Magic game   作:暁楓

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 最初のペースはなんだったのか、月一ペースになってきました。
 なかなか書けません。モチベーションも上がりません。駄文です。
 うーん、GOD編とか空白期編とかStS編……はまだだな。構想は思いついているんだけどなぁ……。


第五十三話

 数日後。今日は客が来ていた。

 チーム『連合軍』の四人と、チーム『インテリ不良』だった(・・・)二人だ。

 だった、というのもチームリーダーであった氷室の失格により、チームが解散の扱いにされたからだ。新たにチームを組もうにも、新たなリーダーがどっちになるか決まらず、現在チームとはなっていないらしい。

 

「リンディさんからは随分沈んでたって聞いてたけど、元気じゃんか」

 

「もう大分前の話だぞ、それ。今はもう平気だ」

 

「というか、安静にって言われてるんじゃないの? 起きて本呼んでて、医務員に怒られても知らないわよ?」

 

 頭の後ろで手を組んで、少し安堵したように言う由樹と、呆れたように言うマリア。

 確かにマリアの言う通り、俺は本を呼んでいる。

 いつだかの事件よろしくこれは資料本であり、デバイス構築の基礎理論やらAI構築応用など、基礎から細かい高度技術まで、あらゆる本を揃えている。海斗と由衣に頼んで持ってきてもらったのだ。

 作る武器は、すでに決めている。

 

「その様子だとやる気ありみたいだけど、右目はともかく左腕はどうすんの? どう考えても片腕だけってのは厳しくない?」

 

「リンディさんと話したところ、技術部に頼んで義手造ってもらうことになった。完成自体は二、三週間ぐらいでできるって話だ」

 

「ふーん」

 

 ちなみに、その話は昨日のことである。

 

「で、そっちはどうするんだ?」

 

「ん?」

 

「これからのこと。第三期とかにも関わるのか?」

 

 そう尋ねると、由樹はおどけたように両手を上げた。

 

「残念……僕らはここでリタイアとするよ。しばらくは命は繋がるだろうし、その間にこのデスゲームが終わることを祈るよ」

 

「……そうか。二人は?」

 

 俺は末崎と高田に視線を向けた。

 

「俺は……」

 

 しばらく躊躇った様子だったが、意を決したらしく、末崎が頭を下げた。

 

「頼む! 朝霧……いや、綾! 俺に、あんたの手伝いをさせてくれ!」

 

「……は?」

 

 せがまれた。

 

「……どうしてそう思った?」

 

「俺は、お前のおかげで命拾いした! お前の男気に俺は惚れたんだ! どんなことでも言うとおりに何でもする。だから、この通り!」

 

「……末崎」

 

 手を合わせて拝んでくる末崎に溜め息をつき、俺は諭すように言った。

 

「もし、それがチップ欲しさか、もしくは助けてもらったことへのただの恩義(・・・・・)だって言うのなら、それはやめた方がいい。これから、反逆を成功させるまでの間に俺達のチームのうち一人は死ぬと思ってる。お前の言ってることは、はっきり言ってただの自殺願望になるぞ」

 

 その言葉に、末崎はにかっと笑みを浮かべた。

 

「それでもいいぜ……俺は、あんたが勝つために生け贄が必要だと言えば、俺が第一になってやる。俺は、あんたに全部乗るよ……!」

 

「……………」

 

 俺はもう一度溜め息をついた。

 そして、決めた。

 

「……わかったよ」

 

「……おお! やった!」

 

「ただし。命の保障は一切しない……絶対に忘れるなよ」

 

「おお! おお! わかった! 肝に銘じるぞ!」

 

 すっかり舞い上がって小躍りを始めた末崎に呆れながらも、俺は高田の方に顔を向ける。

 

「……で、高田はどうなんだ? お前も、命を捨てる気があるのか」

 

「あ、えっと……俺は……」

 

「……高田」

 

 言いよどんでいる高田に、俺は言葉をかける。

 

「生きたいと思うなら、今すぐ引け。さっき言ったように、これから先俺がやることに参加するのは自殺願望のようなものだ」

 

「……すいません」

 

 高田が頭を下げる。

 

「謝んなくていい。寧ろ、お前や由樹達の方が正常だ」

 

「……………」

 

 高田はもう一度頭を下げ、部屋を退室した。

 

「……末崎。お前をチームに入れておくから、お前は海斗達にそのことを伝えに行ってくれ」

 

「おお! わかった、それじゃあな!」

 

 俺からの指示を受けた末崎も、即行で退室していった。

 

「よかったのかい?」

 

 扉が閉まってから、由樹が訊いてきた。

 

「なにが」

 

「あんなお調子者をチームに入れたりなんかして、さ。正直お荷物にしかならないと思うよ」

 

「必要な時に動いてくれりゃそれだけでいい。それ以上求めるつもりはないさ」

 

「……ふーん。まあ、僕らにはもう関係ないか。じゃあね。君達の目的が果たされて、僕らが生かされることを願ってるよ」

 

「ああ。じゃあな」

 

 由樹達も退室していった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 午前中はこんな感じで、午後にはクロノが来た。

 

「調子はどうだ?」

 

「まだ学習段階。設計を始めるのは早くても何週間かはかかると思う」

 

「そうじゃなくて、身体の調子だ」

 

「見りゃわかるだろ。動かせる部分は動く。動かせない部分は動かない」

 

「今は動かせる部分も動かさないのが普通だろ」

 

「知ったことか」

 

「知れ」

 

 はぁ、と溜め息つかれた。まあ身体の調子を訊いていたのはわかっていたのだが。

 現在俺が読んでいるのはベルカ式アームドデバイスの構造資料。それを読みながらクロノの話に受け答えしている。

 

「……ところで、綾」

 

「なんだ?」

 

「君が読んでるそれって、デバイス製作関係の資料本だな?」

 

「ああ、そうだけど?」

 

「まさか管理局に入る気なのか?」

 

「ああ」

 

 あっさりと、そしてしっかりと、俺は答えた。

 

「言っとくが、技術部とかじゃなくて前線な」

 

 クロノはそれに食いついてきた。

 

「本気で言ってるのか? いくら人員不足の管理局とは言え、片腕のない奴がどうにかなるほど生易しいものでもないんだぞ」

 

「それぐらい知ってる。というか、腕消し飛んだ原因がその生易しくないどころじゃない戦場だったじゃないか」

 

「理由を、聞かせてもらっても構わないか?」

 

「勝ちたいから……いや、勝ち続けたいからだな。全部そこからだ。勝たなきゃ何も始まらないし、勝てなきゃ何も得られない。俺は勝ちたい。勝つための力が欲しい」

 

「……………」

 

 クロノは考え込むように顎に手を当てた。

 

「……綾、君に贈られる義手は魔導式だ。自分の魔力を使用して操作するもので、戦闘ではどれほど不利になるかぐらい予想できるはずだ」

 

「それぐらい知ってるさ。それも計算したデバイスと魔導術式の作成をするつもりだし」

 

 クロノが言いたいのは、義手に魔力が割かれてしまうために肝心の戦闘で使える魔力の量が減ってしまうということだ。義手操作に使われる魔力そのものは多くないとはいえ、仮になのは達エース級の魔力を持ってる者ならまだしも、魔力Cの俺には致命的なものである。

 勿論、それを考慮したデバイス及びに術式の製作はする。ある程度考えも浮かんでいる。

 

「君は十分に戦った。そんな傷だらけの君が戦う必要なんてない。……そうは思わないのか?」

 

「思わないね。これくらいで立ち止まるなんてできないし、したくもない」

 

 まだチップは目標個数の半分にすら到達していない。こんなところで止まる気なんてないのだ。

 クロノがまた溜め息をついた。

 

「……はぁ。まあ、君の無茶な身勝手は今回に始まったことじゃないからな……」

 

「そういうことだ」

 

「だが、君が無茶を続ければその分心配したり、悲しむ者もいる。そのことはわかっていろよ」

 

「そーかい」

 

「……あと、身内とだけではなんとかならないようなものとかがあったら僕に相談してくれ」

 

「あ?」

 

 本のページを捲る手を止めて、クロノを見た。

 

「可能であればこちらで支援する。ここで君が止まろうとしないのはある程度予想できてたさ。そしてまた無茶をするだろうし、だったら不足した状態で無茶をさせるよりは万全な状態にさせた方が、被害も少ないだろう?」

 

「……もう無茶はするなとかは言わないのか?」

 

「言っても、どうせ聞かないんだろう? 母さ……ゴホン。艦長の再三再四の説教も全く聞かないんだし。だったら無茶を軽減させた方がよっぽどマシだ」

 

 どうやら俺についてはもうある意味諦め始めているらしい。こちらはそれに対して反論はない。事実だし。

 

「そうか。じゃあ頼む時は遠慮なく頼むことにするわ」

 

「そうしてくれ。限度はあるがな」

 

 読書を再開しようと思ったが、またクロノが声をかけてきた。

 

「なあ、綾」

 

「なんだよ?」

 

「はやてとリインフォースについて、君はどう思ってるんだ?」

 

「どうって?」

 

「二人は君について、しっかり償いをしなければいけないと、そう考えている」

 

「そのことについてはとっくに本人に答えを言った。そんなもんいらん」

 

「優しく接することだけが適切とは言えない。償いになるようなことをさせて彼女達に前を向いてもらう……言ってしまえば、達成感を持たせるというのも手なんだぞ」

 

「つったって、何すれって言うのさ」

 

「そこは自分で決めてくれ。君が納得しなければ意味がないだろ」

 

 そこは丸投げかよ。確かにそうなんだろうけど。

 

「納得ね……まあなんか検討しておく。つーか、今更だけどクロノは何しに来たんだ?」

 

「様子見と、さっき訊いたようないくつかのことについてどう思っているのかの確認だ」

 

「あーそーか。じゃ、もうここにいる理由はないのか」

 

「いや、もう一つ質問がある」

 

 まだあるのかよ。

 

「君には、心の闇というものがあるのか?」

 

「は?」

 

 なんだそりゃ。

 

「そのままの意味だ。悲しみや憎しみ、怒り、狂気……そういったものが、君にもあるのか?」

 

「あるのかって……」

 

 俺は呆れたように返した。

 

「当たり前だろ。むしろそれがない奴がいるなら見てみてーな」

 

「……そうか」

 

「で、それがどうしたんだよ?」

 

「……いや、ただ訊いてみたかっただけだ」

 

 なんだそりゃ。

 それに、ただ訊いてみたかっただけにしては随分と表情が重いように見えるんだが。……まあ、いいか。

 

「以上か?」

 

「ああ。つまらないこと訊いて悪かったな」

 

 聞くこと聞いたクロノは扉へと向かう。

 自動式の扉が開いたところで、クロノはこちらへと振り返った。

 

「それではな。デバイス開発の勉強や自己回復についてもうツッコまないが、無理はするなよ」

 

「おう」

 

 クロノの姿が扉の向こうへと消え、プシュウと扉が閉まる。

 再び一人になってから俺は読書を再開し、同時に魔法陣を展開した。

 

「心の闇、ね……」

 

 確かに、俺にはそれが存在すると言える。

 一つの悔恨。俺は『彼女』を救えなかった。それどころか、現実を前に、俺は『彼女』を裏切った。

 それが、俺の心の闇であり、俺の罪……。

 

(今、君は……元気にしているか?)

 

 答えられる者などいないとわかっていても、しばらくその質問が頭に浮かび続けていた。




 どうすりゃいい文を書けるんだか……。

 気分転換的気分で、新章の予告を載せとます。





 新章開始まで、残り僅か。




 未来からの来訪者。

 マテリアル三基、復活。

 イレギュラー、復活。





 そして……砕け得ぬ闇(アンブレイカブル・ダーク)、覚醒。





 神からの指令は?

 イレギュラーの存在意義とは?

 原作だけでは……U-Dが救えない――?



 Magic Game、再び激戦へ。

 第四章、『運命の歯車編』



 始動。





正確には、開始までどれくらいかかるかなんて作者にもわからないけどねっ!

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