷者や死者が誰もいないことになってるから……まあ、リンディさんが色々やってるのも大きいだろうけど」
でも、これも大きな要因であることは確かなはず。でなければ、はやてはともかくとしてシグナムら守護騎士だって問答無用で刑務所行きだっただろう。
「俺は、お前ら家族を崩壊させてまで償ってもらおうとは思わない。寧ろ俺のせいで家族崩壊なんてこと、考えるだけでゾッとしちまう」
「……………」
相手が黙り込んだところで、俺はあることをやろうと思った。
「ところで、夜天の書の写本はどうしてる?」
「それなら、こちらに……」
リインフォースが虚空から夜天の写本を呼び出す。
「ちょいと借りるぞ」
「はあ……」
「はやて、これに手を置いて」
「え……あ、はい」
置いた夜天の写本にはやての手が乗せられる。その上から俺の手を置き、相手には聞こえないように命令を呟く。
しばらくして、写本を取り巻く魔力が灰色から、白色に変化した。
「……はい、終了」
「……え?」
「じゃ、これ返すわ」
「え? え?」
されるがままに写本を渡されて、はやては狼狽える。
はやての後ろを見ると、リインフォースとシグナム、ザフィーラは俺の言葉の意味を捉えたらしい。対してヴィータはまだ理解できてないらしく、シャマルに至ってははやてと同じく狼狽えている。
「……マスター認証を、変えたのですか……」
リインフォースが俺が何をしたのかを言い当てた。
正解だ。
「ああ。本を使って戦うってのは、やっぱ俺には合わないんでね」
それもある。しかしそれ以上の理由として、リインフォースに頼らずに戦いたいというものもあった。
もし彼女に頼ってばかりでは、肝心な戦い……神への反逆の時に困る。おそらくその時に、リインフォースを連れて行くことはできないだろうと思うから。
「だからそいつは、原本の主であるお前が持ってろ」
俺のその言葉に、はやてはゆるゆるとかぶりを振った。
「そんな……受け取れません。こんな、こんな大変なことをしてしまったのに……」
「つっても、もう認証変えたんだし。あと、また認証変えようとは思うなよ。あんま手間をかけさせんな。いたちごっこは好きじゃないんでね」
「……あなたは、どうしてそこまで……」
「私達に尽くしてくれるのか……てか? 悪いが、俺はお前達のためと思ってやってはいない。結局は自分のためだ」
リインフォースに俺はそう答える。
そう、自分のためだ。ここまで戦ってきたのも、写本を手放すのも、自分のために、自分が神への反逆をするためのこと。それに、親切の押し売りは結局のところ親切ではないのだ。
「俺なら、大丈夫だから。お前達は今の家族がなくならないようにしな」
優しく言ったつもりのこの言葉も、彼女達には重くのしかかっているのだろう。
結局、何も言えなくなったはやて達は、そのまま部屋を退室していった。
色々酷いことしたって自覚はあるが……これでいい。
夜天の写本を失ったことになるが、大した問題じゃない。魔導書は俺には合わないっていうのは本音だし、武器がないなら作ればいい。
その武器を作るためにも、必要なこと……。
「……まず第一に身体か」
当分は、そうするしかなさそうだ。
綾が夜天の主をやめました。
決戦のことを考えれば、依存しないためにもこうしたほうがいいと思ったんでしょう。
感想の中でリインフォース依存はペナルティが付くのではないかというコメントがありましたが、それはありません。しかし綾にとっては依存は自身の向上なはならないということが、ある意味ペナルティになるかと。
前書きの通り、次章にさっさと進めたいのですが、書くべきところが多いので否応にも関わらず幕間が続きます。
あ、でもそろそろ近いうちに次章予告を載せます。