Magic game   作:暁楓

59 / 92
 なんとか連日の投稿ができてます。

 ありのままのことを話すぜ!
 幼女を虐待級にボコる話を書いていたと思ったら幼女にボコられていた。
 なにを言ってるのか……なのはGOD知ってるだったら解るか。とにかく読んでくれ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わうぜ……!


第五十九話

「何なのだあやつは!」

 

 いきなりU-Dを蹴り飛ばした乱入者にディアーチェが憤りを見せると、はやて、リインフォースが揃って意外そうな視線を向けた。

 

「え、王様知らんの? あの人、自分でマテリアルやって名乗っとったけど」

 

「皆目知らぬわ! 第一、マテリアルは(シュテル)(レヴィ)と、そして王たる我の三基構成ぞ! 勝手に一基増やすでない!」

 

「いや、一基増やしたのはあの人なんやけど……」

 

 とにかく、彼はディアーチェらとは別の個体らしい。

 リインフォースはそう情報を纏め、U-Dと綾のマテリアルに警戒しながら、先ほどマテリアルが言ったことを思い出す。

 

(あのマテリアルはU-Dのことをユーリ・エーベルヴァインと呼んでいた……奴は、ディアーチェにすらわからなかったU-Dの正体を知っている……?)

 

 まだ定かではないが、砕け得ぬ闇とは呼ばず、ディアーチェ達が一度も口にしていない名前で呼んだ。それだけでも他の者より多くの情報を持っている可能性は高い。

 しかし疑問なのは、あのマテリアルはU-Dに対して明確な攻撃意志を向けていることだ。ディアーチェ達は砕け得ぬ闇を手に入れることを目的としている。だが、綾のマテリアルは砕け得ぬ闇を手に入れることが目的ではないのだろうか。

 

(奴の目的は、何だ――?)

 

 目的が見えないマテリアルに、リインフォースは困惑していた。

 

 マテリアルは何が面白いのか口元を吊り上げたまま、腰に差した真っ黒な刀を抜き取った。

 

「さあ、やろうぜユーリ。退屈はさせないでくれよ?」

 

「……新たに脅威判定を一体追加。排除を開始します。空中白兵戦システムロード。出力上限八パーセント」

 

 ユーリと呼ばれたU-Dがそう宣言した途端、凄まじい魔力によって大気が揺れた。

 

「な、何ちゅう重圧や……魔力の桁が違いすぎる……!」

 

「我が主、ここは危険です。お下がりください!」

 

 危険を感じ、リインフォースははやてに避難するよう促す。

 大気を揺るがすほどの魔力。しかしU-Dの言葉だとこれでも力は一割に満たないという信じられない話だ。目覚めたばかりだから上限がさらに上がるとは考えにくいが、それでも驚異的であることには変わりない。

 マテリアルはこの状況もわかっているのか、笑みを止めない。

 

「殲滅、開始。魄翼、形状変――」

 

 U-Dが戦闘を始めようとした刹那。急接近したマテリアルの膝蹴りが顔面に直撃し、またもやその小さな体が吹き飛ばされた。前回と違うのは、途中で魔法陣の壁に止められ、バインドで拘束されたことだった。

 

「クハハッ、おらよぉっ!!」

 

「かはっ」

 

 休む暇も与えず、マテリアルはU-Dの鳩尾に、顔面に、拳を食い込ませていく。魔力で強化した拳を、笑いながら、一切の容赦もなく。殴られる度にU-Dの口から空気が吐き出されていく。見ている側からすれば、ただの暴力にしか見えない。そして何度目かの殴打で、U-Dを張り付けていた壁の方が耐えきれなくなり砕けた。

 だがそれでもマテリアルの暴力は終わらなかった。U-Dの後頭部を掴み、今度は足元に展開した魔法陣の床に叩きつける。

 

「ナパームブレス」

 

 マテリアルがそれだけを言うと、U-Dの頭を掴んでいた手の先から爆発が生まれた。

 爆風と煙が収まるとマテリアルと、後頭部を掴まれ倒されたままのU-Dの姿が現れる。U-Dに動きはなく、防護服や髪には焦げた跡がある。

 さらにマテリアルはU-Dを掴む手をどかすと、今度は頭を踏みつけた。ガンッ! という音が響き、踏みつけの威力を思い知らせる。さらにゴリッ、と骨の音が鳴った。

 これだけ一方的な暴力を見せつけられれば、しかも暴力を振るう人が楽しそうに笑みを浮かべていれば、ディアーチェの沸点が突破されるのも無理もない話であった。

 

「貴様ァァァァッッ!!!」

 

「おっと」

 

 しかし魔導書の頁を捲り、ディアーチェが魔導を行使するより先に、マテリアルがバインドでディアーチェを縛り上げた。ディアーチェのみならず、他の三人も同時に拘束する。

 

「な、くっ!」

 

「まあ黙って見てろよ。これからが大事なとこなんだからよ」

 

 見せ物を披露するかのようにヘラヘラ笑うマテリアルは、手に持った刀を逆手に持ち替え、大きく振り上げた。U-Dに刺す気が満々である。

 冗談じゃないといった様子で、キリエが声を張り上げた。

 

「ちょっと待ちなさい! U-Dを壊されたら、私の計画が全部パーにッ」

 

「知らんなあ、てめーが誰だとかてめーの計画だとか。俺は俺の目的を遂げるだけなんだよっ!」

 

 キリエの言葉を意に介さず、意気揚々とマテリアルは刀をU-D目掛けて振り下ろす。

 

 

 

 

 

 ……が、刀がU-Dに突き刺さることはなかった。それどころか、刀が振り下ろされることもなかった。

 刀は、マテリアルの右腕と共に宙を舞い上がっていた。

 

「え?」

 

「なっ――」

 

 はやてには何が起きたのかわからなかった。マテリアルも驚きを露わにする前に、横からの『何か』に衝撃を叩き込まれ吹き飛ばされた。

 その『何か』とは、『手』だった。

 U-Dの身長程、いやそれ以上の巨大な手が、背中の翼だったものから姿を現していた。全体的に赤黒く、禍々しい巨大な手。マテリアルの右腕を吹き飛ばしたのもこれであった。

 

「――魄翼、動作正常」

 

 自身を押さえつけるものがなくなり、一方的にやられていたU-Dが身体を起こす。ポンポンと叩くと、叩かれた汚れは軽く落とされ、ほぼ無傷の姿となった。

 そう、無傷。殴られ、蹴られ、踏みつけられ、そして爆破を受けてなお、U-Dはほぼ無傷の姿を保っていた。

 その姿を見たはやては、戦慄を感じずにはいられなかった。あれだけの攻撃を受けて無傷でいられる防御力。変幻自在な翼から繰り出される攻撃力。そしてその二つを実現する魔力を持つU-Dの力が、本物の化け物だと理解した。

 マテリアルもまた、自身のあれだけの攻撃が無意味であったことを理解して冷や汗を流した。しかし、それでも笑みを浮かべていた。

 

「……やってくれるじゃねえか」

 

 マテリアルは手元に魔法陣を展開した。転移魔法陣であるそこから、腕と共に吹っ飛ばされた刀が呼び出された。

 

「まだまだいくぞおらぁっ!!」

 

 U-Dへと肉薄。加速強化《アクセル》による瞬時加速から高速突きを連続で繰り出す。綾が右利きで、マテリアルもそれは変わらないのだが、不得手とする左でありながらも高速突きを連発する。

 しかし嵐のような斬撃に対してU-Dはスルスルとよけていく。まるで次にどこに来るのかがわかるかのように。

 そしてU-Dはマテリアルごと斬撃を飛び越え、マテリアルの背後に立った。

 

「くっそ――」

 

「ヴェスパーリング」

 

 トン、とマテリアルの背中に手を当て、呟くような一声。

 その一声で当てた手を中心に赤黒いリングが形成、そのリングとゼロ距離にいたマテリアルは衝撃で跳ね飛ばされた。

 だがそれだけでは終わらない。何もない空中で吹っ飛んでいたはずのマテリアルが、何かに衝突して停止した。見ると、暗黒色のベルカ魔法陣でできた壁だった。

 魄翼が変形してできた巨大な手が、マテリアルの身体を鷲掴みにした。魔法陣の壁と言いこの状況、どこかで見た光景だ。具体的には、つい先ほど自分がやっていた。

 

「ナパームブレス」

 

 バチンッ、と僅かにショートした後、先ほどとは比べ物にならないような爆発がマテリアルを包囲した。U-Dが魄翼の手を引っ込める。爆破の煙の中から、マテリアルが力無く墜ちていった。

 

「動作正常……システム負荷許容範囲……」

 

「あのマテリアルが……ほぼ一方的やなんてっ……」

 

 はやては再び戦慄を味わった。あのマテリアルはリインフォースをギリギリまで追い詰めた程の力を持つ者だ。リインフォースを追い詰めたのは心理的要素も含まれていたとは言え、高い戦闘能力も見ている。そのマテリアルが、ほとんど一方的に撃墜された。

 しかし戦慄したのはあくまでU-Dを敵視するはやてとリインフォース。この場にはその力にむしろ喜ぶ者もいた。

 

「ふはははっ! よくやったU-D。うつけ者退治、大義であったぞ!」

 

 ディアーチェであった。

 彼女の高笑いに反応し、U-Dが視線をディアーチェへと移す。

 

「闇の書の構築体、ユニットD、ロード・ディアーチェ……駆体起動を確認……? ――ディアーチェ? ……そこにいるのですか?」

 

「ああ、そうとも。我はここにいるぞ。やっと巡り会うことができたわ。うぬをずっと捜しておったぞ」

 

「私もです。U-D」

 

「僕もいるよー!」

 

 いつの間にか来ていたシュテルとレヴィが、U-Dの周りへと近づく。

 

「シュテル・ザ・デストラクター……レヴィ・ザ・スラッシャー……確認……」

 

 シュテル、レヴィ、ディアーチェ。三人と会うことが叶ったU-Dはしかし、表情が明るくなることはなかった。

 

「――こういう時、人は嬉しい、という感情を表すんですよね」

 

「……む?」

 

 U-Dの顔は、明るさも暗さもなく、ただ無表情。ただただ、無表情一つのみだった。

 後になって思えば、U-Dは目覚めてから一度も、戦闘で攻撃を受けた時にさえ表情に変化を見せなかった。言葉も機械的なしゃべりだった。ただ、マテリアル三基はU-Dとの邂逅に浮かれて判断力が若干鈍っていた。

 

「ですが私はもう、そのような感情は棄てましたから」

 

「……何を言っておるのだ? うぬは……」

 

 だから、ディアーチェは、マテリアル達は近づいてしまった。近づきすぎた。

 U-Dの翼が届く範囲へと、踏み込んだ。

 

 

 

「――接敵確認。排除実行」

 

 

 

「――え?」

 

 目の前の少女の言葉を理解する前に、ディアーチェは何かに襟を掴まれたようで強く引かれた。

 バックスクロールされていく視界の中でディアーチェがまず見えたものは、爪に変形した魄翼がなぜかこちらに迫ってくる光景と、それと自身との間に割り込んでくる何か。

 そして次の瞬間には、自分がいた場所に立った誰か――綾のマテリアルの右目が斬り裂かれていた。

 

「ぐおぉ……ッ!」

 

「なっ……」

 

 ディアーチェは何が起きたのか全く理解できていなかった。ましてや、自分達のものであるU-Dが襲ってきたなどという想像などつかなかった。

 だがその現実は、嫌でも思い知らされる。

 なぜなら――

 

「あああぁっ!!」

 

「うあぁぁぁっっ!!」

 

 シュテルとレヴィの身体を、魄翼の爪が貫いていたのだから。

 

「――シュテルッ! レヴィッ!?」

 

 ディアーチェが叫ぶが、もう遅い。

 シュテルとレヴィの身体は崩壊を始める。

 

「――沈むこと無き黒い太陽。影落とす月。ゆえに、決して砕かれぬ闇」

 

 仲間であるはずのシュテルとレヴィに手をかけたという事実を前にしても、U-Dの表情は変わらない。

 

「みんな私を制御しようとしました……けれど私を目覚めさせた結果残ったのは絶望と、破壊の爪痕だけでした。だから、私を闇の書の奥へと沈めました。私も、絶望しか感じない自分の感情を棄てました」

 

「感情を棄てれば、ただシステムに従うだけの存在になれば……その方がずっと楽だと思ったってか……このクソガキがっ」

 

 そう言って、吐き捨てたのはマテリアルだった。

 息が荒い。ダメージを多く受け、彼も駆体の維持をするだけで限界に近かった。

 しかしそれに構わず、マテリアルはU-Dに得物を向ける。

 

「くだらねえこと言ってねえでっ……黙ってこの剣に刺されやがれっ!!」

 

 マテリアルが今一度U-Dへと駆ける。

 U-Dは無表情のまま、迎撃を取る。

 

「迎撃開始。ヴェスパースプラッシュ」

 

 U-Dが掲げた手から、先の赤黒いリングがばらまかれる。

 

「なめんなぁっ!!」

 

 マテリアルはリングの弾幕をかいくぐり、U-Dの眼前まで辿り着いた。魄翼はシュテルとレヴィへを突き刺した状態で塞がっている。

 

(取った!!)

 

「無駄です」

 

 マテリアルの賭けの刺突は、僅かな動きでよけられた。

 だが、マテリアルはこれで終わる気はなかった。

 

「まだまだぁっ!!」

 

 突きから派生した横薙ぎ。マテリアルにとって本当の賭けの一撃はU-Dの首元に直撃、刃が肉に僅かに食い込んだ。

 だが、U-Dは自分の首元に食い込んだ刃を見ても表情一つ変えることはなかった。

 バインドが現れ、マテリアルを絡め取る。そしてU-Dは、魄翼から巨大な槍を作り出した。

 

「さようなら――ジャベリンバッシュ」

 

 投擲された槍はマテリアルを貫き、そのまま海へと突き落とした。

 マテリアルを沈め、シュテルとレヴィが崩壊したのを見届けてから、U-Dは残る四人に視線を向ける。

 

「脅威判定、残り四体。殲滅続行……、……ぅっ……」

 

「……? 何や?」

 

 魄翼の形状を変えようとして、U-Dは突然頭を押さえた。今まで何一つ変えることのなかった表情が、僅かに苦痛で歪んでいる。

 

「……正体不明のプログラムが侵入、動作阻害を確認……現状での殲滅続行は危険と判断。駆体安全の確保を優先し、この場は退避します」

 

「……! ヤミちゃん! あかん、待って!」

 

 はやてが制止の声をかけるが、U-Dは魄翼を羽ばたかせ飛び去ってしまった。

 

「待ちなさいっ! 私はあなたに用があるのっ!」

 

 キリエは飛び去ったU-Dを追ってこの場から姿を消す。

 ディアーチェは消え去ったシュテルとレヴィに呆然とし、そして強く歯噛みした。

 

「……待たぬかU-D貴様ぁぁぁぁっ!!! 貴様は我のものだ! 勝手に行くことは許さんっ!」

 

「あ、王様!」

 

 はやての声も届くことなく、ディアーチェも転移魔法で姿を消してしまった。これで残されたのは、はやてとリインフォースのみとなった。

 

「シュテルとレヴィ、もしかして、消滅してしまったん?」

 

「いえ、おそらくは駆体維持を放棄して、ディアーチェのリソース内で再構築しているはずです」

 

「そっか」

 

 リインフォースの説明に、はやては内心ほっとした。敵であるはずなのに心配するのは、彼女達が一方的に悪い子ではないと思っているからか。

 ふと、リインフォースは魔力の放出を感じ取った。場所は自分達よりずっと下。海の中だ。

 

(この感じは転移魔法……? あのマテリアル、まだ動けているのか?)

 

 あのダメージからして、シュテルらと同じく一旦駆体放棄をして身体を治すべきはずなのに、無理してまで奴は何をする気なのだろうか。

 と、ここで通信が入ってきた。送信者はシャマル。どうやら出張から戻ってきたらしい。

 

「はやてちゃん! 大変です! 海鳴市内にて思念体反応が多数出現! ものすごい数です!!」

 

「!?」

 

 その報告に強く反応したのはリインフォースだった。

 

(海鳴市には、欠片の掃討に綾が……!)

 

 いくら綾でも、劣化コピーとはいえ欠片が大群で迫られては危険だ……その思考に辿り着いたリインフォースは、すぐさま行動に出た。

 

「我が主、先にアースラにお戻りください! 私は、綾の救援に向かいます!」

 

「ちょっ、リインフォース!?」

 

 すぐさまリインフォースは海鳴市に向かって飛び出した。

 

(綾、無事でいてくれ……!)

 

 焦りから、リインフォースはさらに加速していった。




 やべぇ。

 ユ ー リ を 強 く し す ぎ た !

 え? これで出力八パーだよ? え? マテリアル綾は頭脳と魔力両面でチートなんだよ? え? 原作主人公ズでも勝てるのこれ!?
 いくらユーリが公式チートでも、ここまでくるとガチでどうしようもなくなるんじゃないだろうか。
 それと、原作と本作の違いが明確に出てきました。ユーリ感情棄てちゃってるよ。マテリアル綾はなんだかそれすらも知ってる様子。
 もうこの時点でイレギュラー(マテリアル綾)の存在意義に気づく人いますかね? 本人が明かす前に誰かが答えられた場合には番外編考えます。リインフォースとの絡みとか、最近出番がなくなったアリシアとの絡みとか、ないと断言してたシグナム√とか、禁断のリンディ√(!!?)とか。考えるに留まるとは言え、前向きには検討しますよ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。